コミュニティホスピタリスト@奈良 

市立奈良病院総合診療科の森川暢が管理しているブログです。GIMと家庭医療を融合させ、地域医療に貢献するコミュニティホスピタリストを目指しています!!!

Vascular Effects of Early versus Late Postmenopausal Treatment with Estradiol

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P
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健常な閉経後女性  心血管疾患はなく、6か月以内の月経はなく、閉経は外科的な理由によらない。
 
I
17β-エストラジオール(1 mg/日)経口投与する群(子宮を有する女性にはプロゲステロン [45 mg] 経腟ゲルも連日投与 する
 
C
プラセボ経口投与群(子宮を有する女性にはプラセボ経腟ゲルも連日投与)
 
O
プライマリーアウトカム
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頸動脈内膜中膜厚(CIMT)の変化の割合
 
 
セカンダリーアウトカム
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心臓 CT による冠動脈アテローム性硬化の評価
 
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シングルセンターのRCT double blind
 
ランダム化はされているが、方法は不明
 
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閉経からの経過時間で層別化されている。
6 年未満 [閉経後早期] または 10 年以上 [閉経後後期]
 
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エストラジオール郡で少しだけ年齢が高い傾向があるが他両群で変わりなし
 
ダブルブラインドでプラセボ使用。 解析者は割り付け知らない。
 
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割り付け後にかなり脱落している。
 
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数は足りている。
 
・降圧薬や脂質異常症の薬は両郡で同じように使用。
 
 
〇結果
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・無作為化の時点で閉経後 6 年未満では、IMTの平均はプラセボ群では 1 年あたり 0.0078 mm 増加したが、エストラジオール群では 0.0044 mm 増加した(P=0.008).
・閉経後 10 年以上経過していた女性では,CIMT 進行の割合はプラセボ群とエストラジオール群とで同程度
・CT で評価した冠動脈石灰化,全体の狭窄,プラークに,プラセボ群とエストラジオール群とで有意差は認められなかった.

 

・副作用は両郡で同様

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批判的吟味

・そもそもアウトカムの設定は心血管死亡などのハードアウトカムのほうが良かったのでは??

・仮にIMTに意味があるとしても、0.0044 mmの差にどこまで意味があるか?

・副作用の評価はRCTだけでは難しい。実際にDVTのリスクは増える可能性は高い。

http://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S0140673696071139

 

・この論文からはエストラジオールを積極的に使用することにはならないだろう。

 

Up to dateの推奨を見ると・・

For healthy, peri/postmenopausal women within 10 years of menopause (or < age 60 years) with moderate-to-severe vasomotor symptoms, we suggest MHT as the treatment of choice (Grade 2B). Exceptions include women with a history of breast cancer, coronary heart disease (CHD), a previous venous thromboembolic event or stroke, active liver disease, or those at high risk for these complications.

 

となっている。更年期障害が強くてコントロールできないケースに考慮しても良いかもしれない。

 

日本ではまず、漢方を試すことになると思われる。