コミュニティホスピタリスト@奈良 

市立奈良病院総合診療科の森川暢が管理しているブログです。GIMと家庭医療を融合させ、地域医療に貢献するコミュニティホスピタリストを目指しています!!!

血清乳酸値の腸管虚血への診断特性

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC4177190/pdf/1865-1380-6-44.pdf

 

クロスセクショナル試験 ウガンダのMulago Hospital で行われた。

f:id:jyoutoubyouinsougounaika:20190625083547p:plain

⇒当然虚血例では腹痛が多い傾向 腹部膨満も多い

 

f:id:jyoutoubyouinsougounaika:20190625084116p:plain

乳酸値が高いと腸管虚血の可能性はやや高まる。

 

f:id:jyoutoubyouinsougounaika:20190625084737p:plain

 

 腸管虚血のある人のうち、28/40(70%)は可逆性で12/40(30%)は不可逆性だった。

乳酸は腸虚血全体を予測し(p = 0.011)、PPV = 14%であったが、より有意に不可逆的虚血を予測した(p = 0.009)、PPV = 42%。

血清乳酸値は腸管虚血全体について感度66%、特異度53% LR+1.4  LR-0.64

不可逆性の腸管虚血について感度71%、特異度80%であった。LR+3.55 LR-0.36

 

*たしかに当院で経験した症例でも絞扼性イレウスにも関わらず、腸管壊死する前に手術した症例では全く乳酸値が上昇していませんでした。

血清乳酸値は上昇していれば腸管虚血を疑いますが、陰性だから大丈夫とは言えないと思います。

 

UIPパターンでの膠原病肺の鑑別は?

https://www.ajronline.org/doi/full/10.2214/AJR.17.18384

CT Features of the Usual Interstitial Pneumonia Pattern: Differentiating Connective Tissue Disease–Associated Interstitial Lung Disease From Idiopathic Pulmonary Fibrosis Read More: https://www.ajronline.org/doi/full/10.2214/AJR.17.18384

 

UIPパターンの間質性肺炎を診たときに膠原病肺をどこまで考えるか?

f:id:jyoutoubyouinsougounaika:20190624082510p:plain

特発性より膠原病肺のUIPのほうが若年で女性が多く、喫煙者は少ない傾向

 

 

f:id:jyoutoubyouinsougounaika:20190624082642p:plain

CTでUIPパターンをきたす場合は、関節リウマチ、強皮症、筋炎が多い。

 

膠原病関連のUIPパターンのCT所見の特徴

f:id:jyoutoubyouinsougounaika:20190624083921p:plain

〇以下膠原病肺のCT所見

Anterior upper lobeサイン

f:id:jyoutoubyouinsougounaika:20190624084838p:plain

f:id:jyoutoubyouinsougounaika:20190624085159p:plain

f:id:jyoutoubyouinsougounaika:20190624085316p:plain

f:id:jyoutoubyouinsougounaika:20190624085413p:plain

 

膠原病肺のほうが特発性間質性肺炎よりも予後は良い傾向

f:id:jyoutoubyouinsougounaika:20190624084545p:plain

 

膠原病肺の特徴があるほうがやはり予後が良い傾向

f:id:jyoutoubyouinsougounaika:20190624084633p:plain

 

NMDA脳炎の診断

Up to Dateより

 

https://www.thelancet.com/journals/lanpsy/article/PIIS2215-0366(19)30001-X/fulltext

〇年齢

年齢と性別の分布は若い女性を中心にしている。

症例の頻度は40歳を過ぎると大幅に減少(図2A)

464例中139例(30%)が卵巣奇形腫、7例(2%)が単純ヘルペスウイルス脳炎の既往、および24例(5%)が妊娠していた。

f:id:jyoutoubyouinsougounaika:20190621090511p:plain

 

 

 

〇NMDA脳炎の症状

・前駆症状の頭痛、発熱、またはウイルス感染様の症状を呈し、その後数日間で以下の症状が多段階に進行する。

 

●顕著な精神症状(不安、動揺、奇妙な行動、幻覚、妄想、混乱した思考)。

不眠症

●記憶障害

●痙攣

意識障害、緊張性症状を伴う昏睡

●頻繁なジスキネジア:口腔、顔面、舞踏様運動、ジストニア、硬直

●自律神経不安定 :高体温、血圧の変動、頻脈、徐脈、心停止、人工呼吸が必要な低換気

●言語機能障害:言語出力の低下、無言症、反響言語

 

