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城東病院総合内科 ブログ

東京城東病院総合内科の非公式ブログです!

ベル麻痺の治療について

最近、ベル麻痺が続いてる。

そういえば、ベル麻痺の治療について、根拠をはっきりと知らないことに気づき調べてみました。

https://www.jsnt.gr.jp/guideline/img/bell.pdf

日本神経治療学会のガイドラインより引用

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ステロイドの効果

上記のように神経治療学会のガイドラインでもステロイドは推奨。

Combined Corticosteroid and Antiviral Treatment for Bell Palsy | Facial Nerve | JAMA | The JAMA Network

18件の試験と2786の患者を対象としたメタアナリシスでは、グルココルチコイド単独による治療は、回復遅延のリスク低下と関連していた(相対リスク[RR] 0.69,95%CI 0.55-0.87) RR 1.14,95%CI 0.80-1.62)。

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ステロイドの使用は明らかに予後を改善させると言える。

実際、Up to Dateでもステロイドは全てのベル麻痺で投与と記載有り。

For all patients with idiopathic facial nerve palsy (Bell's palsy) or facial nerve palsy of suspected viral etiology, we recommend early treatment with oral glucocorticoids (Grade 1A).

 

ということで、ベル麻痺であればステロイドを使用するのは異存ないだろう。

量に関しては、Up to Dateでは、Our suggested regimen is prednisone (60 to 80 mg/day) for one week.とPSL 60-80mg/dayを1週間としている。

一方先の日本のガイドラインでは、成人ではprednisolone 1mg/kg/日 or 60mg/日を5~7 日間投与し,その後1 週間で漸減中止する (I-A).

・ 中等症以下の症例及び高齢者では prednisolone 0.5mg/kg/日 or 30mg/日を5~7 日間投与し,その後1 週間で漸減中止する(IV).

としている。

そこで、PSLの有用性を認めたLancetの2008年の大規模RCTを見てみると。。

http://www.thelancet.com/journals/laneur/article/PIIS1474-4422(08)70221-7/abstract

患者発症72時間以内のベル麻痺

PSLは60mg/dayを5日⇒10mg/dayを5日の合計10日 というレジュメ。

1年間のフォローアップ でPSL使用は、PSL不使用に比べ回復が明らかに早い傾向(hazard ratio [HR] 1.4, 95% CI 1.18-1.64) 

 

成人ではprednisolone 1mg/kg/日 or 60mg/日を5~7 日間投与し,その後1 週間で漸減中止する という日本のガイドラインの推奨が無難だと思われる。

 個人的には、中等症以下の症例及び高齢者では prednisolone 0.5mg/kg/日 or 30mg/日を5~7 日間投与し,その後1 週間で漸減中止するという日本のガイドラインの推奨も臨床的な実感としては妥当な印象。

 

 

ステロイドと抗ウイルス薬の併用 

一方、ステロイドと抗ウイルス薬の併用を全例で行うわけではなさそう。

先の神経治療学会のガイドラインにも下記の記載有り。 

「軽症Bell 麻痺対する抗ウイルス薬単独の使用を積極的に支持する研究はなく,抗ウイルス薬の有効性に関する明確なエビデンスがないことから,中等症以上のBell麻痺において副腎皮質ホルモンとの併用投与が望ましいと考えられる」

と、中等度以上のベル麻痺でのみ抗ウイルス療法を行うべきというのがガイドラインの推奨。

では、中等度とはどれくらいの指標なのか?

House-Brackmann法ではⅢ以上が中等度ということになるらしい。

それに準じて考えれば良いと思われる。

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では、Up to Dateではどうか?

For the subgroup of patients with severe facial palsy at presentation, defined as House-Brackmann grade IV or higher (table 1), we suggest early combined therapy with prednisone (60 to 80 mg per day) plus valacyclovir (1000 mg three times daily) for one week rather than glucocorticoids alone (Grade 2B).

 

と上記の House-Brackmann法でⅣ点以上で抗ウイルス薬を考慮としている。

 

つまり、日本神経治療学会ではⅢ点以上。Up to DateではⅣ点以上で抗ウイルス薬の併用を考慮としている。

 

http://www.thelancet.com/journals/laneur/article/PIIS1474-4422(08)70221-7/abstract

先のLancetの2008年の大規模RCTを見てみると。

バラシクロビルで治療するしないに関わらず回復までの時間は変わらなかった(HR 1.01,95%CI 0.85-1.19)。

さらに、バレラシクロビルとプレドニゾロンを併用しても回復までの時間はプレドニゾロン単独に比べ優れているわけではなかった。。

 

 

一方、日本初の多施設RCTによると。。

Valacyclovir and prednisolone treatment for Bell's palsy: a multicenter, randomized, placebo-controlled study. - PubMed - NCBI

P 発症7日以内のベル麻痺

I  PSL+バラシクロビル1000mg/dayを5日間 (VP)

C PSL+プラセボ                                       (PP)

