コミュニティホスピタリスト@奈良 

市立奈良病院総合診療科の森川暢が管理しているブログです。GIMと家庭医療を融合させ、地域医療に貢献するコミュニティホスピタリストを目指しています!!!

Gノート2017年 12月号 精神科特集について

www.yodosha.co.jp

 

森川が編集に関わったGノートの精神科特集について、書いてみたいと思います。

もともと、森川が日本若手精神科医の会(JYPO)の先生方と縁があり、一緒にプライマリケア領域の精神科に関する活動をさせてもらっていた縁がありました。

認定特定非営利活動法人JYPO日本若手精神科医の会 | Japan Young Psychiatrists Organization

JYPOの先生方は同世代でしたが、とても熱心で非常に多くの刺激を受けました。

我々プライマリケア医も精神科的な問題に遭遇し何らかの対処をすることもありますが、本当にこれでよいのか悩むことも多いです。

例えば、うつ病にしてもどのような場合に精神科医にコンサルトすべきなのかという問題も悩ましかったりします。

そのような問題に関して、精神科医の先生方が専門的な立場からかみ砕いて教えて頂く機会に恵まれたことは非常に良かったと今でも思っています。

そして、本書はその集大成として記念碑的にJYPOの先生方と一緒に編集をさせていただいたものになります。

精神科医の先生が書かれたということで、向精神科薬についての本というイメージもあるかもしれませんが、実際は行動変容の技法や発達障害における面接の注意点など、プライマリケア医が現場で困る内容を精神科医の先生が書いていらっしゃるので大変勉強になりました。

 もしよろしければ、是非!

 

 

 

入院患者管理パーフェクトpart2 について 

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https://www.amazon.co.jp/主治医力がさらにアップする-レジデントノート増刊-Vol-19-入院患者管理パーフェクト-Part2〜症候対応、手技・エコー、栄養・リハ、退院調整、病棟の仕事術など、超必須の31項目/dp/4758115974

 

天理よろづ相談所病院の石丸先生と、城東病院総合内科チーフの森川が編集した本が発売されました。

スタッフの松本も執筆しています。

病棟管理をさらにレベルアップするために必要なエッセンスをギッシリと詰め込んでいます。

皆様、よければお買い求めください。

 

内科病棟管理に必要な要素はなんでしょうか。

まずは、当然内科に関する幅広く深い知識が要求されるのは間違いありません。

こちらはオンザジョブトレーニングでその疾患を経験したときに、いかに勉強して深めることが出来るかにかかっています。

たとえば、COPDの症例を経験したときはCOPDに関するマニュアル、書籍、教科書などの記載を読み込み、また必要に応じて自分でマトメを作ることで深めることが出来ます。

これは日々の修練あるのみです。

ただし、内科病棟管理は内科的な知識だけではうまくはいきません。

タイムマネージメント、効率的な臨床推論などの仕事術だけではなく、エコーや穿刺などの手技も必要とされます。

さらに、リハビリ、栄養、果ては退院調整、主治医意見書の書き方まで要求されます。

内科医だから知らないでは済ませられないのです。

そこで、本書になります。

内科的なマネジメントに関しても教科書に載ってないような実践的な知識だけではなく、上記の周辺的な知識も網羅されています。

一歩上の内科病棟管理を目指す若手医師の皆様にお勧めします。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

脳梗塞の二次予防は、アスピリン? プラビックス?

A randomised, blinded, trial of clopidogrel versus aspirin in patients at risk of ischaemic events (CAPRIE). CAPRIE Steering Committee. - PubMed - NCBI

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Patient

→虚血性脳卒中、AMI,PADのいずれかの既往がある患者

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除外基準

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I クロピトグレル75㎎

Cアスピリン325㎎/日

 

O

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多国籍、多施設のRCT,double- blindで妥当性あり

 

ランダム化の手法は適切

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ベースラインも同等

平均年齢60歳前後

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ブラインドの方法も適切

 

 

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ITT解析が行われている。

フォローアップできない人は20人ほどのみ。

 

ベースラインは同等だが、具体的な治療内容も同じかは不明。

 

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→数は足りている

 

 

〇結果

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primary clusterはプラビックスで少し良い。 8.7%のリスク減少

→NNTは196。。

 

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→サブグループ解析ではPADではよさげだが、脳梗塞に絞ると0をまたいでいる。。

 

 

副作用

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皮疹などプラビックスで多いが、出血などの重大な副作用は変わりなし

 

 

実はUp to Dateの非心源性脳梗塞の二次予防に以下の記載あり。

For secondary prevention of stroke in patients with a history of noncardioembolic stroke or transient ischemic attack (TIA) of atherothrombotic, lacunar (small vessel occlusive type), or cryptogenic type, we recommend treatment with an antiplatelet agent (Grade 1A). We suggest antiplatelet therapy using either clopidogrel (75 mg daily) as monotherapy or the combination of aspirin-extended-release dipyridamole (25 mg/200 mg twice a day), rather than aspirin (Grade 2A)

 

脳梗塞の二次予防は初回のエピソードなら、まずアスピリンだけど?と思いその根拠となっているので読んでみたRCT

まずPICOのCが問題で我々が知りたいのはアスピリン100㎎とプラビックス75㎎の比較だが、今回の論文はアスピリンは325㎎と通常使う量ではない。。

またそもそもプラビックスが優れるとのことだが、あくまで複合エンドポイントでNNT200程度と、臨床的に感じられるほどの差ではなさそう。

サブグループ解析でもPADにはよさそうだが、脳梗塞の二次予防によいかも微妙。。

またアスピリンは大腸癌予防効果も期待され、さらに安価。

また出血は同等とのことだが、アスピリン325㎎とプラビックスで比較していることからもプラビックスのほうが出血リスクが高い可能性あり。

特に、日本人は脳出血が多いことを考えれば、初発の脳梗塞の二次予防はアスピリンがベターだと思われる。

とはいえ、アスピリンを内服しても再発した脳梗塞に関しては確かにプラビックスに変更するのはありかもしれない??

