コミュニティホスピタリスト@奈良 

市立奈良病院総合診療科の森川暢が管理しているブログです。GIMと家庭医療を融合させ、地域医療に貢献するコミュニティホスピタリストを目指しています!!!

古都はじめ奈良2019 実況中継 ④  森川昇先生 呼吸器身体診察

〇呼吸器身体診察
 
COPDの身体所見では、胸鎖乳突筋肥大や、期間短縮、ビア樽胸など視診だけで診断出来ることもある。
打診上の鼓音や心尖拍動の内側化など。
COPDでは胸鎖乳突筋が目立つが肺線維症では内斜角筋が目立つ。
 
副鼻腔気管支症候群を念頭に置いたら中葉舌区を意識して、前のほうを特によく聞く。
 
〇肺胞呼吸音領域でも気管支音(呼気のほうがよく聞こえる)
大きな高調な音が肺というフィルターで除外されて低音である呼吸音だけが聞こえる。
気管支音化が、胸水、無気肺、間質性肺炎などによって肺というフィルターを介さなくなる、⇒気管支音化される。
 
Early inspiratory crakclesは口から聞く⇒あれば重症のCOPDを示唆。
 
Coarse crakclesは水疱音なので、水に空気が入ってブクブクする音。
Fine cracklesは、紙風船が開くイメージ  普通の肺がゴム風船だとしたら、間質性肺炎の肺は紙風船
肺炎の治癒過程で線維化すると、CracklesはFine cracklesに近くなる。
 
 
Wheezeは単音声と多音声に分かれる。
 
単音声 吸気で聴取する音が高く済んでいる 少ない気管の狭窄。
多音声 音が濁っている 多い気管の狭窄  多い気管の狭窄。 ⇒コンサートの練習の時の低調な音。
 
 

古都はじめ奈良実況中継③ 井上先生講義

救急×家庭医療
 
家庭医療のマインド
①患者によって自分を変える
②患者や問題の種類によって差別しない
③生物的問題だけでなく、社会問題や心理問題も意識する
④臓器、人にとどまらず家庭や地域も視点とする
⑤診察室に来ない人も意識する
 
 
夜中に救急外来で急に怒った人にどう対応する?
⇒コミュニケーションスキル発動
怒りは二次性の感情。その裏の願望を知ることが大切。
 
スキル
①傾聴
②謝罪
③感謝
 
 
sdh (健康の社会的決定要因)を救急外来でも意識する。
そういう患者さんだというスイッチを入れる。
 
CPAでも助かる可能性がほぼない場合。
スタッフを含めてスイッチを入れ替える。
ガチの救命モードから、家族のケアをするモードに切り替えをする。
 
決められない後悔の気持ちを理解する。
ライフレビューを行う。
患者が亡くなったあとの、残された家族の思いを配慮する
 
 

古都はじめ奈良実況中継② 藤田先生講義

緩和ケア×家庭医療
 
緩和ケアは癌の歴史とともに発展した。 
緩和ケアの定義 2002 WHO
 
 
緩和ケアの定義(WHO 2002年)
緩和ケアとは、生命を脅かす病に関連する問題に直面している患者とその家族のQOLを、痛みやその他の身体的・心理社会的・スピリチュアルな問題を早期に見出し的確に評価を行い対応することで、苦痛を予防し和らげることを通して向上させるアプローチである。
 
緩和ケアは
  • 痛みやその他のつらい症状を和らげる
  • 生命を肯定し、死にゆくことを自然な過程と捉える
  • 死を早めようとしたり遅らせようとしたりするものではない
  • 心理的およびスピリチュアルなケアを含む
  • 患者が最期までできる限り能動的に生きられるように支援する体制を提供する
  • 患者の病の間も死別後も、家族が対処していけるように支援する体制を提供する
  • 患者と家族のニーズに応えるためにチームアプローチを活用し、必要に応じて死別後のカウンセリングも行う
  • QOLを高める。さらに、病の経過にも良い影響を及ぼす可能性がある
  • 病の早い時期から化学療法や放射線療法などの生存期間の延長を意図して行われる治療と組み合わせて適応でき、つらい合併症をよりよく理解し対処するための精査も含む
 
