コミュニティホスピタリスト@奈良 

市立奈良病院総合診療科の森川暢が管理しているブログです。GIMと家庭医療を融合させ、地域医療に貢献するコミュニティホスピタリストを目指しています!!!

日本プライマリ・ケア連合学会の専門医部会若手医師部門病院総合医チームの立ち上げについて@2019年学術大会

f:id:jyoutoubyouinsougounaika:20190520031645j:plain

 

日本プライマリ・ケア連合学会で発表を行いました。

私は、2015年から活動していた、日本プライマリ・ケア連合学会の専門医部会若手医師部門病院総合医チームの立ち上げについて発表しました。

今、振り返っても日本プライマリ・ケア連合学会内で若手病院総合医のよりどころとなるプラットフォームを作れたことは意義深いことだったと思います。

若手医師部門の皆さま、専門医部会の皆さま、病院総合医委員会の皆さま、そして一緒に活動してくださった病院総合医チームの皆様に心から感謝します。

幸いに、若手病院総合医チームは現在は洛和会丸太町病院の長野先生がリーダーを引き継いでくださり、さらにパワーアップして活動しています。

病院総合医の重要性が増している現在において、本チームの意義はますます大きくなると思います。

一緒に活動する病院総合医の仲間を募集しております!

  

心因性非てんかん性発作 について

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC5438261/

 

Nonepileptic Seizures: An Updated Review を読みました。

 

Psychogenic Nonepileptic Seizures (PNES)

 

80%が女性で、平均の発症年齢は31歳

46%が失業しており、57%が鬱や不安を合併。

不定愁訴も合併することも多い。

1つの報告として、28人中15人のPNES患者が合計34回ERを受診し、28人中12人の患者が66日病院に入院しており、経済的な問題ともなっている。

 

てんかんと、心因性てんかん発作との区別

f:id:jyoutoubyouinsougounaika:20190515213259p:plain

心因性を示唆

・期間が長い 

・左右非対称 

・骨盤の動きがある

・目をつぶる 

・発作中の記憶がある 

・発作中に泣く 

・上下の運動

*発作中に会話が可能なのも、心因性を示唆すると思われます。

 

てんかんを強く示唆

・睡眠時の発症

・発作後の昏迷

・いびき性呼吸

 

てんかんをどちらかと言うと示唆

・舌咬傷

・尿失禁

・後弓反張

・緩徐発症

・Flailing or Thrashing Movements

・型にはまらないイベント

てんかんガイドラインにも書いてますが、心因性てんかん性発作でも舌咬傷は認めることがあるようですね。

 

 

〇診断

診断は、脳波とてんかん発作の観察による。

てんかん発作の様式が、心因性てんかん性発作に典型的で、かつ発作中に脳波異常を認めない場合は診断は確定的。

 

 

f:id:jyoutoubyouinsougounaika:20190515220246p:plain

 

ただし、一度心因性てんかん発作と診断しても、全ての発作を心因性としないようには注意が必要。


〇治療

f:id:jyoutoubyouinsougounaika:20190515221052p:plain

 

治療は認知行動療法抗うつ薬などの薬物療法の組み合わせが有用 。

精神科的な評価や介入が必須と言える。

てんかん薬は、心因性てんかん性発作と診断した場合は速やかに減量・中止したほうが、むしろ痙攣の再燃は減る。

 

 

なお、心因性の症状を見分けたい場合は以下の本がお勧め。

 

 


 

心肺停止と心室細動

前回の当直中に難治性VF+心肺停止で来院、結局STEMIという症例を経験しました。

アミオダロンとアドレナリンの順番がすぐに出てこなくて焦ったので復習を。

結果的には、ベストに近い診療だったので良かったのですが。。

 

Up to DateからACLSアルゴリズム

Image

①CPR開始

②ショック反応性の波形(VF,VT)

③ショック

エピネフリン3-5分毎 ± 気道確保 

⑤それでもショック反応性の波形(VF,VT)

⑥ショック

⑦アミオダロン(初回は300㎎ボーラス投与、2回目以降は150㎎ボーラス投与)

⑧②に戻りループを繰り返す。

 

