コミュニティホスピタリスト@奈良 

市立奈良病院総合診療科の森川暢が管理しているブログです。GIMと家庭医療を融合させ、地域医療に貢献するコミュニティホスピタリストを目指しています!!!

症例カンファレンス 2017年3月10日

 

 

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今日は症例カンファレンス。

60台 3日の経過の咳嗽・発熱で来院。

他特に症状なくバイタル安定。

胸部聴診所見、胸部レントゲン、インフルエンザ問題なし。

上気道炎で対処療法で帰宅。

⇒実は1ヶ月前から右前腕近位部の痛みがあり同日、整形受診し、尺骨の病的骨折を指摘され内科で精査を依頼!!

 

レントゲンは尺骨・橈骨が全体的にスカスカ。二次性の骨粗鬆症??

Ca/Pや甲状腺は正常。 

ただ、その後3日間発熱継続。全身状態は悪化。鑑別は??

 

病的骨折を診た時は。。

①二次性骨粗相症

②骨の悪性腫瘍

 

②の中でも原発性骨腫瘍、転移性骨腫瘍、多発性骨髄腫を主に考えました。

ただ、蛋白アルブミン解離は認めず。

溶骨性骨転移の代表格は、肺癌・乳癌・腎癌。

それらを念頭に全身CTを考慮します。

 

ただ。。

今回の症例では。。

初診時に見逃していた所見が再診時に見つかり確診に至りました。

 

全身リンパ節が著明に腫大していました!

さらにLDHも最初から上昇していたのが再診時にさらに上昇。

もうお分かりですね。

後日、DLBCLと判明しました。 

 

jyoutoubyouinsougounaika.hatenablog.com

チーフの日本全国GIM巡り 麻生飯塚病院総合診療科

チーフの日本全国GIM巡り第1弾!

本日は麻生飯塚病院総合診療科に伺いました!
日本有数の総合診療科であるGIMの聖地を見学させていただきました。
 
飯塚市について
飯塚医療圏の基幹病院であり1116床の巨大病院です。

福岡県 飯塚医療圏|地域医療情報システム(日本医師会)

 

博多から電車で1時間 山間部を電車で走ると飯塚市に到着しました。

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wikipediaによると。。
飯塚市は、福岡県中部に位置する市。筑豊三都の一つ。筑豊で最大の人口を擁し、筑豊の政治・経済の中心機能を持つ都市である。また、福岡市、北九州市久留米市に次いで県内で4番目の人口を擁する。 飯塚都市圏の中心都市であり、筑豊地方、嘉飯山地区の中心都市でもある。
とのことです。
 
中心部に流れる遠賀川が印象的でした。

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そして、こちらが飯塚病院
この写真は新しく新築した新館です。
ローソンやコーヒーショップもあって設備が綺麗でした。
 
そして、本題の飯塚病院総合診療科について。。 
まず、規模が大きかったです。
病床数が120-150床と総合診療科の病床数も日本最大級かもしれません。
また、幅広い分野をカバーしていて総合診療科が診る疾患の幅が大規模病院の割には、広い印象でした。
また研修医の先生方のモチベーションも高く、スタッフの先生方からのフィードバックや教育も充実している印象でした。
もちろん、専門内科が揃っているので全ての疾患を総合診療科が診れるわけではないですが、その分専門内科との連携を重視している印象でした。
同医療圏の最後の砦なので、病院としてはほぼ全ての疾患を診療することが可能な印象でした。
さらに、重症患者のみに特化した重症チームや外来に特化した外来ブロックもあるため、集中して研修をすることが可能です。
そしてその分一般病棟研修を集中して行うことが出来る印象でした。
活気にあふれ、まさにGIMの聖地というべき病院でした。
 
 
ちなみに前日は無理を申し上げて懇親会もセッティングをしていただきました。
案内をしてくださった清田先生、小田先生、吉野先生、江本先生をはじめスタッフの皆様方や工藤先生をはじめとする後期研修医の皆様。
本当にありがとうございました。
今もスタッフや後期研修医の数が増え、病床数も増えているとのこと。
そんなGIMの聖地である麻生飯塚病院でした。

IVCフィルターの効果について PREPIC 2 trial:(2015 JAMA)

背景・総論

 

PREPIC trial:(1998 NEJM

近位DVT患者(PEの有無は問わない)にpermanent filterを入れると12日以内のPEの発症が予防できる。But 2年、8年後にはfilter群でDVTの発症が増加し、トータルで見るとfilterの有無は全死亡に影響なし。

 

retrievablefilterを使用した場合はどうか?PEリスクの高い患者群では有用ではないか?

