痛風に関する推奨 2016 updated EULAR evidence-based recommendations for the management of gout
痛風に関してEULARの推奨を復習しました。
この分野は、まだエビデンスが不十分なんだなと改めて思いました。
治療について、以下の推奨がされています。
まずそもそも論として尿酸値の管理は痛風結晶を抑制し痛風発作を抑えることで、QOL向上や関節の破壊の抑制を目指すことが、目的かと思われます。
尿酸値が高いというだけでは、尿酸治療薬は推奨されません。
○一般的な原則
・ 痛風患者は、病気の病態生理、効果的な治療法の存在、関連する併存疾患、および急性発作を管理し、生涯にわたって尿酸レベルを目標レベルより低くすることによって尿酸結晶を排除する原則について十分に知らされるべきです。
・痛風患者は、ライフスタイルに関するアドバイスを受ける必要があります。減量し、アルコール(特にビール)や砂糖入りの飲み物、過食、肉や魚介類の過剰摂取を避けます。低脂肪乳製品を奨励する必要があります。定期的な運動をお勧めします。
・ 痛風患者は、腎機能障害、冠状動脈性心臓病、心不全、脳卒中、末梢動脈疾患、肥満、高脂血症、高血圧、糖尿病、喫煙など、関連する併存疾患と心血管危険因子について体系的にスクリーニングする必要があります。
⇒痛風患者は基本的には糖尿病や脂質異常症などの生活習慣病を合併するため、そらの治療を一緒に行うことが重要ですね。
余談ですがロサルタンは尿酸降下作用もあるため、高血圧やCKDの合併例で尿酸値が高い症例には考慮する必要がありますね。
生活習慣で気をつける点として肉類を控えて、野菜を多めに食べる、運動をするという指導に関しては他の脂質異常症と共通していますね。
特に尿酸値という点ではレバーや魚卵も要注意ですね。
11の推奨事項の最終セット
1 痛風発作は、できるだけ早く治療する必要があります。十分な情報に基づいた患者は、最初の警告症状でセルフメディケーションを行うように教育する必要があります。薬剤の選択は、禁忌の存在、患者の以前の治療経験、発赤後の開始時間、および関与する関節の数と種類に基づいて行う必要があります。
⇒発作が起こったら患者さんもわかるのですぐにNSAIDSを飲むように指導することも重要かもしれません。
2 急性発作の推奨される第一選択の選択肢は、NSAIDS±PPI コルヒチン1mg⇒1時間後にコルヒチン0.5mg 、経口プレドニン( 0.5mg/kg /day or 30〜35mg /dayを3〜5日間)またはステロイドの関節注
重度の腎機能障害のある患者では、コルヒチンとNSAIDを避ける必要がある。
コルヒチンは、シクロスポリンやクラリスロマイシンなどのCYP3A4阻害剤を投与されている患者には投与しない
⇒基本的にはNSAIDSが第1選択ですね。腎機能が正常ならロキソニン3錠分とかが標準ですが、腎機能が正常でかつ炎症を確実に抑えたい場合は、ナイキサン600mg/日を分3で使うこともありますね。
腎機能が悪くても経験的にはロキソニンを減量して短期間で使用することもあります。
プレドニンの内服は可能なら避けたい(治療的診断という意味でも)ですが、どうしても使うなら0.5mg/kg/dayを短期間ですね。
3 頻繁な発作とコルヒチン、NSAID、およびコルチコステロイド(経口および注射可能)の禁忌のある患者では、フレアの治療にIL-1ブロッカーを検討する必要があります。
⇒これは保険適応外ですし、日本では現実的ではないですね。。
4 発作の予防については、十分に説明し、患者と話し合う必要があります。最初の6か月間は予防投与が推奨されます。推奨される予防的治療はコルヒチン、0.5〜1 mg /日であり、腎機能障害のある患者では減量する必要があります。腎機能障害またはスタチン治療の場合、患者および医師は、予防的コルヒチンによる潜在的な神経毒性および筋毒性に注意する必要がありますが、CYP3A4阻害剤などとの相互作用に注意。コルヒチンが難しい場合、低用量のNSAIDによる予防を検討する必要があります。
⇒新たに尿酸降下薬を開始する際に予防的にコルヒチンを投与することも考慮されます。ただ慎重に尿酸降下薬を増量すれば発作は起きにくいため個別に考慮する必要があるかもしれません。重度の痛風(痛風結節、慢性関節症、頻繁な発作)ではコルヒチンでの予防が基本的には必要であると考えます。
5 尿酸降下薬は、痛風と明確に診断されたすべての患者と検討し、話し合う必要があります。尿酸降下薬は、再発性の発作、痛風結節、尿酸関節症、腎結石のあるすべての患者で必要となる
尿酸降下薬は、若い年齢(<40歳)または非常に高い尿酸レベル(> 8.0 mg / dL)または併存疾患(腎機能障害)を呈する患者のでも考慮される
⇒他には、尿酸降下薬は、心血管リスクが高い場合も考慮して良いとなっています。
日本のガイドラインでは尿酸値が8を超えば治療となっていますね。。
初発痛風発作の場合でも治療を推奨する流れになってきているようです。
また、最近の流れとしては痛風発作の初期から尿酸降下薬はNSAIDSなどをしっかり投与していれば、投与しても良いということになっています。
ただ、本文には以下のような記載があります。
Finally, the task force did not give specific guidance on whether urate-lowering drugs should be initiated during a flare or whether a traditional 2 weeks delay from flare termination should be observed. Two small trials have suggested that allopurinol initiation during an acute gout attack did not prolong the duration of flares nor worsen its severity as compared with delayed initiation.130 ,131 However, the task force considered that the low number of patients (n=51 and n=31, respectively) in these trials precluded any firm conclusions and that data obtained with allopurinol 200–300 mg could not be generalised to more potent urate-lowering drugs, such as febuxostat or a combination of XOI and an uricosuric.
