痙攣でセルシンを打って痙攣は改善したけど、不随意運動が残存。意識レベルは不良。
痙攣はしていないけど、不随意運動があるので、痙攣重積では?
非けいれん性てんかん重積状態脳波ではてんかん発作性異常を認めるものの、けいれん発作を伴うことなく意識障害が持続し、急性・遷延性(長時間にわたる)昏睡状態を示すと定義。
救急現場におけるてんかん重積状態の臨床的特徴~非痙攣性てんかん重積状態nonconvulsive status epilepticusの重要性について~
日本の検討では、入院時に意識障害をともなった痙攣重責患者連続94例のうち入院時非痙攣てんかん重積(NCSE)であったのは24例(25.5%)で,入院後NCSEとなったものもふくめると32例(34.0%)であった.
→NCSEは稀ではない。よって疑えば脳波を実施することが重要。
ただ、夜間に脳波は現実的ではない。
さらに、定義からは全く、痙攣はないが、よくよく診ると不随意運動が残存していることが多いので、不随意運動の有無は、痙攣重責が継続しているかにおいて非常に重要。
不随意運動がセルシンを投与しても継続している場合は、ホストインやイーケプラの追加を行うことが重要。
さらに、痙攣重積をしているという根拠として頭部MRIも有用。
拡散強調MRI(DWI)とperfusion(PI) MRIは主に急性期脳梗塞に適用されているが、てんかん患者の発作前後の情報を提供できる可能性がある。
てんかんの研究では,見かけの拡散係数(ADC)の低下と,過灌流の徴候の両方が報告されている.
我々は複雑部分てんかん(CPSE)患者10名を対象に,DWIとPIを含む連続MRI検査を行った.
全例でDWIの局所高信号化を認め,(i)海馬体と視床枕内側部(10例中6例),(ii)視床枕内側部と皮質領域(同2例),(iii)海馬体のみ(同1例),(iv) 海馬体,視床枕内側部および皮質(同1例)でADC値の低下を認めた.
すべての患者において、局所的な過灌流とADC/DWI変化領域との密接な空間的相関が見られた。
2人の患者では、追加のSPECT(single photon emission computed tomography)検査で灌流亢進が確認された。
全例にフォローMRI検査を行い,追跡期間の長さに応じて拡散・灌流異常の一部または完全な消失が認められた.
臨床経過、脳波およびSPECTの結果はすべて、MRIが長引くてんかん活動に関連した変化を検出したことを示している。
PIとDWIの組み合わせにより、海馬、視床、大脳皮質患部におけるCPSE後の血行動態と組織変化を可視化することができる。
→ということで痙攣重積では血流の亢進とそれに伴うDWIの高信号が認められる
海馬のDWI 高信号
視床内側のDWI高進号
上の段では造影MRIで造影されている。
DWIでは皮質と視床内側に高信号
→フォローアップで消失している
→DWIの高信号がないから、痙攣重積ではないとはいえない
しかし痙攣重積を疑う状況でDWIで脳表や、海馬体、視床内側にDWIで高信号を認めれば、重積状態と診断することは妥当かもしれない。
なお皮質のDWI高信号は、クロイツフェルト・ヤコブ病でも起こるが、病歴で鑑別することが可能。
痙攣重積で、なお、セルシンを投与した後のsecond line治療は?
レベチラセタム・ホスフェニトイン・バルプロ酸を比較したランダム化比較試験(ESETT) - 亀田メディカルセンター|亀田総合病院 救命救急センター
こちらにまとめられています。
痙攣重積の2nd line therapyの論文
バルプロ酸点滴、ホストイン、イーケプラ点滴を比較した多施設RCT
225人の小児(18歳未満)、186人の成人(18~65歳)、51人の高齢者(65歳以上)
175人(38%)の患者がレベチラセタム
142人(31%)がホスフェニルトイン
145人(31%)がバルプロ酸
ベースラインの特性は群間差なし
主要評価項目は,点滴開始から 1 時間後に,意識の改善を認め、臨床的に明らかな発作がなく,抗けいれん薬を追加投与しないこと
安全性の主要評価項目は,生命を脅かす低血圧または心不全.
主要評価項目は,レベチラセタムを投与された小児の 52%(95% 信頼区間 41~62),成人の 44%(33~55), 高齢者の 37%(19~59) で達成された.
ホスフェニトインでは、小児の49%(38-61人)、成人の46%(34-59人)、高齢者の35%(17-59人)で達成された。
バルプロ酸では、小児の52%(41-63人)、成人の46%(34-58人)、高齢者の47%(25-70人)で達成された。
各年齢層における薬剤による有効性及び安全性の主要評価項目の差は認められなかった。
小児における気管内挿管を除き、安全性の副次的評価項目は、各年齢群において薬剤による有意な差は認めなかった。
→ということでイーケプラ点滴でも、ホストインの点滴でもどちらでも使用可能。
個人的にはホストインのほうが確実に効果がありそうなので、ホストインを副作用がなければ優先して使用して、それでも痙攣が残っていそうなら、イーケプラの点滴を加えるという戦略が使いやすい。
なお、初期治療はセルシンIVが使用されるが、Dynamedではロラゼパムかミダゾラムが推奨される。
ジアゼパムは次点(diazepam (NCS Class IIa, Level A))
ロラゼパム(NCSクラスI、レベルA) 0.1 mg/kgを2 mg/分を超えない速度で静注する(最大4 mg/回);5~10分後に反復投与してもよい。
ミダゾラム(NCSクラスⅠ、レベルA) 0.2 mg/kg を筋肉内投与する(最大 10 mg/dose)。
代替経路:0.2mg/kgを経鼻投与、または0.5mg/kgを経頬投与する。
ただミダゾラム筋注は保険適応外使用になるかもしれないので、ちょっと、使いにくいですね。
ただ、ルート確保出来ない場合はミダゾラム筋注は非常に使いやすいと思います。
ちなみに、セルシン筋注は、推奨されていません。
最近はロラゼパムも痙攣重積で使用できるので、ロラゼパムファーストでもよいかもしれません。
てんかん重積状態の海外第一選択薬が国内で承認:日経メディカル
追記
なのでミダゾラムをIVするという方法もあり?
以下、三宅先生に教えてもらった案(あくまで自己判断でお願いします)