コミュニティホスピタリスト@奈良 

市立奈良病院総合診療科の森川暢が管理しているブログです。GIMと家庭医療を融合させ、地域医療に貢献するコミュニティホスピタリストを目指しています!!!

あなたも名医! 意識障害 (jmed61)

筆者から献本いただきました。

 

以下筆者の対談動画

https://www.youtube.com/watch?v=yFqG4WgPArs&feature=youtu.be

 

 

本書の目次

  • 救急外来で遭遇頻度の高い「意識障害・失神」。原因が多岐にわたり、診断に困るケースも多いこのテーマについて現場の第一線で活躍する坂本 壮先生と安藤裕貴先生がわかりやすく解説します。
  • 数ある原因疾患の中でも「致死的疾患を見逃さない」ことに重点を置き検査とその解釈鑑別診断疾患別対応についてまとめました。
  • 本文中では「A総合病院」「Bクリニック」と設定しそれぞれ異なる環境で行うべき対応を紹介。筆者独自の視点で書かれたコラムも豊富に掲載しています。
  • 本誌の冒頭ではここだけでしか読めないお二人による対談も収録! 読み通すことで「意識障害・失神」に対応する力が身につく1冊です。

対談「意識障害」(坂本 壮×安藤裕貴)
第1章 本誌の使い方
第2章 意識障害
第3章 意識消失

 

 

A病院とBクリニックで対応を分けているのが非常に斬新でした。

病院はハード面が揃っている反面、検査に頼りがちでさらにハード面の能力を自分の能力と過信してしまうリスクがあります。

筆者らは、病歴、身体診察、バイタルサインの重要性を改めて強調し、病院であってもクリニックであってもHPV(History, Physical,Vital)の重要性を強調しています。

 

意識障害の各論の項目は以下の通りです。

1 意識障害のアプローチ
2 意識障害×低血糖
3 意識障害×脳梗塞 
4 意識障害×クモ膜下出血
5 意識障害×感染症
6 意識障害×薬剤
7 意識障害×肝性脳症 
8 意識障害×精神疾患
9 意識障害×痙攣
10 意識障害×電解質・内分泌異常

 

特に意識障害のアプローチにおける、10の鉄則は必見です。

HPVの徹底を念頭に、安易な検査に飛びつかず、基本的な血糖や血液ガスなどを重視するという基本の徹底がなされています。

個人的には精神疾患の章は知識の復習になり、非常に勉強になりました。

マグネシウム血症にカルチコールを使用するという知識も曖昧だったので知識の整理になりました。

 

ひとまず、ERに携わる研修医の先生は必須ではないでしょうか。。

電子版があることもポイントが高いです。

皆様、是非!!

 

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精巣捻転のレビュー

精巣捻転を経験したのでレビュー読みました。

https://www.aafp.org/afp/2013/1215/p835.html
Testicular Torsion: Diagnosis, Evaluation, and Management

 

まず推奨から

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⇒カラードプラーは有用な診断方法だがそれでコンサルトを遅らせない
⇒身体所見で疑わしければ速やかにコンサルト
⇒捻転の用手的整復は手術が難しいときは考慮するが、そのために手術が遅れてはならない。。

ということで疑わしければ速やかに泌尿器コンサルトですね。

〇疫学
新生児と思春期の2峰性
新生児では予後不良になりやすい。

〇機序
精巣鞘膜外 or 精巣鞘膜内 に睾丸が捻じれることで静脈内圧があがり虚血になる。

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 bell-clapper deformityがあると捻じれやすくなる。

 

 

鑑別疾患

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精巣上体炎など含めて、鑑別は多岐に渡る。

⇒性交渉歴なども重油

しかし、精巣捻転は真の緊急疾患なので、急性発症の陰嚢痛、特に痛みが強い場合はまずは精巣捻転として泌尿器科コンサルトせざるおえない。

 

 

〇身体診察

まず、著名な睾丸の圧痛を認める。

睾丸の位置の異常を認める。

水平方向の位置異常で左右差がある(自験例は、頭側かつ背側に位置していました。)

精巣挙筋反射の消失は極めて重要(自験例でも消失していました)

 

https://slideplayer.com/slide/6554977/

ãcremasteric reflexãã®ç»åæ¤ç´¢çµæ

このように大腿をピンなどで、こすることで、精巣が持ち上がる反射が誘発されますが、精巣捻転では認めなくなります。

 

精巣挙筋反射の動画

https://www.youtube.com/watch?v=eVvInQNyXIU

 

また、本当に捻じれる前に捻じれかけて戻るということを繰り返していることが多いので、先行する同様の痛みの病歴が極めて重要(実際にありました)

 

 

〇エコー

 

 カラードプラーは有用

健側と比べて病側でドプラーが低下していることが診断に有用。

 精索の形態異常がエコーで分かることも。

ただしエコーに時間をかけすぎない!

