コミュニティホスピタリスト@奈良 

市立奈良病院総合診療科の森川暢が管理しているブログです。GIMと家庭医療を融合させ、地域医療に貢献するコミュニティホスピタリストを目指しています!!!

甲状腺治療薬(ATD)による無顆粒球症(とそれに伴うFN)

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC5318340/

 

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無顆粒球症は、抗甲状腺薬を投与されているグレーブス病患者の0.2〜0.5%に発生

直接毒性と免疫介在性機序の両方が、これらの患者における無顆粒球症の原因になりうる。

高熱と咽頭痛が最もよく見られる徴候だが無症候性もありえる。

治療は抗甲状腺薬の即時中止と広域抗生物質の投与が必要。

造血増殖因子をしても良い

甲状腺機能亢進症の根治的治療が必要です。

患者教育は、抗甲状腺薬誘発性無顆粒球症の高い罹患率、さらに死亡率まで予防するための鍵である。

 

 

無顆粒球減少の機序   直接的な機序と免疫関連の機序がある

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●症状

甲状腺治療薬誘発性の無顆粒球症の症状は、無顆粒球症の他の原因の症状と変わらない。

高熱と咽頭痛が最も頻繁に見られる。

急性咽頭炎および口腔内の他の感染症は、初診時の最も一般的な臨床診断

他の感染症(例えば、重症肺炎、肛門直腸または皮膚感染)もありうる。

特に発熱、悪寒および衰弱が急に認めた場合は、敗血症が疑われるべき。

発熱を認めるにも関わらず、15%の患者は無症候性である可能性があるが、診断後すぐに症状が現れる可能性がある。

ATD誘発性無顆粒球症患者は甲状腺中毒症状(頻脈、振戦、不安)などに関連した症状を認めるかも。

 

 

口腔、会陰、皮膚を清潔にすることが重要。

プロピオチルウラシル、メチマゾールは中止してから10日ほどで好中球は正常化する。

G-CSFの使用は、血液学的回復までの時間、抗生物質療法および入院期間を減らすことが示されている。

ただG-CSFで改善が乏しいという試験結果もあり、これはG-CSFの使用量にも関係しているかもしれない。

ATDの最初の処方の理由は忘れてはいけない。

実際、無顆粒球症からの回復の間、患者は甲状腺機能亢進症を持ち続ける(おそらくインデラルは継続しても良い)

カルビマゾールとプロピルチオウラシルとの間の交差反応が患者の15.2%で観察されたため、甲状腺機能亢進状態を治療するためには、抗甲状腺薬の使用は望ましくない。

手術または放射性ヨウ素は、甲状腺機能正常状態を回復するための効果的な選択肢である

 

●治療の流れ  

①まず疑う

⇒培養など検査を行い入院する。

 

②広域抗菌薬 

以下サンフォードから

●抗緑膿菌薬を原則として全例に使用する

セフェピム2g 8時間毎

メロペネム1-2g 8時間毎

 

●抗MRSA薬(静脈カテーテル関連感染症、重症粘膜症、皮膚軟部組織感染、肺炎、重症例に抗緑膿菌薬に併用して使用する)

バンコマイシン15-20㎎/kgを8-12時間毎に使用

 

●血行動態不安定 抗緑膿菌薬に以下の追加を考慮

トブラマイシン5.1㎎/kg静注24時間毎+バンコマイシン15-20㎎/kgを8-12時間毎+エキノキャンディンの追加を検討。

 

 

③造血剤  G-CSF製剤

甲状腺機能亢進症の根本的治療(放射線ヨウ素、手術)

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●予防

最善の予防策は処方時の患者教育であり続け、この分野ではまだ改善の余地がある。

患者の多くが無顆粒球症の一般的な症状に気づいていない。

診断を遅らせると死亡の危険性が高まるため、最初の症状が現れた直後に患者さんが医療機関を受診することが不可欠

 

内分泌疾患は以下の本を

 

反応性関節炎 レビュー

https://pdfs.semanticscholar.org/3dc3/8866250ab956473dfaedb3f6b133a075121d.pdf

 

