コミュニティホスピタリスト@奈良 

市立奈良病院総合診療科の森川暢が管理しているブログです。GIMと家庭医療を融合させ、地域医療に貢献するコミュニティホスピタリストを目指しています!!!

メタアナリシス レクチャー

今日は、メタアナリシスのレクチャーでした。

管理人の独断と偏見でまとめると。。

 

・RCTと同様にPICOが大切

・まずは研究を網羅的に集めて、そこから絞っていく。

・研究を集める際には、MEDLINEとEMBASE使っているか?

・結果を見るときには、異質性をチェックする(Cochran QもしくはI2で)

・固定効果モデルは、研究間の差異は誤差であるとみなし、試験間で異質性が少ない場合に使いやすい。

・ランダム効果モデルは、研究間で効果の差異が存在する前提であり、試験間で異質性が多い場合に使いやすい。

・バイアスチェックでは、出版バイアスが大切であり、FUNNEL PLOTで視覚的に把握する。

・FUNNEL PLOTに偏りがあれば、出版バイアスが示唆される(例 :ネガティブデータは発表されていない  )
・EBMの実践において、エビデンスだけではなく、患者の価値観、医師の経験も重要である。

本橋Dr 腹部CT レクチャー

 

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CT値

HU -1000(空気) 〜 0(水) 〜 +1000(金属)

各組織(血液、脂肪、骨、各種実質臓器)がだいたいどのぐらいの値か、一度はチェックしておく。

 

腹部CTは臓器の数が多いので、見落としがないようにするには自分の「ルーチン」を決めて、順番に各臓器を見ていく。

以下は順番の一例。「この順番で見る」と決めていれば、見落としは少なくなる。異常をきちんと認識できるかどうかはまた別問題。

 

 

肝に明らかなSOLなし

肝内胆管の拡張なし

胆嚢の腫大なし 壁肥厚なし 胆石なし

総胆管の拡張なし

脾臓の腫大なし 明らかなSOLなし 副脾あり

膵に明らかなSOLなし 主膵管の拡張なし

両副腎に明らかな異常所見なし

両腎に明らかな異常所見なし

腎盂〜尿管に明らかな異常所見なし

膀胱は尿貯留が少なく評価困難だが、明らかな異常所見なし

子宮両側付属器の大きさは正常

下部食道〜胃〜十二指腸、小腸、結腸および肛門周囲に明らかな異常所見なし

回盲部に正常虫垂を認める

(腹部CTを読影するときは、主訴にかかわらず必ず虫垂をチェックする癖をつける。正常を数多く見ていないと、異常を見逃す。)

骨盤内に生理的範囲内の腹水を認める

傍大動脈リンパ節の腫大なし

腸間膜リンパ節の腫大なし

骨・筋肉・皮下組織に明らかな異常所見を認めない

撮像範囲内の肺野に明らかな異常所見なし

(骨や肺野を見るときはWLとWWを適切な値に変えることを忘れずに)

 

 

結論

撮像範囲内に明らかな異常所見を認めません

Atypical-HUSに対するエクリズマブの効果

Terminal complement inhibitor eculizumab in atypical hemolytic-uremic syndrome. - PubMed - NCBI

 

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Trial1 :,血小板数低値で,腎不全を有する患者
Trial2: 腎不全はあるが、血漿交換や血漿輸血を受けている期間の少なくとも 8 週間は血小板数は 25%を超える低下が認められなかった患者

 

●除外基準

血漿中ADAMTS13活性5%以下、志賀毒素産生大腸菌感染、以前のエクリズマブ曝露


I エクリズマブ投与

エクリズマブは、週に900mgの用量で4週間、1週間後に1200mgの用量で、そして2週間ごとに1200mgの維持用量で静脈内投与した。

C 特になし

 

 

trial1   TMAの抑制(血小板の変化)

traial2 TMA関連イベントが認められない状態(血小板数の 25%を超える低下が認められず,血漿交換や血漿輸注が行われず,透析も必要としない)

 

 

 

試験のデザイン

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全員が髄膜炎菌ワクチンを受けるか、ワクチンを受けるまでは髄膜炎菌の予防投与を行っていた。

 

ベースライン

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〇結果

Trial1 :

ベースラインから 26 週目にかけての血小板数の増加は平均 73×109/L (P<0.001)

ベースラインから64週目にかけての血小板数の増加は平均 91×109/L (P<0.001)

 

Trial2:

26週の時点で、80%でTMA関連イベントが認められなかった.

