少し話題になったので。。
チーフが以前、個人ブログにまとめた記事を再掲します。
通常吸気には胸腔内は陰圧になり、右室への静脈還流量が増加する。
その結果右室が拡張し、左室を圧排し、心拍出量が低下する。
つまり吸気時にのみ血圧が低下する。
健常群では6±3mmHg程度。これが10mmHg以上低下する場合奇脈という。
なおARがあると奇脈が聞こえなくなる⇒A型大動脈解離では奇脈は稀。
*Kussmaul徴候 吸気時に通常、頸静脈は虚脱するが、逆に吸気時に頸静脈が怒張する現象のこと。
●具体的な測り方。
健常者でも激しく呼吸すると奇脈が起こってしまうので、静かに規則正しく呼吸してもらい測定する。
①血圧計を用い、血圧計を上げていく。
②血圧を徐々に下げていくと最初にKorotkoff音が聞こえる。ここでは呼気でしかKorotkoff音が聞こえない(呼吸を意識しなくても、音がマダラにしか聞こえないので、それで分かるはず)
③さらに血圧を下げていくと呼気でも吸気でもKortkoff音が聞こえるようになる。
②と③の血圧の差が10mmHg以上であれば奇脈とする。
上記を触診で代用する場合は感度が落ちるので、15-20mmHg以上の奇脈に限られる
なお上記の所見はパルスオキシメーターで代用可能かもしれない Arch Pediatr Adolesc Med. 2004 Jan;158(1):48-51.
①血圧計を用い、血圧計を上げていく。
②血圧を徐々に下げていくと最初にパルスオキシメーターが検出される。ここでは呼気でしかパルスオキシメーターが検出されない。
③さらに血圧を下げていくと呼気でも吸気でもパルスオキシメーターが検出される。
パルスオキシメーターは聴診よりも簡便なので、使えるかもしれない。
他には、パルスオキシメータの波形の最大/最少比>1.5であれば血行動態に影響を与える心タンポナーデという報告もある。
Clin Cardiol. 2006 Sep;29(9):411-4.
最近は水銀柱の血圧計は本当に少ないが、自動血圧計でも手動であれば代用できるかもしれない。
●心タンポナーデにおける診断能
他の報告では12mmHgをカットオフとして、心タンポナーデの診断に非常に有用という報告もある(特異度83%,感度98% LR+5.9 LR-0.03)⇒Am Heart J. 1988 Feb;115(2):391-8.
上記2つの報告はいずれも心嚢穿刺による臨床症状改善をアウトカムにしている。
●喘息における診断能
マクギーによると重度の喘息の予測において・・
奇脈(10mmHg>) :LR+2.7 , LR- 0.5
奇脈(20mmHG>):LR+8.2 , LR- 0.8
とあれば確実に重症といえる。
ただし、重症の喘息であれば呼吸数や呼吸努力に奇脈が依存するので感度が低くなる。
なおベイツによるとCOPDでも奇脈が有用と言われている。
徳田先生のブログによると、COPDで気道の閉塞が強い場合には、奇脈をきたし、奇脈のサイズと気道閉塞の程度とは相関がある、と記載がある。
http://blog.goo.ne.jp/yasuharutokuda/e/c076c647bcc0f1e8da1156ccc8ab9d2b
基本的に重度の喘息の診断と同様なのだろう。
http://blog.goo.ne.jp/yasuharutokuda/e/c076c647bcc0f1e8da1156ccc8ab9d2b
基本的に重度の喘息の診断と同様なのだろう。