コミュニティホスピタリスト@奈良 

市立奈良病院総合診療科の森川暢が管理しているブログです。GIMと家庭医療を融合させ、地域医療に貢献するコミュニティホスピタリストを目指しています!!!

市立奈良病院 総合診療科 説明会兼レクチャー 2022年6月26日

 

市立奈良病院 総合診療科の総合診療プログラム説明会を6/26の14時30分からを予定しています。

当院の月1回のレジデントデイ(ポートフォリオ発表会)を今回は公開させていただきます。

さらに、当院のリウマチ膠原病内科でいつも総合診療科にご指導いただいている、高岸勝繁のレクチャーもあります。

ぜひ、この機会にご参加ください。

 

・日程 2022年 6月 26日

・対象 初期研修医(気持ちが研修医ならOK)

 

*プログラムは変更しています。申し訳ありません。

プログラム案
14時30分            開会の言葉
14時35分~   高岸勝繁先生レクチャー
Illness Scriptの鍛える勉強法 〜日常診療における論文のたしなみ方〜
15時40分~16時00分 市立奈良病院 プログラム説明  森川暢

16時~17時30分   ミニポートフォリオ発表会  専攻医

Zoomのアドレスは後で送付します。

 

総合診療プログラムおよび内科プログラム

どちらのプログラムにも対応しています。

 

臨床推論や救急に強い総合診療医研修

救急や家庭医療に強い総合内科研修

 

を目指す先生に最適です!

 

○申込み

以下よりお願いします。

docs.google.com

COPD急性増悪に対するステロイド

Short-term vs Conventional Glucocorticoid Therapy in Acute Exacerbations of Chronic Obstructive Pulmonary Disease: The REDUCE Randomized Clinical Trial | Chronic Obstructive Pulmonary Disease | JAMA | JAMA Network

 

COPD急性増悪に対するステロイドの治療期間では上記のREDUCE studyが有名です

P 40歳以上のCOPD急性増悪

I     PSL40mg 14日

C    PSL40mg 5日

O COPDの再増悪(180日)

ただし、肺炎、気管支喘息の既往、予後6か月以内の死亡が予測される例、妊婦などは除外されている。

 

 

非劣勢劣勢試験

多施設RCTでサンプルサイズも十分足りている

脱落も問題にならない程度

 

 

Table 1. Baseline Characteristics of Study Participants

CODPとしてGOLD3以上が大半を占める。

ただ、臨床的変数としてベースラインではSpO2のRAの中央値は90%

 

Table 2. Results for the Primary End Point

結果的に、両群は非劣勢。

ただし、挿管やNIPPVが必要な重症例は除外基準ではないものの、あまり多くはない印象ではある。

 

 

最近のCHESTの前向きのRCT

pubmed.ncbi.nlm.nih.gov

 

P   40歳以上のCOPD急性増悪

I    40mgで投与する群(固定用量)

C 患者によって個別に調整する群(調節用量)

O 治療の失敗(院内の失敗と退院後の治療失敗の複合指標)

除外項目:喘息、肺炎、気胸、肺塞栓、左心不全、人工呼吸器など

 

体重が重い場合、血液ガスが悪化している場合、CATスコアが不良な場合などは個別に増量するスコアリングシステムを採用

 

結果的に治療の失敗は、固定用量群の48.8%と比較して、調節用量群の27.6%で発生(相対リスク、0.40; 95%CI、0.24-0.68; P = .001)

病院内での治療の失敗は、個別投与群で有意に低かった(10.6%vs 24.4%; P = .005)

退院後の治療失敗率、有害事象率、入院期間、および費用は同様だった。

 

調節用量のPSL投与量はおよそ55-60mg/day

 

 

○感想

COPD急性増悪のステロイドは40mg 5日というのが一般化している。

実際に、軽度~中等症の増悪ではこれで問題ない印象

ただし、やはり体重が重い場合はPSLを増量することも重要でPSLは1mg/kg/day程度を目安にすることが有用かもしれない。

また上記のREDUCE studyでは重症例はあまりinclusionされれていない印象であり、NIPPVや気管挿管が必要な症例ではPSL40mgを5日では足りないかもしれない。

全例でPSL40mg 5日というのは危険かもしれない。

重症度や経過によって個別にステロイドを調整することは妥当かもしれない。

 

 

CGAで考える 急性期病院から在宅医療クリニックに記載する診療情報提供書の書き方

 

なお誤嚥性肺炎はCGAを学ぶうえでは、格好の疾患だと思います。

内科的には抗菌薬以外にはできることがないと、考えがちですが、誤嚥性肺炎ほどCGAやケア移行のやりがいがある疾患はないと思います。

 

