コミュニティホスピタリスト@奈良 

市立奈良病院総合診療科の森川暢が管理しているブログです。GIMと家庭医療を融合させ、地域医療に貢献するコミュニティホスピタリストを目指しています!!!

中等度のCOPDに対する酸素療法

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COPDに対する酸素療法

 

P 40歳以上のCOPD患者 安静時酸素が89-93%  

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I 酸素投与群

安静時にも酸素が低下⇒24時間酸素

運動時のみ酸素が低下⇒運動時および睡眠時にも酸素を投与

C 酸素非投与群

ただし安静時にSpO2が88%未満、運動時にSpO2が80%未満が1分以上なら酸素投与を許可

O 

プライマリーアウトカム 死亡 or 入院の複合エンドポイント

 

大規模多施設のRCT

 

ランダムな割り付けだが、ランダム化の方法は不明

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割り付けられた結果は両群で差はない。

 

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酸素投与群の方がBODE indexが良い(酸素投与群のほうが有利)

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ブラインドはできない。

 

両群で吸入抗コリン薬など治療が同様に行われているかどうかは記載なし。

 

90%の検出力で計算 合計737人必要⇒概ね足りているか。

 

ITT解析 ランダム化した人を全て調べている

 

 

〇結果

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プライマリーアウトカムは変わりなし。

 

QOLや入院、COPD急性増悪なども変わりなし。

 

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COPD急性増悪をきたした人や71歳以上、QOLが低い郡は予後が良くなる傾向?

しかし多変量解析では有意差なし

 

〇副作用

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酸素投与群で転倒や火事が報告

 

 解釈

酸素投与群の方がBODE indexが良いにも関わらず差は出ていない。

あとは、吸入抗コリン薬など他の治療に差があるかどうかは分からない。

それを踏まえてもこの試験から酸素療法は、そこまで予後は改善しなさそう。

ただし、SpO2が89-93%の患者が対象。

そもそも、日本ではHOTの対象にならない可能性あり。

実際にCOPDで酸素投与を行うのはSpO2が90%を切る患者が多く、酸素療法でQOLが改善される人もいる。

そのような患者には酸素療法をせざるおえないし、そのような患者に酸素療法をしても意味がないとは言えない。。

ただし、酸素療法は転倒や火事のリスクでもある。

SpO2の低下が中等度程度で、酸素でQOLが改善しないCOPDでは無理に酸素を導入しなくても良いかもしれない。