肩と腰の痛みあり。炎症反応高値
上腕二頭筋腱炎および肩周囲の滑液包炎あり。
PMR? late onset RA ?
さらにCPK高値、低左心機能で循環器でCAGするも正常範囲と。
エコーからは心筋炎も合併?
Cardiac Manifestations of Rheumatological Conditions: A Narrative Review
心血管疾患は、全身性のリウマチ性疾患において一般的に合併する。
診断時もしくは診断後に心血管性疾患を認めることがある。
さらに、心臓合併症がリウマチ疾患の最初の症状であることもありうるので、最初に心臓専門医が診ることもある。
心臓合併症は、無症候性から重症に変化しうるし、積極的な免疫抑制を必要としうる。
これらの合併症の診断は治療をするうえでも大切である。
リウマチ性疾患では動脈硬化や虚血性心疾患のリスクも上がり、死亡率上昇の原因となりうる。
炎症の積極的なコントロールは、心血管疾患、特に虚血性心疾患のリスクを低下させる。
ただ、はっきりとしたガイドラインやリコメンデーションは存在していない。
以下、心血管性合併症をおこす代表的なリウマチ性疾患
①関節リウマチ
②SLE
③全身性強皮症
④強直性脊椎炎
⑥乾癬性関節炎
⑦多発筋炎・皮膚筋炎
⑧高安血管炎
⑨GCA
⑩PAN
⑪チャーグストラウス
⑫ベーチェット
⇒PMRの記載はなく、PMRの心病変はあまり一般的ではないのかもしれない。
リウマチ性疾患と心血管合併症の対応図
Int J Cardiol. 2017 Jun 1;236:151-156. doi: 10.1016/j.ijcard.2017.01.104. Epub 2017 Feb 1.
膠原病(connective tissue disorder⇒CTD)の心病変をMRIで評価した study(cardio-vascular magnetic resonance を評価⇒CMR)
CMRを心臓病変を伴わない未治療のCTD78例で評価(年齢43歳、女性59 /男性 19)
結果:高安の3/5、チャーグストラウスの3/4 、ウェゲナーの4/5 、SLEの10/16、関節リウマチの9/12 RA、混合性結合組織病の6/8 、強直性脊椎炎の4/12 AS、リウマチ性多発筋痛症の1/3 PMR、全身性強皮症の2/8、皮膚筋炎の2 /5 でMRIのT2比は正常と比較して高かった(2.78±0.25対1.5±0.2、p <0.01)
心筋炎は、1人のTA、1人のSLE、1人のRA、1人のSScおよび2人のDM患者において同定。
びまん性の内膜下線維化は1人のCSS、1人のRA患者で同定
内膜下の心虚血は3人のSLE、1人のMCTD、1人のMCTD,2人のRADで同定
心筋炎は、1人のTA、1人のSLE、1人のRA、1人のSScおよび2人のDM患者において同定された。
リウマチ性疾患を治療したところ、6および12ヵ月後のCMR再評価でT2比の有意な改善を認めることより、心病変は免疫抑制で改善しうる。
PMRにおけるステロイド使用者で心血管イベントが増えるか検討したstudy
⇒PMRにおいてステロイド使用は心血管イベント増加につながらない。
では、PMRで心筋炎をきたしうるのか??
PMRで心筋炎をきたしたケースレポート。
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC3718596/
PMRとしてステロイドテーパリング中に頻脈を認めたところ、エコーでEF40%に低下していたのでMRIで精査をした。
MRIではやはり心筋のT2比が増加しており、心筋浮腫が示唆される。
ACE-Iとβblockerの導入で心筋症は改善したと。
報告は限られているが、PMRは心筋炎をきたしうる。
また、ACE-Iとβblocker±免疫抑制療法で症状は改善するかもしれない
最近、禁煙外来を城東病院ではじめたので勉強してみました。
Up to dateによると。。
For smokers who are willing to quit, we recommend that smokers be managed with a combination of behavioral support and pharmacologic therapy (Grade 1B). Combination therapy is superior to either behavioral intervention or pharmacologic therapy alone.
