コミュニティホスピタリスト@奈良 

市立奈良病院総合診療科の森川暢が管理しているブログです。GIMと家庭医療を融合させ、地域医療に貢献するコミュニティホスピタリストを目指しています!!!

ESBLとAmp-Cの話

今日は、本橋先生のレクチャーでした。

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最初から効かないESBLは、結婚詐欺。

最初は効くけど、あとから効かなくなるAmp-Cは、心変わり。

 

と某教科書に書いていますね。

 

ESBLはペニシリナーゼの突然変異。最初から抗菌薬は効かない

ペニシリナーゼの一種であり、機序的にはβラクタマーゼ阻害薬配合剤は効く可能性はあるため、感受性のチェックが必要。

ESBLかどうかはクラブラン酸のディスクで確認。

ESBLは、大腸菌、クレブシエラ、プロテウスで基本的に検出。

第一選択薬はカルバペネム

セフメタゾールは、セファマイシン系であり、特殊な薬。重症でなければESBLにも効く可能性あり。

 

 

AMP-cは、心変わり。

セラチア、エンテロバクター、シトロバクターが代表的な菌種なので、これらが検出されたときは常にAMP-cに注意する。

CTRXなど第3世代は最初は効いているが、使っているうちに、AMP-c産生菌が効かなくなる。

よって、長期投与が必要な膿や骨髄炎などで問題になる。

第4世代セフェムも効く可能性があるが、こちらも第一選択はカルバペネム

 

  

〇カルバペネムが効かない菌

MRSA

Enteroccocus feacium

マルトフィリア

細胞内寄生菌

真菌類

結核

etc

 

抗血小板療法の併用療法は急性期の消化管出血のリスクを上げる。

脳梗塞またはTIAで抗血小板療法を施行した6つのRCTの患者を対象にa post hoc analysisを施行して、出血について評価。

合計45195人を対象。

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患者のベースライン

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⇒平均65歳 89%が脳梗塞 11%がTIA

 

出血は以下の期間で層別化して解析。

30日以内、31〜90日(参照期間)、91〜180日、181〜365日、および365日超

大出血は、致死的、頭蓋内、重大な障害をもたらす出血、入院を必要とする出血と定義。

 

結果

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〇最初の30日間の大出血のリスク

aspirin+dipyridamol(RR1.94、絶対リスク100人年当たり4.9)

aspirin+clopidogrel(RR1.98、絶対リスク100人年当たり5.8)

⇒抗血小板併用で有意に高い

 

 

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⇒大出血は消化管出血とパラレルに推移。 脳出血は抗血小板療法の併用でも増加傾向はない。

 

 

〇感想

抗血小板併用(DAPT)はやはり消化管出血は増やす。ただ頭蓋内出血は思ったより増やさない印象。

脳梗塞の急性期は普通にアスピリン200㎎-300㎎で良いのではという感想。

DAPTは、アスピリンを内服しても発症した非心原性脳梗塞に絞るという普段のストラテジーを裏付ける論文かもしれない。

高悪性度子宮頸部病変を予防するための4価HPVワクチンの効果

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http://www.nejm.org/doi/full/10.1056/NEJMoa061741

 

P 15-26歳の若年女性

I 4価ワクチン(HPV-6/11/16/18 )を1か月、2か月、6か月に投与

C プラセボを1か月、2か月、6か月に投与

O 複合エンドポイント(子宮頸部上皮内異形成のgrade2以上、adenocarcinoma in situ、 HPV-16またはHPV-18に関連する子宮頸癌)

大規模RCT,double-blind

 

検出力は80-90%で計算⇒おそらく数は足りている

 

ランダム化のベースラインは以下。 ほぼ両郡は均等に割付

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既にHPV16、18に感染していれば除外

 

〇結果

3年のフォローアップの時点でPrymary end point を予防するための効果

〇per -protocol   98% (95.89% confidence interval [CI], 86 to 100)

〇intention-to-treat  44% (95% CI, 26 to 58) 

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A 子宮頸部上皮内異形成grade 2以上

B 子宮頸部上皮内異形成のgrade2以上 or  adenocarcinoma in situ

 

副作用

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局所の副作用はワクチン郡で多いが、重篤な副作用は両郡で大差なし

 

〇結論

少なくとも、Grade 2以上の子宮頸部異形成を4価のHPVワクチンは予防する効果は高く、重篤な副作用もこのRCTだけでみると少なそうな印象。

 

四価HPVワクチンの効果について。

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http://www.nejm.org/doi/pdf/10.1056/NEJMoa061760

 

P 16-24歳の女性

I  4価のHPVワクチンを1日、2か月、6か月と投与する

C  プラセボ

O primary outcome:  性器疣贅、外陰または膣の上皮内癌、または癌、および子宮頸部の異形成、上皮内腫瘍、腺癌の発生率 、またはHPVタイプ6,11,16、または18に関連する癌。

 

double-blindの大規模RCT

合計5400人必要 ⇒数は足りている。

 

