コミュニティホスピタリスト@奈良 

市立奈良病院総合診療科の森川暢が管理しているブログです。GIMと家庭医療を融合させ、地域医療に貢献するコミュニティホスピタリストを目指しています!!!

坐骨神経痛に対してプレガバリンの効果は乏しく、副作用が増える NEJM2017

Trial of Pregabalin for Acute and Chronic Sciatica

N Engl J Med 2017;376:1111-20.

 

【Abstract】(抜粋)

坐骨神経痛の治療に関するエビデンスは限られている。プレガバリンはタイプによっては神経痛に効果があるので、坐骨神経痛にプレガバリンの効果があるかを調べる研究を行った。プレガバリンVSプラセボのRCTを行った。プレガバリンは150mg/dayから600mg/dayまで漸増した。プライマリ・アウトカムは下肢痛をNRS0-10で評価した。209名を対象としたが、有意差はなかった。有害事象はプレガバリン群で明らかに多かった。

 

A この試験の結果は信頼できるか
①その試験は焦点が明確な課題設定がされているか
P 

2013年9月~2015年3月にオーストラリア・ニューサウスウェールズにある47医療施設の外来患者

 Inclusion

18歳以上で中等度から高度(生活に支障があるレベル)の下腿の疼痛が1週間から1年間続いており、神経支配に沿った疼痛、筋力低下、感覚障害、反射低下を伴っている患者。

 Exclusion

馬尾症候群、妊娠、授乳、挙児希望、脊椎の手術予定、ステロイド注射・内服治療を予定している、重度のうつ、プレガバリンが禁忌、すでに抗てんかん薬・抗うつ剤・鎮静剤を飲んでいる。

I & C 

プレガバリンVSプラセボ

どちらも過度に安静にしない、徐々に痛みは軽減するだろうといったアドバイスを行った。プレガバリン150/dayから開始して1週間ごとに300→450→600mg/dayに増量して4週間継続し、その後1週間かけて漸減する。途中でNRS0-1が72時間保つか副作用で増量できなそうな場合は、その時点のdoseを4週継続したのち、1週間かけて漸減する。

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O 

プライマリ・アウトカム:8週目に直近24時間の下肢痛を0-10でスコアリングする。52週目にも評価

セカンダリ・アウトカム:その他さまざまなADL尺度など

 

A②その試験は設定された課題に答えるための研究方法がとられているか? 

47医療施設の外来患者に対してプレガバリンVSプラセボのランダム化比較試験である

 

A③ 患者はそれぞれの治療群にどのように割り付けられたか?

コンピューターによる数字の割り付けがされている

 

A④研究対象者、現場担当者、研究解析者は目隠しされている?

全員目隠しされていると記載あり

 

A⑤研究にエントリーした研究者が適切に評価されたか?

ITTの記載あり

 

A⑥研究対象となった介入以外は両方のグループで同じような治療がされていたか?

ベースラインはTable1。介入群でやや男性が多い、少し若い傾向があるか。

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その他の介入としては、安静にしすぎないなどのアドバイス運動療法の施行が行われた。WHOラダーに沿った鎮痛薬の投与が行われた。抗てんかん薬、SSRISNRI、三環系抗うつ薬、局所リドカイン、ベンゾジアゼピンは使用しない。

Appendixより。他の治療薬の使用率の差はない。

   

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A⑦その研究のための対象患者数は偶然の影響を小さくとどめるのに十分な数か?

204名が必要であり、209名がリクルートされているので十分である。

 

B結果は何か?
B⑧a 結果はどのように示されたか? b 有意差はあるか? 
プライマリ、セカンダリともに有意差はなかった

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c 副作用は

当然だがdizzinessが圧倒的にプレガバリン群で増える。Dorsalgia(背部痛)がプレガバリン群で多いのは???重篤な副作用は差がない。Appendixもみるとプレガバリン群で嘔気・嘔吐、視覚障害、頭痛、筋痛も多そうな傾向がある。

 

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C臨床にこの結果はどのように応用できるか? 