 

https://www.slideshare.net/shaffar75/doppler-ultrasound-of-acute-scrotum-23607822

 

ãColor Doppler testicular torsionãã®ç»åæ¤ç´¢çµæ

 

 

診断のアルゴリズム

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身体所見で明らかであれば、エコーはせずに泌尿器科にコンサルトしてよい。

 

 

〇治療

治療は、速やかな泌尿器科コンサルトが何より重要。

迷えば、コンサルト。

手術は捻転の解除と、再捻転予防の固定術。

すぐに手術が難しければ徒手整復も考慮。

徒手整復は、内側から外側へ 「本を開く」のように手を回すとのことです。

ただし、整復できても手術しなくてよいとは決してならないことに注意。

 

以下のブログを参照

https://ameblo.jp/fukuoka-er/entry-12025451139.html

 

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ステップビヨンドレジデント 3 外傷・外科診療のツボ編 にも記載ありました。

 

緩和ケアポケットマニュアル

 

献本御礼。

城東時代に何度か、レクチャーに来ていただいた宇井先生の緩和ケアのマニュアルが出版されました。

宇井先生のレクチャーは大変分かりやすく、私自身がモルヒネの使い方も含めて緩和ケアを深めることが出来ました。

宇井先生のマニュアルが出版されることを心待ちにしていました。

内容は、総合診療科ベースの緩和ケアなので非常に共感が出来、大変勉強になる内容でした。

非常に実践的で、また新しい麻薬の使い方などの記載は控えめにし、実際に総合診療科で使うことが多い薬剤を徹底的に解説してくださっています。

宇井先生なりの実践的な麻薬や鎮静薬の皮下注射の使い方も載っていて、大変参考になりました。

私が普段あまり使うことが少ない薬剤の使い方も載っていたので、新鮮な気持ちになれました。

またspiritual painに関しても、とても端的に記載されており非常に納得が出来ました。

ひとまず、緩和ケアに関わる全ての医療者にお勧めできる素晴らしい内容だと感じました。

皆様是非、お読みください!!

 

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J- COSMO 読みました

 

通称、医学界の小学1年生 あるいは 週刊少年ジャンプといわれている。

J-COSMO を読みました!

 

私は、フレームワーク診断学の続編として今回は、呼吸困難のフレームワークを書きました。

 

〇呼吸困難のフレームワーク ABCD

A:Air way  気道

Acidosis  アシドーシス

B:Breath   肺

B(V):Ventilation 喚起不全(呼吸筋筋力低下)

C:Cardiac     心/血管

D:Deficiency of blood 貧血 

 

シンプルに考えれば、呼吸困難は、

〇肺

〇心臓

〇貧血

 

で考えれば良いのですが、気道の問題は緊急性が高く常に見逃さないようにすること、そして稀に神経筋疾患による喚起不全も認めるので、見逃さないということがメッセージになります。

 

それにしても、今更ながら、凄い執筆陣で圧倒されました。

どの原稿もとても勉強になりました。

個人的には、小児科や産婦人科など普段診ることが少ない分野にも触れてもらっていて、痒いところに手が届く感じでした。

もちろん、王道の救急や感染症も充実。

フリーアナウンサーのコミュニケーション術もあって、とても勉強になります。 

皆様も、是非お読みください!!

