コミュニティホスピタリスト@奈良 

市立奈良病院総合診療科の森川暢が管理しているブログです。GIMと家庭医療を融合させ、地域医療に貢献するコミュニティホスピタリストを目指しています!!!

メトクロプラミドによるアカシジア

 

 臨床的にメトクロプラミドによるアカシジアを疑う方がいたので調べてみました。

 様々な胃腸障害に使用されるドーパミン2受容体アンタゴニストであるメトクロプラミドは、様々な錐体外路運動障害を引き起こすか、または悪化させることが知られている。

 

厚生労働省から出ているアカシジアの対策マニュアルは、よくまとまっています。

http://www.mhlw.go.jp/topics/2006/11/dl/tp1122-1j09.pdf

これによると薬剤性のアカシジアは急性と遅発性に分類

 

急性アカシジアでは、薬剤の開始から6週間以内ならありうるが、大概は使用後3日-2週間以内が多いと。

 

 

 薬剤性アカシジア評価尺度

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jamanetwork.com

 

 

メトクロプラミドによって引き起こされるmovement disorderのレビュー

16人の患者を解析。

発症時の平均年齢は63歳(24〜85歳)であり、女性は3対1で男性数より多かった。

遅発性ジスキネジーが最も多かった(n = 10 [63%])。

5人の患者にメトクロプラミド誘発パーキンソン症候群

1人の遅発性ジストニア

1人の患者にはアカシジアが起こった。

 

症状発症までの平均期間は12ヶ月(1日〜4年)。

なお、メトクロプラミドによるmovement disorderの認識がなかったことによって発症後、平均6ヶ月間(範囲、1日〜2年)治療が継続されていた。

ということで長期間のメトクロプラミドの内服は避けるべきと。

 

上記レビューは長期間メトクロプラミドを使用した場合のmovement disorderが中心。

それではメトクロプラミドをIVしてすぐにアカシジアが発症するのか??

 

 

 

 

Metoclopramide-induced akathisia

J Anaesthesiol Clin Pharmacol. 2012 Oct-Dec; 28(4): 548–549.

doi:  10.4103/0970-9185.101967

 

ケースレポート。

45歳の男性。

熱傷あとの皮膚移植の予定手術の患者。

麻酔の前投与として、ラニチジン50mgおよびメトクロプラミド10mgをIVした。

5分後、患者は不快な感覚を呈し、不穏で激しく動いて見え、手足をバタバタ動かし、動き回りたいと言って、ルートを抜去しようとした。

ミダゾラム1.5mg をIVされたところ症状は改善。

メトクロプラミドによるアカシジアの疑い。

 

ということで、メトクロプラミドのIVによって急性のアカシジアは起こりうるということで良さそう。

 

なお、治療は当然原因薬剤の中止 それが難しければ減量。

 

他の治療としては、ベンゾジアゼピン、βブロッカー、抗コリン薬が挙げられる。

 

 

 

 

Managing antipsychotic-induced acute and chronic akathisia. - PubMed - NCBIDrug Saf. 2000 Jan;22(1):73-81.

上記の文献によると急性の抗精神病薬によるアカシジアの第1選択としては、プロプラノロールであり、第2選択としてベンゾジアゼピンとのこと。

 

 

 

 

Anticholinergics for neuroleptic-induced acute akathisia - Rathbone - 2006 - The Cochrane Library - Wiley Online Library

一方、抗精神病薬によるアカシジアに対して、抗ヒスタミン薬を使用することもあるとのことだが、こちらはコクランレビューも出ている。

ただ、結論としては抗ヒスタミン薬の効果は乏しいとのこと。

 

 

 

そして、抗ヒスタミン薬とミダゾラムをメトクロプラミドによるアカシジアで比較したRCTもある。

Acad Emerg Med. 2007 Aug;14(8):715-21. Epub 2007 May 31.

onlinelibrary.wiley.com

 

 

56人の登録患者のうち41人(73.3%)が女性。

ジフェンヒドラミン群では平均年齢は39.9(±15.7)歳であり、ミダゾラム群では40.9歳(+/- 16.2歳)であった。

最初の5分間における平均の主観的、客観的、および総体的な運動障害のスコアは、ジフェンヒドラミン群と比較してミダゾラム群で減少した(p <0.001)。

しかし最初の15分間の平均Ramsay鎮静スコアは、ジフェンヒドラミン群と比較してミダゾラム群で有意に増加した(p <0.001)。

⇒ということでミダゾラムジフェンヒドラミンよりも効果はあるが、より鎮静作用が強いとのこと。

 

 

なお、先の厚生労働省のマニュアルの治療のところには下記の記載あり。

http://www.mhlw.go.jp/topics/2006/11/dl/tp1122-1j09.pdf

薬剤誘発性の急性アカシジアが発症してしまった場合には、救急対応として中枢性抗コリン薬(ビペリデン、トリヘキシフェニジル)またはベンゾジアゼピン系薬剤(ジアゼパム、クロナゼパム)の投与が有効である。特にビペリデンには注射製剤があるので、診断的治療目的でも用いられる。

 

ということで一般的には抗コリン薬が使わることが多そう。

ただ、同マニュアルにはプロプラノロールの記載もあり。

近年は第1選択になっているが、血圧と脈拍のモニターが必須とのこと。

 

 

 

では、どうすればよいか??

 

最も、効果があるのはベンゾジアゼピンの印象。

症状が激しい場合は、ベンゾジアゼピンの点滴(ミダゾラムジアゼパム)になるのだろう。

プロプラノロールも効果があると思われ、特に明らかな頻脈がある症例には良いのかもしれない。

抗コリン薬は考慮しても良い(特にピペリデンは注射液があり。筋注で使われることが多い。)

ヒスタミン薬としてアタラックスPも使いやすいかもしれないが、抗ヒスタミン薬使用の根拠は乏しい。

 

 

結局、元々内服予定だったベンゾジアゼピン眠剤の内服で症状は改善。

まずは、ベンゾジアゼピンの内服が無難かもしれない。