 

PREPIC 2 trial2015 JAMA 2006-2013年にフランスで施行された

急性のPE + 下肢DVT合併患者+リスク因子1つ以上の患者を対象として、PE再発において、除去可能なIVCフィルター+抗凝固薬 vs 抗凝固薬のみで治療効果を比較検討したRCT。

 

 

*抗凝固療法ができない患者に関しては、後ろ向き研究や観察研究レベルでfilter群でPEの再発を減らせるといった報告がある。

 

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A この試験の結果は信頼できるか

①その試験は焦点が明確な課題設定がされているか

Patient 

p.1628

Consecutive patients aged 18 years or older, hospitalized for acute, symptomatic pulmonary embolism associated with acute lower-limb deep vein or superficial vein thrombosis, confirmed by means of standard objective tests, were eligible for randomization

Patients had to present at least 1 additional criterion for severity: older than 75 years, active cancer, chronic cardiac or respiratory insufficiency, ischemic stroke with leg paralysis within the last 6 months (but more than 3 days before randomization), deep vein thrombosis that involved the iliocaval segment or was bilateral, or at least 1 sign of right ventricular dysfunction or myocardial injury

18歳以上で、下肢のDVTあるいは表在静脈血栓関連の急性症候性のPEで入院になった患者。

患者は、以下の重症度項目を少なくとも一つ満たす。

・75歳以上

・担癌患者

・慢性心疾患または慢性呼吸器疾患がある

・最近6か月以内(しかしランダム化の3日以上前までに)に発症の下肢麻痺を呈する脳梗塞患者

・iliocaval segmentを含むDVT

・両側性のDVT

・右心不全の徴候が少なくとも一つあり、あるいは心筋梗塞(エコーで右室拡張や肺高血圧がある、BNP・NT-proBNP・トロポニンが上昇している)

p.1628

Patients were excluded (1) if insertion of a vena cava filter was indicated because of a transient or permanent contrain- dication to anticoagulation therapy or because recurrent thromboembolism had occurred despite adequate anticoagulant therapy, (2) if a vena cava filter had already been inserted, (3) if a thrombosis in the vena cava did not allow filter inser- tion, or (4) if full-dose anticoagulant treatment had been administered during more than 72 hours before randomization. Patients were also excluded if they had undergone noncancer surgery within the past 3 months or cancer surgery within the past 10 days.16 Other exclusion criteria were known allergy to iodinated contrast media, serum creatinine greater than 2.04 mg/dL per liter (to convert to micromoles, multiply by 88.4), life expectancy less than 6 months, and pregnancy.

除外基準

・抗凝固療法が困難、あるいは、適切な抗凝固療法にもかかわらず再発性の血栓形成がある

・すでにIVCフィルターが留置されている

血栓のためにIVCフィルター留置が困難

・ランダム化の72時間以上前にfull doseの抗凝固薬が導入されている。

  ・過去3か月以内の癌関連ではない手術あるいは10日以内の癌関連の手術を受けた人

   ・造影剤アレルギー

  ・予後6か月未満の人

   ・妊婦

Intervention and Comparison

p.1628

Patients assigned to the filter group had a retrievable vena cava filter (ALN filter, ALN Implants Chirurgicaux)19-22 in- serted within 72 hours from randomization

Patients in both study groups received full-dose anticoagulant therapy according to guidelines for at least 6 months (eMethods in Supplement 2). Continuation of anticoagula- tion thereafter was at the investigator's discretion.

Filter群: 72時間以内にretrievableな下大静脈フィルターを留置(すでに抗凝固療法を受けている人には血栓溶解後36時間以上間隔をあけてフィルターを留置)して、3か月後にフィルターは回収+ガイドラインに沿って最低6か月は抗凝固療法を継続。 

 *手技は経験のある循環器内科医または放射線科医が行う。filter留置の前後にvenographyを施行。

Control群:ガイドラインに沿って最低6か月は抗凝固療法を継続。

 

Outcome

p.1629

The primary efficacy outcome was fatal or symptomatic non- fatal pulmonary embolism recurrence at 3 months. Second- ary efficacy outcomes were fatal or nonfatal symptomatic pulmonary embolism recurrence at 6 months and new or recurrent symptomatic deep vein thrombosis at 3 and 6 months.