 

医師がマネージメントや経営を勉強すること

 

1年間、CFMDのフェローシップに通いながら、裴 英洙先生の私塾(通称ハイゼミ)に通って経営を少し勉強させて頂きました。

先日は、ハイゼミのラストでした。

ゼミの仲間と一緒にディスカッションできたことは、本当に良い思い出です。

医師は、学生時代はマネージメントを学ぶことは少ないですが、指導医になればなるほどマネージメントの要素が増えてくると思います。

例えば、非医療者のサラリーマンの方も、課長になったときは「はじめて課長になったら読む本」的なハウツー本を読むとのことですが、医師も指導医になったら、そのような本を読む必要があるのかもしれません。

個人的には経営を少しかじったので、SWOT分析などをリクルート活動に使えたりするなとか思ったりしています。

また、それとは別に日本ならではの事情があります。

日本では病院長は医師しかなれないという特殊な状況があります。

つまり、医師は経営の素人にも関わらず、ある日を境に、突然経営を行う必要があるということです。

そのような事情を考えれば、若い頃に経営に触れておくことは大切かもしれません。

私も、自分が何か語れるほど詳しいわけではないのですが、裴先生やゼミ生の仲間、そしてCFMDフェローシップの活動を通じて勉強できたことは本当に幸運でした。

特に、総合診療医と経営・マネージメントは相性が良いように思うので、そのようなフェローシップが出来れば良いなとも考えています。

 

small intestinal bacterial overgrowth syndrome (SIBO) のレビュー

胃切除後の吸収不良症候群の方がいたので、少し古いのですがレビューを読んでみました。

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC2890937/

 

SIBOは本来はいるはずのない小腸などに嫌気性菌が異常増殖することで健康上の不利益をきたす疾患。

SIBOは、小腸における細菌数の増加および/または異常な細菌の存在を特徴とする非常にヘテロな症候群である。

ほとんどの著者は、SIBOの診断は10の5乗以上の細菌数を持って診断的であると考えてる。 1mlの近位空腸吸引液では通常の値は10の4乗 CFU / mL以下。

SIBOはしばしば、診断されないことも多い。

高齢者のラクトースの吸収障害では90%でSIBOを認めた

肥満患者のほうがSIBOが多い。

炎症性腸疾患との関連性もある。

 

SIBOの病因は多岐に渡り複雑である。

菌への防御機構や、解剖学的問題、腸管蠕動の問題など。

高齢者では腸管の異常を伴わずにSIBOを発症することも。

 

PPIなどの胃酸抑制剤の使用はSIBOの原因になる!

 

膵臓の外分泌障害もSIBOの原因になる。

慢性膵炎の30-40%がSIBOを合併することも。

嚢胞性繊維症もSIOBのリスク。

免疫不全症もSIBOのリスクになる。HIVやIgA欠損など。

小腸閉塞、小腸の停滞、過敏性腸症候群、セリアック病、クローン病、短腸症候群などの腸管疾患や腸管の異常はSIBOのリスク。

*おそらく、胃切除後もSIBOのリスク。

非アルコール性肝炎、肝硬変などの肝疾患もSIBOのリスク。

他には、強皮症、糖尿病による自律神経障害、放射線腸炎線維筋痛症、リンパ増殖性疾患などもリスクになる。

 

SIBOのクライテリアを満たした場合の原因菌種は以下の通り

141 micro-aerophilic strains (Streptococcus 60%, Escherichia coli 36%, Staphylococcus 13%, Klebsiella 11% and others) and 117 anaerobes (Bacteroides 39%, Lactobacillus 25%, Clostridium 20% and others)

 

SIBOは消化不良と吸収障害を合併する

蛋白漏出性胃腸症やビタミンB12不足も引き起こす。

腸管内のアンモニアの生産も増加

D-乳酸アシドーシスや、内因性細菌性ペプチドグリカンの増加も。

エタノールを産生する場合も。

SIBOは腸管機能だけでなく、小腸の解剖学的な異常にもつながる

 

症状は、膨満感、鼓腸、腹部不快感、下痢、腹痛など非特異的。

 ⇒進行すると脂肪便、体重減少、低栄養

ビタミンB12欠乏は合併しやすいが葉酸欠乏は稀。

合併症としてD-乳酸アシドーシスも有名。重症例では、混迷や脳症、記憶障害など。

D-乳酸は人体では通常合成されない。

原因不明の乳酸アシドーシスは疑うきっかけに。

D-乳酸アシドーシスの治療は、metronidazole, rifaximiなどの経口抗菌薬。

予防は、単糖制限と高脂肪食、多糖の摂取。

 