反応性関節炎のレビューがありました、古いけど見やすいので少し勉強を。

 

機序は細菌の蛋白に対する免疫反応による関節炎 HLAも関与

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反応性関節炎の症状

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末梢関節炎、付着部炎、脊椎関節炎に伴う症状を認める。

それとは別に、眼(結膜炎)、尿道・泌尿器症状、下痢、口内炎、皮膚症状だけでなく、心電図異常や尿蛋白なども認めることも

 

 

起因菌は以下、クラミジアや淋菌などの尿道炎の起因菌+サルモネラなどの感染性腸炎の起因菌のイメージがあるがマイコプラズマやCDI、結核なども原因になると。

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⇒関節炎に加えて、結膜炎、子宮頸管炎、尿道炎などが伴うことが重要。

 

 

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⇒診断基準も非常にシンプルで分かりやすい。他の原因がなく、先行する尿道炎や下痢などがあることが重要。

 

尿道炎による反応性関節炎のアプローチ

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基本的には尿のクラミジアPCRが有用かと思われる。症例によっては関節液のクラミジアPCRも? 淋菌のPCRも同時に提出することが重要。

なおSTD関連ならパートナーの治療と他のSTDの検索(HIVC型肝炎B型肝炎、梅毒など)

 

 

腸炎による反応性関節炎のアプローチ

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⇒症状があれば当然便培養。なければ血清学的検査を行う

 

 

鑑別診断

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当然、他の脊椎関節炎(強直性脊椎炎、炎症性腸疾患関連関節炎、乾癬性関節炎、SAPHO)も鑑別に挙がるが、化膿性関節炎、ウイルス性関節炎、サルコイドーシス、ベーチェットなども鑑別に。

特に播種性淋菌性関節炎はかなり重要な鑑別になると思うのでSTD関連では鑑別を慎重にする。

 

抗菌薬治療

・淋菌や、クラミジア尿道炎は抗菌薬治療を行う必要あり。

・関節炎自体の抗菌薬治療の効果は微妙なところ。。

 

関節炎の治療

・NSAIDSを早期にMAX doseで頓服でなく定期内服で使うことが重要(PPIも併用したほうが無難)。

・Up to Dateではナイキサンが推奨されている。

・症状が強いときはステロイドの全身投与は基本的に短期間のみに留める。

・症状が強いときはステロイドの関節投与も有効だが1つの関節に留める

・Up to DateではNSAIDSの反応性が乏しいときはステロイドの関節内注射をまず考慮すると記載あり。

・NSAIDSで症状の改善が乏しい場合は、RAに準じてアザルフィジンを考慮する

・Up to Dateには非生物学的製剤のDMARDが推奨されており、アザルフィジンがやはり推奨されており、MTXも代替薬として考慮とされている。

*だだし、DMARDは保険適応外使用なので注意が必要です。。

 

 

関節リウマチの勉強には以下がお勧めです!!

一読の価値あり。

 

 


 

妊娠高血圧症について

 

妊娠高血圧症の説明は、以下の資料から。

http://www.jsog.or.jp/modules/diseases/index.php?content_id=6

 

・妊娠中に血圧が140/90mmHgを超える患者は全て妊娠高血圧症候群 Hypertensive Disorders of Pregnancy (HDP)
・重症はあっても「軽症」のHDPはない。
・尿蛋白がなくても、他臓器の障害または血小板15万以下への減少や胎児発育不全があればがあれば妊娠高血圧腎症Preeclampsia(PE)
・尿蛋白があれば臓器障害つまりPEといえ、実質的に全て重症。

  

つまり、SBP140mmHg,DBP90mmHgを超えればその時点で妊娠高血圧になる。

さらに、SBP160mmHg,DBP110mmHgを超えた地点で重症の妊娠高血圧症

またSBP180mm Hgを超えると最重症で超緊急の状態

また尿蛋白が陽性ならその地点で重要と言うことになるので、妊婦の高血圧では尿定性を行うことが極めて重要

 

以下、Up to Dateより

Stage 1 (systolic 130 to 139 mmHg or diastolic 80 to 89 mmHg)

Stage 2 (systolic at least 140 mmHg or diastolic at least 90 mmHg)

Severe hypertension (≥160/110 mmHg).

