コミュニティホスピタリスト@奈良 

市立奈良病院総合診療科の森川暢が管理しているブログです。GIMと家庭医療を融合させ、地域医療に貢献するコミュニティホスピタリストを目指しています!!!

NMDA脳炎の治療

NMDA脳炎の治療について調べてみた。

 

ひとまず、こちらの論文が日本語で読めてお勧め。

https://www.jsnt.gr.jp/Archive/pdf?gid=cq3neuro/2014/003101/007/0030-0036

 

〇Up to Dateより

治療法は免疫抑制と腫瘍切除

治療をしなければ、進行性の神経学的悪化が起こり致死的になる。

前向きのRCTがないため、治療の決定は個別化して考える。

患者の年齢、腫瘍の有無、症状の重症度を考慮に入れる必要がある。

観察研究と臨床経験に基づいて以下の治療を行う

 

〇First line therapy

・腫瘍があれば適切な時期に切除を行う(可能な限り早く切除)

ステロイドパルス(例、成人でメチルプレドニゾロン1g/日を5日間)が基本。

それに加えて以下のどちらかを併用する。

・静脈内免疫グロブリン投与 IVIG(400 mg / kg 5日間

血漿交換

 

IVIGと血漿交換の効果が優れているかは不明。

臨床医の中には、非常に若い場合、重症のジスキネジア、非常に興奮している、自律神経が不安定な場合は、IVIGが簡便であり優先されるという意見もある。

 

〇Second  line therapy

初期治療で臨床的改善の証拠がない場合

リツキシマブもしくはシクロホスファミドまたはその両方を使用する。

 

 

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/21163445

https://www.jsnt.gr.jp/Archive/pdf?gid=cq3neuro/2014/003101/007/0030-0036

 

〇治療のフローチャート (上記のまとめ)

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2013年にこのアルゴリズムに沿って解析された抗NMDA受容体脳炎の後ろ向き観察研究が発表。

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/23290630

本抗体陽性の577例中,4 ヵ月以上経過観察できた501例を対象として解析

⇒24 ヵ月経過観察できた252例中では203例 (81%)がmodified Rankin Scale (mRS)0-2と予後は良好で,死亡例は24例(10%)

 

なお、急性期から慢性期にかけて的な管理を行い,深部静脈血栓症や肺塞栓,感染症などの重篤な合併症を回避し,長期臥床に伴う褥瘡や関節拘縮を防ぎうるかが予後に密接に関係するため、全身管理が重要とのこと。