診断のゴールドスタンダードは空腸の腸液の採取とその細菌学的調査⇒細菌数の評価。

空腸の細菌数>10の5乗 がスタンダード。 Up to Dateでは空腸の細菌数>10の3乗を使用する。

ただし侵襲的な検査になる。

十二指腸液も本来は菌がいないはずなので、使える??。

非侵襲的な検査としては、呼気中水素ガス測定法が挙げられる。

以下の会社で出来るとのことだが、保険適応外。。http://www.breathlab.jp/02/02080.html

 

水素呼気検査は、メタン呼気検査と比較して、SIBOの診断に対してより正確であると考えられている

グルコース投与後:感度62.5%、特異度82%

ラクツロース投与後:感度52%、特異度86%

 

ただ、呼気試験も解釈が時に難しい。

これらの検査が難しい場合はリファミキシンによる治療的診断(7-10日)により症状が改善するかを試みるが、絶対的な診断基準ではない。

細菌の増殖と症状は必ずしもリンクしているわけではない。

 

 

〇治療

第1選択はリファキシミンの7-10日の治療が効果がある。(日本では肝性脳症にのみ適応あり)

高容量(1200 or 1600 mg/d) は低用量 (600 or 800 mg/d)よりも効果がある。

日本なら、リファキシミンとして1回400mg 1日3回が保険適応で1200mg/d 換算

メタン産生が有意のSIBOではリファキシミンにネオマイシンを併用するというエキスパートオピニオンも(Up to Dateより)

 

Up to Dateのレジメンより

Antibiotic Adult dose Pediatric dose* Notes
Single-agent regimens (7 to 10 days)
Amoxicillin-clavulanate 500 mg three times per day[1] or 875 mg twice per day 25 mg/kg per day (amoxicillin component) in two or three divided doses  
Norfloxacin (no longer available in United States)Δ 400 mg twice per day[1] Not adequately evaluated Not recommended in children, older adults, pregnancy, patients at risk for tendinopathy or abnormal cardiac rhythmΔ
Rifaximin 550 mg three times per day[2]

Children ≥12 years: Refer to adult dosing

Children 3 to 11 years: 200 mg three times per day[3]

Less clinical resistance observed relative to other choices

Low systemic exposure
Combination regimens (7 to 10 days)
Metronidazole with a cephalosporin

Metronidazole 500 mg three times per day; plus

Cephalexin 500 mg three or four times per day

Metronidazole 20 mg/kg per day in two or three divided doses; plus

Cephalexin 30 mg/kg per day in three or four divided doses
 
Metronidazole with trimethoprim-sulfamethoxazole (co-trimoxazole)

Metronidazole 500 mg three times per day; plus

Trimethoprim-sulfamethoxazole 1 double-strength tablet twice per day

Metronidazole 20 mg/kg per day in two or three divided doses; plus

Trimethoprim-sulfamethoxazole 10 to 12 mg/kg per day (trimethoprim component) in two divided doses[4]
Rare serious cutaneous allergic reactions

 

 

地域医療のススメ ミーティングに参加してきました。

https://kenshunavi.jadecom.or.jp/community_med/feature/

 

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市立奈良病院から地域医療振興協会(JADECOM)のミーティングに参加してきました!

全国のJADECOMの総合診療プログラムの後期研修医と指導医が一堂に会するとても大きなミーティングでした。

今回のテーマは主に研究でした。

地域であっても、地域だからこそできる研究があるのではないかというテーマで盛り上がっていました。

JADECOMの全国ネットワークを生かして研究を行う事業も徐々に進んでいるようでした。

web meetingによる振り返りも重視されていて、JADECOM全体として後期研修医を育てるという雰囲気があり、非常に教育的だなと感じました。

今後、施設間の指導医の交流の話も出たので、とても楽しみです。

地域医療に興味があり総合診療をやりたいなら、JADECOMですね!

意外に臨床推論のニーズもあるようで、まずは臨床推論教育などで、JADECOM全体の総合診療医の育成に何らかの形で貢献できればと思っています。

いずれは、誤嚥性肺炎や老年医学などもやっていきたいですね。

ミーティングの後の懇親会も楽しく、今後のモチベーションに繋がりました!

これからが楽しみです1