SBP130を超えてもStage1に該当するとのことです。妊婦の高血圧は相当に慎重に考えたほうがよいということかと。

 

〇対応

・妊婦でSBP140を超える場合は産婦人科コンサルトする

・特に重症例(SBP160以上)は緊急帝王切開になる可能性があるため、速やかにコンサルトする!!

 

〇治療 

以下妊娠高血圧の治療の分かりやすい図を下記のページから。

https://port-medical.jp/media/articles/32

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以下のリンクの資料は分かりやすいので必見です。 

http://jsog.umin.ac.jp/70/jsog70/3-1_Dr.Naruse.pdf

 

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内服薬

・メチルドバ

ヒドララジン

・ラベタロール

 ・ニフェジピン(妊娠20週未満は禁忌)

 

とはいえ急激な降圧は、胎児機能不全・常位胎盤早期剥離のリスクになるので、産婦人科にコンサルトするのが無難ですね。。

 

なお関西若手医師フェデレーションの企画で、産婦人科の柴田先生に教えて頂いた妊婦のレッドフラグは以下の4つ。

1つでも当てはまれば、緊急産婦人科コンサルトが必要!

①子宮収縮(お腹の張り、生理痛のような痛み)

②破水

③性器出血

④胎動減少(赤ちゃんの動きが減っているか)

 

①でレッドフラグということは、妊婦の腹痛は基本的には産婦人科コンサルトというぐらいでも良いのだと思います。

 

柴田先生の著書は以下で、詳細は以下の本をお読みください。 

膠原病の匂いのする間質性肺疾患:IPAF 

カンファで話題になりました。

https://kokyurinsho.com/datas/media/10000/md_692.pdf

 

特発性間質性肺炎の中には,膠原病らしい所見をもちながらも確立した診断基準を満たさない「膠原病の匂いのする間質性肺疾患」が存在する。

⇒それらがInterstitial pneumonia with autoimmune features(IPAF)という概念に統一されている。

結合組織病(CTD)関連か、そうでないか。

CTDの中でも分類できるか、分類できないのか、

UIPパターンかNSIPパターンかで従来分類されていたが、統一されたプラットフォームが必要という流れになった

 

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⇒IPAFの予後全体的には良好だがUIPパターンはNSIPパターンより予後不良な傾向あり。

 

なおIPAFの治療に関しても定まったものはない。

まずは特発性間質性肺炎の治療に準ずるが、IPAFの中の一群は、抗線維化薬よりも免疫抑制薬の効果が期待できるかもしれない。

 

東京北医療センター 岡田先生 EBM WS

6月14日に、同じJADECOMである、東京北医療センター総合診療科の岡田先生に奈良までご足労いただき、EBM勉強会をやっていただきました!
前半は二次資料を用いた情報検索で、後半はジャーナルクラブをしていただきました。
岡田先生のレクチャーは非常に分かりやすく、研修医の皆もEBMに対する理解が深まったと思います。
岡田先生のレクチャーの詳細は以下の通りです。
JADECOMでは今後も全国の指導医が交流し一致団結して研修医の教育に臨んでいきます!!

〇情報検索
up to. dateは教科書
dynamed はデータベース。
up to dateはGoogle翻訳で全部日本語にすると敷居が下がる。
dynamedはいろんなエビデンスが並列してる。効くエビデンスと効かないエビデンスが並列してる。
up to. dateはオススメが書いてるが文章なのが敷居が高い。
dynamedは辞書的に使う。
具体的なエビデンスはdynamed
全般的なアプローチはup to. date

up to. dateは量が多い。まずはサマリーとリコメンデーションを読む
さらに自分が知りたい内容だけ読んで、 飛ばし読みをする
up to. dateの本文を読むときは数字を探す。あるいは具体的に知りたいワードを検索することが重要
up to. dateは論文の内容が羅列されているので、最後の結論だけ見る
エビデンスが乏しい場合にも、どうするかが大切。
目の前の患者と臨床試験の前提が同じかどうかも重要。
副作用も考える。