 

〇特徴

https://www.neurology-jp.org/Journal/public_pdf/049110774.pdf

f:id:jyoutoubyouinsougounaika:20190621001121p:plain

 

〇古典的五徴

f:id:jyoutoubyouinsougounaika:20190621001221p:plain

〇症状の一覧表

https://www.thelancet.com/journals/lanpsy/article/PIIS2215-0366(19)30001-X/fulltext

f:id:jyoutoubyouinsougounaika:20190621002928p:plain

興奮、幻覚、妄想、不安などの頻度が高い。

 

 

〇精神科的な症状

⇒急性精神病らしい病型となることが最多

f:id:jyoutoubyouinsougounaika:20190621091001p:plain

 

 

・検査など

脳波(EEG)は412人の患者のうち257人(62%)で異常

MRIは426人の患者のうち135人(32%)で異常。

https://www.thelancet.com/journals/lanpsy/article/PIIS2215-0366(19)30001-X/fulltext

 

髄液は細胞数増加や、オリゴクローナルバンドが特徴的だが初期には正常。

頭部MRIは正常であることが多い。

 

http://www.ajnr.org/content/early/2018/03/22/ajnr.A5593

type 1: 正常

type 2: 海馬のみ

type 3: 病変があるが海馬に及んでない

type 4: 病変は海馬とそれ以外の両方に認める

 

f:id:jyoutoubyouinsougounaika:20190621002258p:plain

 

なお海馬病変があると予後不良かも

f:id:jyoutoubyouinsougounaika:20190621002532p:plain

 

 

 

〇診断のポイント

f:id:jyoutoubyouinsougounaika:20190621001305p:plain

MRIが正常だからと言って統合失調症と片づけない!!

 

 

 

https://www.thelancet.com/journals/laneur/article/PIIS1474-4422(15)00401-9/fulltext

〇診断基準

f:id:jyoutoubyouinsougounaika:20190621001029p:plain

⇒症状がありNMDA抗体が陽性で他の疾患が否定的なら診断。

⇒脳波異常 or 髄液異常があり、他の疾患が否定的で、さらに特徴的な症状が揃っている場合もまた診断される。

 

〇鑑別疾患

原発精神障害(急性精神病または統合失調症

・悪性カタトニア

・神経性悪性症候群

・ウイルス性脳炎(単純ヘルペスウイルス,帯状疱疹ウイルス,HHV-6,エンテロウイルス,インフルエンザウイルス)

・橋本脳症

・ウェルニッケ脳症

・全身性エリテマトーデス

・Sjögren症候群

・細菌性髄膜炎

・無菌性髄膜炎(梅毒や結核 etc) 

⇒特にヘルペス脳炎との鑑別が重要になるため、髄液中のヘルペスPCRの結果が出るまではアシクロビルの点滴や、細菌性髄膜炎を念頭として細菌培養が出るまでの抗菌薬投与は許容されるかもしれない。

ウェルニッケ脳症のリスクがある場合にはビタミンB1の投与も同じく許容されるかもしれない。

NMDA脳炎の治療

NMDA脳炎の治療について調べてみた。

 

ひとまず、こちらの論文が日本語で読めてお勧め。

https://www.jsnt.gr.jp/Archive/pdf?gid=cq3neuro/2014/003101/007/0030-0036

 

〇Up to Dateより

治療法は免疫抑制と腫瘍切除

治療をしなければ、進行性の神経学的悪化が起こり致死的になる。

前向きのRCTがないため、治療の決定は個別化して考える。

患者の年齢、腫瘍の有無、症状の重症度を考慮に入れる必要がある。

観察研究と臨床経験に基づいて以下の治療を行う

 

〇First line therapy

・腫瘍があれば適切な時期に切除を行う(可能な限り早く切除)

ステロイドパルス(例、成人でメチルプレドニゾロン1g/日を5日間)が基本。

それに加えて以下のどちらかを併用する。

・静脈内免疫グロブリン投与 IVIG(400 mg / kg 5日間

血漿交換

 

IVIGと血漿交換の効果が優れているかは不明。

臨床医の中には、非常に若い場合、重症のジスキネジア、非常に興奮している、自律神経が不安定な場合は、IVIGが簡便であり優先されるという意見もある。

 