しっかりデザインされたRCTで痛みに対するアウトカムが得られず、dizzinessなどの副作用が明らかに多いことから、坐骨神経痛に対して使うメリットはないだろう。

糖尿病性神経障害や帯状疱疹後神経痛などのすでにエビデンスがそれなりに確立された痛みには使ってもいいかもしれないが、坐骨神経痛使う気にはあまりなれない。

愛され研修医 10箇条

① ホウレンソウを徹底しようぜ!

② まず足で稼ごうぜ!

③ 優先順位を考えようぜ!

④ 指示は早く・的確に出そうぜ!

⑤ コメディカルを名前で呼ぼうぜ!

⑥ 一瞬で調べようぜ!

⑦ 自分が出来ないことは頼まないぜ!

⑧ メモ魔になろうぜ!

⑨ チェックリストを作ろうぜ!

⑩ まず結論からプレゼンしようぜ!

呼吸困難に対するモルヒネ

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objective:
基礎疾患のある患者の呼吸困難感の緩和に対して経口モルヒネの有効性を確認する
 
design:
ランダム化二重盲検プラセボ比較クロスオーバー試験
 
setting :
南オーストラリアの病院における4つの外来クリニック
 
participants:
過去にオピオイド使用のない48人(平均年齢76歳)、うち42人(88%)がCOPD患者
20mg経口モルヒネ徐放剤またはのプラセボを4日間治療しフォローし、その逆も同様に行う
下剤は必要時処方
 
main outcome measures:
4日間治療した時点で以下を評価
朝夜の呼吸困難を100mm visual analogue scale
睡眠の質
wellbeing
身体活動のパフォーマンス
副作用
 
results:
38人が試験を完遂した
3人が副作用、2人はおそらく副作用(嘔気、嘔吐、鎮静)で脱落した
被験者はモルヒネでの治療により、有意に呼吸困難スコアが朝は6.6mm、夜9.5mm(それぞれP=0.011. 0.006)減少した
モルヒネ治療中、被験者はよりよい睡眠を得られた(P=0.039)
下剤使用にも関わらず便秘となった(P=0.021)
ほかの副作用は有意ではなかった
 
conclusions:
プライマリ・ケアで低用量モルヒネ徐放剤は有意に難治性呼吸困難を改善する
 
A この試験の結果は信頼できるか
① その試験は焦点が明確な課題設定がされているか
P:patient
 
・適切な治療にもかかわらず安静時呼吸困難のあるオピオイド使用のない成人
・血清クレアチニン値が正常値の2倍以内
・酸素・薬物治療が安定
・日々の記録ができる
・除外基準:最近のオピオイド使用、意識障害、鈍麻★、薬物乱用の既往がある
 
I:intervention
C:compare
 
・20mg経口モルヒネ徐放剤を4日間内服
プラセボを4日間内服
・クロスオーバー試験のため、その逆も行う
 
O:outcome
 
・プライマリアウトカムは最終日の夜時点での呼吸困難スケール(VAS)
・ほかのアウトカムは朝時点の呼吸困難スケール、Medical Research Council of Great Britainの運動耐性スケール、呼吸数、血圧、心拍数、酸素飽和度、呼吸困難による睡眠の妨げ、嘔気・嘔吐のスケール、便秘、意識障害、眠気、食欲、well-being
・スケールを用いて看護師が鎮静を評価
 
A② その試験は設定された課題に答えるための研究方法がとられているか?
・randome化されている
・double blindされている
・多施設
 
A③ 患者はそれぞれの治療群にどのように割り付けられたか?
・hospital pharmacy’s centralized serviceで割り付け
・被験者は主に高齢男性でCOPDで酸素投与をうけている人が多い
・ECOG>=2(歩行可能で日中50%以上はベッド外)と身体機能面で不良な人が多い
・両群で差はない
 
A④ 研究対象者、現場担当者、研究解析者は目隠しされている?
・double blindである
・被験者は重大な副作用については解析者にblindされていない
 
A⑤ 研究にエントリーした対象者が適切に評価されたか?
・intention to treat basisと記載
・ただ10人の脱落は解析に含めていない
 
※ITT:クロスオーバー試験のため、ITT解析である必要はない
※脱落者を解析しないといけないがモルヒネだけの群としての解析はできない
 
A⑥ 研究対象となった介入以外は両方のグループで同じような治療がされていたか?
・割り付けでは両群に差はないとされている
・最後のlimitationで夜の呼吸困難減少や睡眠改善に酸素投与量の増加やCPAP使用など関係している可能性の記載があり、モルヒネ以外の介入があった可能性は示唆される
 
