コミュニティホスピタリスト@奈良 

市立奈良病院総合診療科の森川暢が管理しているブログです。GIMと家庭医療を融合させ、地域医療に貢献するコミュニティホスピタリストを目指しています!!!

褥瘡から壊死性筋膜炎になるか

高齢女性

仙骨部の褥瘡を施設で診ていたところ、褥瘡が黒色化して意識レベル低下し高熱も認め、来院。

褥瘡周囲および大腿に気腫があり、壊死性筋膜炎と診断。

褥瘡から壊死性筋膜炎になることは??

 

Necrotizing soft tissue infections developing from pressure ulcers. - PubMed - NCBI

 

日本からの報告

褥瘡から、Necrotizing soft tissue infections(STIs)になった症例のレビュー
STIsは臨床的に判断

単一施設の後ろ向きの観察研究

 

褥瘡とSTIsの違いの模式図

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AはSTIsで感染が筋膜まで広がりガス産生している。

Bは、感染が褥瘡内でとどまっている

 

 

 

〇ベースライン

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平均82.9歳と高齢 女性がやや多い

75%が認知症で58%が糖尿病 →特に認知症・糖尿病の褥瘡は要注意

部位は基本的に臀部(仙骨が46%と最多、大転子17%、尾骨17%、座骨8%)

lrinec scoreは54%で5点以下→一般的な壊死性筋膜炎よりも低い傾向

 

 

 

〇起因菌

バクテロイデスが最も多い起因菌→嫌気性菌が濃厚に関与

単一菌は4%のみ。

96%は2つ以上の起因菌が検出→基本的に嫌気性菌+好気性菌の多菌種が関与

→基本的には壊死性筋膜炎でも多菌種が関与するTypeⅠである

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〇治療

基本的にデブリードマン+抗菌薬

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→カルバペネムが使われることが多い。 29%が血培が生えた(バクテロイデスが最も多い起因菌)

30日の死亡率は8%と意外に低めな印象。。

→理由は広域抗菌薬の使用とデブリの徹底と本文中には考察あり。

速やかなデブリードマンと、広域抗菌薬の使用は確かに大切だと思うが、褥瘡関連のSTIs自体は通常のSTIsより死亡率が低い傾向があるかもしれない。

 

 

 

写真

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フェブリクはアロプリノールに比べて心血管リスクを増やす?

http://www.nejm.org/doi/full/10.1056/NEJMoa1710895

 

P  痛風と診断され、心血管疾患の病歴がある患者

痛風UA ≥7.0mg/dL or 治療を1-3wk中断後にUA≥6.0mg/dL

心血管障害心筋梗塞、入院を要する不安定狭心症脳卒中、入院を要する一過性虚血発作、末梢血管疾患、または微小血管 or 大血管障害を認める糖尿病

I アロプリノール郡

腎機能によって調整。 CCr≧60でアロプリノール300mg/日で開始、600㎎/日になるかUA<6.0まで投与

 

C フェブリク郡

フェブリク40㎎で開始し、2週間後にUA<6.0にならなければ、80㎎に増量

 

O

primary outcome

心血管死、非致死性の心筋梗塞、非致死性の脳梗塞、不安定狭心症に対する緊急の血行再建術

 

非劣性試験

double -blindの多施設のRCT

ランダムな割付。 腎機能で層別化

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→ベースラインはほぼ、同等 60歳弱くらいの年齢層

 

サンプルサイズは足りている。

プライマリーエンドポイントが624起こる想定で計算し、90%の検出力

 

結果

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プライマリエンドポイントでは、非劣性であるといえる。

azard ratio, 1.03; upper bound of the one-sided
98.5% confidence interval [CI], 1.23; P = 0.002
for noninferiority

 

心血管死亡はフェブリクで高い傾向。

In this analysis, the rate of cardiovascular death was higher
in the febuxostat group than in the allopurinol
group (hazard ratio, 1.49; 95% CI, 1.01 to 2.22)

 

 

〇まとめ。

discussionには、相当に脱落したのがlimitationと。

しかし同様に脱落しているのでベースラインは同等と。

いずれにせよ、Hard outcomeで差が出ているのはインパクトが大きい。

心血管リスクの高い患者では、フェブリクは避けるほうが無難と考える。

 

 

 

人工関節後のVTE予防 DOAC→アスピリン NEJM

www.ncbi.nlm.nih.gov

 

P  待機的に、片側の初回または再置換で、THA or TKAを受ける患者

除外 過去3か月に下肢の骨折、 癌のメタ

I 術後すぐにリバロキサバン10㎎1日1回投与を開始し術後5日まで継続→術後6日目からアスピリン81㎎ し追加で9日間投与(THAでは追加で30日間投与)

C 術後すぐにリバロキサバン10㎎1日1回投与を開始しそのままリバロキサバンを継続し、追加で9日間投与(THAでは追加で30日間投与)

O primary outcome:症候性VTE(近位DVTと肺塞栓)

  primary safety outcome:出血(大出血、大出血ではないが臨床的に問題となる出血)

 

study design

多施設の前向き大規模RCT double blind

割付をしらない第三者が解析

サンプルサイズは3426人で計算→足りてる

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ベースラインはほぼ同等か  平均62歳前後

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〇結果

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アスピリン郡はリバロキサバン郡に非劣性。

 臨床的に問題になる出血も変わりなし。

 

〇感想

筆者もlimitationで触れているが、出血に関してはリバロキサバンとアスピリンで同じくらいとは言えないかもしれない。

しかし、VTE予防に関しては非劣性と言えるかもしれない。

今後の追試が待たれるが、DOACを予防投与する場合、アスピリンに変更するのはリーズナブルかもしれない。

なお、リバロキサバンは日本では整形術後の予防の適応はない。

 

症例カンファ 2018年3月29日

高齢女性の複数回の嘔吐と喀痰増加、傾眠傾向

元々、ここ1か月傾眠傾向が進んでいる

喀痰が増えているから、誤嚥性肺炎??

