総合診療と多様性と進化
先日、この本を読んだ。
とても、面白かった。
https://bookclub.kodansha.co.jp/product?item=0000337887
進化についての多種多様なエピソードがあり面白かった。
詳細は触れないが、生物進化とそれの研究にかける情熱を感じ取れた名著だった。
お勧めである。
ところで。。
生物進化を考えるうえで「多様性」という言葉がキーワードになりそうだ。
効率性やアウトプットを求めるという意味では、なにかの能力に特化したほうが有利かもしれない。
ハチドリが花の蜜を吸うために嘴を細長くするというのは特化した結果だろう。
現代社会であれば頭の回転が速くそつなくなんでもこなす人間が重宝されるのとアナロジーかもしれない。
ただし、環境が変化した場合にある環境に特化した個体は別の環境に適応できないかもしれない。
そこで重要なのが多様性で、ある環境ではマイナーでしかなかった個性が別の環境ではメジャーになるかもしれない。
変化すること自体が重要ではなく、おそらくバッファーとしての多様性があることで柔軟に集団を維持できるのだろう。
総合診療の未来を考えるうえでも「多様性」という言葉は重要かもしれないと思った。
もちろん、環境に適応するためにある個性を伸ばすことは重要だ。
現状では内科との差別化という意味でジェネラリズム/家庭医療を重要視することが確かに重要だと感じる。
学問的基盤の確立という意味では確かに、芯となる部分が必要だ。
ただし、今後目覚ましく環境が変わることが予想される未来においては、それと同じ程度に多様性が大切かもしれない。
家庭医療だけではなく、救急や集中治療、あるいは感染症や膠原病、臨床推論だけでなく、リハビリや老年医学、緩和ケアなど。
神経内科や循環器内科などの臓器別内科を得意とした人がいても良い。
多種多様な強みを持った人材が業界にいる「多様性」が実は重要かもしれない。
その意味で新専門医制度の総合診療プログラムには一定の意味があるかもしれないとも感じる。
もちろん、多様性を重要視するあまり差別化が出来なくなるというリスクもあるが、要はバランスの問題だろう。
ごちゃごちゃ、ややこしいことを考えたが、この本はひとまずお勧め。
冒頭で著者も言及しているように、すぐ役に立たない内容である点がまた素晴らしい。
〇追記
AIが台頭して医師が余る近未来に備えて、次を見据えてもよいかもしれない。
おそらく、1人の医師のなかにも多種多能な能力を持つ必要か、限りなく何かに特化するかが必要になる。
後者は限られた人にしか難しいだろう。
医療に限らず多種多能な領域をまたいだ能力がある医師が生き残るのではないか。
若い医師に総合診療を勧めたい理由は、実はそんなところにもある。
別にどの領域とはいわないが、あまりにも狭い領域を選ぶ場合は、それ相応の覚悟が必要になることは付け加えたい。
つまりQOL重視だけでは失業する時代になるということでもある。
21世紀の環境変化の激しさは予想を超えるからこその、多様性なのである。