コミュニティホスピタリスト@奈良 

市立奈良病院総合診療科の森川暢が管理しているブログです。GIMと家庭医療を融合させ、地域医療に貢献するコミュニティホスピタリストを目指しています!!!

巨大な肝細胞癌について

本日は城東病院総合内科で第2回CPCを行いました。

高齢者

肝臓に最大10cmの巨大腫瘤性病変。半年の経過で急激に増大し、結果的にはHCCだった症例。

慢性肝炎の所見はあるが軽度。肝硬変ではない。

B型肝炎ならこのような急激な経過で、肝硬変を介さずにHCCが発生して急激にしてもよいが、C型肝炎は通常ゆっくりとした経過でくるという点が話題になりました。

Giant hepatocellular carcinomaで検索してみました。

 

下記はケースレポート 60歳のアルコール多飲者

凄い大きさですね。病理学的にHCCと診断。

Rev Esp Enferm Dig. 2012 May;104(5):264-5

 

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では巨大だと予後は悪いのか?

HPB (Oxford). 2015 Nov;17(11):988-93. doi: 10.1111/hpb.12479. Epub 2015 Sep 3.

Outcomes of resection of giant hepatocellular carcinoma in a tertiary institution: does size matter? - PubMed - NCBI

 

10cm以上を巨大と定義して、巨大なHCC(G-HCC)とそれ以下の小さなHCC(S-HCC)で切除後の予後がどうなるかを検討した後ろ向きのstudy

86人のうち23人がpatients with G-HCC (26.7%) 、 63人が S-HCC (73.3%)

予後がどうなるかというとS-HCCとG-HCCで有意差なし(ただG-HCCのほうが予後悪いようにも見える)

ちなみにG-HCCのほうがmajorな肝切除は多く行っている

significantly more major hepatectomies were performed in the G-HCC group
(82.6% versus 31.7%; P < 0.001). 

 

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では予後に影響を与える因子は??

下記の表のように腫瘍の大きさよりも、rupture,転移、微小血管浸潤、周術期の輸血、AFP>400ng/mlが不良な予後を予測する因子

輸血に関してはそれ自体が悪化している可能性もあるが、むしろ全身状態が悪い患者に輸血する傾向があるからかもしれない。

 

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血管やリンパ浸潤はG-HCCのほうが多い傾向

興味深いことにG-HCCは明らかに肝硬変が少ない(50.8% VS 13.0%)

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なぜG-HCCに肝硬変が少ないか。
そもそも今回のstudyは「切除したHCC」を対象に解析している。
肝硬変を有する患者はしばしば定期的な検査をするため、HCCが小さい時に見つかる影響があるかもしれない。
さらに重篤な肝硬変を有する患者でかつ 10cmを超えるHCCがある患者は、残存肝機能が乏しいので、切除するのは難しいというバイアスがありそう。
肝機能に余力がないと、肝切除が出来ない。

予後不良因子である血管浸潤がG-HCCで多く、そもそもベースラインの肝機能がよい群が多いということならば、やはりG-HCCのほうがS-HCCに比べ予後は悪いのかもしれない。