Primary outcome:3か月時点での致死的または症候性の致死的でないPEの再発。

Secondary outcome:6か月時点での致死的または症候性の致死的でない再発性PE、あるいは3か月時と6か月時の新規あるいは再発性のDVT。

 

Aその試験は設定された課題に答えるための研究方法がとられているか?

p.1628

We conducted a randomized, open-label, blinded end point trial

PROBE法+多施設共同研究(supplement p.16)

 

A患者はそれぞれの治療群にどのように割り付けられたか?その手法と、Table1

p.1628, p.1631 Table 1

Patients were randomized to the filter group or control group by a central, 24-hour, interactive voice response system, which ensured concealed allocation. Randomization was performed in randomly permuted blocks of 4 or 6 with stratifica- tion according to center and patient creatinine clearance

24時間のvoice response systemを使用して割り付け。Random化はblock法で、施設と患者のクレアチニンリアランスによる層別化を行っている。

Most baseline characteristics and features of the index event (Table 1), as well as antithrombotic treatments re- ceived during the study (Table 2), were well balanced be- tween the 2 groups, except that more filter-treated patients had chronic respiratory failure.

Filter群で、慢性呼吸器疾患患者がやや多い。

 

A研究対象者、現場担当者、研究解析者は目隠しされている?

P1633

Potential limitations of our study include those inherent in its open-label nature, which we tried to minimize by using a concealed randomization system and a central adjudication committee blind to treatment assignments

Open-labelなので、研究対象者・現場担当者の目隠しは不可能。研究解析者は目隠しされている。

 

A研究にエントリーした患者が適切に評価されたか? 

p.1629, Figure 1

Intention-to-treat

 

A研究対象となった介入以外は両方のグループで同じような治療がされていたか?

p.1630, Table 2

Most baseline characteristics and features of the index event (Table 1), as well as antithrombotic treatments re- ceived during the study (Table 2), were well balanced between the 2 groups, except that more filter-treated patients had chronic respiratory failure.

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Aその研究のための対象患者数は偶然の影響を小さくとどめるのに十分な数か?

p.1629

postulated a 75% reduction in risk of the primary outcome in the filter group. Based on these assumptions, a sample size of 200 patients per group had an 80% power to detect a difference between the 2 groups

各グループに200人とあり、実際にはフィルター群が193人、抗凝固療法のみ群が194人なので、ほぼ妥当な数と思われる。

 

B結果は何か?

Ba 結果はどのように示されたか? B 最も重要な結果は?

p.1630, Figure2, Table 3 

By 3 months, pulmonary embolism had recurred in 6 patients (3.0% [95% CI, 1.1% to 6.5%]) in the filter group and 3 patients (1.5% [95% CI, 0.3% to 4.3%]) in the control group (relative risk with filter, 2.00 [95% CI, 0.51 to 7.89]; P = .50) (Table 3)

No difference was observed between the 2 treatment groups with respect to deep vein thrombosis, major bleeding, or death from any cause at 3 and 6 months

Primary outcomeもsecondary outcomeも有意差なし。

 

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むしろ、3ヶ月後の肺塞栓は有意差はないが2倍になっている。

死亡率もIVC filter 群で1.3-1.4倍多い傾向(ただ有意差はない)

 

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 そしてIVCフィルターを入れたけど3ヶ月後に抜こうと思っても抜けなくなった人が11人ほどいる(IVCフィルターを抜くのは難しいらしい)

 

 

Bc    副作用はどうか?

p.1630

Among the 193 patients receiving a filter, access site hematoma occurred in 5 patients (2.6%), filter thrombosis in 3 patients (1.6%) and retrieval failure due to mechanical reasons in 11 patients (5.7%) (Figure 2). One participant experienced a cardiac arrest during filter insertion

Filter群で血腫、フィルター内の血栓、回収の失敗、フィルター挿入中の心停止あり

 

Cその結果はあなたの現場で役に立つか?

きちんとデザインされたstudy

基本的には、ワーファリンによる抗凝固療法を十分に行えばIVCフィルターは一時的であっても効果は乏しく、むしろ有害かもしれない。

さらに永久に抜けなくなるリスクも一定する存在⇒DVTのリスクがむしろ上がる可能性もあり。

なお、抗凝固療法はワーファリンを使用しているのでDOACで同様に言えるかは不明であることは注意が必要。

 

なお、Up to dateにはIVCフィルターの適応について以下のように記載有り。

Inferior vena cava (IVC) filters may be used for the treatment of venous thromboembolic disease when a patient is not a candidate for anticoagulant therapy or has failed anticoagulant therapy or in those with a limited ability to tolerate subsequent pulmonary emboli (eg, patients with acute hemodynamically massive pulmonary embolism or chronic thromboembolic pulmonary hypertension

