城東病院総合内科 ブログ

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敗血症性ショックに対するバソプレシンについて

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P:16歳以上の敗血症性ショックの患者

感染症+SIRS基準を満たし、フルイドチャレンジを行い最小用量 5 μg/分のノルエピネフリンを投与されている患者

 

除外基準

13.9% >24 Hr had elapsed
12.8% Had unstable coronary syndrome
10.1% Received open-label vasopressin
7.8% Had cancer or other irreversible
disease with >50% 6-mo mortality
6.2% Had acute mesenteric ischemia
4.8% Were expected to die within 12 hr
4.8% Did not get commitment from
physician for aggressive care
4.7% Had chronic heart disease
(NYHA III or IV)
2.1% Had severe hyponatremia
1.4% Had traumatic brain injury
0.5% Had Raynaud’s syndrome
0.2% Were pregnant
1669 (30.8%) Had other reasons
12.3% Had improving condition
5.6% Could not contact next of kin
4.6% Had other reasons
3.6% Declined to participate
3.0% Were enrolled in another study
1.7% Did not receive physician approval

 

 

●Intervension

低用量のバソプレシンを投与する群(0.01~0.03 U/分)

 

●Comparison

ノルエピネフリンを投与する群(5~15 μg/分)

 

●Outcome

プライマリーアウトカム:28日後の死亡

セカンダリーアウトカム:90日後の死亡、臓器障害、昇圧剤の使用、人工呼吸器、透析、ICU入室期間、副作用

 

Canada, Australia, and the United States and was approved by the research ethics boards of all participating institutions

多施設のRCTでブラインドも出来ている内的妥当性あり。

 

 

A computer-generated randomization list of variable permuted blocks of 2, 4, and 6 was used for treatment allocation, which was stratified by center and by
severity of shock in the hour before randomization

コンピューターを使ってランダム化をしている。ブロック法。

施設とショックの重症度でランダム化

 

All other clinical staff, investigators, research personnel,patients, and families were unaware of the treatment assignments for the duration of the trial.

割り付けは分からないようになっている。

 

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両群のベースラインはほぼ同等。

平均年齢は60歳。7割強でステロイド使用。

他昇圧剤など治療内容は両者で変わりなし。

 

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ITT解析ではない。

ただ、ほぼ十分にフォローできている印象

 

We calculated that 776 patients were required for
enrollment, randomization, and receipt of the study
drug in order to detect an absolute 10% difference
in mortality, assuming a mortality rate of 60% in
the norepinephrine group and a two-sided alpha
error of 0.05 and a power of 80%.

776人必要 数は足りている

 

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結果:死亡率は有意差なし。他のアウトカムもほぼ同じ。

 

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ただバソプレシン郡のほうがやや良い傾向はあるかもしれない。

 

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副作用は両郡で変わりなし

 

 

●解釈

この結果では有意差はついていないが、バソプレシン郡のほうが良い傾向はあるかもしれない。ただ厳密なITT解析ではないので、バソプレシン郡に有利に働いている可能性はある。

 

ちなみに後日上記RCTのpost hoc解析が行われた

 

Interaction of vasopressin infusion, corticosteroid treatment, and mortality of septic shock

Crit Care Med. 2009 Mar;37(3):811-8. doi: 10.1097/CCM.0b013e3181961ace.

 

P 敗血症性ショックで 5 μg/min で6時間ノルアドレナリンを使用している患者

I vasopressin (0.01-0.03 units/min)  + 必要に応じてopen-laberのバソプレシン

C norepinephrine (5-15 μg/min)  + 必要に応じてopen-laberのバソプレシン

O 28日死亡率

 

●結果

バソプレシンステロイドの併用はノルアドレナリンに比べ死亡率が低下している傾向がある。 (35.9% vs. 44.7%, respectively, p = 0.03).

逆にバソプレシンステロイドを併用していない郡では、ノルアドレナリンに比べ死亡率が上昇している(33.7% vs. 21.3%, respectively, p = 0.06).

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解釈が難しいが、ノルアドレナリンを使っても血圧が上がらずバソプレシンを併用するような敗血症性ショックではステロイド併用の閾値は下げても良いのかもしれない。

 

 

 

 

せっかくなので他の論文もチェックしてみる

Arginine vasopressin in advanced vasodilatory shock: a prospective, randomized, controlled study.

