コミュニティホスピタリスト@奈良 

市立奈良病院総合診療科の森川暢が管理しているブログです。GIMと家庭医療を融合させ、地域医療に貢献するコミュニティホスピタリストを目指しています!!!

尿路結石に対する タムスロシンの効果 RCT

Distal Ureteric Stones and Tamsulosin: A Double-Blind, Placebo-Controlled, Randomized, Multicenter Trial. - PubMed - NCBI

 

Distal Ureteric Stones and Tamsulosin: A Double-Blind, Placebo-Controlled, Randomized, Multicenter Trial

オーストラリアのクイーンズタウンにある5つの救急外来(4つの三次救急病院と、1つの地域病院)で実施

  • PICO

P 

Inclusion

  尿管疝痛の症状を有し、腎〜尿管〜膀胱のCT撮影で遠位尿管に結石を認める18歳以上の患者

Exclusion

  38℃以上の発熱、eGFR 60mL/分未満、結石のサイズが10mmより大きい、単一腎、移植腎、尿管狭窄の既往、使用薬剤に既知のアレルギーあり、CCBあるいはαブロッカー内服中、低血圧(収縮期血圧100mmHg未満)、妊娠中あるいは妊娠計画中

I  タムスロシン0.4mg 1日1回

プラセボ

どちらも28日間あるいは排石が確認されるまで内服

O 

○Primary outcome

 28日後排石の有無と、排石までの時間(生存分析)

 ・28日後のCTで排石の有無を確認

 ・排石までの時間は、結石通過の自己申告、あるいは疼痛が48時間以上消失した日の初日(CT再検で結石の消失を確認)

○Secondary outcomes

 ・予定外の救急外来受診または入院

 ・鎮痛薬の使用量

 ・口頭での疼痛スケールスコア(0から10まで)

 ・泌尿器的な介入の必要性

 ・感染症を含む合併症(血液培養または尿培養が陽性)

 ・腎障害(eGFR 20mL/分以上の低下)

 ・休職日数

 ・使用薬剤による副作用

 

  • ランダム割付されているか?ランダム割付の方法は? 

コンピューターを用いて、病院と医師のサイズ(5mm未満の「小」と5-10mmの「大」に分ける)で層別化されたブロック法でランダム割付された

 

 

  • ベースラインは同等か?

Table 1.参照。本文中に明らかな記載はないが、大きな差はなさそう。プラセボ群の方がやや男性が多い?

 

  • 研究対象となった介入以外は両方のグループで同じような治療がされていたか? 

鎮痛は診療医の裁量に任されていたが、インドメタシン25mgから50mgを1日3回およびオキシコドン5mgから10mgを1日3回、必要に応じて使用することが推奨された。

 

  • 研究対象者、現場担当者、研究解析者は目隠しされている? 

Investigators, the treating physician, and patients were blinded to the allocation for the duration of the study and data analysis.

→Triple blind

 

  • ITT解析か? 

Primary analyses were performed following the intention-to-treat principle.

 

  • その研究のための対象患者数は偶然の影響を小さくとどめるのに十分な数か?

5-10mmの結石の排石率を改善するのが主な目的。参考にするデータが少なく正確な予想は困難だが、αlevelを0.05、パワーを0.8として、排石率を5%から25%に改善するとしたら各群49人の患者が必要と判断し、結石のサイズが5-10mmの患者が100人集まった時点で患者収集を終了することにした。

→結果的に5-10mmの患者はタムスロシン群50人、プラセボ群53人であり、数は足りている。5mm未満の患者を含めると合計393人がランダム割付を受け、316人がPrimary outcomeに関する解析を受けた。

 

  • 結果は? 
  • 結果に有意差はあるか? NNTは?

CTフォローアップを受け、排石を確認されたのは

・タムスロシン群 140/161(87.0%)

プラセボ群   127/155(81.9%)

→有意差なし difference of 5.0% (95% CI –3.0% to 13.0%; P=0.22)

 

大きな石に限った解析では

・タムスロシン群 30/36(83.3%)

プラセボ群   25/41(61.0%)

→有意差あり difference between groups was 22.4% (95% CI 3.1% to 41.6%; P=0.03)

NNTは4.5人

 

排石までの期間の中央値は

タムスロシン群 7日(95%信頼区間 5-10日)

プラセボ群   11日(95%信頼区間 6-14日)

→log-rank試験でP=0.10と、両群間で有意差はなし

 

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→Secondary outcomesはどの項目も有意差なし

eGFRの低下に関しては、何故か本文中に記載なし?

