コミュニティホスピタリスト@奈良 

市立奈良病院総合診療科の森川暢が管理しているブログです。GIMと家庭医療を融合させ、地域医療に貢献するコミュニティホスピタリストを目指しています!!!

禁煙における行動療法の有用性について

 

 

最近、禁煙外来を城東病院ではじめたので勉強してみました。

 

Up to dateによると。。

For smokers who are willing to quit, we recommend that smokers be managed with a combination of behavioral support and pharmacologic therapy (Grade 1B). Combination therapy is superior to either behavioral intervention or pharmacologic therapy alone.

と禁煙において 薬物療法と行動療法の併用を推奨

その根拠となっているのが下記のコクランレビュー

 

f:id:aquariusmedgim:20170501175229p:plain

 

P 禁煙外来の患者

I 薬物療法と行動療法の併用

C 通常のケア or 簡単なアドバイスのみ

O 最低6ヶ月後のフォローにおける禁煙率

RCT or  RCT類似studyが対象

フォローアップが6ヶ月未満、妊婦・青年期のみのstudyは除外

 

f:id:aquariusmedgim:20170501182629p:plain

f:id:aquariusmedgim:20170501183406p:plain

薬物療法と行動療法の併用は禁煙成功率を改善する。

 

 

 

 

 

ではどのような行動療法を行えば良いのか?

  

European Heart Journal (2009) 30, 718–730
doi:10.1093/eurheartj/ehn552

f:id:aquariusmedgim:20170501181039p:plain

 

行動的療法に関するRCTのメタアナリシス

◯最低限の行動療法

◯個別の行動療法

◯グループで行う行動療法

◯電話による行動療法

 

上記4つのグループで検討

 

 

f:id:aquariusmedgim:20170501181158p:plain

 50の RCTs,  26 927人の患者が同定

 

◯最低限の行動療法⇒9個のRCT

◯個別の行動療法⇒23個のRCT

◯グループによる行動療法⇒12個のRCT

◯電話による行動療法⇒10個のRCT

 

最低限の行動療法の定義は医療従事者が20分間相談に応じるのみ。

個別の行動療法は禁煙専門のカウンセラーが15分以上かけてカウンセリングを行う。

グループによる行動療法は2人以上の参加者でディスカッションしながらカウンセリングを行う

 

 

 結果

◯最低限の行動療法

minimal clinical intervention (OR 1.50, 95% credible interval (CrI) 0.84–2.78]

 

f:id:aquariusmedgim:20170501183700p:plain

 

◯個別の行動療法

individual counselling (OR 1.49, 95% CrI 1.08–2.07)

f:id:aquariusmedgim:20170501184502p:plain

 

◯グループによる行動療法

group counselling (OR 1.76, 95% CrI 1.11–2.93)

f:id:aquariusmedgim:20170501184735p:plain

 

◯電話による行動療法

telephone counselling (OR 1.58, 95% CrI 1.15–2.29).

f:id:aquariusmedgim:20170501184749p:plain

 

とグループによる行動療法が最も効果あるが、最低限の行動療法であっても十分効果があるかもしれない。

 

ただ、最低限と言いつつも20分間かけて面接を行っているので、けっこう頑張っている。

さらに禁煙専門のカウンセラーがいなくても医療従事者だけで同等の効果が出せるのならば良いかもしれない。

とは言え、医師1人では20分の面接は、現実的には難しく、看護師や保健師などのコメディカルの協力が必須だろう。

実際に当院では、医師だけでなく看護師と保健師禁煙外来で患者さんに診察前に面接を行い、禁煙サポートを行っているが、有用な方法なのだろう。

 

 

 

では、具体的にどのように行うのか

 

日本語の総説で下記の論文がとてもまとまっています

http://www.nosmoke55.jp/gakkaisi/201012/10_05_06_1220_p179.pdf

*上記論文より引用

f:id:aquariusmedgim:20170501185043p:plain

f:id:aquariusmedgim:20170501185102p:plain

f:id:aquariusmedgim:20170501185114p:plain

 

⇒上記のように行動変容の手法を用いることが有用とのこと。

このあたりは、家庭医の先生が得意とするところだと思います。

ただ、これも医師1人では限界があるので、この考え方を医師以外の看護師や保健師のチームで共有することが大切かと思われます。

 

 

 

プライマリケアにおける禁煙に関するレビューも見つけました。

f:id:aquariusmedgim:20170501190505p:plain

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC2734439/

 

ここでは5Asを取り上げます。

f:id:aquariusmedgim:20170501190413p:plain

ASK,ACTで終わらせずに(2As )、少し時間をかけることが大切(5As)

Ask,  タバコ

Advise 健康への影響

Assess モチベーション

Assist 禁煙

Arrange フォローアップ

 

このあたりは禁煙外来に携わる医師が心がけると違うのかもしれません。

30秒で終わらせずに少し時間をかけて、5Asを意識すると良いのかもしれません。

 

 

 

なお、当院の禁煙外来の成果を当科の松本がプライマリ・ケア連合学会学術大会@高松でポスター発表しますので、興味があるかたは是非

www2.c-linkage.co.jp