アミオダロンは1回目は150㎎のアンプルを2A、2回目は1Aということですね。 

ということで、VFやVTならショックを繰り返すというのは当たり前ですが、

エピネフリン ②アミオダロン という順番で薬剤投与を繰り返すということになりますね。

アミオダロンは1回目は300㎎ですが、2回目以降は150㎎ということにも注意が必要ですね。

アミオダロンの代わりにリドカインを使うことも一応、可とのことです。

リドカインは1-1.5mg/kgをボーラス投与⇒0.5-0.75mg/kgを5-10分毎に投与という量のようです。

*体重が50㎏とすれば、50mg-75mgになりますね。心肺蘇生用の2%リドカインシリンジには100mgの投与量なので、ざっくりと初回はシリンジを1A、2回目はシリンジを0.5Aという覚え方でも分かりやすいかもです。

ただ、アミオダロンがあるなら、アミオダロンのほうが使いやすい印象です。

 

なお、torsade de pointesではマグネシウム2gのボーラス投与⇒維持投与が推奨されています。

f:id:jyoutoubyouinsougounaika:20190513234424p:plain

 

また、当然ですが介入可能な要因も可能な限り同定して治療することが重要です。

〇介入可能な要因

アシドーシス ⇒メイロン

貧血     ⇒輸液、輸血

心タンポナーデ⇒心嚢穿刺

カリウム血症⇒カルチコール、透析

カリウム血症⇒カリウムマグネシウム

低酸素    ⇒酸素投与

気道閉塞   ⇒気道確保

心筋梗塞   ⇒PCI

中毒     ⇒メイロン(三環系抗うつ薬)

肺塞栓    ⇒t-PA、ヘパリン

緊張性気胸 ⇒ドレナージ

 

 

〇追記

VFが難治性で継続する場合はVA ECMOの適応のようです。

CPAの中でもVFは生存率が高いので、VA ECMOの閾値は下げるべきですね。

 

ECMOについては下記がまとまっています。

http://fujita-accm.jp/medical_guide/ecmo

 

心因性発熱

CRP陰性の発熱で鑑別に挙げるべき。

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/27227051

 

若年者に多く、ストレスが原因で発熱する。

感染症のようにプロスタグランジンなどを介さない機序で発熱をきたす。

40度を超える高熱もきたしうる

CRPが挙がらない発熱の一因に。

f:id:jyoutoubyouinsougounaika:20190511021007p:plain

 

 

ストレスがかかると発熱するが、ストレスがなくなると解熱する。

f:id:jyoutoubyouinsougounaika:20190511021417p:plain

 

 

慢性経過の発熱を認めることもある。

f:id:jyoutoubyouinsougounaika:20190511022238p:plain



 

線維筋痛症があり倦怠感がる24歳の電話交換手 仕事があると倦怠感が悪化し、熱も悪化するが、休むと熱が改善

f:id:jyoutoubyouinsougounaika:20190511022137p:plain

 

 

⇒ストレスと発熱の関係性の聴取が重要と言える

 

 

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC1888691/

なお、年齢は13歳で最も多い

f:id:jyoutoubyouinsougounaika:20190511022450p:plain

 

以下日本語の報告

https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjpm/57/12/57_1252/_article/-char/ja/

f:id:jyoutoubyouinsougounaika:20190511022823p:plain

様々な人間関係のストレスが原因になる
併存する精神疾患があることも

 

 

心理社会的に包括的に介入することが重要

下記は軽度の知的発達がある女子への介入症例。

家族の経済的な貧困もあり。

面談を重ね、学校に何らかの形で行くように支援した。

f:id:jyoutoubyouinsougounaika:20190511023110p:plain

 

熱に関しては下記のような基準で対応した。

f:id:jyoutoubyouinsougounaika:20190511023429p:plain

 



心理社会的に包括的な介入が必要なだけでなく、家族への介入も重要になる疾患と言える。

よって、治療にはBPSモデルや家族志向のプライマリケア、などの家庭医療の理論に基づく介入が重要かもしれない(森川の個人的見解)

https://note.meidai-soushin.net/bio-psycho-social-model-accel-core-lecture-no2/

ãBPS ã¢ãã«ãã®ç»åæ¤ç´¢çµæ

 

家族志向のプライマリケア

https://slidesplayer.net/slide/11045344/

http://plaza.umin.ac.jp/~jafm/fd/20060923/060923matsushita.pdf

f:id:jyoutoubyouinsougounaika:20190511023843p:plain

 

 

 

悪性腫瘍関連のamyopathic dermatomyositis ケースレポート 

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC5266572/

 

