38歳の女性が、息切れ、咳、動悸、断続的な非労作性胸部圧迫感で医師を受診した。めまい、頭痛、失神、発熱、悪寒、発汗はなかった。
甲状腺機能低下症およびアレルギー性鼻炎の既往歴があり、レボチロキシンおよびセチリジンを服用していた。アレルギーなし。彼女は結婚し、2人の子供がいて、家の外で働かなかった。非合法薬物やアルコールなし。
心血管疾患の家族歴なし。
身体診察では、全身状態良好、バイタル正常で心肺の診察も問題なし
しかし、ECGは以下の通り。
⇒ECGはブルガダのtype1に一致。 症状も一致する
25歳の血縁者が不慮の事故死していることが判明
⇒心血管系の突然死の可能性あり。 子供の心電図も非常に有用 心臓のMRIも行うべき。
息子もブルガダtype1の心電図 心MRIは問題なし
遺伝子テストが行われ、ICDが留置されたが、リードトラブルで再留置を余儀なくなされた
⇒無症状のブルガダでは悪性の不整脈が起こるリスクは低く、ICDの留置について議論がある。 ICDのトラブルが起こっており、デバイスに関連したトラブルが起こりやすい
CD配置から7年後、患者のICDは警報を発するようになった。リード損傷が示唆された。しかし心室性不整脈は記録されていなかった。ひとまず、リード交換のみ行った。
⇒心室性不整脈が記録されておらず、デバイスを完全に除去したほうが良い。リードの引き抜きによる死亡もありえる。
リード除去後6か月後に、顔面の紅潮、意識障害をシャワー中に訴え来院。嗄声を認め、顔面と手の腫脹も認めた。
⇒静脈の還流障害が疑われる 血栓などの結果による上大静脈症候群が疑われる
実際に顔面、頸部、上肢の腫脹があり、collateral veinsも認めた
造影CTを施行したところ上大静脈に血栓を認めた
⇒リバロキサバンを開始したが症状改善なく、ICDを抜去し、上大静脈にステントを置いて、治療を継続した
〇教訓
ICDの留置は慎重に。typeⅠのブルガダ波形があるだけでやるだけでなく、失神歴や心室性不整脈の有無などで慎重に判断する
最近は、血管内デバイスによる上大静脈症候群が増えており、注意が必要
適応がない医療処置を漫然と継続することは、リスクである。