コミュニティホスピタリスト@奈良 

市立奈良病院総合診療科の森川暢が管理しているブログです。GIMと家庭医療を融合させ、地域医療に貢献するコミュニティホスピタリストを目指しています!!!

腹痛のフレーム

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今日は腹痛の講義をしました。

腹痛のなかでも、腹部・腹腔内由来の腹痛の話を。

腹痛の前提として、解剖学的にどこの臓器の痛みかを、臓器をイメージしながら診察することがとても大切。

腹部CT・腹部エコーを診たら、必ず診察に戻る。画像を使い身体所見をフィードバックする。

 

腹部由来の腹痛のフレームは4つ。

①腹膜炎

②急性持続痛

③慢性持続痛

疝痛

 

疝痛

疝痛は「管」の痛み。

Time courseがとても大切

管が収縮or詰まって痛い。前者は、小腸炎・蠕動痛み、後者は胆石や尿路結石。

どちらも波はあるが、特に前者では痛みが0になる期間があることがポイント。後者は比較的持続するが、間欠期には痛みはない。

 

◯腹膜炎

腹膜炎はSituationが大切。つまり、咳嗽・歩行・車がダンパーを超えるなど腹膜が「揺れる」状態で痛みが悪化 or 響く。

これを診察で再現する方法がヒールドロップテスト。ヒールドロップテストの感度を上げるには、本当に踵を「落として」踵に衝撃を与えることが大切。

打診での痛みが響くことも腹膜炎を検出する手法。

腹膜炎が明らかであれば腹部CTだが、骨盤内炎症性疾患は腹膜炎が明らかにも関わらず腹部CTの異常が乏しい。疑えば直腸診で子宮頚部を動かし痛みを誘発。

 

◯急性持続痛

持続痛は腹膜炎でもなくかといって、疝痛のように痛みが0になることがないタイプの痛み。こちらもTime courseがとても大切。

急性発症であれば、血管の痛みと捻れる痛みの初期。

つまり、急性発症の持続痛で腹膜刺激徴候や腹部所見が乏しく腹部単純CTで異常がない場合は、腹部造影CTは躊躇しない。

 

◯慢性持続痛

慢性発症であれば、悪性腫瘍を考える。

大腸癌や膵臓癌は特に頻度が多い割に分かりにくい。疑えば積極的に腹部造影CTや便潜血検査を躊躇しない。