城東病院総合内科 ブログ

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呼吸困難に対するモルヒネ

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objective:
基礎疾患のある患者の呼吸困難感の緩和に対して経口モルヒネの有効性を確認する
 
design:
ランダム化二重盲検プラセボ比較クロスオーバー試験
 
setting :
南オーストラリアの病院における4つの外来クリニック
 
participants:
過去にオピオイド使用のない48人(平均年齢76歳)、うち42人(88%)がCOPD患者
20mg経口モルヒネ徐放剤またはのプラセボを4日間治療しフォローし、その逆も同様に行う
下剤は必要時処方
 
main outcome measures:
4日間治療した時点で以下を評価
朝夜の呼吸困難を100mm visual analogue scale
睡眠の質
wellbeing
身体活動のパフォーマンス
副作用
 
results:
38人が試験を完遂した
3人が副作用、2人はおそらく副作用(嘔気、嘔吐、鎮静)で脱落した
被験者はモルヒネでの治療により、有意に呼吸困難スコアが朝は6.6mm、夜9.5mm(それぞれP=0.011. 0.006)減少した
モルヒネ治療中、被験者はよりよい睡眠を得られた(P=0.039)
下剤使用にも関わらず便秘となった(P=0.021)
ほかの副作用は有意ではなかった
 
conclusions:
プライマリ・ケアで低用量モルヒネ徐放剤は有意に難治性呼吸困難を改善する
 
A この試験の結果は信頼できるか
① その試験は焦点が明確な課題設定がされているか
P:patient
 
・適切な治療にもかかわらず安静時呼吸困難のあるオピオイド使用のない成人
・血清クレアチニン値が正常値の2倍以内
・酸素・薬物治療が安定
・日々の記録ができる
・除外基準:最近のオピオイド使用、意識障害、鈍麻★、薬物乱用の既往がある
 
I:intervention
C:compare
 
・20mg経口モルヒネ徐放剤を4日間内服
プラセボを4日間内服
・クロスオーバー試験のため、その逆も行う
 
O:outcome
 
・プライマリアウトカムは最終日の夜時点での呼吸困難スケール(VAS)
・ほかのアウトカムは朝時点の呼吸困難スケール、Medical Research Council of Great Britainの運動耐性スケール、呼吸数、血圧、心拍数、酸素飽和度、呼吸困難による睡眠の妨げ、嘔気・嘔吐のスケール、便秘、意識障害、眠気、食欲、well-being
・スケールを用いて看護師が鎮静を評価
 
A② その試験は設定された課題に答えるための研究方法がとられているか?
・randome化されている
・double blindされている
・多施設
 
A③ 患者はそれぞれの治療群にどのように割り付けられたか?
・hospital pharmacy’s centralized serviceで割り付け
・被験者は主に高齢男性でCOPDで酸素投与をうけている人が多い
・ECOG>=2(歩行可能で日中50%以上はベッド外)と身体機能面で不良な人が多い
・両群で差はない
 
A④ 研究対象者、現場担当者、研究解析者は目隠しされている?
・double blindである
・被験者は重大な副作用については解析者にblindされていない
 
A⑤ 研究にエントリーした対象者が適切に評価されたか?
・intention to treat basisと記載
・ただ10人の脱落は解析に含めていない
 
※ITT:クロスオーバー試験のため、ITT解析である必要はない
※脱落者を解析しないといけないがモルヒネだけの群としての解析はできない
 
A⑥ 研究対象となった介入以外は両方のグループで同じような治療がされていたか?
・割り付けでは両群に差はないとされている
・最後のlimitationで夜の呼吸困難減少や睡眠改善に酸素投与量の増加やCPAP使用など関係している可能性の記載があり、モルヒネ以外の介入があった可能性は示唆される
 
A⑦ その研究のための対象患者数は偶然の影響を小さくとどめるのに十分な数か?
・20%ドロップアウトを考慮し、VAS10mmの差異検出のため、80%検出力には48人が必要と推定
・本研究はn=48で満たす
 
B結果は何か?
B⑧a 結果はどのように示されたか?
B⑧b 最も重要な結果は?
B⑨ その結果はどの程度正確か

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モルヒネ徐放剤はプラセボと比較し、有意に呼吸困難を減らす
・夜はVAS9.5mm減少(P=0.006)、朝はVAS6.6mm減少(P=0.011)
 

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・呼吸困難による睡眠の妨げを報告したのはモルヒネ群で有意に少なかった(P=0.039)
 
B⑧c  副作用はどうか?
 
・呼吸数に差はなかった
・過鎮静はなかった
・嘔吐、意識障害、鎮静、食欲低下はなかった
モルヒネ群はプラセボより便秘が多かった(P=0.021)

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・脱落者は10人、3人はモルヒネの副作用、2人はモルヒネの副作用の可能性、5人は他の理由(内訳はtable5)

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C その結果はあなたの現場で役に立つか?
COPD患者に対して外来で導入は経験がなく、外来でのモルヒネ導入はハードルは高い、また保険適応はなく外来での導入は難しい
・クロスオーバーする前後で解析があるとよい
・今まで数が足りていないスタディが多く、またターミナルステージでのRCTがなかなか難しい中でモルヒネの呼吸困難の有用性を示した点では意味のある論文であった
 
※limitations
・休薬期間:washout periodがない
モルヒネの副作用がプラセボ期間に持ち越された
・ill patientのため、short protocolとなってします
・parallel trialでは十分なpopulationを集められない
・これらの理由でクロスオーバー試験とした
・便秘のためにblindしていない
モルヒネの投与量が少ない、本研究は20mg/dayとした
・投与量を変えての研究が必要
・夜の呼吸困難の減少や睡眠の改善に酸素投与量の増加やCPAP使用など関係している可能性
・VASでの7-10mmの変化が臨床的に有意としていいのか疑問が残る
・呼吸困難スケールの距離の変化に相関する臨床指標を知らない