コミュニティホスピタリスト@奈良 

市立奈良病院総合診療科の森川暢が管理しているブログです。GIMと家庭医療を融合させ、地域医療に貢献するコミュニティホスピタリストを目指しています!!!

臓器障害のないANCA関連血管炎におけるMTXと経口シクロホスファミドの比較

Randomized Trial of Cyclophosphamide Versus Methotrexate
for Induction of Remission in Early Systemic
Antineutrophil Cytoplasmic Antibody–Associated Vasculitis
 
P
inclusion 
新規の診断されたMPA or GPA (ESR45mm/h  and/or  CRP2倍以上  or  ANCA陽性 
or  腎臓以外の生検で好中球浸潤に加えて巨細胞・類上皮細胞肉芽腫・壊死性小血管炎がみられる)
 
exclusion
・臓器障害、生命を脅かすほどの病勢
Cr1.7mg/dL以上、あるいは赤血球円柱の出現・タンパク尿>1.0mg/day
・皮膚所見のみ
・他の自己免疫性疾患の存在
・悪性腫瘍
HBVあるいはHIV感染
 
I
MTX経口を15mg/weekから始め12週間で20-25mg/weekまで増量
10ヶ月継続し、12ヶ月までに漸減・中止
 
C
CYC経口を2mg/kg/day (max 150mg/day) 寛解まで使用、3-6ヶ月
WBC4000/μL になったら(白血球減少)60歳以上は25mg/dayまで減量
寛解期には10ヶ月目まで1.5mg/kg/dayまで減量、12ヶ月目までに漸減・中止
 
両者とも、PSL1mg/kg/dayを使用、12週に15mg/day6ヶ月で7.5mg/dayまで減量、12ヶ月で中止
消化管障害、真菌感染症、ニューモシスティス肺炎、骨粗鬆症の予防はoptional
 
O
Primary  6ヶ月以内での寛解の達成
Secondary 再発までの時間、副作用
Surrogate BVAS, DEI, VDI, SF-36のスコアリング, CRP, ESR, WBC, PSLの総量
 
ランダム化されている
ベースラインも同等

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研究対象となった介入以外は両方のグループで同じような治療がされていそう。 
●ブラインドではない ただアウトカムは医師の主観に影響されにく 
●ITT解析である

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●サンプルサイズは足りている
 
結果は?
〇Primary
MTX groupでは44/49  89.8%
CYC groupでは43/46  93.5%寛解 →非劣勢 (P=0.041)
MTXでは後に2寛解
広範な症状を示す(活動性が高い)患者や、肺病変のある患者では寛解にかかる時間が優位に長かった
 

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〇Secondary
MTX groupでは32/46   69.5%
CYC groupでは 20/43  46.5%が再発
CYCの方が再発までの時間は長かった

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 副作用は? 上記 
副作用は51/95 で発生 
MTX groupでは肝機能障害が多く、CYC groupでは白血球減少が多かった
ステロイドの総量はMTX groupが有意に多かった
 
臨床にこの結果はどのように応用できるか? 
非劣性試験でありMTXは経口シクロホスファミドと同等とまでは言えない。
ただMTXを12か月で中止しているしPSLの減量スピードも速め。
実際に再発も12か月以降に多い。
また肺病変があればMTXは通常、使用を控えるような。
MTXにやや不利な条件になっている印象。
また経口シクロホスファミドと比較しているが標準治療のIVCYと比較してどうかも気になる。
ただMTXは日本の使用量より本試験では多め
現実的にはMTXは16㎎/weekを使用することになるか
ただ、 条件が揃えばMTXは使用可能な印象か
とはいえMTX使用する場合はPSLの漸減は急がずMTXの中止も焦らずというのが大切かもしれない。。