コミュニティホスピタリスト@奈良 

市立奈良病院総合診療科の森川暢が管理しているブログです。GIMと家庭医療を融合させ、地域医療に貢献するコミュニティホスピタリストを目指しています!!!

救急外来診療の原則

【献本御礼】

著者に頂いたので、感想を書きます。

著者とは個人的な親交があり、本を献本をしてただいたのでCOIもありありなのですが、それを差し引いていただければと思います。

 

管理人は、今の職場ではあまり救急外来に携わることはありませんが、後期研修医時代は内科系救急の暴露はそれなりにしていました。

今も、内科に携わることもあり、内科系救急はそれなりに経験もあります。

通常教科書を読むだけではなく、経験を積むことでしか実践知は積み上げることができません。

本書は、そのような実践知のエッセンスが凝縮されています。

たとえば、細菌性髄膜炎を疑えば全例ヘルペス脳炎の治療をすべきというのも、実践知そのもので、なるほどと感心しました。

救急外来の本と言いながら、誤嚥性肺炎や病状説明など通常の救急の本では扱わないような、しかし大切なポイントが扱われているのも、非常にユニークです。

しかし、本書の最も大きな特徴は、基本の徹底です。

常に、病歴、身体診察、バイタルサイン、基本的な検査(エコー、血液ガス、心電図)を疎かにしないという姿勢が徹頭徹尾、貫かれています。

救急外来で失敗するパターンのうち、病歴や身体診察やバイタルサインが不十分であったことは良く経験されます。

本書を読むことで、研修医は救急外来で覚えるべき基本を身につけることが出来ます。

指導医も、自分自身の診療を顧みる良い機会になるのではと考えます。

 

うかい先生 レクチャー

画像に含まれている可能性があるもの:1人、スマイル、座ってる、室内

 

うかい先生が当院に見学に来てくださりました。

都内の小規模病院の、実際を見ていただきました。

特に、当院の地域包括ケア病棟も見ていただきました。

見学に来ていただいたのに、レクチャーをお願いしちゃいました。

 

ICF

「ICF リハ」の画像検索結果

 

 

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リハの基本のフレームワークICFで、特に

 

機能

活動

参加

 

に分けて考えるのが大切と教えていただきました。

 

ICFフレームワークは、適宜、患者中心の医療の方法(PCCM)

http://www.igaku-shoin.co.jp/paperDetail.do?id=PA02878_06

「患者中心の医療」の画像検索結果

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BPSモデルなどと組み合わせると分かりやすいとおっしゃっていましたが、確かにという感じです。

関連画像

 

 

 

地域包括ケア病棟には、他院から廃用症候群でリハビリをお願いされるケースも結構多いので、リハの概念はとても大切ですね。

うかい先生、ありがとうございました!

 

 

 

MBA的医療経営 目指せ!!メディカルエグゼブティブ

 

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著者から送っていただきました。

以下、感想になります。

 

。。。。。。

結論から言うと、非常に素晴らしい本である。
私は、8年目の総合内科医であるが、一応は当院総合内科の責任者であり、自分の上は副院長という立場である。
必然的に、科をどのようにマネージメントするか、どのようにブランディングするかなどを考えざるおえない立場にある(自分が出来るか出来ないかにかかわらず。)
また、病院の経営会議にも一応参加しているので、どのように経営を良くするかということも考えていた。
MBAにも興味を持ち、実際に説明会にも行ったのだが医師がMBAを持つ意義についていまいち腑に落ちない感じがしていた。
そんな時に、著者の角田先生とソーシャルネットワークでつながり、本書を送っていただいたのである。
本書を読み、これからの医師にとってMBA的な能力が必要であるという確信を持つことが出来た。
 
医療経営戦略の章では、MBAの考え方を医療の世界に翻訳し分かりやすく解説している。
MBAに関する本を医療者が見ても、自分の業界のことではないのでピンと来ないものの、現役医師が解説するとこうも腑に落ちるのかと感動した。
特に興味深かったのは、マーケティング、経営戦略、ブランディングの章である。
自院をどうするべきかを考えるよいきっかけになった。
病院の経営会議では、目先の利益に目がいきがちだが、それよりも大局的な戦略が必要であり、つまるところどのように社会貢献すべきかという理想が大切ということだと思う。
このような視点はドラッカーのマネージメントとも共通している。
また、多くの中小規模病院が大規模急性期病院の真似をしているという指摘も耳が痛い。
当院の、地域のニーズや立ち位置を考えれば、Post Acute、在宅バックベットに重点を置き、地域包括ケア病棟において業界1を目指すようなブランディング戦略が必要ではと思いをめぐらした。
 