つまり

①抗凝固が出来ない

②抗凝固療法で失敗した

③次に肺塞栓を起こすと後がない(急性の肺塞栓で血行動態が不安定 or 慢性のPEで肺高血圧)

 

今回のRCTの患者は以下のようになります。

・75歳以上

・担癌患者

・慢性心疾患または慢性呼吸器疾患がある

・最近6か月以内(しかしランダム化の3日以上前までに)に発症の下肢麻痺を呈する脳梗塞患者

・iliocaval segmentを含むDVT

・両側性のDVT

・右心不全の徴候が少なくとも一つあり、あるいは心筋梗塞(エコーで右室拡張や肺高血圧がある、BNP・NT-proBNP・トロポニンが上昇している)

 

慢性心疾患は除外されているため、例えば③の後がないというところに明らかな心機能低下というのは含まれる可能性はありますが、コントラバーシャルですね。

 

いずれにせよ、上記のような患者において一時的なIVCフィルターの効果を見たRCTなので適応には注意が必要かもしれません。

 

 

 

また以下のサイトにもまとまっています。

Appropriate Use of Inferior Vena Cava Filters - American College of Cardiology

 

Table 1: Potential Indications for Inferior Vena Cava Filter Insertion

Indication*

Societies that Support this Indication

Societies that Oppose this Indication

Comments

Acute VTE and inability to anticoagulate

ACCP,7 AHA,8 SIR,9,10 ACR11

-

-

Anticoagulation failure

AHA, SIR, ACR

-

-

Hemodynamically unstable patients, as an adjunct to anticoagulation

ACCP, SIR, AHA, ACR

-

The intent is to prevent further hemodynamic decompensation

Massive PE treated with thrombolysis or thrombectomy or during thrombo-endarterectomy

ACCP, SIR, ACR

AHA

-

Prophylaxis in high-risk populations

SIR, ACR

ACCP

Examples of high-risk populations include multi-trauma and spinal cord injury

Mobile thrombus

SIR, ACR

-

-

Iliocaval DVT

SIR, ACR

-

-

 

徳田先生カンファ@城東病院 2017228 1300-

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【症例】高齢の女性

【現病歴】季節は夏
もともと数年来の高血圧で,近医から内服薬をもらっていた,ADHの自立した認知症のない方.
受診日前日までは体調に変化なく,デイサービスに行き,食事も食べられていた.
受診日の朝から悪寒戦慄を伴う40℃の発熱と倦怠感が出現したため,家族と救急外来を受診した.
*STSTAE:sick contactなし.TB暴露なし.海外渡航歴なし.動物との接触なし.生ものの摂取なし.池,山,温泉には出かけていない.
【既往歴】HT
【内服歴】アムロジピン(5)1T
【アレルギー】なし
【社会歴】酒- 煙草- 娘夫婦と同居 夫とは死別(数年前)
【ROS】食欲低下+
Pertinent negative: 腹部症状,関節痛,筋肉痛,頭痛,嘔気,排尿時痛,排尿障害,残尿感
 
【身体所見】
やせ型,BMI 20程度
BP 140/80mmHg, P 106/min(reg), RR 24/min, T 38.5℃, SpO2 98%(RA), GCS 15
G/A: mildly sick
HEENT: 結膜蒼白なし・黄染なし・点状出血なし 扁桃咽頭に発赤なし 齲歯なし
Neck: 頚部リンパ節腫脹なし 甲状腺腫大なし・圧痛なし 項部硬直なし
Resp: 両側で清 副雑音なし
Heart: 整 S3・S4なし 2RSBに2度のSEMあり,頚部に放散,頸動脈触診で遅脈 拡張期雑音なし
Abd: 平坦,軟 腸蠕動音生理的 圧痛なし Murphy陰性 肝脾腫なし 肝叩打痛なし
Back: CVA叩打痛なし
Ext: 関節腫脹なし 浮腫なし ばち指なし 爪の線状出血なし Osler結節・Janeway結節なし
Skin: 皮疹なし 紫斑なし 鼠径・腋窩など体表のリンパ節に腫脹なし
DRE(digital rectal exam) : 施行されず 
 
徳田先生より
#ROSは主要なところを絞って聴く
  :高齢者の感染症についての統計で,多かった感染源は
    ①気道感染,②尿道感染,③胆道系感染,④skin & soft tissue.
  :それぞれについてROSを聞くならば,
    ①咳,痰,呼吸困難,②残尿感,尿の濁り,③腹痛,④皮膚の発赤,痛み,節々の痛み
 