A⑦ その研究のための対象患者数は偶然の影響を小さくとどめるのに十分な数か?
・20%ドロップアウトを考慮し、VAS10mmの差異検出のため、80%検出力には48人が必要と推定
・本研究はn=48で満たす
 
B結果は何か?
B⑧a 結果はどのように示されたか?
B⑧b 最も重要な結果は?
B⑨ その結果はどの程度正確か

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モルヒネ徐放剤はプラセボと比較し、有意に呼吸困難を減らす
・夜はVAS9.5mm減少(P=0.006)、朝はVAS6.6mm減少(P=0.011)
 

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・呼吸困難による睡眠の妨げを報告したのはモルヒネ群で有意に少なかった(P=0.039)
 
B⑧c  副作用はどうか?
 
・呼吸数に差はなかった
・過鎮静はなかった
・嘔吐、意識障害、鎮静、食欲低下はなかった
モルヒネ群はプラセボより便秘が多かった(P=0.021)

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・脱落者は10人、3人はモルヒネの副作用、2人はモルヒネの副作用の可能性、5人は他の理由(内訳はtable5)

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C その結果はあなたの現場で役に立つか?
COPD患者に対して外来で導入は経験がなく、外来でのモルヒネ導入はハードルは高い、また保険適応はなく外来での導入は難しい
・クロスオーバーする前後で解析があるとよい
・今まで数が足りていないスタディが多く、またターミナルステージでのRCTがなかなか難しい中でモルヒネの呼吸困難の有用性を示した点では意味のある論文であった
 
※limitations
・休薬期間:washout periodがない
モルヒネの副作用がプラセボ期間に持ち越された
・ill patientのため、short protocolとなってします
・parallel trialでは十分なpopulationを集められない
・これらの理由でクロスオーバー試験とした
・便秘のためにblindしていない
モルヒネの投与量が少ない、本研究は20mg/dayとした
・投与量を変えての研究が必要
・夜の呼吸困難の減少や睡眠の改善に酸素投与量の増加やCPAP使用など関係している可能性
・VASでの7-10mmの変化が臨床的に有意としていいのか疑問が残る
・呼吸困難スケールの距離の変化に相関する臨床指標を知らない

CKD患者の降圧薬は眠前投与が良い?

 

Bedtime Dosing of Antihypertensive Medications Reduces Cardiovascular Risk in CKD

J Am Soc Nephrol 22: 2313–2321, 2011

 

A この試験の結果は信頼できるか

その試験は焦点が明確な課題設定がされているか
P 

 Inclusion 

18歳以上で少なくともCKD(eGFR<60またはアルブミン尿(尿中アルブミン排泄≧30mg/24-hour urine、もしくは両方を3か月以上離れて少なくとも2回以上観察されていると定義)がある高血圧患者、性別は問わない

 Exclusion

妊婦、薬物もしくはアルコール依存、夜勤またはシフトの仕事をしている者、AIDS患者、1型糖尿病、二次性高血圧、心血管疾患(不安定狭心症心不全、致死性不整脈、心房細動、腎不全、Ⅲ-Ⅳ期の網膜症)、24時間血圧測定に耐えられない患者、研究要件に応じず、遵守出来ない患者

 

I :少なくとも1剤の降圧薬を眠前に内服

C :全ての降圧薬を朝に内服

 

O 

 Primary end points

全イベントの発生率:全死亡、心血管イベント(心筋梗塞狭心症、冠動脈再建術)、脳血管疾患(卒中およびTIA)、心不全、その他のイベント(急性下肢動脈閉塞および腎動脈塞栓)

メジャーイベントの発生率:心血管死亡、心筋梗塞脳梗塞および脳出血

 Secondary end points

全死亡(心血管死亡、その他の原因)、心血管イベント(心筋梗塞狭心症、冠動脈再建術)、脳血管イベント(心不全、その他のイベント)

 

 

A②その試験は設定された課題に答えるための研究方法がとられているか? 