 

  • 副作用は?

→両群間で有意差がある項目はなし。

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  • 臨床にこの結果はどのように応用できるか? 

実はタムスロシンは、日本では尿管結石に対する保険適応がない(前立腺肥大症の排尿障害に対してのみ)。よって、女性には使えない。そして、日本では添付文書上、最大0.2mg/日までしか認められていない。なので、この結果が適応できるかどうかも不明。やっぱり5mmを超えた尿管結石は泌尿器科に紹介すべきであると思われる。

ただ、例えば入院中のADLが悪い高齢男性が尿管結石になったとき、血圧などが問題無かったら排石を期待してタムスロシンを処方してみてもいいかもしれない。(もちろん退院後に泌尿器科に紹介する前提で)

水戸協同病院 見学 and  レクチャー

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水戸協同病院の総合診療科に見学に行きました!!

徳田安春先生が、立ち上げられた日本有数のGIMチームを、ついに見ることができました。

内科急性期入院は全て総合診療科が受け持つというホスピタリストシステムが確立していて、小林教授を筆頭に非常に素晴らしいシステムを構築されていました。

IPMNで手術をした症例について外科を含めた専門の先生からのフィードバックがありましたが、大変勉強になりました。

専門医の先生との連携も非常にうまくいっている印象で、文化的な成熟を感じました。

朝のグランドカンファレンスの症例も拝見しましたが、研修医の先生のプレゼンも素晴らしく、また症例自体も大変勉強であったため、有意義な時間を過ごせました。

また、著名なホスピタリストであるGautam A. Deshpandeも回診にいらっしゃっていましたが、こちらも勉強になりました。

教育の充実度が印象的でした。

昼間は、森川から研修医の先生に向けて誤嚥性肺炎のABCDEについてレクチャーをさせていただきました。

 

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その後、チーフレジデントの長崎先生と水戸のシステムについて、いろいろ聞いていました。

本当に素晴らしいと思ったのは、チーフレジデントが現場のマネージメントを一気に引き受けていてることでした。

確かに、若い先生だからこそ細かいところも把握しやすく、チーフレジデントの先生の成長にもつながるという点でメリットが大きいシステムだと思いました。

継続的に組織が成長し続けるうえでもキーになる存在だと思いました。

働き方改革についても積極的に取り組んでいらっしゃるため、働きやすそうな病院だと感じました。

日本の病院総合医やGIMの模範となるような素晴らしい病院でした。

私も非常に多くの刺激をいただいたので、今後に生かせそうな気がしました。

 

水戸協同病院の皆さま、本当にありがとうございました!!

関東若手医師フェデレーション シュミレーション教育WS

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昨日、関東若手医師フェデレーションのERシュミレーションにファシリテーターとして参加しました。

実戦に近い状況でいかにERでのマネージメントを行うかという参加型のWSで参加者の満足度が高く、素晴らしい内容だったと思います。

代表の森本先生、山本先生はじめスタッフの先生方の努力の賜物だと思います。

個人的には、ファシリテーターとして班の先生に不安定狭心症の診断には病歴が大切だということを伝えられて、良かったです。

押しつぶされるような性状の痛みで肩に放散するような痛みだと狭心症を想起するのは容易だと思います。

しかし、心電図や心エコー、トロポニンが全て正常であると思考停止してしまうようでした。

たとえ検査が正常でも、痛みの頻度が短くなり持続時間も長くなり安静時に発症するようになったという病歴がある場合は、不安定狭心症として循環器内科コンサルトを行うべきというのは教訓になったと思います。

詳しく知りたい方は、是非下記の本をご覧ください!

