コミュニティホスピタリスト@奈良 

市立奈良病院総合診療科の森川暢が管理しているブログです。GIMと家庭医療を融合させ、地域医療に貢献するコミュニティホスピタリストを目指しています!!!

急性前立腺炎と前立腺膿瘍について

Bacterial Acute Prostatitis - StatPearls - NCBI Bookshelf

 

急性前立腺炎の治療期間は糖尿病などの免疫不全や尿路閉塞などの合併症がなければ、2週間でも許容されるが、前立腺膿瘍のリスクがある場合は、膿瘍形成を防ぐために最低4週の治療が必要となる。

前立腺炎を繰り返している病歴があれば慢性前立腺炎として6-12週の治療が必要となりえる。

CTなどの画像検査は全例で必須ではないが、免疫不全の患者、菌血症またはseptic emboliの徴候がある場合は、前立腺膿瘍を評価するために、造影CT または泌尿器科による軽直腸的エコーでの前立腺の画像検査を考慮する。

適切な治療にもかかわらず臨床的に悪化している患者でも画像検査を考慮する。

 

MRIの拡散強調画像も前立腺膿瘍の検出に有用だが、前立腺癌との鑑別は画像のみでは難しいかもしれない。

Case series: Diffusion weighted MRI appearance in prostatic abscess - PMC

 

急性前立腺炎コホートでは142人のうち31人に前立腺膿瘍を認め、症状が遷延する場合、排尿障害の徴候がある場合は、前立腺膿瘍を考える必要がある。

有意差はないが糖尿病も前立腺膿瘍のリスクになりそう。

Acute bacterial prostatitis and abscess formation | BMC Urology | Full Text

 

前立腺膿瘍担った場合は保存的治療のみでは難しいことも多い。

Prostatic abscess: A systematic review of current diagnostic methods, treatment modalities and outcomes - PMC

写真やイラストなどを保持する外部ファイル。オブジェクト名は TJU-46-4-262-g04.jpg

 

前立腺膿瘍の治療アルゴリズム

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前立腺膿瘍が2cmを超えるかがポイント

前立腺膿瘍の大きさが2cm未満ならまずは保存的治療が優先

2cmを超える膿瘍なら臨床的に安定なら穿刺をするが、臨床的に不安定なら手術

多房性の膿瘍であれば50歳以上なら手術、50歳未満なら穿刺を試してみみる。

穿刺で改善が乏しければ手術。

 

治療期間や抗菌薬は慢性前立腺炎に準じてST合剤もしくはキノロンを6-12週となる。

一般的な膿瘍の治療目安に準じて血沈およびCRPの陰性化および画像的な膿瘍の消失まで治療を行うことが多い。

 

なお、糖尿病、尿路の閉塞、長期尿道カテーテル挿入などの前立腺膿瘍のリスクがないにも関わらず、前立腺膿瘍を認めPSAが著増している場合は、前立腺癌の可能性を念頭に、生検を考慮する必要がある。

Advanced prostate cancer presenting as a huge abscess - ScienceDirect

 

結核と非結核性抗酸菌のCT所見の違いについて

Comparison of chest CT findings in nontuberculous mycobacterial diseases vs. Mycobacterium tuberculosis lung disease in HIV-negative patients with cavities - PMC

 

結核と非結核性抗酸菌を鑑別できるCT所見はなにか?

 

目的

本稿では,HIV陰性患者の非結核性抗酸菌症(NTM)腔と結核感染症(TB)腔のCT所見の違いに注目する.

方法

胸部CTで空洞を認めたNTM患者128人(男性79人、女性49人)について、同時期の結核患者128人と年齢・性別をマッチングさせ、レトロスペクティブに検討した。

全患者の喀痰培養は病原体陽性であった。

独立した2人の胸部放射線技師が,空洞の特徴と関連因子を評価した.

 

結果

観察者間の一致は良好であった(κ値、0.853-0.938)。

NTMの腔壁は結核の腔壁よりも有意に薄く(6.9±4 mm vs 10.9±6 mm,P<0.001),均一だった(厚さの比,2.6±1 vs 3.7±2,P<0.001 ).

空洞に隣接する胸膜の肥厚も結核よりNTMの方が有意に厚かった(P<0.001).

しかし,多変量解析では,代表的な空洞所見の中で隣接胸膜の肥厚が唯一の有意な因子であった(オッズ比[OR],6.49;P<0.001).

