コミュニティホスピタリスト@奈良 

市立奈良病院総合診療科の森川暢が管理しているブログです。GIMと家庭医療を融合させ、地域医療に貢献するコミュニティホスピタリストを目指しています!!!

なんでも症例検討会 @広島

先日は、広島のなんでも症例検討会に呼んでいただきました。

丸太町病院時代の後輩の、Y先生とN先生に久しぶりに会えてうれしかったです。

 

症例検討会の1例目は、高齢女性の頭痛。

頭痛として間欠的な痛みで、神経かなと思ったのですが性状が違っていました。

しかも、1年前からの痛みで間欠期には全く痛くないと。

Situationが特異的で重いものを持ったら誘発されるとのことであり、バルサルバ手技で頭蓋内圧が亢進する状況で起こったのかも、とは思いましたが絞れませんでした。

GCA疑いで紹介されてきた症例なのですが、本当に側頭動脈の腫脹・圧痛が著明でやはりGCAなのかと思いました。

しかし経過が長いわりに消耗しておらず顎跛行もなく、さらにCRP高値のわりに血沈が30しかなく、またCr2程度の腎障害と貧血もあり違和感がありました。

Y先生がCTで腎障害のわりに腎臓が腫れていると指摘されたので、アミロイドーシスかもなと思いコメントしました。

結果的には、TP/ALB解離はなかったもののMMに伴うALアミロイドーシスで、側頭動脈にも沈着していた症例でした。

バルサルバ手技で増悪する頭痛の原因は不明でしたが、一過性に血圧が上がったことが原因だったのかもしれません。

とても、勉強になりました。

 

2例目は中年女性の腹痛+嘔吐の症例でした。

前医から、エコーで腸管腫大が目立つとの紹介であり、小腸イレウスに引っ張られた症例でした。

 

腹痛のフレームワークは以下になります。

●腹痛のフレームワーク

Killer abdominal pain(詰まる、破れる、ねじれる、裂ける)

胸部

皮膚・筋骨格系 

代謝・内分泌

腹部(腹膜炎、持続痛、蠕動痛)

 

突然発症でもなく、徐々に増悪傾向でもないのでKiller abdominal painではないと考えました。

胸部に関しては胸部症状は乏しく否定的と考えましたが、念のため心電図はACSの除外の為に必要だなと後で考えました。

体動時の痛みはなく、筋骨格系は否定的と考えました。

嘔吐が激しいので、代謝・内分泌系のフレームは十分にありえ、また嘔吐から考えても随伴症状が乏しい点も代謝・内分泌のフレームに矛盾しませんでした。

うつ病の既往歴もあり、急性間欠性ポルフィリン症も鑑別に挙げましたが、初発のエピソードであり可能性は低いと考えました。

腹部だとすると痛みの部位は臍周囲であり、解剖学的には小腸が考えやすく、また腹膜炎を示唆する症状も乏しく、持続痛かなと考えました。

持続痛は、詰まる・捻じれる病態に多く、小腸イレウスや卵巣捻転などが鑑別に挙がりました。

バイタルをみるとRR28と頻呼吸で代謝性アシドーシスの存在が疑われました。

しかし、ここで参加者から血液ガスを取ったのかという質問があった際に、プレゼンターの先生が取ってないと解答されました。

そこで、血液ガスを取らずとも診断できる病気に違いないというカンファレンスバイアスに陥りました。。。

実際は一番最初のプレゼンの時点で取ってなかっただけでした。。

CTで十二指腸より近位で閉塞しているようにも見えたので、そちらにも引っ張られて、頓珍漢なコメントをしてしましました。。

反省ですね。。

尿ケトンも強陽性でDKAの可能性が高く、結果的には、DKAでした。。

ミソはBS220と軽度高値なのにDKAというところで、実は主治医に問い合わせるとSGLT-2阻害薬が開始されていたという症例でした。

血糖正常のDKAがSGLT-2阻害薬で多いというのは知っていましたが、実際に遭遇したことはなかったので、とても勉強になりました。

 

その後、森川は診断のフレームワークの話をさせていただきました。

 研修医の先生方には少しは、役にたったようで良かったです。

ただ、ベテランの先生には物足りない内容だったかもしれず、対象者の設定は難しいと改めて感じました。

 

その後懇親会では、楽しい夜を過ごさせていただきました。

Y先生やN先生をはじめ、市民病院の部長のO先生、鳥取からいらっしゃったE先生と交流を深めることが出来ました。

皆様の熱気や、情熱は素晴らしく、今後の広島におけるジェネラルの発展の兆しを感じることが出来ました。

総合診療をしたい方に、広島はお勧めです!!

是非、また伺いたいなと感じました。

広島の皆さま、本当にありがとうございました!!