まず診断基準です。
MDS診断基準が国際的なスタンダードですが、運動時緩慢がパーキソニズムとして必須となりました。
それにく加えて筋強剛、静止時振戦、姿勢保持障害のうち1つが認められること、左右差があること、L-DOPA反応性があることが加えられています。
特にL-DOPA反応性は今更ながら重要と言うことですね。この辺は実臨床の感覚にも合致します。
パーキンソン病は100人に1人がなると言われています。
実際にJAMAでパーキンソン病のパンデミックが起こると言われているくらいです。
下記のような検査がありますが、まずはきちんと病歴で疑い特徴的な身体診察で強く疑い脳神経内科に繋げることが極めて重要になります。
意外に見逃されている印象です。
下記の図が分かりやすいです。
以下、Junya Kawada先生のコメントより
「2015年MDS、2018年日本の基準では、ドパミン補充療法への反応に加え、医師が静止時振戦を確認する事、匂いの障害の有無又はMIBG心筋シンチH/M比の低下が重要となり、姿勢保持障害は問われなくなりました。」
姿勢保持障害は以前より重要視されなくなっているようですが、それでも重症度判定にはいまだに重要です。
http://parkinson-smile.net/symptom/p5.html
まずは病歴で、動きが遅くなったか、手が震えるか、歩くのが遅くなったかなど確認すると良いでしょう。
実際に歩行を診ることが極めて重要で、手の振りの低下、すり足歩行などを確認します。
下記の動画などを見ると良いでしょう。
https://www.youtube.com/watch?v=pFLC9C-xH8E
動作緩慢は他に指タップや腕回しで評価します。
特にパーキンソン病では左右差が出やすい傾向があります。
https://jamanetwork.com/journals/jama/article-abstract/195803
筋強剛は下記の画像のように他動的に手首や足首を動かして診察します。
肘や膝より手首や足首のほうが筋強剛は出やすいとされています。
https://clinicalgate.com/involuntary-movement-disorders/
静止時振戦はpill rolling tremorと言われ丸薬を丸めるような振戦です。
基本的には安静時に出現しますが、計算を行うなど精神的負荷をかけるとより出現しやすいとされています。
https://www.youtube.com/watch?v=e532YW-Zwf0
なおパーキンソン病の重症度分類は下記のホーン・ヤール分類を使用します
姿勢保持障害があるとⅢ度に分類され、特定疾患の助成対象になります。
嗅覚障害は実はパーキンソン病の診断に重要です。後述するPSP、CBD,脳血管性パーキンソニズムなどでは基本的に嗅覚は低下せず、MSAも嗅覚低下は軽度です。
パーキンソン病ではパーキンソニズム発症に先行して嗅覚低下することもあり、非常に重要な病歴と言えるでしょう。
次にMRIの役割についてです。あくまで除外診断という意味合いが強いです
ちなみにパーキンソン病の主な鑑別疾患は以下の6つです。
- 大脳皮質基底核変性症(CBS)
- 多系統萎縮症(MSA)
- 進行性核上性麻痺(PSP)
- 脳血管性パーキンソニズム
- 薬剤性パーキンソニズム
- レビー小体型認知症(DLB)
このうち下線を引いた疾患に関しては頭部MRIが診断に有効です。
もちろん、神経学的所見をきちんと取ることも重要です。
CBSでは著名な神経学的所見の左右差、失行を認めます。
それに伴い画像上も左右差が目立ちます。
http://www.ajnr.org/content/30/10/1884
MSAでは小脳症状、強い自律神経症状(起立性低血圧)を認めます。
MSAはパーキンソン症状メインのMSA-Pと、小脳症状メインのMSA-Cに分類されます。
MSA-Cでは画像で小脳萎縮と橋底部の十字サインを認めます。
MSA-Pでは被殻外側スリット状高信号を認めます
PSPでは垂直性の眼球運動障害、頸部後屈、易転倒性を認め、特に階段を降りるときに転倒しやすいという特徴があります。
PSPでは下記のような特徴的な画像所見を認めます。いわゆるハミングバードサインです。http://www.jsnp.jp/pdf/cerebral_14.pdf
以下、MSAとPSPの画像所見です
脳血管性パーキソニズムは強い白質病変を画像上認め、階段状の進行、神経学的巣症状を伴います。
薬剤性パーキンソン病は当然、薬剤歴が重要ですが、特にスルピリド、抗精神病薬の頻度が高いです。
レビー小体型認知症はパーキンソン病とも合併するので厳密に分けることは難しいのですが、認知機能障害、幻視、易怒性、睡眠障害が前面に出やすいです。
パーキンソン病とその他のパーキンソン症候群を鑑別するのにMIBG心筋シンチも有用です。
これは筆者が研修医のころから既に使われていました。
パーキンソン病を含むレビー小体病では、心臓の交感神経の脱落・変性が起こるため、MIBGシンチの集積も低下します。
レビー小体型認知症や、3環形抗うつ薬、ラベタロールなどの薬剤でも低下することもあることに注意が必要です。
DATシンチもパーキンソン病の診断に有用とされています。
これは筆者が研修医のころはメジャーでなかったように思います。
ダットスキャンは、ドパミン神経の変性・脱落を画像化する診断技術とされています。
パーキンソン病など黒質線条体が変性する疾患では、ダットスキャンの集積が低下するため、本体性振戦や薬剤性パーキンソニズムなどの黒質線状体が変性しない疾患との鑑別に有用です。
ただし、PSPやMSAでも黒質線条体は変性するのでダットスキャンの集積は低下します。
nmp.co.jp/member/datscan/inpre/page03.h