コミュニティホスピタリスト@奈良 

市立奈良病院総合診療科の森川暢が管理しているブログです。GIMと家庭医療を融合させ、地域医療に貢献するコミュニティホスピタリストを目指しています!!!

脂肪塞栓 レビュー

Fat embolism syndrome

 

脂肪塞栓は通常、整形外科的な外傷で起こる。

整形外科的な外傷で、67%に血中に脂肪を認めたという報告もある。

低酸素はsubclinicalな脂肪塞栓を示唆。

オペ中も脂肪塞栓は起こりうる。

他には、骨髄移植、脂肪吸引、膵炎でも脂肪塞栓は起こりうる。

 

脂肪は血中に入り、肺にいくことが多いが、脳や皮膚、眼球や心臓にも行く。

2つの機序が提唱

①The mechanical theory:骨折により骨髄から脂肪が血中に入る

②The biochemical theory:骨折による炎症で骨髄から静脈への脂肪の流入が起こる。

肺の脂肪塞栓では時にARDSと区別が難しい

 

〇症候

脂肪がどの臓器に飛ぶかによって症状が異なる。

症状としては、低酸素、頻脈、発熱が挙げられる。

皮膚に飛ぶと点状出血もある

肺循環への浸潤が最もコモンで75%の患者で認める。

軽度の低酸素から、ARDSに準じた人工呼吸器が必要な重症例まで様々。

手術中に低酸素が悪化することもあり、麻酔をかけるときに注意が必要。

脳病変は虚血というよりも脳浮腫なので、さまざまな症状が出現。

無気力や不眠を認める。

脳浮腫が重度になると、反応がなくなることがある。

50%の患者で皮膚病変を認める。皮膚病変は24時間以内に消失することが多い。

網膜に飛ぶと、出血性病変を認めるが自然に改善しうる

 

 

https://www.nejm.org/doi/full/10.1056/NEJMicm1006177

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〇診断

基本的に臨床症状で診断するが、決まったやり方があるわけではない。

lipase,、free fatty acids、phospholipase A2 は上昇するが特異的ではない。

BALでマクロファージのなかに脂肪を認める所見があることもある。

外傷後の低酸素などが疑うきっかけになる。

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〇治療

特異的な治療はない。Supportive careのみ

抗凝固療法の有用性も証明されてない。

ステロイドは唯一予後を改善する可能性があるが、コントラバーシャル(Up to Dateでは重症例のみ使用を考慮と記載)

使うとしたら、メチルプレドニゾロン

long-bone fracturesでは予防目的でステロイドを使うこともあるが、根拠は乏しい。

酸素療法を行うが重症例では挿管管理も必要。

心不全をきたすこともあり、循環管理も必要。

 

〇固定

long-bone fracturesでは早期固定で脂肪塞栓を予防できるかもしれない。

内固定で脂肪塞栓は減るかもしれない

固定を速やかに行うことでARDSになる割合も減らすという報告もある

髄内のreamingは脂肪塞栓を必ずしも増やさない

 

〇予後

Supportive careと早期の固定で予後が改善する

脂肪塞栓の予後は比較的よく、たいがいの症状は自然に改善する。