GLP-1製剤 ビクトーザの効果 RCT NEJM 2016
Liraglutide and Cardiovascular Outcomes in Type 2 Diabetes N Engl J Med 2016;375:311-22
Novo Nordiskがスポンサーの研究。著者もCOIあり。
A この試験の結果は信頼できるか
①その試験は焦点が明確な課題設定がされているか
P
Inclusion
A1c7以上の2型糖尿病患者で、治療はあってもなくてもよい(DPP4、GLP1は×)。cardiovascular diseaseの有無によってinclusionされる年齢等が違う。
Exclusion
2週間のプラセボrun in phaseで手技やコンプライアンスが問題ない患者を、2群に割り付けた
I
Liragrutide 6.0mg/mlで3ml入ったペン型のインジェクターを使用する
1日1回、腹部か上腕か大腿に皮下注射する
Liragrutideとして 0.6mg/dayを1週おきに1.8mgまで増量する
C
同型のインジェクターを使用して、生食をliragrutideを注射する分と同じ量だけ1日1回皮下注射する。1週間おきに増量する
A1cはいずれの群も最初の3か月とその後は6か月おきに測定され、A1c7.0以上または個別の管理目標に達していない場合には医師の判断で治療薬が追加された
O
P313 Outcome
The primary composite outcome in the time-to event analysis was the first occurrence of death from cardiovascular causes, nonfatal (including silent) myocardial infarction, or nonfatal stroke.
血液検査、尿検査、心電図を定期的に検査してフォローする。(protocolに記載あり)
A②その試験は設定された課題に答えるための研究方法がとられているか?
P312 Trial Design and Oversight
・multicenter, double-blind,placebo-controlled trial at 410 sites in 32 countries.
・Patients with type 2 diabetes who were at high risk for cardiovascular disease were randomly assigned, in a 1:1 ratio,to receive liraglutide or placebo
A③ 患者はそれぞれの治療群にどのように割り付けられたか?
・本文中には記載なし
・underwent randomization, which was carried out for all subjects using the interactive voice/web response system. (文献9;Design of the liraglutide effect and action in diabetes: Evaluation of cardiovascular outcome results (LEADER) trialより)
・Back ground:appendixより
両群で明らかな差はない
A④研究対象者、現場担当者、研究解析者は目隠しされている?
解析はNovo Nordisk社が行っているが、目隠しはされている(protocolに記載有)
A⑤研究にエントリーした研究者が適切に評価されたか?
Intention to treatとprotocolに記載あり
脱落郡も適切にフォローアップしている
A⑥研究対象となった介入以外は両方のグループで同じような治療がされていたか?
ベースラインでは経口血糖降下薬、インスリン、その他の内服とも両群で差はない。Placebo群で利尿剤、糖尿病治療薬の追加が多い
⇒特にプラセボ郡は割り付け後からインスリンが導入される患者が多い!!
Appendixより
A⑦その研究のための対象患者数は偶然の影響を小さくとどめるのに十分な数か?
・primary outcomeの年間発生率を両群とも1.8%/年
・フォローアップ期間を1.5年~最大5年
・脱落が10%
・非劣性マージン1.3
として8754名が対象となれば90%の検出力を持つ
⇒サンプル数は十分である
B結果は何か?
B⑧a 結果はどのように示されたか?
・A1cは0.4くらいしか変わらない
・体重は増えにくい
b 有意差はあるか?
p314 CARDIOVASCULAR OUTCOMES
The primary composite outcome occurred infewer patients in the liraglutide group (608 of4668 patients [13.0%]) than in the placebo group(694 of 4672 [14.9%]) (hazard ratio, 0.87; 95%confidence interval [CI], 0.78 to 0.97; P<0.001 for noninferiority; P = 0.01 for superiority)
c 副作用は
・消化器系の副作用が出やすい
・胆石ができやすい
・低血糖は増やさない
・liragrutide群で良性・悪性腫瘍の頻度が高かったが、統計学的有意差はなかった
C臨床にこの結果はどのように応用できるか?
・一般的な治療にliragrutideを追加すると予後が改善するかもしれない
⇒ただし複合エンドポイントでNNT50程度と効果は乏しい。
⇒さらにプラセボ郡は、血管リスクの高い糖尿病患者にインスリンを使用しているため相対的にGLP-1郡よりも不利な結果になる可能性もある。
・低血糖を増やさずに予後か改善するかもしれないという点ではよい治療薬になりえる
・体重が減るのは患者さんにとってメリットになるかもしれない
・内服は内服で必要であり、追加で毎日注射をしないといけない
・平均年齢64歳、アジア人が約7%(日本人は含まれない)、平均BMI32であり、日本人(特に高齢者)で効果があるかはわからない
・日本では0.3mgから開始して1週おきに0.9mgまでしか増量できないので、効果が期待できない可能性がある
・1本あたり10245円(最大量で20日)と、メトホルミン(2250mg/dayで2000円/20日)と比べると高価であり、グラクティブ(100mg/day 8000円/20日)と比べてもさらに高価である
・近年頻用されているDPP4阻害剤との併用は保険適応上認められていない
・BG±SUでコントロールがつかない場合にDPP4やBOTを試さずにいきなりGLP1??
・コンプライアンスの悪い高齢者でDPP4使わずにGLP1併用???
・論文を読んでみたものの、どのような症例で導入すべきかほとんど思いつかない・・・