多変量解析では,輪郭のはっきりしないtree-in-bud nodules(OR,8.82,P<0.001),非空洞性の結節(≧10mm)の数が少ない(OR,0.72,P=0.003),右上葉の気管支拡張(OR,5.3,P=0.002)はNTMと有意な関連を示す補助的な所見であった.

 

結論

NTMの空洞は結核の空洞に比べて壁が薄く、均一である。

空洞が隣接する胸膜肥厚を伴う場合,輪郭のはっきりしないtree-in-bud nodules,または10 mm以上の非空洞性の結節の数が少ない場合,これらのCT所見は結核ではなくNTM疾患を強く示唆する. 

 

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空洞の壁は比較的薄く、均一⇒NTM

 

 

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⇒壁が不均一で周囲に 不明瞭なTree in bud⇒結核

 

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⇒嚢胞に隣接する胸膜の肥厚を認める。

 

 

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⇒空洞の壁肥厚がありさらに不均一に肥厚 右下葉の輪郭が不明瞭なTree in bud さらに左下葉の非空空洞性の大結節⇒結核

 

 

ということで

輪郭のはっきりしないtree-in-bud nodules,非空洞性結節(≧10mm)の数が少ないこと,右上葉の気管支拡張はNTMらしい。
また空洞壁が不均一で周囲にTree in budを伴う場合は結核を示唆

 

◯注意点

 ただ、CT所見は過信しすぎないことが重要。NTMにしか見えなくても結核ということはありえる。

 万が一、結核だったときのことを考えれば、特に入院症例では3連痰はまず行うということが重要。

 とはいえ、結核らしいかNTMらしいかを画像からある程度、予測することも臨床的には重要と思われる。

 

 

消化管異物いろいろ

なぜか、消化管異物が続いているので、軽くレビュー

 

魚骨は誤飲の原因として多い

Characteristics of fish-bone foreign bodies in the upper aero-digestive tract: The importance of identifying the species of fish | PLOS ONE

 

耳鼻科領域の魚骨誤飲で最多は、ウナギが最も多く(n=39),次いでサバ(n=33),サケ(n=33),アジ(n=30),カレイ(n=30)であった。

カレイの魚骨は下咽頭や食道に留まっていることが多かった(9/30,30%)

 

さらに魚骨は上部消化管の穿通をする。

 

魚骨が胃を貫き、膵頭部まで到達した症例

Unexplained abdominal pain due to a fish bone penetrating the gastric antrum and migrating into the neck of the pancreas: A case report - PMC

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魚骨は十二指腸穿孔をきたしうる。

Fish bone penetration of the duodenum extending into the pancreas: Report of a case | SpringerLink

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⇒なお、内視鏡的に安全に除去可能なケースでは手術せずに保存的に改善可能である。

 

 

 

なお、魚骨以外には爪楊枝も重要な鑑別

Successful diagnosis and treatment of ingested wooden toothpicks - PMC

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⇒これは結腸を貫通して緊急手術になった症例

 

 

 

⇒小腸内で穿通した爪楊枝 爪楊枝は高吸収のCT画像になるが、その目で見ないとわかりにくいこともある。

 

 

なお、内視鏡的に爪楊枝を摘出できれば手術は不要

https://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1002/ccr3.1903

 

Details are in the caption following the image

 

www.sciencedirect.com

なお、エコーも明瞭に爪楊枝を描出可能

Fig 4:

 

 

 

最後に、椎茸による腸閉塞

すべて、少腸閉塞のケースレポート

A Case of Bowel Obstruction due to Shiitake Mushrooms: Diagnostic Features on Computed Tomography

 

基本的に、しいたけの丸のみが原因

 

 

一見、腫瘤性病変に見えるが、内部は抜けている。

ドーナツサイン、三日月サインと呼称?

 

 

 

アルコール依存症の認知機能低下で考えるべきこと。

アルコール依存症の急激な認知機能低下で考えることは?

アルコール依存症による認知症と考えがちだが、特にTreatableな要素はないかと考えることが重要。

まずは、髄膜炎脳炎を疑う所見がないか?