 

〇総合内科ただいま診断中

www.chugaiigaku.jp

ポリオの基礎知識 スタッフレクチャー

ポリオは経口感染。ほとんどは不顕性感染

5-10%が、発熱、頭痛、咽頭痛、嘔気、下痢

下痢のポリオウイルスが水を汚染する。発症した患者の大半は後遺症なく回復するが、全体の0.1-2%は四肢麻痺髄膜炎、知覚異常を発症

ポリオのインパクトは四肢麻痺⇒四肢変形を起こすこと

 

Modified polio virus could be used as cancer treatment | Genetic Literacy Project

ポリオの四肢麻痺は一生残る

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予防法は基本的にワクチン。

ポリオの2型は 撲滅されている

どこの地域でどの型が流行しているかをしるのが重要

 

OPVは弱毒の生ワクチン

乳幼児に2回摂取 

メリット:腸管免疫、集団免疫、安価、接種が容易

デメリット:ワクチン関連麻痺 VAPP(Vaccine-Associated Paralytic Poliomyelitis) 500万回に1回

Vaccine-Associated Paralytic Poliomyelitis: A Review of the Epidemiology and Estimation of the Global Burden | The Journal of Infectious Diseases | Oxford Academic

 

環境にワクチン由来の突然変異して毒性を獲得したポリオが伝播する(VDPV)

http://polioeradication.org/wp-content/uploads/2016/09/Reporting-and-Classification-of-VDPVs_Aug2016_EN.pdf

 

ポリオが流行っているところでは、OPVは効果的だが、日本では野生のポリオがいないためVAPPが重要。

 

不活化ポリオワクチン IPV

メリット:VAPP、VDPVがない

デメリット:終生免疫ではない 合計4回接種が必要

 

日本の歴史

1961年に著明に流行⇒OPV導入で激減した。

ワクチン関連麻痺の影響で2012年にIPVに切り替わった

 

 

polio eradication 

http://polioeradication.org/who-we-are/strategy/

 

 

 

合併症のないインフルエンザに対するゾフルーザ(バロキサビル マルボキシル)の効果  NEJM RCT

https://www.nejm.org/doi/full/10.1056/NEJMoa1716197

 

 

Baloxavir Marboxil for Uncomplicated Influenza in Adults and Adolescents

 

  • PICO

Patient p.914, Trial design and oversight / p.915, Patients

Inclusion criteria:

Phase2試験

20-64歳の日本人成人。腋窩温で38度以上の発熱を認め、全身症状(頭痛・体熱感or悪寒・関節痛/筋痛・倦怠感)が1つ以上あり、かつ中等度~重度の呼吸器症状(咳嗽・咽頭痛・鼻閉)が少なくとも1つある発症から48時間以内の患者。抗原迅速検査陽性となった患者のみ対象。

Phase3試験

12-64歳の日本と米国の患者。腋窩温で38度以上の発熱を認め、全身症状が1つ以上あり、かつ中等度~重度の呼吸器症状が少なくとも1つある発症から48時間以内の患者。抗原迅速検査の結果は問わない。

 

Exclusion criteria:妊娠女性、体重が40kg以下、入院になるような併存疾患、アセトアミノフェン以外のインフルエンザに対する治療(インフルエンザから続発した細菌感染の治療は除く)。

 

Intervention and Comparison p.914, Trial design and oversight

Phase2試験

Baloxavir 10mg/日 vs Baloxavir 20mg/日 vs Baloxavir 40mg/日 vs Placebo

Phase3試験 2:2:1になるように下記の3群を割り付けし、比較する。

Baloxiavir:Baloxiavir 40/80mg(体重80kgで場合分け)単回投与+Oseltamivir Placebo5日間投与。

Oseltamivir:Oseltamivir 75mg2回/日を5日間投与+ Baloxiavir Placebo単回投与。

Placebo:Baloxiavir Placebo単回投与+Oseltamivir Placeb5日間投与。

 

Outcome p.915, Outcomes measured / Appendix p.6

Primary outcome:介入を始めてから全身症状・呼吸器症状7項目が全て改善に至るまでの時間。

Secondary outcome:介入を始めてから解熱に至るまでの時間、平時の体調に戻るまでの時間、新たに起こった抗菌薬を使うような合併症、VirusのRNA活性の変化、Virusの検出期間、Baloxiavir感受性が下がるとなるアミノ酸変異の頻度、副作用。

 

  • ランダム割付されているか?ランダム割付の方法は? p.914, Trial design and oversight

Baloxiavir:Oseltamivir:Placebo=2:2:1になるようにランダム割付を行った。ランダム化の方法については記載なし。

 

 

 

 

 

 

  • ベースラインは同等か? p.918, Table1.

