コミュニティホスピタリスト@奈良 

市立奈良病院総合診療科の森川暢が管理しているブログです。GIMと家庭医療を融合させ、地域医療に貢献するコミュニティホスピタリストを目指しています!!!

プライマリ・ケア医の質と急性期病院に直接受診するかどうかの検討

急性期病院の総合診療科に勤務していると、一定数、かかりつけ医がいるにもかかわらず直接、急性期病院の外来を受診される方がいる。

かかりつけ医は「薬を出すだけ」で何かあったら、急性期病院という方もいる。

一方で、かかりつけ医として信頼され、ゲートキーパーとして適切に診療をし、急性期病院に適切に紹介される先生もいる。

かかりつけ医≒プライマリ・ケア医の質がそれらの現象に関与しているのか?

ということで総合診療のトップジャーナルであるjournal of general interlan medicineに投稿した青木先生の論文を読んでみました。

Effect of Patient Experience on Bypassing a Primary Care Gatekeeper: a Multicenter Prospective Cohort Study in Japan

 

ここではプライマリ・ケア医の質評価として患者が自己記入するJPCATが用いられています。

www.patient-experience.net

 

P 診療所外来に定期通院しその診療所をかかりつけと認識する患者

E JPCATスコアの高い群

C JPCATスコアの低い群

O バイパス(プライマリ・ケア医を受信せずに直接、急性期病院を受診)

 

JPCATは合計100点満点で定量的に評価

1年間フォローし追跡。

診療所における多施設前向きコホート試験。

 

性別、年齢、教育年数、収入、プライマリ・ケアの通院期間、身体的および精神的な健康状態、プライマリ・ケア医以外の通院施設数、および最近の入院を共変量として多変量解析。
階層ベイズモデルで解析

 

途中フォローアップを中断した患者もいたが、それらの中断した患者は併存疾患数が多く、他の医院に通院している傾向。

 

バイパスと独立して関連があるのは総JPCATスコアでJPCATスコアが高ければ、バイパスの割合は少ない傾向。

 OR 0.44 (95% CI, 0.21–0.88).

 

感想としてはゲートキーパーとしてプライマリ・ケア医が患者に信頼されるような質を担保することで、急性期病院の適正利用につながる可能性。

ただ、バイパスで受診する理由が重症な急性期イベントであれば、バイパスで予後が良くなる可能性も否定できない。

今後は、ゲートキーパーとしてプライマリ医が機能することで、死亡率や入院率などのアウトカムが悪化せずに、医療費を削減し、患者満足度が上がる方向になれば理想か。

 

非常にデザインが練られており、読みやすい論文でした。