コミュニティホスピタリスト@奈良 

市立奈良病院総合診療科の森川暢が管理しているブログです。GIMと家庭医療を融合させ、地域医療に貢献するコミュニティホスピタリストを目指しています!!!

炎症性腸疾患の関節炎・腸管外病変 臨床推論カンファレンス 2019年7月17日

若年男性

2-3週間で悪化する下肢痛?

ボールをぶつけてから痛いという触れ込みだが、痛みは受傷直後はそれほどでもなく徐々に悪化しているという病歴は合わない。

 

さらに、1週間の経過の下痢と微熱があり、下痢は改善する気配はなく1日6-8回程度で継続していると。

 

診断は??

  

下痢が長引いている。

まずは感染性腸炎を考え食事歴は確認するが、1週間の経過でさらに改善傾向がないというのは違和感があるので、炎症性腸疾患を考える。 

⇒追加問診で、血便があり、さらに先行する、下痢と血便の病歴もあり。

皮疹や口内炎、体重減少の病歴はない。

 

では、痛みに関しては??

痛みは歩行が不能なほどの痛み。

痛みの首座は股関節と膝関節で、他動時痛も著明であり関節でよさそう。

関節の腫脹もあり、炎症もありそうなので、関節炎で良さそう。

 

右の膝関節、股関節と2つの関節の炎症が痛みの原因のよう。

 ⇒急性多関節炎

 

上記の下痢の病歴と合わせると

①炎症性腸疾患に伴う関節炎

②反応性関節炎が考えられる。

 

次の検査としては便培養と下部消化管内視鏡

便培養は陰性。

下部消化管内視鏡潰瘍性大腸炎に矛盾しない所見。

 

⇒よって潰瘍性大腸炎に伴う関節炎と診断。

ステロイド内服とサラゾスルファピリジンで軽快した。

 

 

炎症性腸疾患の腸管外症状について

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/26154136

 

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A、口腔アフタ性潰瘍、(B)スウィート症候群、(C)結節性紅斑、(D)壊疽性膿皮症、(E)ストマ周囲の壊疽性膿皮症、(F)上強膜炎、(G)ぶどう膜炎、(H)バンブーサイン(脊椎関節炎)(I)仙腸関節炎のXp所見(J)仙腸関節炎のXp所見(K)両側仙腸関節炎(MRI所見)

 

 

炎症性疾患に伴う末梢性関節炎はRAに比べて関節破壊が乏しい

 

〇炎症性疾患に伴う末梢性関節炎の分類

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関節炎の数が5つ未満(Type1)、5つ以上(Type2)かで分類される

type1は膝や足首、手首など大関節が多め

type2はMCP、膝、PIPと称関節が多め。

type1,2ともに膝関節の頻度が高い⇒膝関節炎では炎症性腸疾患を想起する。

type1は左右非対称だが、type2は左右対称性⇒症例とも合致する

type1は炎症性腸疾患の病勢と関連するが、type2は病勢と関連しない

 

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IBDと診断されるまでに腸管外病変が先に出現することが多い傾向。

さらに診断されてからも腸管外病変が新たに出現する

 

 

 

なお結節性紅斑は女性に多くやはり下腿優位

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壊疽性膿皮症も下肢優位に多いが男性にもそれなりに出現する

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IBDの腸管外病変の治療のまとめ

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 関節炎ではステロイド関節注射、ステロイド内服、サラゾスルファピリジン、COX2阻害薬など type1ではIBDの治療が有用

セカンドラインセラピーとして、生物学的製剤を推奨

 

なおUp to DateではIBDに伴う関節炎の治療を以下のように推奨

 

①(おそらく脊椎関節炎に準じて)、ナイキサン極量定期投与+PPIを投与

②ナイキサンが効果が乏しければサラゾスルファピリジンを追加

③サラゾスルファピリジンでも効果が乏しければ、生物学的製剤(monoclonal antibody TNF inhibitors) ⇒インフリキシマブ、アダリムマブ、ゴリムマブなど

ステロイドの内服やステロイドの関節注射などは、DMARDが効果が出現するまでの繋ぎとして有用。

・脊椎炎優位の場合もまずは、NSAIDSを使用。

・脊椎炎に伴う腰痛がNSAIDSで充分にコントロールできない場合は、monoclonal antibody TNF inhibitor を使用する。

⇒体軸関節炎優位でNSAIDSでコントロールできない場合は、早めにmonoclonal antibody TNF inhibitor の使用を検討。

 

リウマチ性疾患の勉強には以下がお勧めです!!