その意味では髄液検査は最も重要な検査のひとつ。

細菌性髄膜炎結核髄膜炎ヘルペス脳炎などのスクリーニングに有用。

これらが否定できるまでは、少なくとも細菌性髄膜炎としてセフトリアキソン+バンコマイシン+ビクシリンを、ヘルペス脳炎としてアシクロビルのエンピリック治療は妥当と思われる。

脳症としてはNMDA脳炎や橋本脳症なども鑑別に挙がるので、NMDA抗体、抗甲状腺ペルオキシダーゼ抗体、抗サイログロブリン抗体を提出を考慮(甲状腺機能は正常でも問題なし。)

抗核抗体、SSA抗体などの、自己抗体が陽性ならば神経ループスのような自己免疫疾患も鑑別に。

ただ、アルコール依存症という背景がある場合にまずは、考えたいのが、ウェルニッケ脳症。

www.ncbi.nlm.nih.gov

結構、高頻度にみかけるけど、見逃されやすい印象。

ポイントは、低栄養(吸収不良も含む)、アルコール多飲

3徴候は精神状態の変化、運動失調、眼筋麻痺だが、必須ではない。

よって、リスクがある患者の意識変容では常に鑑別に挙げる。

ビタミンB1は特殊スピッツなので、ビタミン投与前に採血をしておくことがポイント。

原因不明の意識障害低血糖ならルーチンでビタミンB1測定してよい。

ウェルニッケ脳症の鑑別疾患は、肝性脳症、脳卒中、アルコール離脱症、せん妄、慢性低酸素症、正常圧水頭症などとされているが、意識障害をきたす先の脳炎髄膜炎、脳症も重要な鑑別。

なお、Refeeding症候群でも充分なチアミン補充が重要。

低栄養、アルコール依存はまず、チアミンと覚える。

 

 

High-dose Parenteral Thiamine in Treatment of Wernicke’s Encephalopathy: Case Series and Review of the Literature - PMC

ウェルニッケ脳症の治療量

500 mg のチアミンの静脈内投与を1 日 3 回 2 ~ 3 日間

⇒ 250 mg のチアミンの静脈内投与を次の 2 ~ 3 日間

⇒その後、経口投与に切り替え

 

ビタミンB12やビタミンB6なども適宜補充

 

 

・ただし、もしシーパラがあるならビタメジンの代わりに使用するほうが望ましい。

シーパラ10mlにアリナミン50mg、ニコチン酸100mgが含有されている。

このニコチン酸がミソ。

 

 

◯3日目まで

アリナミン400mg+ビタメジン1A(チアミンとして100mg)を点滴内に混合(を1日3回 8時間ごとに投与

シーパラがあるならビタメジン1Aの代わりにシーパラ10mlを使用

*メイン500mlのうち200ml-300mlを捨てて混合するとちょうどよい

 

4日~7日まで

アリナミン150mg+ビタメジン1A(チアミンとして100mg)を点滴内に混合を1日3回 8時間ごとに投与

シーパラがあるならビタメジン1Aの代わりにシーパラ10mlを使用

 

8日目以降

アリナミン3T分3+ビタメジン内服3T分3

ニコチン酸の低下があれば、ニコチン酸の内服も追加

 

 

なぜ、ニコチン酸か?

 

ウェエルニッケを考える状況では、同時にペラグラを考えるべしというのが鉄則。

他には葉酸欠乏、ビタミンB12欠乏も同時に合併する

その意味では、ウェルニッケを考えるならビタミンB1ビタミンB12葉酸ニコチン酸も測定する。

そして、結果が出るまでは、アリナミンシーパラ、必要に応じて葉酸を併用するというのがおそらくは望ましい。

 

ペラグラのレビュー

https://onlinelibrary.wiley.com/doi/full/10.1111/phpp.12659

 

原因は以下の通り

ナイアシンの摂取不足による一次的なもの
低栄養
炎症性腸疾患-クローン病
外科手術後
十二指腸炎
胃粘膜によるトリプトファンおよびナイアシンの吸収障害
慢性アルコール中毒
原発性シェーグレン症候群
感染症
HIV
薬物性(イソニアジド、エチオナミド、6-メルカプトプリン、5-フルオロウラシル、ピラジナミド、フェニトイン、アザチオプリン)

イソニアジドは、ビタミンB6欠乏が有名だが、ペラグラも同時に起こりうる。

⇒ただ、薬剤性を除けば、ペラグラのリスクと、ウェルニッケ脳症のリスクは被っている。

低栄養、アルコールでは、ペラグラも考える。

 

もともと、トウモコロシを主食にする国で多発。

有名なのは以下のような皮疹

 

Details are in the caption following the image

◯症状は3徴候

・皮疹

・消化器症状(下痢、悪心)

神経症状(認知機能低下、末梢神経炎, 歩行失調, ミオクローヌス)