62週の時点で、85%でTMA関連イベントが認められなかった.

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腎機能もエクリズマブ使用中は明らかに、改善した

さらに、Trial1で透析している5人中4人が透析を離脱した

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髄膜炎菌感染は発生しなかった

Trial2では重篤な合併症ととしてインフルエンザ、腹膜炎、静脈の硬化を認めた

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〇感想

RCTではなく、数は足りないが、特殊な疾患であるので仕方ないと思われる。

しかし、それであっても明らかに効果はありそうな印象。

これ以上の大規模な試験も難しいと思われ、Atypical-HUSであれば、エクリズマブを使うことは十分考慮しても良いと思われる。

重篤な副作用も稀に認めるが、透析の離脱も可能でありメリットは大きそう。

Case 19-2018: A 15-Year-Old Girl with Acute Kidney Injury

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15歳女性

8日前から腹痛と血性下痢

1時間ごとに、腸蠕動がおこり、眠れなかった

5日前に嘔吐も認めた

翌日に、プライマリケア医を受診したときは、倦怠感をみとめ、下痢、腹痛、蠕動痛が持続していた。

そこで便培養が提出され、アセトアミノフェンロペミンの屯用が処方

その後も下痢、嘔吐が持続し、腹痛は心窩部に限局するようになった。

 自己免疫性疾患の家族歴あり

便培養は陰性

その後、嘔吐が継続するため救急外来を受診した。尿量の低下を認めた

バイタルは以下。

 The temperature was 36.9°C, the pulse 80 beats per minute, the blood
pressure 111/69 mm Hg, the respiratory rate 22 breaths per minute, and the oxygen saturation 100% while she was breathing ambient air.

 

 

〇採血

BUN/Cr 101/7.53と明らかに腎不全を認める 血小板低下も認める

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〇画像

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腎不全を認めるが、水腎症などなし。 腹水あり

尿のWBC,RBC、蛋白はいずれも陽性

貧血だけでなくLDHも上昇し、ハプトグロビンも低下⇒溶血性貧血を示唆

 

⇒以上より溶血性尿毒症症候群(HUS)が疑わしい。

便培養は陰性だが、志賀毒素のチェックが必要。

なお、AtypicalのHUSも下痢を契機に発症するため、遺伝子変異もチェックが必要

 

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⇒生検の結果からはthrombotic microangiopathyが示唆

ADAMTS13活性が低下しており、それもAtipical HUSを示唆

遺伝子変異も下記のように指摘

 heterozygous CFHR3 mutation of unknown
significance (c.839_840delTA) was identified.

 

⇒その後、透析、補体C5の阻害薬であるエクリズマブを開始したところ、症状は改善した。

 

 

〇結論

Atypical -HUS

宇井先生 緩和ケアレクチャー 2018年6月22日

 

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終末期ケアを総合診療医も担えることが重要。

予後予測モデルが大切。

疾患による、経過の予測が重要

 

医学書院/週刊医学界新聞(第3047号 2013年10月14日)

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緩和ケアと積極的治療を分断しない。

最近は、緩和ケアと積極的治療をシームレスに行うことが大切。

 

たまたま、多発肝転移が見つかったら。。

〇本人の意思決定能力

〇入院前の本人の希望の確認

〇告知するかどうか

〇家族の意向

〇診断をつけるかどうか?

 

告知するか迷ったら、保留にするのも手である。

 

予後予測が大切

 

E.予後の予測 | 聖隷三方原病院 症状緩和ガイド

 

PPI(Palliative Prognostic Index)が予後予測に有用。

 

モルヒネの使い方

①強い疼痛、呼吸困難があることを自覚

②非オピオイドでは痛みが充分に緩和されてないことを確認する

③ご家族に痛み止め、呼吸を楽にする薬として、モルヒネを使いたいことを話す(がんの告知をしていない場合は、「痛み止め」などと曖昧にすることは必要)

④年齢、腎機能に応じて、初期投与量を決めて開始する

まずは、少な目で使ってほしい。 

 

モルヒネ1A(10㎎)+生食9ml 合計10mlを0.2ml/hで24時間持続皮下注を開始すると、4.8mg/日という容量になる。腎機能に応じてさらに減量することもある。

 

モルヒネは意識レベルなどに合わせて、調整を行うことが大切。

過量投与時は、モルヒネの速度を遅くする  + 500〜1000ml程度の生食点滴を行う と良い。

 