発症してからの時間に関してばらつきが結構見られるが、それでも対象者全体が発症48時間以内であり、大差はないと考えてもいいか。喫煙者がタミフル群で多い。それ以外は気にならない。インフルエンザ陰性患者は全体的に体重が重く、男性が少ないのは興味深い。

 

  • 研究対象となった介入以外は両方のグループで同じような治療がされていたか?p.915, Patients

上述したようにアセトアミノフェン以外の対症療法や続発した細菌感染に対する抗菌薬投与以外の治療を行った人は解析から除外されている。その他介入以外の治療に関する記述はない。

 

  • 研究対象者、現場担当者、研究解析者は目隠しされている?p.914, Trial design and oversight

Double-blindとあり、患者・現場担当者はblindされている.解析者は塩野義製薬が雇った統計者が行うとされており、blindに関して記述なし.

 

  • ITT解析か?p.915, Statistical analysis / p.917, Figure 1.

Intention-to-treat analysis、通常は介入や追跡のドロップアウトを含めるのがITT解析だが、この場合はPCR陽性かどうかでIntention-to-treat analysisを用いている。介入/比較対象(内服)を完遂したものの、その後Influenzavirus-PCRで陽性とならなかった患者含め全員解析することをIntention-to-treat safety population、Influenzavirus-PCRが陽性となった患者に限って解析することをIntention-to-treat infected populationとしている。

 

  • その研究のための対象患者数は偶然の影響を小さくとどめるのに十分な数か?p.915, Statistical analysis / p.916, Phase 3 Trial Patient Population /p.917, Figure 1.

65%の患者がInfluenzavirus-PCR陽性となると仮定し、1494人の被検者を集めることができれば、Baloxiavir群とPlacebo群間の症状寛解までの平均時間の違いのうち、28時間の違いを90%の検出力で発見できるとシミュレートしていた。本研究は1432人の被検者が内服を完遂し(Intention-to-treat safety population)、1064人の患者がPCRまで施行されている(Intention-to-treat infected population)。試算よりは少ない。

 

  • 結果は?p.916, Clinical and Virologic Efficacy / p.919, Figure 2. / p.920, Figure 3. / Appendix p.27

介入を始めてからインフルエンザの諸症状(発熱・頭痛・体熱感or悪寒・関節痛/筋痛・倦怠感・咳嗽・咽頭痛・鼻閉)が改善するまでの時間に関して、Baloxiavir投与群はPlacebo群に比べ有意に短かった(平均で53.7時間vs80.2時間)。ただし、Oseltamivir投与群と比較すると差は見られない。

Influenzavirus-PCRが陰転化するまでの時間はOseltamivirに比較してもBaloxiavir投与群にやや分がある。

 

  • 結果に有意差はあるか? NNTは?

有意差は上記。イベント発生率の差を求める研究ではないため、NNTについては求められない。

 

  • 副作用は?p.921, Table 2.

下痢・気管支炎・鼻咽頭炎・嘔気・副鼻腔炎・ALT上昇・頭痛・嘔吐・めまい・白血球減少・便秘について集計されている。総数はBaloxiavir投与群= Oseltamivir投与群> Placebo群。ただし重症な副作用はBaloxiavir投与群に多い。

 

  • 臨床にこの結果はどのように応用できるか?

副作用や耐性・コストのことを考えると内服するのであれば、Oseltamivirを飲んでもらうほうが好ましいと言える。

あくまで合併症のないインフルエンザを対象にしたstudyであり、そもそも抗インフルエンザ薬の適応になるような症例(高齢、合併症あり)に対してBaloxiavirを使うという結論にはならず、追試を待つしかない。

この論文の内容からは基本的にBaloxiavirを使うケースが想定できない。

 

複雑性尿路感染に対するMeropenem-Vaborbactam vs Piperacillin-Tazobactam の比較

https://jamanetwork.com/journals/jama/fullarticle/2673552

Effect of Meropenem-Vaborbactam vs Piperacillin-Tazobactam on Clinical Cure or Improvement and Microbial Eradication in Complicated Urinary Tract Infection: The TANGO I Randomized Clinical Trial

 

多施設、多国籍のRCT

 

P 18歳以上の複雑性尿路感染症  腎膿瘍や重症敗血症は除外

I Meropenem-Vaborbactam

C Piperacillin-Tazobactam 

O 尿路感染の寛解(2つの定義がある)

〇 FDA criteria:臨床的な改善と細菌学的な改善

theprimary end point was overall success, a composite outcome
of clinical cure (complete resolution or significant improvement
of baseline signs and symptoms of complicated UTI or
acute pyelonephritis) and microbial eradication (baseline
pathogens reduced to <104 CFU/mL urine) at the end of intravenous
treatment visit for the microbiologic modified ITT
population.