Circulation. 2003 May 13;107(18):2313-9. Epub 2003 May 5.

 

P 昇圧剤抵抗性の血管拡張性ショック

I ノルアドレナリン+バソプレシン

C ノルアドレナリンのみ

O 血行動態への影響

48人と小規模の前向きランダム化試験

ブラインド出来ない

数は足りている? ただアウトカムの設定が微妙

 

●結果

バソプレシン併用郡で、ノルアドレナリン使用量は減少

頻脈の割合もバソプレシン郡で少ない

頻脈性不整脈バソプレシン郡で少ない(54.3% versus 8.3%).

 

●解釈

スタディデザインは微妙だが、バソプレシン併用のほうが頻脈性不整脈は少ない傾向は確かにありそう。

 

 

そして今回JAMAからRCTが発表された。

Effect of Early Vasopressin vs Norepinephrine on Kidney Failure in Patients With Septic ShockThe VANISH Randomized Clinical Trial

JAMA. 2016;316(5):509-518. doi:10.1001/jama.2016.10485.

 

P 敗血症性ショックの患者(輸液したにもかかわらず昇圧剤が必要)

I バソプレシン (titrated up to 0.06 U/min) +ヒドロコルチゾン

C バソプレシン+プラセボ

 ノルエピネフリン+ヒドロコルチゾン

 ノルエピネフリン+プラセボ

O プライマリーアウトカム: kidney failure–free days during the 28-day

セカンダリーアウトカム:Rates of renal replacement therapy, mortality, and serious adverse events 

 

2×2のダブルブラインドのRCT。

18の多施設研究。

人数は409人と、まずまず。

 

●結果

 

The number of survivors who never developed kidney failure was 94 of 165 patients (57.0%) in the vasopressin group and 93 of 157 patients (59.2%) in the norepinephrine group (difference, −2.3% [95% CI, −13.0% to 8.5%]).

 

 

生存者で腎不全に至っていない割合:バソプレシン57% VS ノルアドレナリン59.2%と変わりなし。

 

There was less use of renal replacement therapy in the vasopressin group than in the norepinephrine group (25.4% for vasopressin vs 35.3% for norepinephrine; difference, −9.9% [95% CI, −19.3% to −0.6%]).

バソプレシン郡はノルエピネフリン郡に比べ透析が少ない傾向(25.4% VS 35.3%)

 

 

There was no significant difference in mortality rates between groups.

死亡率は両群で変わりなし。

 

In total, 22 of 205 patients (10.7%) had a serious adverse event in the vasopressin group vs 17 of 204 patients (8.3%) in the norepinephrine group (difference, 2.5% [95% CI, −3.3% to 8.2%]).

有害事象も特に変わりないが、少しバソプレシン郡で多い?特に末梢の循環不全

 

●感想

・知りたいのはノルアドレナリン単独とノルアドレナリン+バソプレシンの比較。

・このstudyの結果で敗血症性ショックにおいてバソプレシンノルアドレナリンにとって代わるとは思えない。

・透析が少なくなりそうだからと言ってもあくまでセカンダリーアウトカム。

・敗血症性ショックの昇圧剤の第1選択としてバソプレシンを使用するというほどにはならないだろう。

・実際に末梢虚血のリスクもある。

 ・明らかにノルアドレナリンバソプレシンが劣っているともいえないので、なんらかの理由でノルアドレナリンが使用できない場合の代替薬としてバソプレシンは考慮しても良いのかもしれない。

 

 

●まとめ

・surviving sepsis campaign 2012によると、ノルアドレナリン減量および昇圧目的で、バソプレシンを併用しても良いとなっている。

ノルアドレナリンを使っても血圧の上りがいまいちで、ステロイドを併用するような敗血症性ショックの患者では、バソプレシンを併用しても良いと思われる。

・併用することで不整脈のリスクが減るかもしれない。

・現地点では敗血症性ショックにおいてバソプレシンノルアドレナリンの代わりに積極的には使わないが、代替薬とはなりえるかもしれない。