モルヒネの過量投与が疑われる時は、モルヒネは水溶性なので補液をすることで血中濃度が薄まり、意識障害や呼吸抑制などの副作用が改善する。(フェンタニル脂溶性であり補液では改善しないため、減量に加えてナロキソンが必要なこともある。モルヒネでも早急に拮抗が必要な時はナロキソン。)

 

 

緩和領域で、皮下注がだめで、点滴をしないといけない注射

・ロピオン

・PPI(ガスターは可)

・アセリオ

 

吐き気時は、プリンペラン1A+生食50mlを皮下点滴

緩和ケア領域の悪心は、①プリンペラン ②セレネース

不眠時は、セレネースロヒプノール

 

 

 導入時はオキノームが使いやすい。2.5㎎製剤がある。

オプソは5㎎製剤と少し、多い。

モルヒネの粉末は調整がしやすい。 モルヒネ、オプソ、MSコンチンは同じ量で換算する。まずは、朝晩でやってみる。

リン酸コデイン60㎎はモルヒネ換算で8㎎程度。

まずは、リン酸コデイン60㎎/日 

 

肝機能障害があるときは、フェンタニルは相対的に禁忌。

モルヒネのほうが調整はしやすい。

 

入院しているのであれば、症状が強いとき、内服が出来なくなったら、経口のモルヒネからモルヒネ皮下持続注射に変更する。モルヒネ皮下持続注射のレスキューは10分もあれば、効果判定が出来る。

ミダゾラム持続注射を、夜間のみ間欠的鎮静を行う方法もある(睡眠薬としての使い方が出来る。まずは、少量から開始する。)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

地中海食は心血管疾患の1次予防に有用である

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https://www.nejm.org/doi/full/10.1056/NEJMoa1800389

 

P 心血管リスクが高いが、心血管疾患の既往歴がない患者(55-80歳)

糖尿病 or 以下のうち少なくとも3つ以上のリスク(タバコ、LDL高値、HDL低値、肥満、冠動脈疾患の家族歴)

 

I地中海食(オリーブオイルを加えた)

 地中海食(ナッツオイルを加えた)

C脂肪を減らすようにアドバイスした食事

*カロリー制限、運動などは特に行ってない

No total calorie restriction was advised, nor was physical activity promoted

 

・主要エンドポイント

心筋梗塞脳卒中、および心臓血管の原因による死亡の複合エンドポイント

・二次エンドポイント

脳卒中心筋梗塞、心血管系の原因による死亡率、あらゆる死亡率

 

 

具体的な食事の内容

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A computer-generated random-number sequence provided randomization tables for the
11 participating sites, which encompassed 169 clinics

⇒ランダム化はされている

 

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⇒3郡で大きな偏りはなさそう

 

Drug-treatment regimens at baseline were similar for participants in the
three groups, and they continued to be balanced during the follow-up period

⇒食事以外の治療法は3郡で同様

 

ブラインドは出来ない

 

当初9000人が必要とされていた。検出力80%

途中で、明らかに地中海食が安全であることが確認されたので試験は中止された

 

〇結果

全被験者を対象とし,ベースライン特性と傾向スコアで補正した intention-to-treat 解析

・低脂肪食に対するハザード比

〇地中海食+エクストラバージンオリーブオイルで 0.69(95%信頼区間 [CI] 0.53~0.91)

〇地中海食+ナッツで 0.72(95% CI 0.54~0.95)

 

〇カプランマイヤー

 

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⇒サブ解析やITT解析でも全体的に地中海食のほうがアウトカムが良い傾向

 

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〇感想

地中海食が大規模RCTで1次予防を達成したというインパクトは相当に大きい。

カロリー制限も特にしておらず、それでも心血管リスクを軽減している。

元々、地中海食はエビデンスが豊富だったが、今回はさらに決定的なエビデンスが出てきた印象。

 

 

 

ブドウ球菌による椎間関節炎

FBで目に入って、勉強になったのでシェアします。

 

https://onlinelibrary.wiley.com/doi/epdf/10.1002/jgf2.181

 

66歳男性の急性発症の頸部痛。

髄液は問題なし。

CTでは右頸部リンパ節腫脹あり。

その後、血液培養でMSSAが。

C3-C4関節周囲にMRIでT2高信号の領域あり

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⇒MSSAによる椎間関節炎と診断。

 

〇感想

昔、確かに化膿性椎間関節炎を診たことがあったなと思い出しました。突然発症の頸部痛の鑑別に重要であると再認識。

ちなみに椎間関節炎を診たら、偽痛風も鑑別に挙がる。

血液培養は、やはり大切と再認識しました。