と禁煙において 薬物療法と行動療法の併用を推奨
その根拠となっているのが下記のコクランレビュー
P 禁煙外来の患者
I 薬物療法と行動療法の併用
C 通常のケア or 簡単なアドバイスのみ
O 最低6ヶ月後のフォローにおける禁煙率
RCT or RCT類似studyが対象
フォローアップが6ヶ月未満、妊婦・青年期のみのstudyは除外
⇒薬物療法と行動療法の併用は禁煙成功率を改善する。
ではどのような行動療法を行えば良いのか?
European Heart Journal (2009) 30, 718–730
doi:10.1093/eurheartj/ehn552
行動的療法に関するRCTのメタアナリシス
◯最低限の行動療法
◯個別の行動療法
◯グループで行う行動療法
◯電話による行動療法
上記4つのグループで検討
50の RCTs, 26 927人の患者が同定
◯最低限の行動療法⇒9個のRCT
◯個別の行動療法⇒23個のRCT
◯グループによる行動療法⇒12個のRCT
◯電話による行動療法⇒10個のRCT
最低限の行動療法の定義は医療従事者が20分間相談に応じるのみ。
個別の行動療法は禁煙専門のカウンセラーが15分以上かけてカウンセリングを行う。
グループによる行動療法は2人以上の参加者でディスカッションしながらカウンセリングを行う
結果
◯最低限の行動療法
minimal clinical intervention (OR 1.50, 95% credible interval (CrI) 0.84–2.78]
◯個別の行動療法
individual counselling (OR 1.49, 95% CrI 1.08–2.07)
◯グループによる行動療法
group counselling (OR 1.76, 95% CrI 1.11–2.93)
◯電話による行動療法
telephone counselling (OR 1.58, 95% CrI 1.15–2.29).
とグループによる行動療法が最も効果あるが、最低限の行動療法であっても十分効果があるかもしれない。
ただ、最低限と言いつつも20分間かけて面接を行っているので、けっこう頑張っている。
さらに禁煙専門のカウンセラーがいなくても医療従事者だけで同等の効果が出せるのならば良いかもしれない。
とは言え、医師1人では20分の面接は、現実的には難しく、看護師や保健師などのコメディカルの協力が必須だろう。
実際に当院では、医師だけでなく看護師と保健師も禁煙外来で患者さんに診察前に面接を行い、禁煙サポートを行っているが、有用な方法なのだろう。
では、具体的にどのように行うのか
日本語の総説で下記の論文がとてもまとまっています
http://www.nosmoke55.jp/gakkaisi/201012/10_05_06_1220_p179.pdf
*上記論文より引用
⇒上記のように行動変容の手法を用いることが有用とのこと。
このあたりは、家庭医の先生が得意とするところだと思います。
ただ、これも医師1人では限界があるので、この考え方を医師以外の看護師や保健師のチームで共有することが大切かと思われます。
プライマリケアにおける禁煙に関するレビューも見つけました。
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC2734439/
ここでは5Asを取り上げます。
ASK,ACTで終わらせずに(2As )、少し時間をかけることが大切(5As)
Ask, タバコ
Advise 健康への影響
Assess モチベーション
Assist 禁煙
Arrange フォローアップ
このあたりは禁煙外来に携わる医師が心がけると違うのかもしれません。
30秒で終わらせずに少し時間をかけて、5Asを意識すると良いのかもしれません。
なお、当院の禁煙外来の成果を当科の松本がプライマリ・ケア連合学会学術大会@高松でポスター発表しますので、興味があるかたは是非
様々な胃腸障害に使用されるドーパミン2受容体アンタゴニストであるメトクロプラミドは、様々な錐体外路運動障害を引き起こすか、または悪化させることが知られている。
厚生労働省から出ているアカシジアの対策マニュアルは、よくまとまっています。
http://www.mhlw.go.jp/topics/2006/11/dl/tp1122-1j09.pdf
これによると薬剤性のアカシジアは急性と遅発性に分類
急性アカシジアでは、薬剤の開始から6週間以内ならありうるが、大概は使用後3日-2週間以内が多いと。
薬剤性アカシジア評価尺度
メトクロプラミドによって引き起こされるmovement disorderのレビュー
16人の患者を解析。
発症時の平均年齢は63歳(24〜85歳)であり、女性は3対1で男性数より多かった。
遅発性ジスキネジーが最も多かった(n = 10 [63%])。
5人の患者にメトクロプラミド誘発パーキンソン症候群
1人の遅発性ジストニア
1人の患者にはアカシジアが起こった。
症状発症までの平均期間は12ヶ月(1日〜4年)。
なお、メトクロプラミドによるmovement disorderの認識がなかったことによって発症後、平均6ヶ月間(範囲、1日〜2年)治療が継続されていた。
ということで長期間のメトクロプラミドの内服は避けるべきと。
上記レビューは長期間メトクロプラミドを使用した場合のmovement disorderが中心。
それではメトクロプラミドをIVしてすぐにアカシジアが発症するのか??