O 顔面神経麻痺の回復

前向きの多施設のプラセボコントロールのRCT

(VP [n = 114]) , (PP [n = 107])に割り付け

・回復した割合

VP 96.5%

PP    89.7%

とVP郡がPP郡より優れる(P<0.05)⇒NNT:14.7

 

・さらに最初の顔面神経麻痺が重症 ~完全麻痺でサブ解析すると。。

VP  95.7% (n = 92)

PP    86.6% (n = 82)

とVP郡が同様にPP郡より優れる(P<0.05)⇒NNT:11

 

 

前述のJAMAのメタアナリシスでは、抗ウイルス薬+ステロイドも検討されている。

Combined Corticosteroid and Antiviral Treatment for Bell Palsy | Facial Nerve | JAMA | The JAMA Network

 抗ウイルス薬単剤では効果はなさそう。

一方、8個のRCTのメタアナリシスでは、グルココルチコイド単独療法と比較して、抗ウイルス薬とグルココルチコイド併用療法は回復遅延のリスク低下と関連していたが統計的に有意ではなかった(RR 0.75,95%CI 0.56- 1.0)。

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これらの結果をどう解釈するか?

先程の日本からの比較的大規模のRCTでは、バラシクロビル+PSLの併用療法は特に顔面神経麻痺が重症以上でより有用かもしれないと言える。

その意味では、Up to DateではⅣ点以上で抗ウイルス薬の併用を考慮とするのは妥当かもしれない。

ただ、先の日本神経治療学会のガイドラインでは、ラムゼイハント症候群とベル麻痺の鑑別が時に難しいと記載有り。

ラムゼイハント症候群では抗ウイルス療法が重要であるにも関わらず、14%では皮疹に先行して顔面神経麻痺が出現するため、ベル麻痺との鑑別が難しいとのこと。

Neurology. 1998 Oct;51(4):1202-5.

実際に中等症つまり House-Brackmann法でⅢでは抗ウイルス療法が効果が乏しく、Ⅳ以上では効果があると言えるだけの根拠も不明瞭。

つまり、日本のガイドラインの推奨通りにベル麻痺と鑑別が難しいラムゼイハント症候群の可能性も考え、 House-Brackmann法でⅢ以上のベル麻痺で抗ウイルス療法をPSLに併用するのはリーズナブルかもしれない。

 

 

では、抗ウイルス薬の量と投与期間は?

最近では、バラシクロビルが基本になりつつある。

投与期間は概ね5~7日と覚えれば間違いなさそう。

Up to Dateでは重症(House-Brackmann法でⅣ以上)では1000mg×3/day(3000mg/day)を1週間PSLと併用と推奨している。

ただ、前述の日本のRCTを受けて、日本のガイドラインでは500mg×

2/day(1000mg/day)の5~7日間投与を推奨している。

どちらが良いかは悩ましいが、House-Brackmann法でⅣ以上の場合は、3000mg/dayのバラシクロビルは許容されるかもしれない(ラムゼイハント症候群も完全に否定しきれないことを考えれば、帯状疱疹に準じて良いかもしれない。)

ここはケースバイケースで考える必要があるか。

 

 

 ・ドライアイへの対応。

地味だが、大切。重症の顔面神経麻痺では、閉眼が難しくなるためドライアイが起きうる。ヒアレインなどの人工涙液は、中等度以上ならルーチンで使用してよいだろう(副作用も皆無に等しいので躊躇する必要はない) 

 

 

・メコバラミン

コバラミンはベル麻痺に使用する根拠は乏しい。前述の神経治療学会のガイドラインで引用されているのは、下記の小規模なstudyのみ。

Methylcobalamin treatment of Bell's palsy. - PubMed - NCBI

そもそもメコバラミンは経口でなく筋注。さらにメコバラミンの効果が高すぎる印象(ステロイド単剤よりも優れている)。

コバラミン経口摂取に関してはStudyはなさそう。それでも経口でも筋注と同等の効果がある可能性があり、さらに副作用も少ないという点でガイドラインでは、経口のメコバラミンが記載されれている。。。確かに、筋注のメコバラミンはやり過ぎかもしれないが。。そもそもメコバラミンを使用する根拠が少ない印象。

とはいえ、経口のメコバラミンは確かに副作用も少なく、実際に専門家が使っていてガイドラインに書いているという現状を考えれば、ルーチンに使用しても良いかもしれない。量と投与期間はガイドラインに準じて使用する。

コバラミン1,500μg/日 分3を寛解または発症後8 週間まで投与する.

 

 

・ボツリヌス毒素など

 後遺症として顔面神経の病的共同運動・連合運動・持続収縮が起きるとされている。その場合はボツリヌス毒素が有効とされる

 他には、顔面神経麻痺が回復しない場合は、外科的な顔面神経麻痺の矯正もあるとのこと。

 

 

 

 

 

ベル麻痺のマネージメント Up to Date

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