〇 EMA criteria 細菌学的な改善

the primary end point was microbial eradication (baseline pathogens reduced to
<103 CFU/mL urine) at the test-of-cure visit for the microbiologic
modified ITT and microbiologic evaluable populations

 

盲検化はされている(生食でブラインド)

コンピューターを使って割付。 ベースラインは、ほぼ同等

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サンプルサイズは非劣性で計算し500人必要⇒足りている

 

modified ITT解析をしている

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〇結果

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Meropenem-Vaborbactam vs Piperacillin-Tazobactamで非劣性が証明

細菌学的な評価に関してはMeropenem-Vaborbactamがやや優れる?

 

At end of intravenous treatment, the overall success rate
in the microbiologic modified ITT population was 98.4%
with meropenem-vaborbactam vs 94.0% with piperacillintazobactam
(difference, 4.5% [95% CI, 0.7% to 9.1%];
P < .001 for noninferiority). The lower limit of the 95% CI
(0.7%) was greater than the prespecified noninferiority margin
of −15%, demonstrating that meropenem-vaborbactam
was noninferior to piperacillin-tazobactam for the FDA primary
end point (Figure 2A). Additionally, according to the
prespecified statistical plan, superiority of meropenemvaborbactam
over piperacillin-tazobactam was concluded for
this end point since the lower limit of the 95% CI (0.7%)
exceeded 0 (P = .01).

〇副作用

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両郡で大きな違いはないが、Piperacillin-Tazobactamのほうが脱落がやや多い。

Meropenem-vaborbactamwaswell tolerated,with 2.6%of
patients discontinuing study treatment because of an adverse
event compared with 5.1% discontinuing piperacillintazobactam.

 

〇感想

 PIPC/TAZ(しかもなぜか1日3回投与と不十分な量)に対する非劣性試験なので、わざわざメロペンにβラクタマーゼ阻害薬(Vaborbactam)を加えなくても、非劣性は証明できたのでは?? あわよくば優越性を証明したかったから??

メロペンとの直接比較を知りたいが。。 このRCTのみではメロペンにVaborbactamを加える意味は見いだせない。Piperacillin-Tazobactamも意外に健闘しているが、重症例では難しいかもしれない(そもそも最重症例や膿瘍は除外されれているのだが。。)

なおUp to Dateでは下記の記載あり。

Advanced cephalosporin or carbapenem combinations with beta-lactamase inhibitors (such as ceftazidime-avibactamceftolozane-tazobactam, and meropenem-vaborbactam) also have activity against some ESBL-producing and multidrug-resistant P. aeruginosa isolates and are effective for acute complicated UTI [29-31], but because of cost and antimicrobial stewardship concerns, they should only be used in select cases of highly resistant infections.

日本ではまだ発売されていない、Meropenem-Vaborbactam。もし発売されたら乱用が怖い。。今回のRCTで、凄く良い薬だという解釈になると困る。

Up to Dateの記載にあるように症例を絞るのが良いのではないか。。

 

ジャーナルクラブ 潜在性肺結核に対する治療 4ヶ月のリファンピシンと9ヶ月のイソニアジドの比較

【Four Months of Rifampin or Nine Months of Isoniazid for Latent Tuberculosis in Adults】

https://www.nejm.org/doi/full/10.1056/NEJMoa1714283

N Engl J Med 2018;379:440-53.