他にも、戦略的な医師ブランディング、キャリアマネジメント、交渉術などにも言及がありとても興味深かった。
パーソナルブランディングを病院が後押しすべきであるという指摘は、まさに我が意を得たりである。
臨床+アルファで研究やマネージメントなどが必要というのもその通りで、これからはパーソナルブランディングをプログラムとして支援する仕組みが必要なのだと感じた。
特に、後期研修終了後の医師のキャリアプランは、病院総合医の業界ではないに等しく、パーソナルブランディングを支援する6年目以降のフェローシップの必要性を痛感する。
交渉術も、医療業界ではあまり取り上げられない概念だが、確かに非常に有用であると感じた。
 
本書のクライマックスは、アドラー真理学的病院経営の章であると考える。
他者との比較ではなく、理想の病院像と自院の比較を考えるべきというのはその通りだと感じた。
中小規模病院は、大規模病院に比べ、あれがないこれがないと悲観的になるべきではない。
中小規模は大規模病院にない強みがあるはずだ。
職員や地域との距離が近く、フットワークが軽い。
地域包括ケア病棟を有するので、患者さんのトータルマネージメントに関わることが出来る。
とにかく在院日数を短くしてひたすら回す必要がある大規模急性期病院にはない小規模病院の強みをいかにいかすべきか。
心を新たにすることができた。
 
経営学は、小手先のお金の問題というイメージがあったが、そうではないことを本書を読んでよく理解できた。
本質的に自院がいかに地域や社会に最大限貢献できるかを考えるための理論的背景が、医療における経営学の本質だと考える。
科の運営においても、自科が病院だけではなく地域や社会にどのように貢献できるかを考えるべきであると思う。
 
なお、著者が市立奈良病院出身というのも、奈良市出身の私にとっては親近感を覚えるポイントであった。
これも人の縁なのだと思う。
このような素晴らしい本を読む機会をいただいた著者の角田先生に感謝したいと思う。
 
 
 
 

 

DOACのネットワークメタアナリシス BMJ

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Oral anticoagulants for prevention of stroke in atrial fibrillation: systematic review, network meta-analysis, and cost effectiveness analysis | The BMJ

 

心房細動患者のDOACの有効性、安全性、費用効果を比較することを目的としたネットワークメタアナリシス。

Medline、PreMedline、Embase、およびCochrane Libraryのデータを使用

心房細動患者の脳卒中予防のためのDOAC、ワーファリン、抗血小板薬を比較した、出版されたRCTを対象としている。

94665人の患者を対象とした23件のRCTが分析

DOACは2.0〜3.0の目標INRを達成したワルファリンと比較している。

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ワーファリンと比較して脳卒中または全身塞栓症のリスクが低下

アビキサバン5mg 1日2回(オッズ比0.79,95%信頼区間0.66〜0.94)

ダビガトラン150mg 1日2回(0.65,0.52〜0.81)

エドキサバン60mg 1日1回(0.86,0.74〜1.01)

リバロキサバン20mg 1日1回(0.88,0.74〜1.03)

 

1日1回60mgのエドキサバン(1.33,1.02〜1.75)およびリバロキサバン20mg(20mg 1日1回、1.35,1.03〜1.78)の方が、ダビガトラン150mgを1日2回投与した場合よりも、脳卒中または全身塞栓症の危険性が高い結果であった。

 

全死亡のリスクも、ワルファリンよりもすべてのDOACで低かった。

 

 

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DOACはワーファリンと比較して重大な出血のリスクを減少させた。

ダビガトラン110mgを1日2回(0.80,0.69~0.93)

エドキサバン30mgを1日1回(0.46,0.40~0.54)

エドキサバン60mgを1日1回(0.78,0.69~0.93)

アピキサバン5mgを1日2回(0.71,0.61~0.81) 0.90)

 

出血のDOAC間の危険性(左のほうが危険性が高い)

ダビガトラン150㎎ 1日2回>アピキサバン5㎎ 1日2回 (1.33, 1.09 to 1.62)

リバロキサバン20㎎1日2回>アピキサバン5㎎ 1日2回 (1.45, 1.19 to 1.78),

リバロキサバン20㎎1日2回>エドキサバン60㎎ 1日1回  (1.31, 1.07 to 1.59).

