コミュニティホスピタリスト@奈良 

市立奈良病院総合診療科の森川暢が管理しているブログです。GIMと家庭医療を融合させ、地域医療に貢献するコミュニティホスピタリストを目指しています!!!

壊死性軟部組織感染症における造影CTの診断特性

https://link.springer.com/article/10.1007/s00268-017-4145-x?fbclid=IwAR1ctxB9c-7mKq8xrtYgncqlSAGp8z1DICoIXmKq39gYh7rFfRUjaGkKbPk

 

 The Role of Computed Tomography in the Diagnosis of Necrotizing Soft Tissue Infections

 

・壊死性軟部組織感染症(NSTI)の診断における造影CT検査の正確な役割はまだ確立されていない。

・我々は、NSTIの臨床的疑いのある患者におけるCTの役割を探究し、NSTIに対するその感度と特異性を評価することを目的とした。

・方法、NSTIを除外するために造影CTを受けた2009年から2016年の間に入院した患者の医療記録をレビューした。

・CT所見

(a)軟部組織中のガス

(b)複数の液体貯留収集

(c)造影CTで軟部組織の造影不良or造影の不均一性

(d)筋膜下の有意な炎症性変化の場合に陽性とみなされた。

 

・NSTIは外科的探索中の壊死組織の存在によってのみ確認された。

・外科的な検索で壊死を特定できなかった場合、または手術なしで治療に成功した場合、NSTIは存在しないと見なされた。

・184人の患者のうち17人にCTで陽性所見があり、そのうち13人(76%)にNSTIが確認された。

・CTが陰性であった167人の患者のうち、38人(23%)がNSTIの臨床的な疑いが強いために外科的な検索を受けたが、全員がNSITではなかった。

・残りの129件(77%)は、症状が改善したため、手術せずに経過した。

・NSTIの同定におけるCTの感度は100%、特異度は98%、陽性適中率は76%、陰性適中率は100%であった。

(陽性尤度比:50、陰性尤度比:0)

・結論として造影CTスキャンが陰性であればNSTIの初期の疑いがある患者における外科的介入の必要性を確実に除外することができるかもしれない。

 

古典的な造影CT所見

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古典的な壊死性軟部組織感染のCT所見 ガス産生像を認める。

 

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筋膜下での炎症変化、不均一な造影所見を認める。

⇒ガスが存在しないにもかかわらず、壊死性軟部組織感染症を疑う。

 

 

ベースライン 平均51歳と比較的若い群を対象にしている

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NSTIの有無と造影CT所見の有無との対比表 造影CTで所見がなれればNSITは認めないとのこと?

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CT所見の有無による患者のベースラインの違い(大きな違いはなさそう)

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NSTIと非NSTIでも明らかなベースラインの違いはなさそう

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LRINECスコアの両郡の比較

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〇感想
もともと壊死性軟部組織感染症の診断にエコーが有用と言うのは知られていた。
深部筋膜層に対側と比べて4㎜以上の液体貯留があれば、感度88(64-99)%、特異度93(82-99)%、PPV=83(59-96)% ,NPV=95(85-99)%で壊死性筋膜炎と言える。
 
ただ実際に使用してみると判断に悩むことは多くて検者の技量に依存する傾向。
今回の論文では造影CTは陽性尤度比50、陰性尤度比0と診断的な検査であることが示唆される。
またエコーに比べれば検者の技量に依存もしにくい。
壊死性軟部組織感染を想起した場合は造影CTを施行するのはありかもしれない。