〇Second  line therapy

初期治療で臨床的改善の証拠がない場合

リツキシマブもしくはシクロホスファミドまたはその両方を使用する。

 

 

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/21163445

https://www.jsnt.gr.jp/Archive/pdf?gid=cq3neuro/2014/003101/007/0030-0036

 

〇治療のフローチャート (上記のまとめ)

f:id:jyoutoubyouinsougounaika:20190620231556p:plain

 

2013年にこのアルゴリズムに沿って解析された抗NMDA受容体脳炎の後ろ向き観察研究が発表。

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/23290630

本抗体陽性の577例中,4 ヵ月以上経過観察できた501例を対象として解析

⇒24 ヵ月経過観察できた252例中では203例 (81%)がmodified Rankin Scale (mRS)0-2と予後は良好で,死亡例は24例(10%)

 

なお、急性期から慢性期にかけて的な管理を行い,深部静脈血栓症や肺塞栓,感染症などの重篤な合併症を回避し,長期臥床に伴う褥瘡や関節拘縮を防ぎうるかが予後に密接に関係するため、全身管理が重要とのこと。

好酸球性多発血管炎性肉芽腫の治療

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/29766394

Treatment of Eosinophilic Granulomatosis with Polyangiitis: A Review.

 

f:id:jyoutoubyouinsougounaika:20190619081628p:plain

・EGPAは全身性炎症性壊死性血管炎で、複数の病因が関与して、好酸球が重要な役を果たしている。

・EGPAでは病態の重症度に応じた薬物的治療が重要である。

・コルチコステロイドはEGPA治療の主体であるが、再発が頻繁にある。

・免疫抑制薬は予後不良の患者には必要だが、有効性は再発予防および喘息/鼻副鼻腔炎の症状に限定されている。

・メポリズマブ(抗インターロイキン-5)はEGPAに対して最初に承認された生物学的製剤である。

好酸球およびB細胞を標的とした薬剤が評価されている。

 

 

機序

f:id:jyoutoubyouinsougounaika:20190619082955p:plain

 

〇生物学的製剤の使い分け

f:id:jyoutoubyouinsougounaika:20190619083102p:plain

⇒ IL-5を介して好酸球をブロックするメポリズマブが効果的。

 

 

 

〇治療

f:id:jyoutoubyouinsougounaika:20190619083135p:plain

 

〇重症度によって治療方針が異なる。

f:id:jyoutoubyouinsougounaika:20190619084509p:plain

これらに当てはまらなければまずはステロイド単剤で

これらに1つでも当てはまればステロイド高容量+免疫抑制剤を考慮(上の図の右側のフロー」)

臨床推論カンファレンス 嚥下困難 2019年6月5日

 

åçã®èª¬æã¯ããã¾ããã

6月から週1回臨床推論カンファレンスを開始しました!

嚥下困難を主訴にきた中年男性についての臨床推論カンファレンスでした。

 

嚥下の5期モデルを解剖学的にざっくり考えると以下のようになります。

〇認知

〇舌

〇口腔

咽頭

〇食道

嚥下困難ではどこの障害であるかを意識します。

さらに、咽頭と食道は以下のように分類します。

 
①-A 機能的障害(神経筋疾患)
●上位運動ニューロン
脳血管性病変、脱髄性疾患、脳炎、脳腫瘍、変性疾患(PD,MSA,PSP etc)、感染(神経梅毒、ライム病)
 
●下位運動ニューロン
ギランバレー、CIDP、ジフテリアなど運動ニューロン障害をきたす神経疾患。
 
反回神経麻痺
外傷・手術などによる損傷、腫瘍・血管などの圧迫
 
●筋疾患
筋ジストロフィー、ALS、重症筋無力症、ボツリヌスなど
 
②- B 機械的障害
●物理的閉塞
口腔内腫瘍、椎骨棘
 
●口腔内乾燥
抗コリン薬、抗ヒスタミン薬、シェーグレン、脱水
 
喉頭蓋炎、深頸部膿瘍
 
 
咽頭の問題では、 嚥下を始める時点で or 嚥下直後に症状が出ることが多いです。
 
機能的な咽頭の問題であれば、球麻痺や偽性球麻痺、反回神経麻痺などを伴うことが多いです。つまり嗄声を伴うことが多く重要な随伴症状になります。当然、脱力や痺れ複視などの神経学的随伴症状を伴うことが多いです。
爆発性の咳が出来ない、息漏れ様の嗄声では反回神経麻痺を疑います。
 