しかし、そもそも嘔吐した原因は? 傾眠傾向の原因は?

既往歴として脳出血認知症ある。

診断は?

嘔吐を認めれば、ROSでどの臓器に問題があるかを考える。

 

嘔吐は以下のフレームで考えます VOMMITSAH

 

Vascular    →心筋梗塞(高齢、女性なので胸痛がなくても良い)
Omedeta(おめでた⇒妊娠)
Metabolic →高Ca、DKAなど
Mmemai(めまい)
Infection(感染症) →尿路感染
Tablet(薬剤性)  →特に、Ca製剤、ジギタリスなど
pSycological(精神)
Abdominal(消化管、肝胆道)→胆管炎、胆嚢炎、腸閉塞、感染性腸炎
Head(頭蓋内)→髄膜炎脳出血 
本症例ではMg製剤を内服しているので、Drugとして高Mg血症を疑う。呼吸数も30と早くBT37.9度と発熱あり、意識レベルも不良だが認知症なので評価が難しい??
身体所見上は特記事項なし。次の一手は?? 
血培2セット、電解質、胆道系を含めた採血、血液ガス、腹部エコー(腹部CT)、心電図、胸部Xpはすぐにできる。 後は、頭部CT,髄液穿刺も。高齢女性なので鼠径ヘルニア、大腿ヘルニアも鑑別に。鼠径ヘルニアは鼠径部の診察で分かる。大腿ヘルニアはエコーで分かる。ひとまず胸腹部CT取るかという話になったが、レベル悪そうなら頭部CTも取ろうと。。 頭部CTでは右前頭葉の広範な脳出血でミッドラインシフトあり。→転送とした
認知症患者の意識障害の評価は難しい。元々傾眠傾向ならもともと。発熱でレベルが悪いと早合点しないように。高齢者は絞り切れないので嘔吐の鑑別を網羅的に行うことが大切。検査をどこまで行うかは難しいが、検査を出来る環境なら特に高齢者なら検査の閾値は低くせざるおえない
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

 

歓送迎会 2018年3月23日

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歓送迎会がありました。

出会いと別れの季節ですが、今年も送り出す人が多く寂しいと思いました。

その反面、彼らの新天地での活躍を確信することが出来ました。

卒業生は後期研修医もNPも皆、将来の領域のリーダーとして羽ばたいてくれることでしょう。

 

 

K先生 さよならレクチャー

N先生と同じく3年間当院で研修したK先生のレクチャーです。

CT値とWL/WW

以下のブログより引用

X線CTの話 「白くみえるもの その3」 | にしなか歯科クリニック Blog

 

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ウインドウ幅(WW)の変化

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ウインドウレベル(WL)の変化

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WL変更

 

脳卒中疑い→WL40 WW60が最適

 

症例 70台男性

CTでは異常なし??

しかし、何度も痙攣をおこす。

大脳鎌が高吸収で血栓

→MRVで静脈同血栓症と確定

 

肺塞栓疑い 単純CT

肝腎コントラストが大切。

血栓を単純CTで疑うことも出来る。

大動脈解離の造影CTもウインドウ幅を広げないと見落とすこともある! 

 

 

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N先生 さよならレクチャー

 

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後期研修医のN先生のさよならレクチャーです。3年間お疲れさまでした。

 

若年女性の四肢の痛み。

下腿が一番痛い?

関節の可動域制限なし。 歩くと痛い。

関節ではなさそう。特に深く触ると痛い。→骨??

CRP6 血沈31 他肝酵素軽度上昇

Xpでは特記事項なし

MRIでは脛骨のSTIR高信号。

血培も陰性 

PET-CTと骨シンチ??

大腿骨遠位、脛骨に集積。

骨生検したら、非特異的な炎症のみ。

 

→どうググる??

骨 全身 痛みでググる→それでは、いまく出ない。

多発 骨髄炎でググると→慢性再発性多発性骨髄炎(CRMO)がヒット。

適切な医学用語に変換して検索することが大切。

 

CRMOはSAPHOの類縁疾患

治療はビスホスホネート、NSAIDS

 

 その後は症例アラカルト

Still

抗ARS症候群

GCA

高安

不全型ベーチェット病

SLE+強皮症

 

など。。

 

城東病院3年間で経験した症例。。

初診外来 779例

入院患者 341例

 

城東病院の研修の良さ 

指導医のバリエーション。

NPさんと一緒に働ける良さ。

初診・ER→病棟→継続外来と継続的に患者さんを診れるのが良い。

そのなかで多職種連携しながら全人的に診る。

つぎは、三重に。