ケースレポート。
45歳の男性。
熱傷あとの皮膚移植の予定手術の患者。
麻酔の前投与として、ラニチジン50mgおよびメトクロプラミド10mgをIVした。
5分後、患者は不快な感覚を呈し、不穏で激しく動いて見え、手足をバタバタ動かし、動き回りたいと言って、ルートを抜去しようとした。
にミダゾラム1.5mg をIVされたところ症状は改善。
メトクロプラミドによるアカシジアの疑い。
ということで、メトクロプラミドのIVによって急性のアカシジアは起こりうるということで良さそう。
なお、治療は当然原因薬剤の中止 それが難しければ減量。
他の治療としては、ベンゾジアゼピン、βブロッカー、抗コリン薬が挙げられる。
上記の文献によると急性の抗精神病薬によるアカシジアの第1選択としては、プロプラノロールであり、第2選択としてベンゾジアゼピンとのこと。
一方、抗精神病薬によるアカシジアに対して、抗ヒスタミン薬を使用することもあるとのことだが、こちらはコクランレビューも出ている。
ただ、結論としては抗ヒスタミン薬の効果は乏しいとのこと。
56人の登録患者のうち41人(73.3%)が女性。
ジフェンヒドラミン群では平均年齢は39.9(±15.7)歳であり、ミダゾラム群では40.9歳(+/- 16.2歳)であった。
最初の5分間における平均の主観的、客観的、および総体的な運動障害のスコアは、ジフェンヒドラミン群と比較してミダゾラム群で減少した(p <0.001)。
しかし最初の15分間の平均Ramsay鎮静スコアは、ジフェンヒドラミン群と比較してミダゾラム群で有意に増加した(p <0.001)。
⇒ということでミダゾラムはジフェンヒドラミンよりも効果はあるが、より鎮静作用が強いとのこと。
なお、先の厚生労働省のマニュアルの治療のところには下記の記載あり。
http://www.mhlw.go.jp/topics/2006/11/dl/tp1122-1j09.pdf
薬剤誘発性の急性アカシジアが発症してしまった場合には、救急対応として中枢性抗コリン薬(ビペリデン、トリヘキシフェニジル)またはベンゾジアゼピン系薬剤(ジアゼパム、クロナゼパム)の投与が有効である。特にビペリデンには注射製剤があるので、診断的治療目的でも用いられる。
ということで一般的には抗コリン薬が使わることが多そう。
ただ、同マニュアルにはプロプラノロールの記載もあり。
近年は第1選択になっているが、血圧と脈拍のモニターが必須とのこと。
では、どうすればよいか??
最も、効果があるのはベンゾジアゼピンの印象。
症状が激しい場合は、ベンゾジアゼピンの点滴(ミダゾラム、ジアゼパム)になるのだろう。
プロプラノロールも効果があると思われ、特に明らかな頻脈がある症例には良いのかもしれない。
抗コリン薬は考慮しても良い(特にピペリデンは注射液があり。筋注で使われることが多い。)
抗ヒスタミン薬としてアタラックスPも使いやすいかもしれないが、抗ヒスタミン薬使用の根拠は乏しい。
結局、元々内服予定だったベンゾジアゼピンと眠剤の内服で症状は改善。
まずは、ベンゾジアゼピンの内服が無難かもしれない。