small intestinal bacterial overgrowth syndrome (SIBO) のレビュー
胃切除後の吸収不良症候群の方がいたので、少し古いのですがレビューを読んでみました。
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC2890937/
SIBOは本来はいるはずのない小腸などに嫌気性菌が異常増殖することで健康上の不利益をきたす疾患。
SIBOは、小腸における細菌数の増加および/または異常な細菌の存在を特徴とする非常にヘテロな症候群である。
ほとんどの著者は、SIBOの診断は10の5乗以上の細菌数を持って診断的であると考えてる。 1mlの近位空腸吸引液では通常の値は10の4乗 CFU / mL以下。
SIBOはしばしば、診断されないことも多い。
高齢者のラクトースの吸収障害では90%でSIBOを認めた
肥満患者のほうがSIBOが多い。
炎症性腸疾患との関連性もある。
SIBOの病因は多岐に渡り複雑である。
菌への防御機構や、解剖学的問題、腸管蠕動の問題など。
高齢者では腸管の異常を伴わずにSIBOを発症することも。
PPIなどの胃酸抑制剤の使用はSIBOの原因になる!
膵臓の外分泌障害もSIBOの原因になる。
慢性膵炎の30-40%がSIBOを合併することも。
嚢胞性繊維症もSIOBのリスク。
免疫不全症もSIBOのリスクになる。HIVやIgA欠損など。
小腸閉塞、小腸の停滞、過敏性腸症候群、セリアック病、クローン病、短腸症候群などの腸管疾患や腸管の異常はSIBOのリスク。
*おそらく、胃切除後もSIBOのリスク。
非アルコール性肝炎、肝硬変などの肝疾患もSIBOのリスク。
他には、強皮症、糖尿病による自律神経障害、放射線性腸炎、線維筋痛症、リンパ増殖性疾患などもリスクになる。
SIBOのクライテリアを満たした場合の原因菌種は以下の通り
141 micro-aerophilic strains (Streptococcus 60%, Escherichia coli 36%, Staphylococcus 13%, Klebsiella 11% and others) and 117 anaerobes (Bacteroides 39%, Lactobacillus 25%, Clostridium 20% and others)
SIBOは消化不良と吸収障害を合併する
蛋白漏出性胃腸症やビタミンB12不足も引き起こす。
腸管内のアンモニアの生産も増加
D-乳酸アシドーシスや、内因性細菌性ペプチドグリカンの増加も。
エタノールを産生する場合も。
SIBOは腸管機能だけでなく、小腸の解剖学的な異常にもつながる
症状は、膨満感、鼓腸、腹部不快感、下痢、腹痛など非特異的。
⇒進行すると脂肪便、体重減少、低栄養
ビタミンB12欠乏は合併しやすいが葉酸欠乏は稀。
合併症としてD-乳酸アシドーシスも有名。重症例では、混迷や脳症、記憶障害など。
D-乳酸は人体では通常合成されない。
原因不明の乳酸アシドーシスは疑うきっかけに。
D-乳酸アシドーシスの治療は、metronidazole, rifaximiなどの経口抗菌薬。
予防は、単糖制限と高脂肪食、多糖の摂取。
診断のゴールドスタンダードは空腸の腸液の採取とその細菌学的調査⇒細菌数の評価。
空腸の細菌数>10の5乗 がスタンダード。 Up to Dateでは空腸の細菌数>10の3乗を使用する。
ただし侵襲的な検査になる。
十二指腸液も本来は菌がいないはずなので、使える??。
非侵襲的な検査としては、呼気中水素ガス測定法が挙げられる。
以下の会社で出来るとのことだが、保険適応外。。http://www.breathlab.jp/02/02080.html
水素呼気検査は、メタン呼気検査と比較して、SIBOの診断に対してより正確であると考えられている
グルコース投与後:感度62.5%、特異度82%
ラクツロース投与後:感度52%、特異度86%
ただ、呼気試験も解釈が時に難しい。
これらの検査が難しい場合はリファミキシンによる治療的診断(7-10日)により症状が改善するかを試みるが、絶対的な診断基準ではない。
細菌の増殖と症状は必ずしもリンクしているわけではない。
〇治療
第1選択はリファキシミンの7-10日の治療が効果がある。(日本では肝性脳症にのみ適応あり)
高容量(1200 or 1600 mg/d) は低用量 (600 or 800 mg/d)よりも効果がある。
日本なら、リファキシミンとして1回400mg 1日3回が保険適応で1200mg/d 換算
メタン産生が有意のSIBOではリファキシミンにネオマイシンを併用するというエキスパートオピニオンも(Up to Dateより)
Up to Dateのレジメンより
Antibiotic | Adult dose | Pediatric dose* | Notes |
Single-agent regimens (7 to 10 days)¶ | |||
Amoxicillin-clavulanate | 500 mg three times per day[1] or 875 mg twice per day | 25 mg/kg per day (amoxicillin component) in two or three divided doses | |
Norfloxacin (no longer available in United States)Δ | 400 mg twice per day[1] | Not adequately evaluated | Not recommended in children, older adults, pregnancy, patients at risk for tendinopathy or abnormal cardiac rhythmΔ |
Rifaximin | 550 mg three times per day[2] |
Children ≥12 years: Refer to adult dosing Children 3 to 11 years: 200 mg three times per day[3] |
Less clinical resistance observed relative to other choices Low systemic exposure |
Combination regimens (7 to 10 days)¶ | |||
Metronidazole with a cephalosporin |
Metronidazole 500 mg three times per day; plus Cephalexin 500 mg three or four times per day |
Metronidazole 20 mg/kg per day in two or three divided doses; plus Cephalexin 30 mg/kg per day in three or four divided doses |
|
Metronidazole with trimethoprim-sulfamethoxazole (co-trimoxazole) |
Metronidazole 500 mg three times per day; plus Trimethoprim-sulfamethoxazole 1 double-strength tablet twice per day◊ |
Metronidazole 20 mg/kg per day in two or three divided doses; plus Trimethoprim-sulfamethoxazole 10 to 12 mg/kg per day (trimethoprim component) in two divided doses[4] |
Rare serious cutaneous allergic reactions |