前向きのオープンラベルランダム化比較試験

単施設

5.4年フォローアップし、長期の罹患と死亡を比較している

PROBE trial (prospective, randomized, open-label, blinded end point) design

 

A③ 患者はそれぞれの治療群にどのように割り付けられたか?

以下の降圧薬毎に別々に行われた(2319ページ「Study Design」)

the angiotensin-receptor blockers valsartan, telmisartan, and olmesartan

the angiotensin-converting enzyme inhibitors ramipril and spirapril

the calcium channel blockers amlodipine and nifedipine gastrointestinal therapeutic system

table 1.をみると、おそらく層別化はされていると思われるが、本文中には詳細が書かれていない。

 

A④研究対象者、現場担当者、研究解析者は目隠しされているか?

基本的にオープンラベル

解析者はブラインドされている

 

A⑤研究にエントリーした研究者が適切に評価されたか?

ITT解析されている(2320ページ「Staristical Methods」)

drop-outsについての記載はない

 

A⑥研究対象となった介入以外は両方のグループで同じような治療がされていたか?

利尿薬やスタチンやlow-dose aspirinの使用に関しては有意差なし。

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A⑦その研究のための対象患者数は偶然の影響を小さくとどめるのに十分な数か?

 

the number of patients participating in our study was considerably greater than that of most other published trials on the prognostic value of ABPM in patients with CKD10,11 and was sufficient according to the statistical significance of the reported results.

と、、、l 

しかし、具体的なサンプル数の提示はなし

B結果は何か?
B⑧a 結果はどのように示されたか? b 有意差はあるか? 

全死亡および心血管イベントによる死亡に関しては有意差はなかったが、全イベント発生率および心血管イベントの発生率は有意に低下した。

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Total eventsに関してはNNT 4.8

睡眠中の収縮期、拡張期血圧は共に眠前投与群で低下

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c 副作用は? 

記載無し

 

C臨床にこの結果はどのように応用できるか?

この論文では全イベントは減らすが、全死亡を減らすかどうかは分からなかった。

ADA (American Diabetes Association) Standards of Medical Care in Diabetes 2014では、糖尿病合併の高血圧患者の場合は眠前投与を推奨している。(クラスA)

元になっている論文は

Influence of Time of Day of Blood Pressure–Lowering Treatment on Cardiovascular Risk in Hypertensive Patients With Type 2 Diabetes

(Diabetes Care 2011;34:1270-76)

で、同じstudyのサブ解析である。

ちなみに元になった論文は

INFLUENCE OF CIRCADIAN TIME OF HYPERTENSION TREATMENT ON CARDIOVASCULAR RISK: RESULTS OF THE MAPEC STUDY

(Chronobiology International 2010, 27(8): 1629–1651)

で、2156名の無治療あるいは治療抵抗性の高血圧患者を対象とした、朝内服と眠前内服を比較したオープンラベル単施設RCT

こちらでは全死亡が眠前内服のほうが低い(P値 0.08)とされている。

 

limitationとしては、各降圧薬間での比較はしていないこと。「少なくとも1剤を眠前に内服させる」というInterventionであるため、それぞれの降圧薬でのサブグループ解析はされていない。

また、大規模RCTではあるが単施設のstudyであり、その後に同じ内容で多施設での追試がされている様子はない。

よって、この論文だけを鵜呑みにするのも微妙。

 

しかし、「降圧薬を1剤眠前に変更する」という介入は、アドヒアランスの問題さえなければ簡単に出来て費用もかからないので、外来患者のマネージメントの参考にしても良いのではなかろうか。

 

徳田安春先生回診+志水太郎先生ケースレポート指導

本日の午前中は、今年度はじめての徳田安春先生回診の日でした。

病棟の患者さんにベットサイドで徳田先生から直接身体診察を教えていただきました。

心不全における心尖拍動や3音など実践的な身体診察を学びました。

他には、入院中の興味深い症例についてもご意見をいただきました。

午後は獨協医大の志水太郎先生にケースレポートの指導をしていただきました。

実際の症例について、Disucussion pointの設定や論文の流れまで、懇切丁寧に指導をしていただきました。

ケースレポートを書く上での細かいポイントも教えていただきました。

なかなか、このような恵まれた環境はないと改めて感謝しています。

 