 

なおUp to Dateに記載されているジピリダモール除法製剤400mg/日+アスピリン50mg/日の併用(Aggrenox)に関しては、日本で行った試験でアスピリンに劣るとされて、2015年の脳梗塞ガイドラインでは推奨しないとなっている。。。

JASAP ジピリダモール+アスピリンのアスピリンへの非劣性示せず | Stroke2010 | 学会記事一覧 | ミクスOnline

 

 

 

 

 

2017/11/17 志水先生カンファ

 

 

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2017/11/17 志水先生カンファ 

★大動脈解離を考えるなら、どんな場合が考えられるか?

(鑑別だけではなくその状況を考えることが後期レジには重要)

→1. Acute on Chronic:突然発症の病気は慢性経過あり、でも慢性発症の病気は急性経過なし.

 2.動脈硬化、3.Collagen disease:E-D、Marfan、O-I

 

★多発性骨髄腫を考える場合、“ABC-FOBT rule”、詳細は「診断戦略」で

 

★安静時優位の腰痛は、関節リウマチの朝のこわばりと同じように考える

→つまり炎症:Auto-immune、Infection、Neoplastic

 

★便秘を見たときは、いつからなのかを必ず聞く!

→AcuteならColon cancer/Chronicなら自律神経×(DMなど)・Metabolic(Hypothyloidなど)考える

 

★結局はLBPのPhysicalが大事:脊椎の触診はAnterior・Middle・Posteriorを意識

 

スピリーバレスピマットは死亡率を上昇させない??

Tiotropium Respimat Inhaler and the Risk of Death in COPD

N Engl J Med 2013; 369:1491-1501

 

 

 

A この試験の結果は信頼できるか
①その試験は焦点が明確な課題設定がされているか


P  

Inclusion

COPDと診断されている40歳以上で10pack-yearの喫煙歴がある。気管支拡張剤使用後のFEV1が予測値の70%以下。

Exclusion

6か月以内のMI。12か月以内のNYHAⅢ、Ⅳの心不全で入院歴、治療が必要な安定しないor致死的不整脈。他の肺疾患。4週以内のCOPD急性増悪。中~高度の腎障害。5年以内の治療を要する悪性腫瘍。12か月以内の薬物/アルコール依存。チオトロピウムで治療できない病態。LAMA以外の治療薬の使用有無は問わない

 

I & C  

レスピマット2.5μg VS レスピマット5μg VS ハンディヘラー18μg

の3群比較。プラセボが入ったもう一方のデバイスも吸入するダブルダミー法を採用している。

(日本の採用はレスピマット5)レスピマット2.5を使用した合剤が開発中なので本研究でレスピマット2.5も組み入れたと記載されている。

 

O 

Safety outcome→全死亡

Efficacy outcome→初回のCOPD急性増悪のリスク

 

 

A②その試験は設定された課題に答えるための研究方法がとられているか? 

ランダム化比較試験、ダブルダミー法を用いている。多施設・多民族を対象としている。(日本人は入っていない)

ハンディヘラーに対して、レスピマット2.5、5それぞれが死亡率に関して非劣性を評価した。

また、ハンディヘラーに対して、レスピマット5のCOPD急性増悪の優越性を評価した。

 

 

A③ 患者はそれぞれの治療群にどのように割り付けられたか?

ブロック法を用いている

 

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→ベースラインは同等

A④研究対象者、現場担当者、研究解析者は目隠しされている? 

全て目隠しされている

 

A⑤研究にエントリーした研究者が適切に評価されたか? 

mITT解析と記載がある

 

 

A⑥研究対象となった介入以外は両方のグループで同じような治療がされていたか? 

Table1ベースラインの特性、LABA、ICSの使用率は同等である

 

A⑦その研究のための対象患者数は偶然の影響を小さくとどめるのに十分な数か?

・死亡率

HR1.25までをマージンとした非劣性の検出力90%とすると、3.5年間の追跡機関に1266名の死亡が観察されるとして16800名が必要である

・急性増悪

ハンディヘラー群の60%に急性増悪が起こると見積もり、脱落35%、急性増悪の減少8%と予測した。

1回以上吸入し、解析に入ったのは17135名。13199名が最後まで薬を続けた。研究は早期終了していない。薬使用のコンプライアンスは90%(80-120%)だった。

 

 

B結果は何か? 
B⑧a 結果はどのように示されたか? b 有意差はあるか? 

死亡率に差はなかった。As-treated解析でも差はなかった。

急性増悪に差はなかった。

 

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c 副作用は? 

その他、心血管イベントなども差はなかった。

 

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C臨床にこの結果はどのように応用できるか? 

・製薬会社主導である点は差し引いて考える必要はある

・心血管リスクが高い人が除外されているのは注意が必要

・MI発症のP値は0.06なのでギリギリ差が出ていない。追試があればレスピマットで有意差を持ってMIが増える可能性がある

・本当に安全性を見たいならプラセボと比較すべき

・実際にはデバイスが使用できるかで処方を決めることがある