ジェネラリストのための内科診断キーフレーズ

昔からの友人の長野先生に献本いただきました。

一緒に、関西若手医師フェデレーションという勉強会をしていました。

当時から、爽やかで賢くて、素晴らしい後輩でした。

その後、僕が研修した丸太町病院でスタッフもされ、臨床推論に磨きもかけ、研究にも力を入れ、遠くの人になってしまいました。

そんな長野先生の単著

 

いや、本当に素晴らしいですね。

以下、目次ですが、総論もいいですね。

プロブレムリストを網羅して、さらに整理する手法が簡潔に説明されています。

また、以下の各論の項目が、本当に臨床では重要な項目ばかり。

 

 

第1章 総論 診断におけるキーフレーズとは
第2章 全身
No.1 初期にfocus がわかりにくい発熱をきたす感染症
No.2 CRP 上昇に乏しい発熱
No.3 脾機能低下患者の発熱
No.4 環境要因の少ない低体温症
No.5 食思不振を伴わない体重減少
No.6 徐脈を伴うショック
No.7 アルコール常用者のショック
No.8 血圧低下のない乳酸アシドーシス
No.9 肝機能低下のない高アンモニア血症
No.10 血糖降下薬の関与しない低血糖
No.11 脈拍の上昇に乏しい起立性低血圧
No.12 遅発性アナフィラキシー(delayed anaphylaxis)

第3章 神経
No.13 CT 正常のthunderclap headache
No.14 アルコール常用者の意識障害
No.15 高齢発症の頭痛
No.16 変動する/繰り返す意識障害
No.17 原因不明の脳梗塞
No.18 Polyneuropathy(多発神経炎)
No.19 感覚性運動失調(sensory ataxia)
No.20 両側性顔面神経麻痺
No.21 反復性めまい

第4章 頭頸部
No.22 急性発症の開口障害
No.23 痛みを伴う単眼視力低下
No.24 両側の急性視力障害
No.25 耳鳴
No.26 巨舌
No.27 持続性/難治性吃逆
No.28 片側性眼瞼下垂

第5章 胸部
No.29 II型呼吸不全
No.30 治らない肺炎(nonresolving pneumonia)
No.31 高拍出性心不全(high output heart failure)
No.32 Platypnea orthodeoxia syndrome
No.33 黒色胸水
No.34 家族歴を認める気胸

第6章 腹部
No.35 重篤感を伴う急性下痢
No.36 慢性下痢
No.37 全大腸炎(pancolitis)
No.38 回腸末端炎,回盲部炎
No.39 HBV,HCV 感染を認めない肝硬変
No.40 胃切除後の合併症
No.41 無石性胆囊炎
No.42 巨大脾腫

 

総合内科の臨床をずっと、やっていると、これらの特異的なキーフレーズを捕まえることで、診断の精度と速度が一気に上がることが実感できます。

通常、これらのキーフレーズは臨床を長年やっていることで、しか身につけることが出来なかったです。

症候学も主訴別が基本ですが、主訴別症候学のみでは、キーフレーズにはたどりつけないことも多く、経験と知識がものを言います。

 

しかし、なんとこの本はその総合内科医が経験と知識を積んだうえでたどり着ける領域に、ショートカットさせてくれるありがたい本です。

キーフレーズの鑑別疾患の妥当性もさることながら、深め方も丸太町病院のスタイルで論文をベースに緻密に記述されていて、素晴らしいです。

 

臨床推論を上達させたい、研修医や初期研修医の先生、総合内科的な臨床推論を学び直したい、すべての先生にお勧めです。

 

 

Blue finger syndrome

指が急に黒色壊死したら?

 

medical.nikkeibp.co.jp

 

まずは、Achenbach症候群は、ぱっと想起します。

ただし、明らかに壊死しており、手の痺れや炎症反応上昇などを伴う場合はBlue finger syndromeとして、原因疾患の検索を行います。

 

www.elsevier.es

 

 

こちらは過凝固症候群にともなうBlue finger syndrome

 

Blue finger syndromeの鑑別は以下の通り

 

○動脈血流量の減少

Embolism 

コレステロール塞栓

動脈瘤

・心臓粘液腫

・感染性心内膜炎

・Intimal angiosarcoma of the aorta

 

Thrombosis

抗リン脂質抗体症候群

・傍腫瘍症候群

・TTP/DIC

・抗凝固薬による皮膚壊死

 

 

血管収縮

・SLE

・薬剤性

・凍傷

Acrocyanosis 

・昇圧剤使用

 

血管壁

・血管炎

・バージャー病

ベーチェット病

・強皮症

・クリオグロブリン

・SLE

・梅毒

 