⇒ウェルニッケと同様に失調、認知機能低下を認める。ただミオクローヌスは特徴的

また、下痢が目立つ。

口内炎が目立つのもペラグラらしい。

 

最も重要な問題は、ペラグラは発展途上国の皮疹のイメージが強いが、そもそも皮疹は日光に暴露することで起こる

⇒日光に暴露しない高齢者では皮疹を認めないというのが最大のピットフォール。

つまり、ウェルニッケとの鑑別はほぼ、困難。

 

 

ニコチン酸血中濃度測定が簡便で有用。

ただし、ニコチン酸血中濃度は正常でも完全に否定はできず、治療的診断にならざるおえない側面も。

 

治療はナイアシン300mg/日⇒100mg 1日3回

点滴ならシーパラ30ml/日 10mlを1日3回投与 

また中心静脈用ビタミンだがビタジェクト1Aにも40mgのニコチン酸が含有されている

 

ビタジェクト1A 1日3回投与(120mg/日)+内服のニコチン酸150mg/日でも代用かのうかもしれない。

シーパラを取り寄せるまでは、そのようなやり方もありかもしれない。

 

治療期間は1ヶ月を推奨とのこと。

神経症状は1週間で改善。

 

*少なくともウェルニッケとして治療しても改善が乏しい場合は、積極的にペラグラを考える必要あり。

 

 

誤嚥のリスクが上がるほど肺炎による死亡率は上昇する

Impact of the number of aspiration risk factors on mortality and recurrence in community-onset pneumonia - PMC

 

はじめに
肺炎患者における誤嚥危険因子の数の臨床的意義はいまだ不明である。本研究では、肺炎患者の死亡率および再発率に対する誤嚥性危険因子の数の意義を明らかにする。

研究方法
本研究は、2014年12月から2016年6月までに肺炎で入院した患者322名を対象とした。誤嚥危険因子の存在数(見当識障害、寝たきり、慢性脳血管疾患、認知症睡眠薬、胃食道疾患)と30日・6ヶ月死亡率、30日以内の肺炎再発との関連性を検討した。

結果
患者を危険因子の数により、0-1、2、3、4以上のグループに分類した。総患者数322名のうち,危険因子0-1が93名(28.9%)、2が112名(34.8%)、3が88名(27.3%)、4以上が29名(9.0%)であった。肺炎の再発率は,危険因子0-1,2,3,4以上で,それぞれ13.0,33.0,43.2,54.2%であった。30日死亡率は0-1,2,3,4以上の危険因子群でそれぞれ2.2,5.4,11.4,24.1%,6カ月死亡率は6.6,24.5,30.7,50.0%であった。

結論
誤嚥危険因子の数は,肺炎患者の死亡率および再発率の上昇と関連していた。したがって,臨床においては,誤嚥リスクの有無だけでなく,これらの患者における誤嚥リスク因子の数を考慮する必要がある.

 

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●感想

誤嚥のリスクが上昇すればするほど高齢者の肺炎の死亡率は上昇するというのは臨床的な実感にも合っている。

誤嚥のリスクが多ければ多いほど予後が悪いと言えるかもしれない。

誤嚥性肺炎診療において、重要な論文と思われる。

 

 

原因不明の体動時の腹痛では圧迫骨折などの脊椎病変を考える。

原因不明の腹痛ではACNESが注目されているが、圧迫骨折などの脊椎病変が原因不明の腹痛の原因であることは、あまり知られていない。

 

総合内科ただいま診断中でも、以下のように記載していた

体動時、特に体幹を回旋させた時に悪化する腹痛は下位胸椎疾患を念頭に置く必要がある。疑えば、実際に体幹を回旋させて痛みを誘発すべきである。

 

今回、改めてまとめる。

 

個人的な脊椎病変による腹痛を疑うきっかけは以下の通り。

 

・安静時の痛みはなく体動時の痛みのみ

・腰痛ははっきりしなくても否定しないが、脊椎叩打痛があれば、可能性は上がる。

・脊椎回旋時に痛みが誘発される。

 

特に脊椎回旋時に痛みが誘発されるという身体診察は非常に重要。

これがあれば、積極的に脊椎由来の腹痛を考える必要あり。

 

 

Clinical profile of acute vertebral compression fractures in osteoporosis

圧迫骨折の20%で腹痛があるという報告もあり、圧迫骨折での腹痛の頻度は意外に多い。

ただし、腰痛が乏しく、神経根症状としての腹痛などのみが残る場合は診断が難しい。

 

 