 

なお、東京城東病院総合内科では来年度の総合内科スタッフを募集しています。

コミュニティホスピタルとして、コミュニティホスピタリストと家庭医が共同して、地域に貢献するスタイルを構築しようと考えています。

さらに、論文発表や商業誌への執筆などの業績もどんどん、発表していこうと思います。

総合内科スタッフは、1週間のうち半日を研修日として、執筆や研究に充てる日を設けています。

一緒に理想を追ってくださる総合内科医・家庭医を募集しています。

見学希望の方は以下のメールまで、見学希望と書いてご連絡ください。

jotosec@gmail.com

心筋梗塞後の左室機能障害を有する患者に対するカプトプリル投与(SAVE試験)

Journal club2017/6/7

心筋梗塞後の左室機能障害を有する患者に対するカプトプリル投与(SAVE試験)〜New England Journal of Medicine 1992より〜

                                                 

 

Abstract

背景)心筋梗塞後の左室機能低下は主要な死亡の予測因子である。実験や臨床研究などではACE阻害薬による長期的な治療が心室拡大やリモデリングを減弱した。カプトプリルが心筋梗塞後の左室機能低下患者において死亡率と罹患率を減少するかどうかを調査した。

 

手法)心筋梗塞後3-16日未満の、EF40%未満で心不全増悪や心筋梗塞症状のない2231人に、プラセボ(1116人)とカプトプリル(1115人)の二重盲検治療をランダムに割り付け、平均42ヶ月フォローした。

 

結果)全死亡はプラセボ群(275死亡、25%)に比べてカプトプリル群(228死亡、20%)で明らかに減少した。Riskは19%減少。加えて、致死的または非致死的な主要な心血管イベントはカプトプリル群で減少した。心血管が原因のRiskは21%減少、重症心不全の発祥Riskは37%減少、入院を要するうっ血性心不全のRiskは22%減少、再発性の心筋梗塞は25%減少。

 

結論)心筋梗塞後の無症候性の左室機能障害を有する患者では、長期的なカプトプリル内服が生存率を改善し、主要な心血管イベントによる死亡や罹患を減少する。これらのbenefitは血栓溶解療法やアスピリン、Βブロッカーの治療を受けているものもそうでないものも同様に認められ、カプトプリルによる治療が心筋梗塞後の限られた生存者の中でアウトカムの付加的な改善に寄与することを示唆する。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

  • テンプレート

A この試験の結果は信頼できるか

①その試験は焦点が明確な課題設定がされているか

Patient 

心筋梗塞後3日間生存し、EF 40%未満で21歳以上80歳未満の患者。

*除外基準;心筋梗塞後16日以内にrandomizationができていない、ACE阻害薬禁忌、症候性うっ血性心不全や高血圧に対してACE阻害薬投与の必要性がある、Cre 2.5mg/L以上、その他の状況のために生存が制限されうると考えられる状態である、長期的trialへの参加を望まないorできない、梗塞後不安定である

 

Intervention

p.670 初期投与量は12.5mg(過去に同量で著明な血圧低値を認めたことのある患者では6.25mgより開始可能)。入院期間中に25mgを1日3回投与とし、副作用がなければ50mgを1日3回投与まで増量する。

 

Comparison

p.670 Placebo

 

Outcome

p.670 全死亡、心血管疾患による死亡、trial初期と終盤時の放射性ヌクレオチドによる心室造影を比較で9 unit以上のEF低下を伴う死亡(詳細不明)、重症心不全や致死的または致死的でない新規の心筋梗塞の再発で定義される心血管系罹患、心血管死亡+罹患のcombination。Second endpointは心不全治療のための入院。

 

 

A②その試験は設定された課題に答えるための研究方法がとられているか?

p.670 randomizeされた、二重盲検の対プラセボ群のtrial。45センター、112病院による多施設共同研究。登録は1987年〜1990年。

 

 

A③患者はそれぞれの治療群にどのように割り付けられたか?➔その手法と、Table1

p.670 コンピューターで割り当てられ、センターにより層別化された。

p.671「There were no significant differences…」

 

 

A④研究対象者、現場担当者、研究解析者は目隠しされている?

