コミュニティホスピタリスト@奈良 

市立奈良病院総合診療科の森川暢が管理しているブログです。GIMと家庭医療を融合させ、地域医療に貢献するコミュニティホスピタリストを目指しています!!!

呼吸困難のフレーム 問診

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今日は呼吸困難のフレームについて話をしました。

呼吸困難ではまず気道の問題を除外すべきです。特に上気道閉塞は知識的になりえます。突然の呼吸困難では真っ先に除外すべきです。

それ以外のフレームは下記になります。

A irway(気道) 

B reath(肺)

V entilation(換気不全)

C ardio(心臓)

DKA(アシドーシス)

Defficiency of anemia(貧血)

病歴も重要ですが、相対的にバイタルと聴診と血液ガスが重要になってきます。

当然ですが気道も問題では喘鳴やストライダーの有無を確認します。

SpO2が保たれた呼吸困難ではアシドーシスと貧血、CO中毒を考えます。

CO2が上昇した呼吸困難では気道の問題と換気不全を考えます。

 

問診において重要なのはReview of systemsの聴取で上記のどのフレームに所属するかを考えることです。

代表的なROSは下記のとおりです。

 

A irway(気道)  窒息 痰づまり 異物 アナフィラキシー(下痢、皮疹、アレルゲン摂取)

B reath(肺)   咳嗽・喀痰・血痰・吸気時の胸痛

V entilation(換気不全) 脱力・痺れ・嚥下困難・複視

C ardio(心臓)   夜間発作性呼吸困難・起座呼吸・胸痛・動悸・浮腫・体重増加

DKA(アシドーシス) インスリン・アルコール・糖尿病・口渇・多飲・多尿

Defficiency of anemia(貧血) 黒色便・血便・出血素因

 

 

 

骨のリンパ腫

Malignant Lymphoma of Bone: A Review of 119 Patients

 

原発性のリンパ腫は骨腫瘍の5-7%しか認めないレアな腫瘍である。しかしリンパ腫の二次性の骨浸潤はリンパ腫の16-20%で認める。WHOの分類によると骨浸潤するリンパ腫は4つに分類

① 単一の骨への浸潤(リンパ節浸潤の有無によらない)

② 多発骨浸潤(臓器やリンパ節浸潤は認めない)

③ 臓器浸潤や多発リンパ節浸潤を伴う骨病変 

④ 既にリンパ腫としられている状態で骨生検をしたら骨浸潤がある。

グループ①とグループ②が原発性の骨リンパ腫とされている

原発性のリンパ腫は以前はreticulum cell sarcomaと呼ばれていた。

 

原発性骨リンパ腫で最も多い症状は痛み(87%)次に腫脹(28%)

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60歳以上では予後不良

 

○骨のリンパ腫全体について

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○骨原発性のリンパ腫(グループ1とグループ2)

⇒大腿骨、骨盤、上腕骨および脛骨で認めることが多い。

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原発性骨腫瘍では脊椎よりも四肢の骨に多い傾向。 

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原発性骨腫瘍ではDLBCLが多い

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JCHO 病院総合医育成セミナー 報告

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JCHOのセミナーを先日の土日で行いました。

孫先生と八百先生の複雑系への対処法に関するご講演とWS、岡先生の感染症ランチョンセミナー、徳田先生・山中先生コラボの問診・身体診察WSと盛りだくさんの2日間でした。

徳田先生および石山先生からは日本のホスピタリストの方向性についてもコメントをいただきました。

その後月曜日には当院に神戸から総合内科の先生にも見学に来ていただきました。

直前にレクチャーをお願いしましたが快諾していただきました。

今後のホスピタリストの方向性について、いろいろ考えた3日間でした。

 

 

症例カンファ 2017年2月17日

症例カンファ祭りでしたね。

やはり、思考過程を皆で共有するのは勉強になりますね。

朝は若年女性のLVFXに不応性の2週間の発熱。

当初上気道症状が先行。現在は咽頭痛が強い。 頸部リンパ節軽度腫大 肝脾腫なし

鑑別は??

