朝の画像カンファで胆嚢炎と胆管炎の違いになりました。
誤解を承知で、極論を言えば。。
胆管炎は採血+肝叩打痛で診断し、消化器内科にコンサルトする。
胆嚢炎は画像+Murphy徴候で診断し、消化器外科にコンサルトする。
という違いを原則として覚えておくと分かりやすいです。
以下、ガイドラインより
https://minds.jcqhc.or.jp/n/med/4/med0020/G0000565
急性胆管(道)炎の診断基準は以下になります。
発熱、採血、画像所見で診断するということが分かると思います。
とはいえ、γGTP≧90U/Lは総胆管結石の胆嚢炎との鑑別において陽性尤度比3.4,陰性尤度比0.19とされています。
一方で、腹部エコーの胆管炎における陰性尤度比は0.60程度ともされており、胆管炎においては採血が画像より感度は優れる傾向があると言えます。
なお、胆管炎の診断においてMurphy徴候は感度に劣る傾向があります。
肝胆道系感染症の診断においてMurphy徴候と肝叩打痛を比べると以下のような結果になります。
Murphy徴候 感度30% 特異度93% LR+4.4 LR-0.75
肝叩打痛 感度60% 特異度85% LR+4.1 LR-0.47
肝胆道系感染症のスクリーニングとしては肝叩打痛のほうが、Murphy徴候よりも優れると言えると思われます。
特に胆管炎の診断においては、肝叩打痛のほうがより感度が高い実感があります。
よって、胆管炎の診断においては発熱に加え、採血(特に、ALPとγGTPの上昇)、肝叩打痛をスクリーニングとして使用することが有用と考えます。
一方、急性胆嚢炎の診断は発熱に加えて、腹痛/Murphy徴候と画像診断で行います。
特に、腹部エコーは急性胆嚢炎の診断において極めて有用です。
腹部エコーの胆嚢炎に対する診断特性は、陽性尤度比4.3、陰性尤度比0.22とされておりまず行うべき検査として有用です。
さらに、エコーで描出した胆嚢をプローベで押すことで痛みを誘発するsonographic murphy's sign は陽性尤度比12、陰性尤度比0.15 という報告もありやはり有用であると言えます。
https://www.ajronline.org/doi/abs/10.2214/ajr.171.1.9648785
つまり、
胆管炎は採血+肝叩打痛で診断し、胆嚢炎は画像+Murphy徴候で診断するということになります。
なお、胆管炎を疑った時に画像検査をしないかというと、画像検査は行います。
画像検査にはっきりとした異常がなくても胆管炎は否定できない、つまり感度は低いのですが、画像検査で胆管の異常があれば、より胆管炎の可能性が高くなります。つまり特異度は高いと言えます。
特に総胆管結石の完全閉塞を伴う胆管炎はERCPを緊急に行う必要性があります。
逆に、胆嚢炎を疑った時も当然採血を行います。とはいえ、採血の異常がなくも胆嚢炎は否定できません。採血の異常がない胆嚢炎は、比較的経験されます。
むしろ胆道系酵素の上昇があれば胆管炎の合併を疑うので、採血は胆管炎の合併の有無を評価するのに有用と言えると思います。
なお、急性胆管炎の治療のフローチャートは以下になります。
抗菌薬は当然として、軽症例を除き基本的には胆管ドレナージを行います。つまり、消化器内科の内視鏡を用いたERCPが治療の基本になるということです。
つまり、消化器内科にコンサルトするということになります。
以下本文から引用します。
急性胆囊炎の第一選択の治療は早期または緊急胆囊摘出術で,できるだけ腹腔鏡下胆囊摘出術が望ましい。
リスクを有し早期または緊急胆囊摘出術が安全に施行できないと考えられる患者には,経皮経肝胆囊ドレナージ(percutaneous gallbladder drainage:PTGBD),経皮経肝胆囊穿刺吸引術(percutaneous transhepatic gallbladder aspiration:PTGBA),内視鏡的経鼻胆囊ドレナージ(endoscopic nasobiliary gallbladder drainage:ENGBD)を行う。
つまり、外科的な胆嚢摘出が第一選択になり、難しい場合のみ胆嚢ドレナージを行うということになります。
よって、胆嚢炎はまずは消化器外科にコンサルトすべき疾患ということになります。
つまり、
胆管炎は採血+肝叩打痛で診断し、消化器内科にコンサルトする(画像診断も補助的に有用。)
胆嚢炎は画像+Murphy徴候で診断し、消化器外科にコンサルトする(採血検査も補助的に有用。)
というのが、ひとまず臨床上の原則になると思われます。