コミュニティホスピタリスト@奈良 

市立奈良病院総合診療科の森川暢が管理しているブログです。GIMと家庭医療を融合させ、地域医療に貢献するコミュニティホスピタリストを目指しています!!!

タミフルのシステマティックレビュー Lancet

 

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http://www.thelancet.com/journals/lancet/article/PIIS0140-6736(14)62449-1/abstract

 

雛形は、以下を管理人の許可を得て使用しています。

EBM資料集−はじめてシート [The SPELL]

 

 

1.論文のPICOは何か

P  

季節性インフルエンザ

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I  

タミフル75mg×2 5日間                      

 

C   

プラセボ

 

O

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2.全ての研究を網羅的に集めようと努力したか?

①データベースは? 

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②検索語

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③どのような種類の研究を調べたか? 

RCTを集めている

 

④参考文献まで調べたか? 

はっきり記載なし。

 

⑤個々の研究者や専門家に連絡を取ったか? □

不明・

 

⑥出版されていない研究も探したか? 

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→しかしRocheの出版されていない研究を探している

 

⑦同じ研究が複数報告されていないか? 

おそらく大丈夫だが、本文中に記載なし。

 

⑧英語以外で書かれた研究も探したか? 

英語以外の研究は探していない。

 

3.全ての研究が網羅的に集められたか?

○ファンネルプロットは用いられていないが出版されてない論文も探している。

それなりに網羅的に集めている。

 

4.集められた研究は,複数の評価者によって評価されたか?

不明

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統計家に聞いているが、複数の評価者が評価したわけではなさそう。

 

5.集められた研究は,明確な基準をもって妥当性を評価されたか?

RCT、double blind  , ITT 

 

6.集められた研究の異質性 heterogeneityは検討されたか?

□異質性は検討された →用いられた統計手法は? ○ Cochran Q(カイ二乗検定) 

 

7.結果は統合されたか( Meta-analysis)?

①最終的に何件の研究が残り,採用されたか?

9件のRCT

 

②集められた研究の結果は統合されたか?

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→統合されている

 

8.結果の評価(PICO毎に評価)

●症状改善までの時間

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有意差をもってタミフルが症状改善の時間が早い(オッズ比 0.85 )

信頼区間は、1をまたいでいない。

異質性問題なし。

 

 

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有意差をもって呼吸器系の合併症は少ない(オッズ比 0.62 )

信頼区間は、1をまたいでいない。

異質性問題なし。

 

 

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なおリスクがある場合のsubgroup解析でも呼吸器合併症を防ぐ効果はあるとのこと。

 

 

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入院に関しては有意差をもって少ないとも言えない。

信頼区間も1をまたいでいる。

異質性は問題なし。

 

 

 

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悪心、嘔吐は明らかにタミフルで多い。

精神的疾患はとくに変わりない。

他は両軍で変わりはない。

 

 

 

 

9.結果をどう臨床に活かすか 

症状の改善をタミフルが1日弱早くすることは確からしい。

 

呼吸器合併症に関してはどうか

そもそもRocheという製薬会社がバックアップしている。

出版されていないデータもRocheのデータだけのよう。

さらに2人以上の解析者がいるわけではなく、各々の研究者に連絡をとったわけでもなさそう。

→製薬会社の影響が否定できない。

 

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Discussionにも呼吸器系の合併症に関しては限界があると記載。

 

そもそも、コクランレビューでは呼吸器合併症を防ぐということに関しては否定的な見解。

Tamiflu and Relenza: getting the full evidence picture | ARCHIVE

 

このレビューだけでは、リスクがない季節性インフルエンザにタミフルを呼吸器合併症予防目的に処方するとは言えないだろう。

従来通り、リスクが有る場合のみタミフルの処方を考えるというスタンスになるか。