 
いつでも、だれにも、どこででも。
非癌疾患も対象になる。
アメリカのホスピスは非癌が2/3である。
非癌はICUに行ってしまうことも多い。
 
非癌の難しさ
非癌の緩和ケアは予後予測が難しい
さらに原疾患の治療の中止の判断が難しい
麻薬の保険適応が限られる。
緩和ケア加算が算定できない。
 
非癌の心不全COPDでも呼吸困難だけでなく、痛みも感じる。
 
非癌の場合は、緩和ケアを早期に導入しつつ標準的治療を終末期まである程度は継続することが重要。
緩和ケアのトータルペインの考え方は、家庭医療のBPSモデルと非常に似ている。
家庭医療と緩和ケアは親和性がある。
家庭医療を使って、より良い緩和ケアを実践する。
 
 
 緩和ケアは以下のマニュアルがお勧め
 
 

古都はじめ奈良2019 実況中継 ① 長尾先生 講義

長尾先生講義
 
 
胸部Xpと胸部CTは必ず一緒に取る。
胸部CTを見たら、胸部Xpを見返して自己フィードバックをする。
胸部Xpを見たら、身体診察を見返してさらに自己フィードバックをする。
 
胸部Xpは左右の間違え探し、左右と過去と現在を比較することが重要。
 
ブロンコ体操をして、気管支の位置を覚える。
 
 
 
解剖学的に上葉は、前にある。
右の下肺の肺炎+心臓のシルエットが消失⇒右中葉の肺炎
間質性肺炎では横隔膜がぼやけることが特徴。
毛髪線が動く場合は無気肺を考える。
両側で肺が縮む場合は間質性肺炎を考える。
片側で肺が縮む場合は無気肺を考える。
ポータブル臥位の胸部Xpでの胸水は背面にたまるので、全体的に濃度が上昇する。
 
〇臥位の気胸のXp所見⇒deep sulcus sign
 
 
 
 〇長尾先生の本はこちらから! 

蕁麻疹様の薬疹について

蕁麻疹様の薬疹について

https://www.tandfonline.com/doi/abs/10.1517/14740338.3.5.471?journalCode=ieds20

薬剤副作用の分類 

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薬剤アレルギーのタイプ 

アナフィラキシーを起こすType1だけでなく、その他の免疫を介した機序もある。

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薬剤誘発性の蕁麻疹や血管浮腫の分類

⇒免疫が介在する機序と、介在しない機序に分かれる。

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薬剤による蕁麻疹を起こす薬剤の頻度

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⇒NSAIDS,抗菌薬、ワクチン、bupropion、抗うつ薬、降圧薬など

 

 

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炎症性腸疾患の関節炎・腸管外病変 臨床推論カンファレンス 2019年7月17日

若年男性

2-3週間で悪化する下肢痛?

ボールをぶつけてから痛いという触れ込みだが、痛みは受傷直後はそれほどでもなく徐々に悪化しているという病歴は合わない。

 

さらに、1週間の経過の下痢と微熱があり、下痢は改善する気配はなく1日6-8回程度で継続していると。

 

診断は??

  

下痢が長引いている。

まずは感染性腸炎を考え食事歴は確認するが、1週間の経過でさらに改善傾向がないというのは違和感があるので、炎症性腸疾患を考える。 

⇒追加問診で、血便があり、さらに先行する、下痢と血便の病歴もあり。

皮疹や口内炎、体重減少の病歴はない。

 

では、痛みに関しては??