1 エビデンス
2 患者の意向
3 医療者の経験
4 周囲の状況

という4つの軸で考える。

・クエチアピンはせん妄の予防には使えなさそう。
抗精神病薬は、死亡率を上げる薬なので慎重に投与する
抗精神病薬は入院中にはじめてずっと継続して辞めないのはまずい
セロクエルは50mgを越えると死亡率が上がるかもしれない
・数字が具体的になるほど、モヤモヤする
・個人の経験も重要になってくる

〇ジャーナルクラブ

・隠蔽化 concealment とマスキング masking とはよく混同される.
・隠蔽化は,研究開始前に患者を研究に組み入れる者が,これから組み入れようとする患者がどちらの群に割付けられるか予想できないようにすること
・一方,マスキングは,研究開始後に患者や医師,結果の評価者などが割付け内容を
知らないことである.
・統括しているセンターがある⇒中央割付方式。
・ベースラインが重要で、ベースラインの違いが結果に影響を及ぼす。
・RCTの肝は二つのグループが同じであること。これが崩れると研究が無茶苦茶になる。
・脱落⇒脱落のひとがいればいるほど研究の質が低い。脱落郡がどれくらいいるのか。 
・ITTの本質は内容の入れ替えをしないことで必ずしも脱落郡も解析するというわけではない。
・最初にAと割り付けられたらBという薬を使っても最初に割り付けたAとして解析することがITTの本質
・脱落したひとをどのようなアウトカムとして扱うかは悩ましいし、恣意的になりうる。
・ブラインドは基本的に4重盲検になることが多いが確認必要
・あわてんぼうのアルファエラー  過大評価
・ぼんやりぼうのβエラー  過小評価
・症例数が多ければ多いほど「山は高くなる」
・症例が少なければ「山は低くなる」⇒優意差がなくても症例が足りないだけの可能性。
・プライマリーアウトカム以外の結果は参考程度に考える。

 

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壊死性軟部組織感染症における造影CTの診断特性

https://link.springer.com/article/10.1007/s00268-017-4145-x?fbclid=IwAR1ctxB9c-7mKq8xrtYgncqlSAGp8z1DICoIXmKq39gYh7rFfRUjaGkKbPk

 

 The Role of Computed Tomography in the Diagnosis of Necrotizing Soft Tissue Infections

 

・壊死性軟部組織感染症(NSTI)の診断における造影CT検査の正確な役割はまだ確立されていない。

・我々は、NSTIの臨床的疑いのある患者におけるCTの役割を探究し、NSTIに対するその感度と特異性を評価することを目的とした。

・方法、NSTIを除外するために造影CTを受けた2009年から2016年の間に入院した患者の医療記録をレビューした。

・CT所見

(a)軟部組織中のガス

(b)複数の液体貯留収集

(c)造影CTで軟部組織の造影不良or造影の不均一性

(d)筋膜下の有意な炎症性変化の場合に陽性とみなされた。

 

・NSTIは外科的探索中の壊死組織の存在によってのみ確認された。

・外科的な検索で壊死を特定できなかった場合、または手術なしで治療に成功した場合、NSTIは存在しないと見なされた。

・184人の患者のうち17人にCTで陽性所見があり、そのうち13人(76%)にNSTIが確認された。

・CTが陰性であった167人の患者のうち、38人(23%)がNSTIの臨床的な疑いが強いために外科的な検索を受けたが、全員がNSITではなかった。

・残りの129件(77%)は、症状が改善したため、手術せずに経過した。

・NSTIの同定におけるCTの感度は100%、特異度は98%、陽性適中率は76%、陰性適中率は100%であった。

(陽性尤度比:50、陰性尤度比:0)

・結論として造影CTスキャンが陰性であればNSTIの初期の疑いがある患者における外科的介入の必要性を確実に除外することができるかもしれない。

 

古典的な造影CT所見

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古典的な壊死性軟部組織感染のCT所見 ガス産生像を認める。

 

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筋膜下での炎症変化、不均一な造影所見を認める。

⇒ガスが存在しないにもかかわらず、壊死性軟部組織感染症を疑う。

 

 

ベースライン 平均51歳と比較的若い群を対象にしている

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NSTIの有無と造影CT所見の有無との対比表 造影CTで所見がなれればNSITは認めないとのこと?