その他:calciphylaxis

 

 

○静脈還流の低下
・広範な静脈血栓症

・Phlegmasia cerulea dolens
Venous gangrene

 


○血液の過粘着性
・クリオグロブリン血症
・ワルデンストーム・マクログロブリン血症
・骨髄増殖症候群:真性多血症、本態性血小板増多症
・寒冷凝集素

 

 

以下、診断アルゴリズム

 

外傷・咬傷、呼吸不全などは除外

寒冷で悪化するかがポイント

寒冷で悪化しない場合は、末梢の動脈が触知するかで鑑別

触知しないなら末梢の血栓症

触知するなら以下の鑑別

 

 

寒冷で悪化する場合は以下

 

・寒冷で悪化するが温めるともとに戻る→レイノー

・寒冷で悪化 ベースでチアノーゼ →原発性 or 二次性チアノーゼ

 

・寒冷がきっかけで病変が発症

虚血/熱傷

急性発症の紫斑±壊死 →クリオグロブリン

慢性経過→凍傷様ループス premio chilblain lupus

 

なお、抗核抗体、ANCA、抗リン脂質抗体、クリオグロブリンなどの検査にすぐに走りがちですが、心血管疾患や心房細動の有無、血液培養、悪性腫瘍の検索、免疫グロブリンのチェックなども必要ですね。

特に、血液培養は抜けがちですが、重要です。

 

 

急性腎不全における緊急腎代替療法 ジャーナルクラブ2022年5月9日

Timing of Initiation of Renal-Replacement Therapy in Acute Kidney Injury

 
本日のジャーナルクラブで読みました。
重症のAKIに早期に腎代替療法を導入すると予後は改善するか?
 
P 重度の急性腎不全 (18歳以上、KDIGO2 or 3) 除外基準(腎代替療法の既往、重度慢性腎不全、中毒など一般的な原因ではないAKIは除外)
I 患者が適格基準を満たしたら12時間以内に腎代替療法を開始(accelerated strategy)
C 腎代替療法の適応を満たしたら、臨床医の判断で腎代替療法を開始(standard standard strategy
O 90 日の時点での全死因
 
standard strategyでは以下のような腎代替療法の基準を満たした患者で最終的にはICUの臨床医の判断で透析を開始する
血清カリウム値が6.0mmol/L以上、pHが7.20以下、または血清重炭酸レベルが12mmol/L以下、重度の呼吸不全、またはランダム化後少なくとも72時間のAKIの持続
 
多国籍の大規模RCT 
ベースラインは両群で同等
サンプルサイズは優越性試験で90%の検出力で計算
サンプルサイズも足りている。
 
○結果
原疾患は58%が敗血症
75%が挿管され、70%が昇圧薬を使用している 
平均年齢は64歳
 
accelerated strategy 1,418 例(96.8%)とstandard strategy  903 例(61.8%)で腎代替療法が施行
90 日の時点で死亡はaccelerated strategy の 643 例(43.9%)とstandard strategy の 639 例(43.7%)で発生(相対リスク 1.00、95%信頼区間 [CI] 0.93~1.09,P=0.92)
90 日の時点で生存していた患者において腎代替療法accelerated strategyの 814 例中 85 例(10.4%)とstandard strategyの 815 例中 49 例(6.0%)で継続している(相対リスク 1.74,95% CI 1.24~2.43)
有害事象はaccelerated strategyの 1,503 例中 346 例(23.0%)とstandard strategyの 1,489 例中 245 例(16.5%)で認めた(P<0.001).
主な副作用は低血圧や電解質異常
 
○感想
非常に大規模でかつ質の高い臨床試験
優越性試験であり非劣勢を証明するための試験ではないが、それでもこれだけの大規模の質の高いstudyで優越性を示せなかったことは大きい。
ただ、非常に死亡率が高いICUの患者(4割が死亡)であり、一般病棟でも適応可能かは不明である。
とはいえ、逆に言えばこれだけ重症の患者であってもAKIへの早期の腎代替療法は死亡率を改善させないことがほぼ確からしい。
よって、特にsepsisなどによるAKIでは、まずは輸液、昇圧圧、必要に応じて利尿薬で粘り、粘りきれない場合は透析という戦略が妥当と思われる。
早期に敗血症バンドルとして早期の抗菌薬を投与、ドレナージ、輸液、輸液で反応しなければノルアドレナリンの早期投与、などの包括的な介入と治療を速やかに行うことがやはり重要であると再認識。
代替療法は焦らなくてよいと再認識。
ただし、中毒の透析やや血漿交換など個別な特殊な病態は除外されていることに注意。