咽頭の解剖学的問題では悪性腫瘍を念頭に、タバコなどのリスクを聴取しつつリンパ節腫脹の有無を確認します。
口腔乾燥症も嚥下障害の原因となりえます。
神経所見に問題はなく、閉塞なら嚥下直後に詰まった感じが誘発されるはずです。
なお発熱、咽頭痛、嚥下時痛などがあれば深頸部の感染症を考えます。
 
 
 
②食道
 
②-A 機能的障害(食道運動障害)
・アカラシア
・び漫性食道痙攣(嚥下時の絞り出されるような痛みを伴なう)
・強皮症(レイノーや四肢硬化、毛細血管拡張を伴う)
好酸球性食道炎(多数のリング状狭窄あり)
 
 
②- B  機械的障害
●閉塞など
・異物
・悪性腫瘍
・外からの圧排(縦隔腫瘍、大動脈etc)
・Plummer-Vinson症候群(舌炎、青色強膜、結膜蒼白)
・消化性潰瘍による食道狭窄
・憩室/索状物/粘膜襞
 
●粘膜障害(原則痛みを伴うことが多い)
感染症(ヘルペスカンジダ、サイトメガロ etc)
・急性食道壊死
 
 
食道の問題では嚥下直後ではなく、通常嚥下運動の後15秒以内に症状が出ることが多いとされます。
飲み込んだ食物がのどや胸につかえる感じという表現になることが多いです。
解剖学的な問題は 流動物の嚥下は大丈夫だけど、固形物の嚥下障害のみを認める場合に考える。
一方で、冷水が飲み込みにくいけど固形物は大丈夫というような逆説的な症状があればアカラシアなども考えます。
食道炎などでは嚥下時痛を伴うことも多いので鑑別に有用です。
基本的には上部消化管内視鏡を行うことが診断的になります。
 
 
 
〇本症例では
本症例では耳鼻科に何度か受診しても原因が不明と言う病歴がありました。
また呼吸困難感も伴うという病歴もあり神経筋疾患も念頭に置きましたが、神経筋疾患を疑う随伴症状も乏しい状態でした。
舌、口腔の視覚的問題も耳鼻科受診歴もあり考えにくく、先行期の症状もなさそうであり、食道の問題と考えました。
嚥下時痛は乏しいものの、上部消化管内視鏡は必須と考えました。
労作時呼吸困難があることからは肺、心臓、貧血の問題も考えますが一元的に説明することは難しそうな印象でした。
倦怠感もあるので副腎不全も鑑別に挙げました。
あとは強皮症による食道機能不全なども鑑別に挙がるかと考えました。
心因性ではないかという鑑別も出ましたが、そのトリガーとなるような心理社会的要因が皆無だったので、その診断は慎重にしたほうがよいと考えました。
結果的には高Ca血症と貧血、蛋白アルブミン解離を認め、多発性骨髄腫±アミロイドーシスという診断でした。
診断は非常に難しく病歴と身体診察からは予測が困難でしたが非常に勉強になりました。
アミロイドーシスの食道病変による嚥下困難と考えました。
実際に、多発性骨髄腫からの light chain amyloidosisによって巨舌をきたし嚥下困難をきたした症例も報告されています。
 
ということで、とても勉強になった症例でした。
これからも臨床推論カンファレンスを継続していく予定です!!
興味があれば、見学を!!
 
 

〇臨床推論を勉強するなら以下の本がお勧め! 

肺炎レクチャー 2019年6月7日

今日から週1回のランチレクチャーを市立奈良病院で始めました。

研修医向けに肺炎のレクチャーをしました。

f:id:jyoutoubyouinsougounaika:20190607161431j:plain

 

f:id:jyoutoubyouinsougounaika:20190607161500p:plain

 

肺炎の否定にはバイタルサインが重要です。

 

f:id:jyoutoubyouinsougounaika:20190607161535p:plain

 

また誤嚥性肺炎の診断についても触れました。

f:id:jyoutoubyouinsougounaika:20190607161659p:plain

f:id:jyoutoubyouinsougounaika:20190607161748j:plain

f:id:jyoutoubyouinsougounaika:20190607161803j:plain

 

 

その後肺炎の抗菌薬選択もレクチャーをさせて頂きました。

ひとまず、コアレクチャーを毎週継続していきたいです。