Pain of Vertebral Compression Fractures Can Arise in the Posterior Elements | Pain Medicine | Oxford Academic

 

圧迫骨折によっておこる後部脊椎の変化の模式図

後方成分の位置が大きく変化する

後方要素に対する前方くさび骨折の影響のグラフィックモデル。 骨折した椎骨の上の椎骨の義務的な屈曲は、その下関節突起を頭側に引き寄せ(垂直矢印)、それが接合関節を緊張または破壊し、下関節突起が下の上関節突起の頂点にぶら下がる(水平矢印)。

 

 

椎体の垂直圧迫骨折の後部要素への影響のグラフィック モデル。 前柱の高さの減少を調整するために、骨折した椎骨の下関節突起は下方に亜脱臼しなければならず、これにより椎弓板が下の上関節突起の頂点に追いやられます。

 

 

これらの変化によって神経根の圧迫がおこり痛みが起こる可能性あり。

 

圧迫骨折後で左大腿部痛がある女性の報告

⇒大腿部痛のみが残存していたが、L2とL3ブロックで改善

 

 

81 歳の男性の報告重い古いテレビを動かしているときに下腹部に突然の痛みが生じた。持続的な下腹部の痛みがあり、ダンスやガーデニングなどの活動によって悪化

長時間座っていることで背中の痛みを感じたが腰痛は乏しいとのこと

原因不明の腹痛として紹介.

L1椎体の有意な前方楔入を示した。

左右の T12 および L1 内側枝のブロックで痛みは完全に軽減した

腰椎内側枝熱高周波神経切開術による治療を受け痛みは改善した。

 

 

Left Lower Abdominal Pain as an Initial Symptom of Multiple Myeloma - PMC

多発性骨髄腫による脊椎の腫瘤性病変が腹痛を主訴にきたという症例報告。

腰痛はなかったとのこと。

臥位で悪化し立位で改善した(体動による痛みの変化は重要な病歴)

エコーでは異常がなく、放散痛を念頭にCTを撮像

結果、脊椎に腫瘤性病変

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MRIでは左椎間孔の圧排を認めた。

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生検などの結果より多発性骨髄腫と診断された。

 

 

また6ヶ月継続する原因不明の腹痛で脊椎結核というケースレポートもあり。

Lumbar Spinal Tuberculosis Presenting as Abdominal Pain: Case Report - PMC

この症例では脊椎叩打痛が陽性

L2、L3、および L4 の椎体での病変と、右大腰筋の巨大な膿瘍が示された

写真やイラストなどを保持する外部ファイル。オブジェクト名は 10-1055-s-0035-1563612-i1500008cr-1.jpg です。

 

 

和足先生方のケースレポート

A Rare Presentation of a Compression Fracture or a Typical Presentation of Lateral Cutaneous Nerve Entrapment Syndrome: A Diagnostic Error?

カーネット徴候陽性でACNESだと診断し局所麻酔をしたが後に圧迫骨折と診断

ACNESの鑑別に圧迫骨折を入れること、ACNESやLACNESのチェックリストを用いることが有用とされている。

 

 

 

ただ、脊椎回旋時に誘発される腹痛という手技も個人的には有用だと思っています。

おそらく原理としては以下のとおりです。左Th12の神経根圧迫による腹痛があるとした場合、脊椎を左の患側に回旋することで、神経根の圧迫が増強し、痛みが誘発されるということかなと考えています。

あまり報告なさそうだけど、脊椎病変による神経根症状による腹痛では脊椎回旋時痛が、ほぼ陽性になる印象です。

 

なお和足先生の報告では上半身を45度、挙上することで腹痛が誘発された圧迫骨折の報告もあり。

American Journal of Case Reports | Unexplained Abdominal Pain Caused by Fracture of the Thoracic Vertebra - Article abstract #937740

 

なお、脊椎圧迫骨折ではベッドをギャッチアップすることで腰痛が誘発されることが多い印象です。これも検証はされていませんが、重要な手技だと思います。

 

こちらは石塚 晃介先生の手技

Thoracic disk herniation diagnosed with an upper body traction procedure in the sitting position - PMC

51歳男性の、デスクワークをしていたところ、へそから右脇腹にかけての突然の腹痛を訴え来院。座位と前屈位で痛みが増悪したが、立位で改善した。

前屈,座位ともに椎間板内圧を高める姿勢であり,痛みの分布はTh10皮膚分節に対応することから,胸椎からの神経根痛を考えた。

MRIで確定診断

写真やイラストなどを保持する外部ファイル。オブジェクト名は JGF2-22-148-g003.jpg

 

