コミュニティホスピタリスト@奈良 

市立奈良病院総合診療科の森川暢が管理しているブログです。GIMと家庭医療を融合させ、地域医療に貢献するコミュニティホスピタリストを目指しています!!!

高齢者外傷の入院死亡率の予測因子としての救急車到着時と病院到着時のバイタルの差

京城東病院時代の同僚の鎌田先生の論文。

非常に臨床的で現場に役立つ論文。

N数も多い。

こういう臨床研究は本当に大切

尊敬っす。

ORはありませんが、感度特異度が分かれば陽性尤度比と陰性尤度比も分かるので、実践では使いやすいですね。

 

https://journals.lww.com/md-journal/Fulltext/2020/06190/Dynamic_vital_signs_may_predict_in_hospital.65.aspx?fbclid=IwAR2PjpoWUy5SKOht6yDLjEd6lvwx2s0jtY6UZ-fi_wuOyGNLoHBC5MRVhnY

 

日本の外傷のnationalデータを使った後ろ向き大規模観察研究

2004-2015年のデータを使用した

 

バイタルサインの変動の定義は以下

要は、救急隊到着時に比べて、病着時にバイタルが悪化していたらスコアが加算される仕組み。

血圧、脈拍、呼吸数をスコアリング

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28860人のデータ!

平均年齢83人 92%は救急車 交通外傷や転倒が90%以上を占める

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〇結果

バイタルサインが悪化する程死亡率も高い傾向

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スコアが高くなればなるほど死亡率も上がる傾向

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カットオフを≥1とするとLR+1.78 LR-0.805

カットオフを≥2とするとLR+3.9     LR-0.95

カットオフを≥3とするとLR+5       LR-0.99 

 

否定には使えない印象ですが、救急隊接触時と比べて病着時にバイタルが悪化している高齢者の外傷は死亡率が高いと身構えるべしとは言えるかもしれません。

 

本文中にもセレクションバイアスの影響や、ベースラインの既往や薬剤の影響などの検討がされていないことも述べられています。

何らかの交絡因子は否定しきれないものの、実臨床にも応用可能そうですね。。