 

頭蓋内出血のリスクは、ワルファリンと比較してほとんどのDOACでは低下していたが、消化管出血のリスクは特定のDOACでワルファリンよりも高かった。(特に、ダビガドラン150㎎、リバロキサバン20㎎)

 

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アピキサバン5mgを1日2回投与した場合、最も多くのベネフィットが得られ、ワルファリンに比べて費用対効果が高かった。

 

特定のDOACは、ワルファリンと比較してベネフィットがある。

 

・感想

DOACを使うならアピキサバン。

アピキサバンは、ワーファリンに比べて少なくとも劣ってはおらず、むしろコストを考えてもベネフィットがある可能性があり。

1日1回投与が必要であれば、エドキサバンか。リバロキサバンは、やや出血リスクが高い印象だが、あまり変わりないかもしれない。

 

ONRC 5th 阪南市民病院

ONRC 5th 阪南市民病院
 
今年も、勉強に来ました。
今回は、一般参加者として参加したら一般の部で優勝してしましました。。
なんだか、すみません。。
阪南市民病院の院長、職員の皆様のおもてなしのすばらしさに感動しました。
総合診療を阪南地域でやりたい先生には、お勧めです。
 
画像に含まれている可能性があるもの:1人以上、座ってる(複数の人)

土曜日の紹介は嫌われる  感想

www.nanzando.com

 

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【献本御礼】

 編集の先生方からいただきました(COIあり。)

私は内科ベースの総合内科医であり、この本で言うところの病院総合医という立ち位置になります。

家庭医の先生方と仕事をすることも多く、家庭医に紹介して連携できればよいなと夢想しながら、なかなかできなかった理想がこの本では実現されています。

正直に言うと、現在の日本ではこの理想郷を生み出すのには、奇跡的な状況がそろわないと難しいと思います。

浮間診療所のように家庭医がグループプラクティスを行う診療所は、診療所の形態として理想的なものだと考えますが、そもそもそのような診療所がまだ稀有であるという実情があります。

また、そのようなグループプラクティスを行う家庭医の診療所の近くに「たまたま」家庭医療のバックグラウンドを共通で認識している病院総合医がいる病院があるとなると、相当に奇跡的なことであるように思えます。

もちろん、実際にはこのような奇跡的な状況であっても、最初からお互いを完全に理解することは難しく、カンファを重ねることで病院や診療所の実状が徐々に分かってくる過程も興味深かったです。

ただし、後半になり顔が見える関係になってくると、よりお互いの連携がスムーズになっている様子が見受けられ、やはり病院総合医と家庭医の連携は理想的なプラクティスの一つであると確信しました。

そして顔が見える関係の重要性も改めて再認識できました。

この本は、実際のカンファレンスの内容をリアルに実況中継しています。

個人的には、そのようなリアルさがとても興味深かったのですが、某レビューでは評判があまりよろしくありません。

この本の内容は、家庭医療のバックグラウンドをある程度理解していないと、何を書いているかピンと来ないように思います。

そのような意味で病院総合医にとっては、実は試金石的な本であるようにも思います。

また病院総合医の立場としても、本症例で出てくる病院総合医の全人的なコメントを読むと、自分の未熟さが浮き彫りになります。

半面、在院日数の問題などで看取りや経過観察入院へのプレッシャーが病院総合医側では強いという意見が散見されました。

当院では病院が小規模であること(130床)、地域包括ケア病床がありいざとなれば60日間入院が延長できるという点から、このあたりのストレスはそれほど多くはないように思えました。

病院総合医の立場から言うと、自分の病院のプラクティスを客観的に再認識できる良い機会にもなると思います。

それでは、このような連携は難しいのでしょうか?

例えば、家庭医療の専門医がいなくても、共通の文化を共有できる信頼できる診療所も探せば見つかるので、そのような診療所と実際の紹介症例を共有するカンファレンスが出来ればよいなと思いました。

このような連携は地域医療において最高のプラクティスのひとつであり、今後の病院総合医の在り方を考えるうえでも非常に有用な本であると考えました。