非常に興味深いのはUpper body traction maneuverが陽性だったと(座位で上体を持ち上げると腹痛が完全に消失)⇒上体を持ち上げると神経根の圧迫が解除されるため

写真やイラストなどを保持する外部ファイル。オブジェクト名は JGF2-22-148-g001.jpg

 

 

 

なお以下のブログの和足先生に教えていただいた原因不明の腹痛のリストです。

blog.goo.ne.jp

、「Table 1. Possible causes of unexplained chronic abdominal pain. ·Abdominal myofascial pain syndrome .Hernia (Spigelian, umbilical, epigastric) •Abdominal wall tumor (desmoid tumors) •Abdominal wall endometriosis Abdominal wall tear •Scar tissue (appendectomy, caesarean section, laparoscopy) •Rib-tip syndrome •Slipping rib syndrome Rib abnormalities Herpes zoster •Radiculopathy (traumatic) •Diabetic radiculopathy Neurofibroma/subarachnoid cysts, Schwannoma Ilioinguinal or iliohypogastric nerve entrapment Athletic hernia or sports groin/pubalgia .Herniated disk .Abnormalities of vertebral column, including joints Exaggerated lumbar lordosis/leg length difference」というテキストの画像のようです

 

 

以下、以前にかいた本ですが、診断学の基礎を学ぶには今もよいかなと思っています。

非結核性抗酸菌症は髄膜炎をきたしうるのか?

Nontuberculous mycobacterial meningoencephalitis in a young healthy adult: A case report and literature review - ScienceDirect

 

 

 

結核性抗酸菌症(NTM)は髄膜炎をきたすことは、まれ。

基本的にはHIVに続発する事が多い。

 

 

https://www.scopus.com/record/display.uri?eid=2-s2.0-0030445849&origin=inward&txGid=7ef27b550b7453c8b6dbef4b1891abda

Mycobacterium avium が最も一般的に分離される種である

M. avium 髄膜炎は播種性疾患として現れ、通常は重篤な基礎疾患 (主に免疫抑制) に関連しており、死亡率は 70% に近づく。

Mycobacterium fortuitum 髄膜炎は、以前の脳神経外科手術または背中の外傷に関連している。

Mycobacterium kansasii 髄膜炎の臨床的特徴は M. tuberculosis 髄膜炎の臨床的特徴に似ているが、M. kansasii 髄膜炎に関連する死亡率は適切な抗生物質治療にもかかわらず高いまま。

 

ただし、健康な免疫不全のない成人に起きることも。

 

30歳の健康な韓国人が頭痛で来院

水頭症がありドレナージをしたが、症状進行。

図2

 

脱力でERを受診

髄液検査は細胞数8程度が蛋白上昇、血糖値上昇があり髄膜炎を示唆

MRIでは、軟膜および髄膜の強い増強を認めた。

 

Fig. 1

 

脳生検も行ったが、結果的にはNTMの髄膜炎であった 菌株は不明。

肺のNTMの所見はなし。

患者は、イソニアジド、エタンブトール、リファンピン、アミカシン、イミペネム、およびクラリスロマイシンによる治療を受けたが死亡した

5960 人の NTM 感染患者のうち 15 人だけが NTM-CNS 感染症 (0.25%) を持っていたとのことで、非常に稀。

 

NTM髄膜炎のレビュー

pubmed.ncbi.nlm.nih.gov

 

 

 

M. avium髄膜炎は播種性疾患として現れ,通常,重篤な基礎疾患(主に免疫抑制)に関連し,70%に近い死亡率を伴う.Mycobacterium fortuitum髄膜炎は、脳外科手術や背部外傷の既往に関連しており、併発した膿瘍を排出することで予後が改善される。Mycobacterium kansasii髄膜炎の臨床的特徴はM. tuberculosis髄膜炎と類似しているが,M. kansasii髄膜炎に関する死亡率は適切な抗生物質治療にもかかわらず高い

 

髄液細胞数は基本的には上昇するが、今回の症例のように正常から軽度上昇にとどまることも報告されている。

 

感想

NTMも髄膜炎はきたしうるが非常に稀。

抗酸菌培養で捕まればよいが、陰性ならば診断は難しい。

脳生検もハードルは高いだろう。

ただ、HIVや免疫抑制者では、考える必要あり。

また免疫不全がなくても進行性の水頭症や原因不明の亜急性髄膜炎では鑑別に入れる。