詳しい記載はないが、double-blindと記載あるため、研究対象者と現場担当者に関しては目隠しされていると思われる。研究解析者に関しては不明。

 

A⑤研究にエントリーした患者が適切に評価されたか? intention-to-treatITT解析、脱落者も含めていて、より臨床に則した感じ)

p.671 intention-to-treat

 

 

A⑥研究対象となった介入以外は両方のグループで同じような治療がされていたか?

p.671 Table 1

不整脈薬や、抗凝固薬やアスピリン、Βブロッカーなど、特に差はない

 

 

A⑦その研究のための対象患者数は偶然の影響を小さくとどめるのに十分な数か?

Sample数に関して記載がないが、引用論文17のabstractによると充分なSample数とのこと。

 

 

B結果は何か?

B⑧a 結果はどのように示されたか? 

B⑧b 最も重要な結果は?

B⑨その結果はどの程度正確か p-valueで(bとセットで)

 

p.671 2231人を平均して42か月間follow-up

両群で血圧上昇が見られた(placebo群 125±18/77±10, captopril群 119±18/74±10)

 

Fig1 全体で503人が死亡。Placebo群で275人(25%)、captopril群で228人(20%)。➡riskはcaptopril群で有意に19%減少。

 

Table2 全体の84%に当たる422人が心血管系の原因で死亡したが、その内訳。心不全の進行や心筋梗塞などのriskが有意にcaptopril群で減少。

 

p.671  FigやTableなし  EFの改善に関しては、単独では特に両群で有意差はなかったが、全死亡との複合endpointとすると有意差ありでcaptopril群でriskを15%減少。

 

Fig2  左上のグラフはTable2の結果を折れ線グラフにしたもの。その他、ACE-Iを必要とするCHF、入院を必要とするCHF、再発性のMI、心血管系疾患による死亡あるいは再発性MI、心血管性疾患による死亡あるいは非致死的なCHFやMIそれぞれで見ても、captropril群でevent発症をrisk reductionできることを示している。

 

Fig 3 特に、ACE-Iを必要とする心不全、入院を必要とする心不全、再発性のMIに関して、縦軸を患者の絶対数としてevent発症を示した棒グラフ。各棒グラフの左側がPlacebo群、右側がcaptopril群。ACE-Iを必要とする重症心不全に関しては、Placebo群で179人が発症し、71人が死亡、captopril群で118人が発症し、39人が死亡…など。

 

Table 3  P.673

サブグループ解析では、高齢者、男性、Killip class Ⅰ、心筋梗塞の既往、Β blockerの使用、アスピリンの使用群などでよりリスク減少の効果が得られそう。

 

 

B⑧c    副作用はどうか?

p.674 カプトプリル群で、めまい、味覚変化、咳、下痢などの症状が多かった。プラセボの25人、カプトプリルの32人がめまいで服薬中止し、プラセボの5人、カプトプリルの9人が味覚変化で中止。

 

 

Cその結果はあなたの現場で役に立つか?

 

 

 

  • 個人的な疑問:

primary outcome多い。それに対してサンプル数がどの程度必要か、っていうところはclearしているのか?→appendixなど参照しないと詳細はわからないが、論文17のabstract的には、サンプル数は充分とのことなので多分大丈夫そう。

 

 

  • コメント:

・以前は重症心不全にはジギタリス、利尿薬の次にはACE阻害薬を使用していたのだなという驚き

・カプトプリルは日本の添付文書上では1日37.5-70mgを1日3回に分割して投与し、最大で150mg/dayまで投与可能。しかしながら1日3回内服するのは困難なので、1日1回のレニベースの方がより良さそう(実際にレニベースでもoutcome良いとの論文もいくつもある)。

・血圧低くなければ是非入れたい。

etc…