コミュニティホスピタリスト@奈良 

市立奈良病院総合診療科の森川暢が管理しているブログです。GIMと家庭医療を融合させ、地域医療に貢献するコミュニティホスピタリストを目指しています!!!

ANCA関連血管炎の治療(特にMPA,GPA)

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/24729399

AAVは生命を脅かす、または臓器を脅かす可能性のある重篤な疾患である。

治療は導入期、維持期に分けられる

再発した場合は、導入療法をさらに追加する必要があるかもしれない。

 

治療の原則

(i)迅速な診断

(ii)迅速な治療の開始

(iii)臓器予防のための早期寛解導入

(iv)最終的な寛解を目標とした薬物の維持と離脱

(v)薬物毒性の予防

 

新たに診断されたANCA関連血管炎は

グルココルチコイド(GC)+i.vシクロホスファミド(CYC)

     or

グルココルチコイド(GC)+リツキシマブ(RTX)

のどちらかを選択する

 

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〇シクロホスファミド

CYCは静脈投与する。最初にパルスを行う。

標準用量は15 mg / kgだが年齢および腎機能で調整をする。

IVのほうが毒性は低め。

シクロホスファミドの毒性は累積投与量で決定される。

白血球減少症がある場合は用量を減らすことも考慮。

シクロホスファミドに不耐性の患者は リツキサンで治療する。

 

〇リツキサン RTX

RTXは寛解導入に対してCYCと同程度に有効である

若い患者、妊娠を考えている、感染リスクが高い場合などで考慮される。

 

〇MTX/MMF(ミコフェノール酸モフェチル)

臓器障害がない場合はPSL+MTX or PSL+MMFも考慮されると。

Up to Dateでは基本的にはPSL+MTXを推奨。MTXが使えなければRTX

 

 

Up to Dateのプロトコール

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血漿交換

重篤な腎障害や肺胞出血などの、生命にかかわる徴候を認める場合は、血漿交換を追加する必要あり。

 

〇グルココルチコイド

AAVに対する導入療法にはグルココルチコイドの高用量治療が含まれる

グルココルチコイドは、CYCやRTXと組み合わせる。

グルココルチコイドは、1 mg / kg程度で開始し、投与量は12週の地点で15mgにまで減量を目指す。

グルココルチコイドの投与が長くなると、 感染症などの副作用が増える。

重篤な場合はパルスを行う。

 

維持療法

寛解が出来たらCYCは、アザチオプリンかMTXに変更する。

・MMFなども代替薬だが効果に乏しい。

・最低1年は維持療法を行うが、GPAやPR3ーANCA陽性が残存するケースでは5年ほどの維持療法を考慮

・RTXは維持療法としても使用可能。

プレドニンを離脱した6か月後を目安に免疫抑制薬の離脱を考慮。

 

なおUp to Dateにも同様の記載あり。

CYCを使用した後の維持療法としてはアザチオプリンが使いやすい。

RTXを導入に使用したらそのまま維持療法をRTXにするという流れ

In patients who achieve remission after a new diagnosis of GPA or MPA and are PR3-ANCA positive, we recommend azathioprinerituximab, or methotrexate as maintenance therapy, rather than other drugs such as cyclophosphamidetrimethoprim/sulfamethoxazole, or glucocorticoid monotherapy (Grade 1B); the authors and editors of this topic tend to use azathioprine in patients who had cyclophosphamide induction and rituximab for maintenance in patients who had rituximab induction.

 

ちなみにアザチオプリンやMTXによる維持療法中に再発した場合は、RTXが推奨

 

〇再発など

再発した場合免疫抑制を強化する必要がある。

軽度の再発は、 プレドニゾロン投与量の増加と 免疫抑制薬の調整を行う。

重度の再発では プレドニゾロンの増加に加えて、RTX or CYCを使用し、場合によっては血漿交換やパルスも考慮

再発した場合は感染症や、悪性腫瘍、薬の変更などを念頭に置く

制御が難しいケースでRTXを使用したことがないならRTXが第1選択

 

〇予防とモニタリング

(i)定期的な血液検査モニタリング(CBC,腎機能、肝機能、炎症反応など)

(ii)定期的な尿検査およびCYCによる尿路上皮毒性予防目的のメスナ

(iii)免疫抑制薬投与前に血清免疫グロブリンを測定 

(iv)カリニ予防薬としてのST合剤

(v)抗真菌薬の予防投与

(vi)黄色ブドウ球菌に対する鼻腔ムピロシンによる除菌

(vii)子宮頸部上皮内腫瘍(CIN)のスクリーニング (女性患者)

(viii)CYCに伴う不妊の危険性の考慮

(ix)骨粗鬆症の予防

(x)結核のスクリーニング(B型肝炎C型肝炎、βDグルカンも)

(xi)肺炎球菌感染症、インフルエンザに対する予防接種  (B型肝炎も?)

(xii)心血管および血栓塞栓症のリスク評価

あとは、サイトメガロのモニタリングも必要でしょうか。

 

 

なお、EGPAも基本的にはステロイドとUp to Dateに記載あり

EGPAおよび全身性血管炎の証拠を有するすべての患者に対して、全身性グルココルチコイド療法を推奨。

1日当たり0.5から1mg / kgのプレドニゾン用量は、典型的には6から12週間の間、または疾患の寛解が達成されるまで、徐々に漸減する。

⇒EGPAはステロイド単独でも改善しやすい傾向。

EGPAでも重症例ではステロイド+シクロホスファミドを使用し、寛解したらアザチオプリンによる維持療法に切り替える。

 

 膠原病診療は以下の本がやはり有名ですね。。