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CT所見の有無による患者のベースラインの違い(大きな違いはなさそう)

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NSTIと非NSTIでも明らかなベースラインの違いはなさそう

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LRINECスコアの両郡の比較

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〇感想
もともと壊死性軟部組織感染症の診断にエコーが有用と言うのは知られていた。
深部筋膜層に対側と比べて4㎜以上の液体貯留があれば、感度88(64-99)%、特異度93(82-99)%、PPV=83(59-96)% ,NPV=95(85-99)%で壊死性筋膜炎と言える。
 
ただ実際に使用してみると判断に悩むことは多くて検者の技量に依存する傾向。
今回の論文では造影CTは陽性尤度比50、陰性尤度比0と診断的な検査であることが示唆される。
またエコーに比べれば検者の技量に依存もしにくい。
壊死性軟部組織感染を想起した場合は造影CTを施行するのはありかもしれない。

憩室炎と虫垂炎の臨床所見の鑑別

憩室炎と虫垂炎を臨床所見でどのように区別するか

 

もともと憩室炎では虫垂炎に比べて以下のような所見があるとされていました。

The diagnostic criteria for right colonic diverticulitis: prospective evaluation of 100 patients

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/18704462

 

〇憩室炎の特徴

メジャー

(1)右下腹部への痛みの移動なし。

(2)白血球数<10,000 / mm 3。

(3)側腹部痛み

(4)右結腸憩室の病歴

マイナー

(1)右下腹部痛の既往

(2)吐き気や嘔吐の症状がない。

(3)便秘または下痢の症状

(4)少なくとも7日間継続する腹痛。

 

今回、東邦大学大森病院 総合診療・急病センターの佐々木先生が新たにケースコントロールスタディを発表されたので紹介いたします。

 

https://www.wjgnet.com/2307-8960/full/v7/i12/1393.htm?fbclid=IwAR1HlQni3fZJRgWKHkq-FHnVAxij12Hdp6XyJUJ3ePxsK6XlO3HVwfAXfXU

 

Clinical differentiation of acute appendicitis and right colonic diverticulitis: A case-control study

 

東邦大学のシングルセンターの後ろ向きのケースコントロールスタディ

369人の16歳以上の日本人を対象としたスタディ

虫垂炎と右側憩室炎を比較

 

虫垂炎のほうが比較的早期に来院する。

食欲不振、悪心、嘔吐はやはり虫垂炎で多い。

右下腹部痛は憩室炎で多い。

WBCは虫垂炎のほうが高値になりやすく、CRPは憩室炎のほうが高値になりやすい傾向。

当然、虫垂炎の既往歴があれば虫垂炎の可能性が上がり、憩室炎の既往歴があれば憩室炎の可能性が上がる。

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以下虫垂炎の可能性を上げる所見と下げる所見のまとめ

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虫垂炎の可能性を上げる所見

悪心・嘔吐 OR:3.89 

食欲不振  OR:2.13

 

虫垂炎より憩室炎を示唆する所見

長い経過     OR:0.84

右下腹部痛   OR:0.28

憩室炎の既往歴 OR: 0.0034

CRP>3.0 mg/dL  OR:0.25

 

 

上記の結果をまとめた所見

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右にいくほど虫垂炎を示唆  左にいくほど憩室炎を示唆

 

 

〇感想

非常に実践的な論文だと感じます。

実際にCRP虫垂炎だとあまり上がらないですよね。

憩室炎の既往歴がある場合や悪心や食欲不振がない場合、最初から右下腹部が痛い場合は憩室炎の可能性が上がるというのも、臨床的な実感に合います。

非常に意味がある論文であり、良い刺激を頂きました。

皆様の臨床にも役立てて頂ければと思います。