結核は国際保健上の重要な問題であり、2015年には全世界で1040万例が新たに発症するとされている。更に、全人口の4分の1が潜在性結核を有していると推定されており、潜在性結核の治療は先進国におけるEnd TB Strategyと結核撲滅計画の重要な部分を占めるとされている。

WHOを含む多くの保健機関は潜在性結核の治療としてイソニアジドの6か月または9か月投与を推奨している(長いほうが防御効果が高い)。しかし、レジメンの完遂率が低いことや肝毒性のために、イソニアジドの優位性は低下している。複数の観察研究では、9か月のイソニアジド投与より4か月のリファンピン投与の方が完遂率の高さや肝毒性の低さの点で優れていると報告している。

これはリファンピンの4か月レジメンとイソニアジドの9か月レジメンの有効性を比較した第3相試験である。

 

  • PICO

P 

Inclusion

オーストラリア、ベナン、ブラジル、カナダ、ガーナ、ギニアインドネシアサウジアラビアおよび韓国の訓練された医療機関でモニタリングされツベルクリン反応またはIGRA(Interferon-γ-release assay:インターフェロンγ遊離試験)が陽性となった、活動性結核のリスクがあると考えられる18歳以上の患者

  1. HIV陽性、TNFα阻害薬を開始する、または移植抗拒絶反応薬を内服中(TST≥5 mmまたはQFT +)
  2. 週4時間以上、1週間以上の活動性結核患者(治療されているものは含まない)との濃厚接触歴(TST> 5 mmまたはQFT +)
  3. 肺尖部または上葉の2cm^2以上の線維性病変(TST> 5 mmまたはQFT +)
  4. 2年以内のツベルクリン反応陽転化(6mm以上増大し、TST> 10mmまたはQFT +となる)
  5. 糖尿病、腎不全、あるいはその他の疾患や治療による免疫不全状態(TST> 10mmまたはQFT +)
  6. 活動性結核患者との、週4時間未満の軽微な接触(TST> 10mmおよびQFT +)
  7. 2-5年間でツベルクリン反応が陽転化(10mm以上の増大またはQFT +)
  8. 以下の4つの基準のうち 2つ+TST=10-14mm、または 1つ+TST >15mm

8a. WHOによる結核発症率が100,000万人中100人を超える地域からの、カナダ、オーストラリアまたはサウジアラビアへの移動

8b. BMI <19

8c. 過去の結核感染に矛盾しない胸部X戦写真の異常(石灰化肉芽種、肺門リンパ節腫脹、CP-angle鈍化)

8d. 1日10本以上のcurrent smoker

 

Exclusion

  1. イゾニアジドおよびリファンピンどちらかに耐性の結核菌が検出された活動性結核患者との接触がある患者
  2. リファンピンによって効果が減弱する抗レトロウイルス薬を内服中で、それを変更できないHIV患者
  3. 妊娠中あるいは妊娠を計画している
  4. どちらかの薬剤と重大な相互作用がある薬剤を使用している患者
  5. どちらかの薬剤にアレルギー歴あり
  6. 活動性結核
  7. すでに潜在性結核の治療が開始されている患者

 

I  10mg/kg(最大600mg)のリファンピンを4か月間毎日内服

C  5mg/kg(最大300mg)のイソニアジドをビタミンB6(ピリドキシン)と共に9か月間毎日内服

O

Primary outcome:

ランダム化から28か月以内の、両群における活動性結核発生割合の比較

Secondary outcomes:

・両群間の発症率(incidence rate: person/100 person-year)の比較

・治療を完遂した患者において、per-protocol解析での発症率(incidence rate: person/100 person-year)の比較

・グレード3-5の有害事象(治療経過中またはリファンピンレジメンの120%の期間内に発生した、審査委員によって薬剤関連とみなされたもの)の累積発症の比較

・治療完遂率の比較(少なくとも全レジメンの80%と定義)

・薬剤耐性結核の発症率(incidence rate: person/100 person-year)

 

  • ランダム割付されているか?ランダム割付の方法は? 

コンピューターを用いた中央割り付け法で、ブロック法を用いている(ブロックの大きさは2−8で変動? よく分からない)。両群の割合が1:1になるように層別化している。(本文中に層別化の詳細はなし。”protocol”中に、患者集団の特徴、結核のリスク、LTBI治療開始時および中止時における医師の普段のプラクティスなどで層別化したと記載あり。)同一家庭内で同じ週にenrollされた接触者たちは、同じグループに割り振られた。

 

  • ベースラインは同等か? 

table 1を見ると、記載されている項目では両群間に優位な差はなさそう。本文中には両群間の差については言及なし。

 

  • 研究対象となった介入以外は両方のグループで同じような治療がされていたか? 

それぞれのレジメン以外の治療については特に言及なし。

 

  • 研究対象者、現場担当者、研究解析者は目隠しされている?

オープンラベル試験である。解析者は目隠しされていると記載あり。

 

  • ITT解析か? 