LVFX不応性であることより一般細菌感染症の可能性は下がる。

LVFX耐性菌 しかしfocusは乏しい。。 IE r/o必要か。

造影CTでは明らかな膿瘍なし。

甲状腺圧痛無く甲状腺機能正常 亜急性甲状腺炎らしさなし

WBCは好中球有意に増加 12000前後 CRP:11 血沈90

軽度の肝機能障害?

若年女性の発熱ではSLE考えるが、L/Dが合わない。SLEの症状も乏しい。

Still??  皮疹・関節痛なし あまりらしくはないがフェリチン提出。

そして若年女性の発熱で忘れてはならないのは、あの疾患。

じつは血圧左右差が再現性を持ってあり(SBP:15mm Hgの差)

造影ctでは大動脈弓が少しモヤモヤ?? はっきりしない。

あと忘れてはならないのはLVFXの薬剤熱。LVFX中止したら症状改善するかもしれない。

ひとまずLVFX中止してフォロー。当然血培はチェック。発熱継続するならあの疾患として紹介⇒PETの流れか。

 

 

さらに本日の初診外来では若い女性の頸部リンパ節腫脹+発熱。こちらは、あの疾患を考えフォローすることにしました。

 

 

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午後からは志水先生回診。

獨協で経験された興味深い症例を共有してくださりました。

詳細は言えませんが、臨床の奥深さを経験できました。

あの疾患かと思ったら、まさかのあの疾患という流れ。

 

GIMとして診断を考えるのは、やり甲斐である。

その原点に立ち返った一日でした。

 

腰痛のフレーム 問診

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昨日は腰痛の話をしました。

腰痛は体動時に悪化すれば筋骨格系、体動時に悪化しなければ内臓由来とざっくり考えます。ただし、腹部大動脈瘤は例外的に体動で増悪することに注意が必要です。

 

筋骨格系の腰痛であればRed flagを考えますが、まる覚えする必要はありません。

TOSS+Symptomを考えれば良いのですが筋骨格系では特にTSS+Symptomを考えます。

つまりいわゆる急性腰痛症がそうでない、危険な腰痛かを考えます。

危険な腰痛のTime courseとしては長期間継続するというのが特徴です。通常の急性腰痛症なら1ヶ月以内に症状は改善します。

さらに危険な腰痛のSituationとしては、安静時および夜間にも認める腰痛が特徴的です。急性腰痛症であれば安静時には基本的に痛みはありません。なお強直性脊椎炎では運動で改善する腰痛が特徴的です。

危険な腰痛のもう一つの特徴としては単純に痛みが強いということです。非常に強い痛みは危険な腰痛を考えます。

なお筋骨格系の腰痛に関してOnsetはまちまちです。

次にSymptomを考えます。

SymptomはFACETで鑑別疾患を考えます。

鑑別疾患を考えればそこから自ずと随伴症状を考えることが出来ます。

F racture              骨折        ⇒外傷歴、骨粗鬆症ステロイド

A utoimmune    自己免疫                   ⇒朝のこわばり、朝に悪化、運動で改善

C ompression    圧迫       ⇒膀胱直腸障害、下肢脱力、痺れ

Epidural abscess   硬膜外膿瘍(感染)   ⇒発熱、悪寒、寝汗

T umor       腫瘍                         ⇒体重減少

 

体動で悪化しなければ内臓系の疾患を考えます。

主に腎臓、血管、その他腹腔内疾患を考えます。

血管では突発発症の痛みで常に考えます。

ここでは問診も大切ですがERでは腹部診察や腹部エコーをしたほうが速いかもしれません。臓器を念頭に随伴症状を聴取します(腎臓⇒排尿時痛など)

 

 

 

 

