憩室炎と虫垂炎を臨床所見でどのように区別するか
もともと憩室炎では虫垂炎に比べて以下のような所見があるとされていました。
The diagnostic criteria for right colonic diverticulitis: prospective evaluation of 100 patients
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/18704462
〇憩室炎の特徴
メジャー
(1)右下腹部への痛みの移動なし。
(2)白血球数<10,000 / mm 3。
(3)側腹部痛み
(4)右結腸憩室の病歴
マイナー
(1)右下腹部痛の既往
(2)吐き気や嘔吐の症状がない。
(3)便秘または下痢の症状
(4)少なくとも7日間継続する腹痛。
今回、東邦大学大森病院 総合診療・急病センターの佐々木先生が新たにケースコントロールスタディを発表されたので紹介いたします。
Clinical differentiation of acute appendicitis and right colonic diverticulitis: A case-control study
東邦大学のシングルセンターの後ろ向きのケースコントロールスタディ
369人の16歳以上の日本人を対象としたスタディ。
虫垂炎と右側憩室炎を比較
虫垂炎のほうが比較的早期に来院する。
食欲不振、悪心、嘔吐はやはり虫垂炎で多い。
右下腹部痛は憩室炎で多い。
WBCは虫垂炎のほうが高値になりやすく、CRPは憩室炎のほうが高値になりやすい傾向。
当然、虫垂炎の既往歴があれば虫垂炎の可能性が上がり、憩室炎の既往歴があれば憩室炎の可能性が上がる。
以下虫垂炎の可能性を上げる所見と下げる所見のまとめ
〇虫垂炎の可能性を上げる所見
悪心・嘔吐 OR:3.89
食欲不振 OR:2.13
〇虫垂炎より憩室炎を示唆する所見
長い経過 OR:0.84
右下腹部痛 OR:0.28
憩室炎の既往歴 OR: 0.0034
CRP>3.0 mg/dL OR:0.25
上記の結果をまとめた所見
右にいくほど虫垂炎を示唆 左にいくほど憩室炎を示唆
〇感想
非常に実践的な論文だと感じます。
憩室炎の既往歴がある場合や悪心や食欲不振がない場合、最初から右下腹部が痛い場合は憩室炎の可能性が上がるというのも、臨床的な実感に合います。
非常に意味がある論文であり、良い刺激を頂きました。
皆様の臨床にも役立てて頂ければと思います。