痛みは歩行が不能なほどの痛み。

痛みの首座は股関節と膝関節で、他動時痛も著明であり関節でよさそう。

関節の腫脹もあり、炎症もありそうなので、関節炎で良さそう。

 

右の膝関節、股関節と2つの関節の炎症が痛みの原因のよう。

 ⇒急性多関節炎

 

上記の下痢の病歴と合わせると

①炎症性腸疾患に伴う関節炎

②反応性関節炎が考えられる。

 

次の検査としては便培養と下部消化管内視鏡

便培養は陰性。

下部消化管内視鏡潰瘍性大腸炎に矛盾しない所見。

 

⇒よって潰瘍性大腸炎に伴う関節炎と診断。

ステロイド内服とサラゾスルファピリジンで軽快した。

 

 

炎症性腸疾患の腸管外症状について

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/26154136

 

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A、口腔アフタ性潰瘍、(B)スウィート症候群、(C)結節性紅斑、(D)壊疽性膿皮症、(E)ストマ周囲の壊疽性膿皮症、(F)上強膜炎、(G)ぶどう膜炎、(H)バンブーサイン(脊椎関節炎)(I)仙腸関節炎のXp所見(J)仙腸関節炎のXp所見(K)両側仙腸関節炎(MRI所見)

 

 

炎症性疾患に伴う末梢性関節炎はRAに比べて関節破壊が乏しい

 

〇炎症性疾患に伴う末梢性関節炎の分類

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関節炎の数が5つ未満(Type1)、5つ以上(Type2)かで分類される

type1は膝や足首、手首など大関節が多め

type2はMCP、膝、PIPと称関節が多め。

type1,2ともに膝関節の頻度が高い⇒膝関節炎では炎症性腸疾患を想起する。

type1は左右非対称だが、type2は左右対称性⇒症例とも合致する

type1は炎症性腸疾患の病勢と関連するが、type2は病勢と関連しない

 

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IBDと診断されるまでに腸管外病変が先に出現することが多い傾向。

さらに診断されてからも腸管外病変が新たに出現する

 

 

 

なお結節性紅斑は女性に多くやはり下腿優位

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壊疽性膿皮症も下肢優位に多いが男性にもそれなりに出現する

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IBDの腸管外病変の治療のまとめ

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 関節炎ではステロイド関節注射、ステロイド内服、サラゾスルファピリジン、COX2阻害薬など type1ではIBDの治療が有用

セカンドラインセラピーとして、生物学的製剤を推奨

 

なおUp to DateではIBDに伴う関節炎の治療を以下のように推奨

 

①(おそらく脊椎関節炎に準じて)、ナイキサン極量定期投与+PPIを投与

②ナイキサンが効果が乏しければサラゾスルファピリジンを追加

③サラゾスルファピリジンでも効果が乏しければ、生物学的製剤(monoclonal antibody TNF inhibitors) ⇒インフリキシマブ、アダリムマブ、ゴリムマブなど

ステロイドの内服やステロイドの関節注射などは、DMARDが効果が出現するまでの繋ぎとして有用。

・脊椎炎優位の場合もまずは、NSAIDSを使用。

・脊椎炎に伴う腰痛がNSAIDSで充分にコントロールできない場合は、monoclonal antibody TNF inhibitor を使用する。

⇒体軸関節炎優位でNSAIDSでコントロールできない場合は、早めにmonoclonal antibody TNF inhibitor の使用を検討。

 

リウマチ性疾患の勉強には以下がお勧めです!!

 

 


 

メディチーナの特集を書きました(急性閉塞性緑内障の診方)

川島先生からのご紹介で、メディチーナの内科エマージェンシー特集を書かせていただきました。

http://www.igaku-shoin.co.jp/journalDetail.do?journal=38233

私は、頭痛+嘔吐で来院した方でどのように、急性閉塞性緑内障を疑うかという話を書かせていただきました。

ポイントは以下の通りです。

 

・眼の片側性圧痛を認める

・眼球が硬い

・毛様充血かどうか。

・角膜の混濁や浮腫

・散瞳

・ペンライトを用いた診察(対光反射の左右差、lateral penlight test)

 

lateral penlight testは以下

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC5130941/pdf/11606_2016_Article_3737.pdf

 

通常は横からライトを当てても影は出来ない

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しかし急性閉塞性緑内障であれば、鼻根部に影が出来ます。

詳細は本誌をご覧ください!