?)鑑別診断は?
common: 気道感染,尿路感染,胆道系感染,軟部組織感染,肺炎
possible: 肝膿瘍などabscess,糞線虫症(∵沖縄で,focusのよくわからないGNR菌血症)
less likely: IE, TB,リンパ腫,IVL,消化管Caからの膿瘍形成→菌血症,血管内感染,実はHIV,よくわからないウイルス血症
 
徳田先生より
#もしwater contact+ならば,鑑別に挙げるべきものは?
  :レプトスピラ症.
    ・沖縄で米軍兵が訓練の時にかかり,流行した
    ・スピロヘータ感染症.らせん型の菌
    ・ヘリクスハイマー反応,血圧低下
      (※Jarisch-Herxheimer reaction, JHR
        :梅毒やレプトスピラ症の治療の際にペニシリンなどの抗生物質を投与した際に身体に起こる反応
        :全身の倦怠感,発熱,頭痛,悪寒,筋肉痛,頻脈,体温↑,呼吸切迫,血圧↓,一時的な病変部の悪化
        :通常は投与後1~4時間前後から始まり,24時間で軽快
        :病原の細菌が大量に死滅・破壊されて,細菌内部の毒素が血液に混入することが原因)
 
?)オーダーする検査は?
採血 CBC,LFT,BUN/Cre
血培2セット 痰培 痰G-S 尿検査 尿培 尿G-S
CXR 心エコー AUS…
 
徳田先生・本橋先生より
BUN/Creは鑑別にはあまり寄与しないがABxの容量を決める目的ならアリ
CRPで診断が左右されることはない 取らなくてよい検査の代表格 プロカルシトニンも同様
急性と慢性の区別の上でESRは考慮しても良い
 
【検査所見】
L/D: CBC: WBC 14300, Neut 90%, Hb 11.2, MCV 96, Plt 12.8
  LFT: AST/ALT/ALP/T-Bil wnl
  腎:BUN/Cre wnl
  尿: 蛋白-, 潜血-, RBC-, WBC-, 円柱- G-SしてもWBC-,細菌-
AUS:胆嚢炎-,胆管炎-
心エコー:vegetation-, AS 軽~中等度,弁石灰化+
CXR:n.p. 肺炎を疑う所見なし
造影CT:肝S6に10mm大の結節様陰影,造影されない.ring状造影効果もなし.
 
経過観察目的で入院となった.肝膿瘍を否定できなかったため
CMZを選択し治療開始.
 
翌日…
朝,意識レベル低下あり.呼びかけに対する反応が鈍い.JCS2桁.
失見当識あり.麻痺などfocalな神経学的所見なし.
 
?)何をする?
 
金光先生より
発熱+意識障害で行うべき検査は?
 → ルンバール
 
LP:細胞数0,蛋白48,糖49(BS 113),初圧11cmH2O
 
本橋先生より
なったばかりの髄膜炎は細胞数上昇しない.
 
その後検査部から連絡が入った.血培よりGPDC+!
 
?)何を疑い,何の検査をする?
  → 細菌性髄膜炎を疑い,髄液のグラム染色
 
髄液グラム染色で,白血球はみられないが,GPDCがみられた.
培養を提出し,CTX+VCMで治療開始.
 
後日血培,髄培からPRSPが生えた.
 
診断:肺炎球菌(PRSP)性髄膜炎
 
この方は肺炎球菌ワクチン(ニューモバックス)は1年前に接種済み.
しかし,今回はニューモバックスではカバーされていないserotypeの菌だったため,
感染してしまった.今これが問題になっている.
 
翌日再度LPすると…
細胞数440, 多形核白血球70%,蛋白269まで増加していた.
また,LPに再度頚部を診察すると,項部硬直がみられた.
 
?)どこから肺炎球菌が髄液内に入ったのか?
肺炎球菌はSBPを起こすこともある.おなかにも,いるにはいる.
基本的に膿瘍は作らない.
一度何らかの原因でPRSP菌血症をきたし,血流に乗って髄膜に到達したと考えるのが自然.
治療)髄膜炎には移行性のよい第三世代セフェムを用いる.(CTRX, CTX)
 
参考にすべき論文:
"Adult pneumococcal meningitis presenting with normocellular cerebrospinal fluid: two case reports" - Hiromichi Suzuki, Yasuharu Tokuda, et al

地域研修初期研修医振り返り

今日は新潟から1ヶ月短期研修に来てくれた初期研修医のS先生の振り返りでした。

城東病院総合内科で1ヶ月経験した症例についてまとめてくださりました。

S先生ありがとうございました!

 

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