Primary outcomeについてはmodified intention-to-treat解析されている。非劣勢試験と考えると、per-protocol解析も重要。

 

  • その研究のための対象患者数は偶然の影響を小さくとどめるのに十分な数か?

リファンピンのイソニアジドに対する優越性試験とした時、powerを80%、α levelを0.05としてそれぞれの群に3283人必要と計算した。loss to follow-upが15%いるとして、第2相試験で既に両群にランダム割り付けされている847人を計算して、登録を6800人に増やすことにした、と記載あり。

この数は、2群間の累積発症率の最大許容差を0.75%ポイントとして、リファンピン4か月レジメンの非劣勢を示す場合に90%以上のpowerを持つ。先行研究から、未治療の濃厚接触者およびハイリスク者の28か月累積発症率を3%、イソニアジド9か月レジメンの予防効果を90%、リファンピン4か月レジメンの許容可能な最小有効性を65%(イソニアジド6か月レジメンから得られ、以前は広く許容されていた数字)として、これらに基づいて計算された。

Figure 1.を見ると、この第3相試験でランダム割り付けを受けたのは6063人であり、数は少し足りない?第2相試験の847人を足して6800人を超えていると言いたいのか?それだとloss to follow-upの計算が合わないので、少し足りないのだろう。しかし、数としてはまずまず。結果的に、loss to follow-upが思ったより少なかったので大きな問題にはならない。

 

 

  • 結果は? 
  • 結果に有意差はあるか?
  • 副作用は? 

Primary outcome:

イソニアジド群でmodified intention-to-treat解析を受けた3416人中、9人が活動性結核を発症(4例が微生物学的に証明され、5例は臨床的に診断)

リファンピン群でmodified intention-to-treat解析を受けた3443人中、8人が活動性結核を発症(4例が微生物学的に証明され、8例は臨床的に診断)

 

Secondary outcome

・両群間の発症率(incidence rate: person/100 person-year)の比較

   イソニアジド群 0.05 cases per 100 person-years

   リファンピン群 0.05 cases per 100 person-years

   →Rate Difference <0.01 (95% CI: −0.14 to 0.16)   有意差なし

・治療を完遂した患者において、per-protocol解析での発症率(incidence rate: person/100 person-year)の比較

   イソニアジド群 0.11 cases per 100 person-years

   リファンピン群 0.09 cases per 100 person-years

   →Rate Difference −0.02 (95% CI: −0.30 to 0.26)   有意差なし

・グレード3-5の有害事象(治療経過中またはリファンピンレジメンの120%の期間内に発生した、審査委員によって薬剤関連とみなされたもの)の累積発症の比較

イソニアジドの投与期間がリファンピンより長いことを差し引いても、有害事象のリスク差に有意差あり。

 

・治療完遂率の比較(少なくとも全レジメンの80%と定義)

   イソニアジド群1890/2989人     規定の期間内に完遂1727人

   リファンピン群2382/3023人              2136人

          →有意差あり(P <0.001)                  →有意差あり(P <0.001)

 

・薬剤耐性結核の発症率(incidence rate: person/100 person-year)

incidence rateに関しては記載なし。活動性結核微生物学的に確認された8例のうち、感受性検査が施行されたのは4例だけであった。薬剤耐性結核はイソニアジド群で1例(イソニアジド耐性)、リファンピン群で1例

 

 

Limitations

オープンラベル試験ではあるが、「リファンピンであれば4か月ですむ」というところがアウトカムに大きな影響を与えているので、無理にブラインドにしなくても十分効果は示せていると考える。

想定していたより活動性結核の発症数が少なかったことは、結論の強固性を低下させるかもしれない。治療を途中でやめてしまった群でも中央値3か月程度はイソニアジドを内服しており、これがある程度の有効性を持っているせいかもしれない。また、活動性結核を発症するリスクが高いHIV患者が他の研究よりも少なかったことが影響しているかもしれない。

 

 

  • 臨床にこの結果はどのように応用できるか?

まずはどのような患者で潜在性結核の治療適応があるかをしっかりと学ぶことが大切。日本の現行のガイドラインではイソニアジドを優先することになっているが、今回の結果を受けると今後状況が変わってくるかもしれない。少なくとも非劣勢でありそう、というのは頭に入れておいて損はない。