Case 20-2018: A 64-Year-Old Man with Fever, Arthralgias, and Testicular Pain
症例は64歳の男性で、2週間の経過の発熱、悪寒、関節痛、腹痛、精巣痛、白血球増加で入院した。
25年前に中国で肺結核と診断され、14か月にわたる4剤併用療法で治療後である
23年前に米国に来たが、その時点での喀痰のTbの検査は陰性であった。
12年前にE型肝炎の既往歴があった。
現在の入院3年前に、患者は慢性咳嗽を認めた。胸部のX線撮影で右肺尖部に結節影が認められた。胸部のCTによるフォローアップ検査では、右頂点の石灰化肉芽腫と気管支拡張症が明らかになり、CTによる年1回のフォローになった。
現在の入院の14日前に、食欲不振および倦怠感を認め、背部の痛みとこわばりを認めた。 6日後、のプライマリケア医が患者を診察した。彼は先行する外傷はなく、体温は37.0℃であった。
両側の傍脊柱起立筋に圧痛を認めた
神経学的所見は問題なかった
腰椎のX線では椎間板の変性のみであり、イブプロフェンで経過を診ることになった。
その後、体温は38.9℃に達した。発熱、悪寒、寝汗、戦慄が持続し、歩行を損なうほど重度の背部の筋肉痛みも認めた。イブプロフェンは、熱および筋肉痛を一時的に軽減するのみであった
中国の伝統的な医師で治療を受けたが効果はなかった。
その後、精巣の腫大と痛みが出現したため、再度プライマリケア医を受診した。
排尿障害、血尿、リンパ節腫脹、頭痛、頸部硬直、発疹は認めなかった。
左睾丸の腫脹を認めた
バベシア、エーリキア、アナプラズマ、ライム病の核酸増幅試験は陰性であった。
陰嚢の超音波検査では、両方の精巣は正常な構造であり、ドップラーも問題はなかった。嚢胞を認めるのみであった。
胸部画像評価で結節影は著変なかったが、肺底部に新たな陰影を認めた。
レボフロキサシンの7日間コースが処方されたが、発熱が再燃し(39.0℃まで)、寒気、食欲不振、筋肉痛および関節痛は継続した。
筋肉痛と関節痛は悪化し、さらに腹痛も認めるようになった。血便はなかった。
体重も1kg減少した。
患者は、運動に関連していない鋭い胸の痛みと、薄い白い痰を伴う慢性の咳を認めた。
視力低下はないものの、2日前から左目の視界が不鮮明になっていた。
頭痛、顎はこう、他の関節痛、皮疹は認めなかった。
シックコンタクトなし
タバコは吸うものの、非合法薬物の使用はなかった。
バイタルサイン
the temperature was 37.8°C
and then rose to 38.3°C, the blood pressure
126/64 mm Hg, the heart rate 74 beats per minute,
the respiratory rate 18 breaths per minute,
and the oxygen saturation 97% while the patient
was breathing ambient air.
黄染はなく、口腔咽頭には紅斑、滲出液、潰瘍を認めなかった。
首の動きに問題はなく、脊柱と傍脊柱にも問題はなかった。
子宮鼠径または腋窩リンパ節腫脹はなかった。
肺底部にわずかなラ音を認めた。
心雑音なし 腹部所見問題なし
関節腫脹や皮疹なし
胸部CTでは胸水を認めるが、他非特異的な所見のみ。
胸水も漏出性で特記事項なし。
レボフロキサシンからドキシサイクリンに変更したが解熱しない
採血データ
●追加検査
入院後7日目から左睾丸の腫脹が再燃し、熱も40度近くに上昇した
以下エコー所見
⇒腫瘤などなし 血管増生を示唆するドプラー像
●陰嚢痛の鑑別
・感染症
淋菌やクラミジアなどの性感染症や、腸内細菌による感染が考えられるが、前者のPCR陰性で尿検査や尿培養の異常がないことから否定的。
ブルセラも暴露歴もなく可能性は低い
ムンプスも鑑別だが、抗体陰性で耳下腺も腫れてない
結核も鑑別に挙がるが、肺結核の所見に乏しく結核の原発巣が精巣というのは珍しい。とはいえ、生検で確認する必要がある。
・血管炎
感染症とメカニカルな原因が除外できれば血管炎の可能性が最も高い。
血管炎は大血管炎、中血管炎、小血管炎で分類。
高齢者であればGCAを考えるが、精巣の血管は大血管ではないので、大血管炎の可能性は低い。
成人の血管炎で精巣を侵すのは、中血管炎であるPNが多い。
しかし、小血管炎でも精巣の症状は起こる。
IgA血管炎でも精巣の症状は起こりうり、成人より小児で多い。
しかし、紫斑がない点よりIgA血管炎の可能性は下がる。成人のIgA血管炎では96%に紫斑を認めるという報告もある。
とはいえ、どんな小血管炎も中血管炎も精巣の症状を認めうる。
クリオグロブリン、リウマチ因子、C4低下が認めないことより、クリオグロブリン血管炎の可能性は下がる。
ANCAは陰性だがANCAの感度は、侵される臓器によって違ってくる。
今回は、腎機能が軽度悪化しており、尿潜血もあるので腎臓が侵されることが示唆。
⇒多発血管炎性肉芽腫症なら感度90%、顕微鏡的多発血管炎なら感度70%程度と想定されるため、ANCA陰性であれば可能性は下がる
アレルギー性肉芽腫性血管炎は感度50%程度であり、可能性を下げれない
肺に関しては、小血管炎では肺実質が侵され、毛細血管が侵されることで肺胞出血をきたしうる。
中血管炎では、肺胞実質はスペアされる。
この症例では結節は認めるが、以前と変化がなく、症状も乏しいことから肺の浸潤がないと考えられる。
そのため、アレルギー性肉芽腫性血管炎やグットパスチャーの可能性は下がる。
肺が侵されていないことを考えれば、PNが最も考えられる診断である。
HBVはPNと関連が深いが、今回はHBV-DNAは陰性であり可能性は低い。
今後、免疫抑制をすることを考えても、速やかに生検を行う必要がある。
●臨床診断
PN:結節性多発動脈炎
側頭動脈の生検
⇒GCAは完全に否定しきれない。
⇒小~中血管に炎症を認めるので、PNに矛盾しない。
●経過
PNと診断。
重症のPNならステロイド+ (リツキシマブorシクロホスファミド)が推奨
副作用の観点からはリツキシマブが好まれる。
ただし、HBS抗体が陽性であり、B型肝炎のリスクが高い。B型肝炎のDNAフォローか予防投与が必要。
その後、PRESを発症したが、降圧と抗てんかん薬で改善。
リツキシマブは原因かもしれないとして、一時的に中止。
その後、再発なく、再度リツキシマブを導入して経過した。。