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合併症のないインフルエンザに対するバロキサビル マルボキシル  NEJM RCT

https://www.nejm.org/doi/full/10.1056/NEJMoa1716197

 

 

Baloxavir Marboxil for Uncomplicated Influenza in Adults and Adolescents

 

  • PICO

Patient p.914, Trial design and oversight / p.915, Patients

Inclusion criteria:

Phase2試験

20-64歳の日本人成人。腋窩温で38度以上の発熱を認め、全身症状(頭痛・体熱感or悪寒・関節痛/筋痛・倦怠感)が1つ以上あり、かつ中等度~重度の呼吸器症状(咳嗽・咽頭痛・鼻閉)が少なくとも1つある発症から48時間以内の患者。抗原迅速検査陽性となった患者のみ対象。

Phase3試験

12-64歳の日本と米国の患者。腋窩温で38度以上の発熱を認め、全身症状が1つ以上あり、かつ中等度~重度の呼吸器症状が少なくとも1つある発症から48時間以内の患者。抗原迅速検査の結果は問わない。

 

Exclusion criteria:妊娠女性、体重が40kg以下、入院になるような併存疾患、アセトアミノフェン以外のインフルエンザに対する治療(インフルエンザから続発した細菌感染の治療は除く)。

 

Intervention and Comparison p.914, Trial design and oversight

Phase2試験

Baloxavir 10mg/日 vs Baloxavir 20mg/日 vs Baloxavir 40mg/日 vs Placebo

Phase3試験 2:2:1になるように下記の3群を割り付けし、比較する。

Baloxiavir:Baloxiavir 40/80mg(体重80kgで場合分け)単回投与+Oseltamivir Placebo5日間投与。

Oseltamivir:Oseltamivir 75mg2回/日を5日間投与+ Baloxiavir Placebo単回投与。

Placebo:Baloxiavir Placebo単回投与+Oseltamivir Placeb5日間投与。

 

Outcome p.915, Outcomes measured / Appendix p.6

Primary outcome:介入を始めてから全身症状・呼吸器症状7項目が全て改善に至るまでの時間。

Secondary outcome:介入を始めてから解熱に至るまでの時間、平時の体調に戻るまでの時間、新たに起こった抗菌薬を使うような合併症、VirusのRNA活性の変化、Virusの検出期間、Baloxiavir感受性が下がるとなるアミノ酸変異の頻度、副作用。

 

  • ランダム割付されているか?ランダム割付の方法は? p.914, Trial design and oversight

Baloxiavir:Oseltamivir:Placebo=2:2:1になるようにランダム割付を行った。ランダム化の方法については記載なし。

 

 

 

 

 

 

  • ベースラインは同等か? p.918, Table1.

発症してからの時間に関してばらつきが結構見られるが、それでも対象者全体が発症48時間以内であり、大差はないと考えてもいいか。喫煙者がタミフル群で多い。それ以外は気にならない。インフルエンザ陰性患者は全体的に体重が重く、男性が少ないのは興味深い。

 

  • 研究対象となった介入以外は両方のグループで同じような治療がされていたか?p.915, Patients

上述したようにアセトアミノフェン以外の対症療法や続発した細菌感染に対する抗菌薬投与以外の治療を行った人は解析から除外されている。その他介入以外の治療に関する記述はない。

 

  • 研究対象者、現場担当者、研究解析者は目隠しされている?p.914, Trial design and oversight

Double-blindとあり、患者・現場担当者はblindされている.解析者は塩野義製薬が雇った統計者が行うとされており、blindに関して記述なし.

 

  • ITT解析か?p.915, Statistical analysis / p.917, Figure 1.

Intention-to-treat analysis、通常は介入や追跡のドロップアウトを含めるのがITT解析だが、この場合はPCR陽性かどうかでIntention-to-treat analysisを用いている。介入/比較対象(内服)を完遂したものの、その後Influenzavirus-PCRで陽性とならなかった患者含め全員解析することをIntention-to-treat safety population、Influenzavirus-PCRが陽性となった患者に限って解析することをIntention-to-treat infected populationとしている。

 

  • その研究のための対象患者数は偶然の影響を小さくとどめるのに十分な数か?p.915, Statistical analysis / p.916, Phase 3 Trial Patient Population /p.917, Figure 1.

65%の患者がInfluenzavirus-PCR陽性となると仮定し、1494人の被検者を集めることができれば、Baloxiavir群とPlacebo群間の症状寛解までの平均時間の違いのうち、28時間の違いを90%の検出力で発見できるとシミュレートしていた。本研究は1432人の被検者が内服を完遂し(Intention-to-treat safety population)、1064人の患者がPCRまで施行されている(Intention-to-treat infected population)。試算よりは少ない。

 

  • 結果は?p.916, Clinical and Virologic Efficacy / p.919, Figure 2. / p.920, Figure 3. / Appendix p.27

介入を始めてからインフルエンザの諸症状(発熱・頭痛・体熱感or悪寒・関節痛/筋痛・倦怠感・咳嗽・咽頭痛・鼻閉)が改善するまでの時間に関して、Baloxiavir投与群はPlacebo群に比べ有意に短かった(平均で53.7時間vs80.2時間)。ただし、Oseltamivir投与群と比較すると差は見られない。

Influenzavirus-PCRが陰転化するまでの時間はOseltamivirに比較してもBaloxiavir投与群にやや分がある。

 

  • 結果に有意差はあるか? NNTは?

有意差は上記。イベント発生率の差を求める研究ではないため、NNTについては求められない。

 

  • 副作用は?p.921, Table 2.

下痢・気管支炎・鼻咽頭炎・嘔気・副鼻腔炎・ALT上昇・頭痛・嘔吐・めまい・白血球減少・便秘について集計されている。総数はBaloxiavir投与群= Oseltamivir投与群> Placebo群。ただし重症な副作用はBaloxiavir投与群に多い。

 

  • 臨床にこの結果はどのように応用できるか?

副作用や耐性・コストのことを考えると内服するのであれば、Oseltamivirを飲んでもらうほうが好ましいと言える。

あくまで合併症のないインフルエンザを対象にしたstudyであり、そもそも抗インフルエンザ薬の適応になるような症例(高齢、合併症あり)に対してBaloxiavirを使うという結論にはならず、追試を待つしかない。

この論文の内容からは基本的にBaloxiavirを使うケースが想定できない。