急性期脳出血の降圧目標 NEJM2016

Intensive Blood-Pressure Lowering in Patients with Acute Cerebral Hemorrhage

N Engl J Med 2016; 375:1033-1043

 

 

 

A この試験の結果は信頼できるか
①その試験は焦点が明確な課題設定がされているか
P 

 Inclusion

・18歳以上、90歳未満

・発症後4.5時間までに降圧が開始可能

・NIHSS 4以上

・GCS 5以上

・CTで血腫の容積が60㏄未満

・180mmHg<sBP<240

 Exclusion

・脳腫瘍、脳動静脈奇形、動脈瘤による出血

・小脳や橋などのテント下出血

・出血性素因がある、ワーファリン内服

・血小板5万未満

・妊娠、産褥期、授乳中

 

 

I & C 

発症後24時間の収縮期血圧

・140-179mmHgにするstandard-treatment群

・110-139mmHgにするintensive-treatment群

に割り付けし、ニカルジピン5mg/hで開始して目標に達しない場合は15分ごとに2.5㎎ずつ増量して15mgまで増量し、最大量まで増量してもコントロール目標に達しない場合はラべタロールを使用した。ラべタロールが使用できない国ではジルチアゼムかウラピジルを使用した。

 

 

O 

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Primary:3か月時点での死亡、重大な機能障害(modified Rankin scaleで4-6点)

脳卒中ガイドライン2009』より http://www.jsts.gr.jp/guideline/350_351.pdf

 

Secondary

・EQ-5DとVisual analogue scaleによる90日後の生活の質

・24時間後のフォローのCTで血腫が33%以上増大した割合

・72時間以内の重篤な有害事象とそれに伴う3か月以内の死亡

 

A②その試験は設定された課題に答えるための研究方法がとられているか? 

・ランダム化された多施設研究だが、open labelである

 

A③ 患者はそれぞれの治療群にどのように割り付けられたか?

・Webサイトを利用してバイアスコイン法で割り付けた

 

A④研究対象者、現場担当者、研究解析者は目隠しされている?

・Open labelなので研究担当者、現場担当者は割り付けが分かる

・CTを評価する担当者は割り付けを知らず、どの時点のCTかも知らされていない

QOLを評価する担当者は、割り付けや入院中の経過にかかわっていない

 

A⑤研究にエントリーした研究者が適切に評価されたか?

・ITT解析を行った

 

A⑥研究対象となった介入以外は両方のグループで同じような治療がされていたか?

・どちらの群も治療目標域に達するまでの時間は同じ

 

ベースライン

 

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既往など(Appendix)

 

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A⑦その研究のための対象患者数は偶然の影響を小さくとどめるのに十分な数か?

転帰不良となる割合を、standard群で60%、intensive群で50%になると仮定した

・1042人が解析に必要であり、脱落を想定すると1280名が必要

・中間解析で無益性が示されたため、1000人登録した時点で最終解析となった

 

 

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B結果は何か?
B⑧a 結果はどのように示されたか? b 有意差はあるか? 
・PrimaryもSecondaryもすべて有意差なし

 

 

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c 副作用は

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・腎臓の有害事象がintensive群で多かった

 

C臨床にこの結果はどのように応用できるか? 

≪今日のディスカッション≫

・open labelの試験であり、複合エンドポイントであること、サンプルサイズが足りないという結果になってはいるがという点はあるが、intensiveにやる必要がないのでないか。ただ、サブ解析をみると、血腫が大きい、意識障害、アジア人ではintensiveに下げるのもありかもしれない。

・臨床の実感として下げすぎると尿でなくなる気がする

・テント下出血、SAHは積極的に下げることを忘れずに

・当院での対応しては下げすぎずに専門病院に搬送すれば十分だろう

・どこまで下げるかは、専門医でも意見が分かれるところかもしれないので、搬送先の医師と相談しておくのが良いかも知れない