コミュニティホスピタリスト@奈良 

市立奈良病院総合診療科の森川暢が管理しているブログです。GIMと家庭医療を融合させ、地域医療に貢献するコミュニティホスピタリストを目指しています!!!

脊椎チャンス骨折による血胸

高齢者の血胸 外傷が契機 肋骨骨折?

しかし、脊椎骨折のみ

→脊椎骨折(chance fracture )による血胸

Traumatic hemothorax due to chance fracture requiring emergency surgical management: A report of two cases

 

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・血胸は肋骨骨折によるものが多いが、脊椎骨折のみで発症することがあり、対応が遅れることがある

 

症例1


                        形

・81歳の男性が屋根から転倒し、背外側胸痛があり搬送

・肋骨骨折や肺損傷はなし

・入院後、突然ショックを起こし、血圧が低下し血胸となった

・胸腔チューブを挿入し、合計1330mLの血性胸水を排出。

・緊急手術で右側開胸術が行われ血腫が除去

→Chance fracture(Th7)と診断 骨ワックスで止血し、脊椎固定術を翌日に実施

 

 

症例2

・83歳女性が転倒し救急搬送、背部痛あり。

・L1にchance型骨折を認めたが胸水腹水は当初なし。

・入院し、脊椎固定術を選択したが、2日後、容態が急変しショック状態となった。

・右側血胸とL1椎体周囲に大きな血腫を認め、大動脈損傷による出血が疑われた。

・輸血によりバイタルサインが改善し大動脈造影を行ったところ、第1腰椎動脈から造影剤の滲出を認めたため、TAEで止血。

・血性胸水2000mLをドレナージ

・臨床状態は改善したが、1000mLの血性胸水が排液された。

・同日,脊椎固定術を施行しその後,胸腔鏡視下手術を施行

・右側胸腔鏡下にて中等量の血胸を認めたが,肋間血管の損傷はなかった

・横隔膜損傷があったが修復され、その後は悪化なし。


                        figure

 

 

今までのまとめ 脊椎骨折による外傷性血胸のまとめ

 

 

 

・軽度の椎体骨折では致命的な血胸は起こりにくい

・しかし、転位を伴う重度の椎体骨折では、骨折が直接胸膜を損傷し、胸腔内に出血をきたすことある。

・腰部動脈も血胸の原因となる

・脊椎チャンス骨折椎体の構成要素を横断する骨折で、激しい交通事故後など多発外傷の場合に多く発生

 

Table

 

・チャンス骨折のみで血胸が生じたという報告は少ない

・特に高齢者では脊椎周囲の組織も脆弱化する傾向があり、骨折による偏位のリスクが有り、出血を引き起こす可能性がある。

→高齢者では脊椎骨折による血胸が発生しやすい

・止血と同時に脊椎の固定も重要である

 

 

○外傷診療のお供に以下の本がお勧めです。