3ヵ月の経過で50歳の女性がかゆみのない皮疹、脱力感、筋肉痛を呈した。

皮疹は顔から始まった

そして彼女の背中に広がったが、粘膜疹は認めなかった。

両側の上肢と下肢の筋力が低下した。

近医筋の圧痛と、動かしたときの痛みを認めた。

ただしCPK上昇は乏しい。

ヘリオトロープ、ショールサイン、 ゴットロンを認める。

 

f:id:jyoutoubyouinsougounaika:20190511011848p:plain

 

⇒皮膚筋炎が疑わしいが、炎症性ミオパチーの所見を欠いている、ためamyopathic dermatomyositisが疑わしい。

⇒結局子宮頸癌が同定され、それによるamyopathic dermatomyositisと診断された。

 

 

CRP陰性の発熱

 

本日の京都GIMで話題になりました。

発熱が長引いてるのにCRPが陰性の発熱では、以下を考えます。

 

SLE

シェーグレン

猫ひっかき病

血管免疫芽球性 T 細胞リンパ腫

高温暴露/高体温(セットポイントの異常)

無汗症

ウイルス感染

薬剤熱

詐病

うつ病

心因性発熱(若年者に多くストレスがかかると発熱し、ストレスが無くなると解熱する。40度ほどの熱発があっても良い。)

脳炎髄膜炎

肝疾患(CRPを産生出来ない)

 

 

臨床推論カンファレンス 意識障害のフレーム 2019年5月10日

今日は、意識障害について臨床推論カンファレンスをしました。

70代の成人。

昨日まではいつも通りで、本日からの意識変容。

バイタルは安定 SBP140前後 ただし傾眠傾向で、呼吸様式も無呼吸を発作性に認める。

瞳孔は対光反射やや鈍い?

神経学的巣症状は明らかではない。

 

意識障害のフレームは以下の通りです。
 
詳細は、上田剛士先生の内科診断リファレンスに記載されていますが、3×4の記憶法が時系列に沿っていて簡便だと思います。
*バイタルのところは一部個人的に改変しています。
 
DONT    ①血糖異常    ②O2↓ CO2↑ CO中毒  ③ビタミンB1欠乏
VITAL   ①体温異常       ②血圧異常          ③呼吸数の異常をきたす疾患
LABO   ①肝不全     ②腎不全        ③電解質異常(Na↑↓ Ca↑)
BRAIN   ①頭蓋内病変   ②てんかん        ③脳炎/髄膜炎             
   OTHERS ①Drug/Alcohl   ②精神科疾患      ③内分泌疾患、ポルフィリア、TTP  
* DONT : Dextrose  Oxygen Thiamine
* Drugには悪性症候群、離脱、セロトニン症候群も含まれる。
 
 DONT    ①血糖異常    ②O2↓ CO2↑ CO中毒  ③ビタミンB1欠乏
血糖異常はデキスタでも認めない。
来院時は酸素化は比較的保たれている。CO-Hbも血液ガスで上昇なし。
ビタミンB1欠乏になるような食事量の減少やアルコール多飲のリスクもなし
 
VITAL   ①体温異常       ②血圧異常          ③呼吸数の異常をきたす疾患
体温や血圧も正常範囲内。
ただ、異常な呼吸様式あり。チェーンストークス??
薬剤や脳幹病変は鑑別に。
 
LABO   ①肝不全     ②腎不全        ③電解質異常(Na↑↓ Ca↑)
こちらは採血は特記事項なし。
肝性脳症は十分考えられるが、肝炎の既往歴があるが、治療後。
腹水もなく肝硬変を示唆する身体所見もなし。
アンモニアは念のため測定するが問題なし。
 
BRAIN   ①頭蓋内病変   ②てんかん        ③脳炎/髄膜炎             
髄膜刺激徴候は認めないが、髄膜炎脳炎は否定はしきれない。
経過によっては髄液検査も考慮か。
痙攣はないが、非痙攣性てんかん重積は否定はしきれない。ただ、こちらも不随意運動もなく、経過次第で考えるか。
頭蓋内病変として脳幹出血は鑑別に挙がるが、神経所見が乏しい。
 
 
OTHERS ①Drug/Alcohl   ②精神科疾患      ③内分泌疾患、ポルフィリア、TTP  
薬剤はありうる。除呼吸も説明できるし、傾眠傾向というのも鎮静系の薬剤らしい所見。
精神疾患は除外診断。
その他は、経過によって考える。
 
⇒結局、薬剤かなと考えて薬剤歴を確認したところ、家族が麻薬を内服していることが判明。
トライエージで麻薬が陽性で、麻薬を誤飲したことが判明。
やはり、薬剤歴が重要であると再認識しました。