よって、ある程度発作の炎症が落ち着いてから尿酸降下薬を開始くらいでも良いかもしれないと感じます。少なくとも発作の極期にわざわざ始めなくてもよいかと。
6 血中尿酸レベルをモニター、<6 mg / dLに維持する必要があります。重度の痛風(痛風結節、慢性関節症、頻繁な発作)の患者には、結晶が完全に溶解して痛風が解消するまで、結晶の溶解を促進するための低い尿酸値(<5 mg / dL)が推奨されます。尿酸値<3mg / dLは長期的には推奨されません。
⇒このあたりはtarget to treatの概念であり、関節リウマチなどに近いかもしれません。つまり尿酸値を低い状態を維持することで痛風結節を溶解させ、それにより関節症状の悪化を防ぐというイメージだと思われます。
7 すべての尿酸降下薬は低用量で開始し、目標に到達するまで漸増する必要があります。尿酸値 <6 mg / dLを生涯維持する必要があります。
尿酸値を維持することで尿酸結晶があらたに生成されないようにします。基本的には尿酸降下薬は副作用がなければ維持することが重要になります。中止すると再度、フレアしてしまうからです。
8 腎機能が正常な患者では、アロプリノールが推奨され、低用量(100 mg /日)から開始し、必要に応じて2〜4週間ごとに100 mgずつ増やして、目標を達成します。適切な用量のアロプリノールで尿酸値の目標を達成できない場合は、アロプリノールをフェブキソスタットまたは尿酸排泄薬に切り替えるか、尿酸排泄薬と組み合わせる必要があります。アロプリノールが許容できない場合は、フェブキソスタットまたは尿酸排泄促進薬も適応となります。
⇒基本的にはアロプリノールが第1選択ですね。
Cardiovascular Safety of Febuxostat or Allopurinol in Patients with Gout
上記のRCTでフェブキソスタットは死亡率を上昇させることが示唆されており、基本的には腎機能が正常なら避けたほうがよいでしょう。
ただより最新のRCTでは心血管リスクを上げないという報告もあります。
基本的にはアロプリノールを優先するが、腎不全などで目標値を達成できない場合はフェブキソスタットになりますね。
9 腎機能障害のある患者では、アロプリノールの最大投与量をクレアチニンクリアランスに合わせて調整する必要があります。この用量で尿酸の目標を達成できない場合は、推定糸球体濾過量が30 mL / min未満の患者を除き、患者をフェブキソスタットに切り替えるか、アロプリノールの有無にかかわらずベンズブロマロンを投与する必要があります。
⇒アロプリノールの腎機能調整は以下の通り
なおアロプリノールの投与量は上記の通りなので、腎不全があると目標値を達成できないことも多いように感じます。
アロプリノールにベンズブロマロンなどの尿酸排泄促進薬を少量併用してもよいですが、肝障害には注意が必要です。
10 結晶が証明された重度の慢性痛風患者および生活の質の低下を伴う患者では、最大投与量(組み合わせを含む)で他の利用可能な薬剤で尿酸値の目標を達成できない場合、ペグロティカーゼが適応となります。
⇒日本では適応がありませんね。。現実的にはなんとか(アロプリノールorフェブキスタット)+尿酸排泄薬+生活指導で乗り切るしかありませんね。
11 利尿薬を投与されている患者に痛風が発生した場合は、可能であれば変更してください。高血圧症の場合は、ロサルタンまたはカルシウムチャネル遮断薬を検討してください。高脂血症の場合は、スタチンまたはフェノフィブラートを検討してください。
⇒ロサルタンは尿酸を下げる作用があるため有効な手段ですね。ただ、知りませんでしたが普通にCCBを使用しても良いようです。脂質異常症に関しては薬物適応があれば、スタチンがよいかと思われます。
なお、日本のガイドラインもあるためこちらもチェックですね。
リウマチ膠原病に関しては以下の書籍がお勧めです。