ランダム化した結果の両郡のバランスは保たれている

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●結果

 

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CINや生殖器病変は全体的にITT解析でも、ワクチン郡のほうが発生率は低い傾向

 

 

 

 

副作用

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⇒局所の副作用や熱発などは、ワクチン郡で多い傾向

 

 

〇感想

 確かにワクチン郡でITT解析であっても、上皮内癌などの前癌病変は明らかにワクチンで減少している傾向はありそう。

ただout comeの設定が複合アウトカムであり、試験のデザインもやや複雑?

primary outcomeを子宮頸癌で設定したらどうなるかは気になるところ。。

9価のHPVワクチンの効果について

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http://www.nejm.org/doi/full/10.1056/NEJMoa1405044

 

P  16-26歳の若年女性

I  9価ワクチン(1 日目,2 ヵ月目,6 ヵ月目の計 3 回,筋注)

C   4価ワクチン(1 日目,2 ヵ月目,6 ヵ月目の計 3 回,筋注)

O  HPV-31, 33, 45, 52,and 58 に関連する子宮頸部や外陰、腟の悪性病変

多施設、多国籍のdouble-blindのRCT

 

 ベースラインは、ほぼ同一

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サンプルサイズは各々7000人⇒足りている

 

 

●結果

 

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per-protocol解析におけるHPV 31 型,33 型,45 型,52 型,58 型に関連する子宮頸部,外陰部,腟の高悪性度病変の発生率

⇒9vHPV 群で 1,000 人年あたり 0.1 例

⇒qHPV 群で 1,000 人年あたり 1.6 例であった(9vHPV ワクチンの有効率 96.7%,95%信頼区間 80.9~99.8).

 

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●有害事象

注射に関連する局所の副作用は、9価ワクチンのほうが多い傾向

全身症状は両者で著変なし

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●感想

HPVのワクチンを打つなら、局所の副作用は確かに多いが、高悪性度の外陰部・膣病変の予防効果から9価より4価のほうが良い印象。

per protocol解析だが、プラセボコントロールではなくhard outcomeで薬効を比べているため、大きな問題はないかもしれない。

Up to Dateにも以下の記載あり。

If cost and availability are not issues, we recommend the 9-valent HPV vaccine rather than other HPV vaccines

ただ副作用に関してはこのRCTだけでは分からないかもしれない。

 

アンドロゲン受容体拮抗阻害薬アパルタミドの前立腺癌への効果

http://www.nejm.org/doi/full/10.1056/NEJMoa1715546

 2018 Apr 12;378(15):1408-1418. doi: 10.1056/NEJMoa1715546. Epub 2018 Feb 8.

 

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P 18歳以上の転移のない去勢抵抗性前立腺癌で,アンドロゲン除去療法施行下でもPSAの倍加時間が 10 ヵ月以下の患者で転移のリスクが高い患者

I  アンドロゲン除去療法+アパルタミド

C  アンドロゲン除去療法+プラセボ

O  primary outcome: 無転移生存期間(画像上で遠隔転移を最初に認めるまで or 死亡するまでの期間)

 

double blindの多施設RCT

プラセボとアパルタミドは1:2で割付

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両郡のバランスは保たれている。

 

1200人必要で、primary outcomeが372の計算で検出力90%⇒数は足りている

 

 

●結果

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primary outcome

アパルタミド群で 40.5 ヵ月

プラセボ群で 16.2 ヵ月

⇒ハザード比 0.28,95%信頼区間 [CI] 0.23~0.35,P<0.001).

 

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症状を伴う進行までの期間もアパルタミド群のほうがプラセボ群よりも有意に長い

(ハザード比 0.45,95% CI 0.32~0.63,P<0.001)

 

 

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●試験の中止にいたった有害事象の発現率

アパルタミド群 10.6%,プラセボ群 7.0%

 

皮疹(23.8% 対 5.5%),甲状腺機能低下(8.1% 対 2.0%),骨折(11.7% 対 6.5%)もアパルタミドで多い

 

●結論

去勢抵抗性前立腺癌に対するアパルタミドとアンドロゲン除去療法の併用は、無転移生存期間をプラセボに比べて有意に延長するが、有害事象も増加させる。

 

●感想

 確かに、Hard outcomeを明らかに改善させている。有害事象は増えそうで、特に骨折は問題になるがそれを差し引いても画期的な治療になりそうな印象。

重度の気流制限があるCOPD患者に対するトリプルセラピー

http://www.thelancet.com/journals/lancet/article/PIIS0140-6736(18)30206-X/fulltext

 

P 40歳以上で喫煙歴がありCOPDと診断された患者

重度の気流障害(FEV1<50%)があり、過去12か月に中等度以上の急性増悪があり、トリプルセラピーは行っていない

除外基準:吸入ステロイドが必要とされた喘息、臨床的に重要な心血管疾患や検査的な異常など。

I  トリプルセラピー(ベクロメタゾン+ホルモテロール+グリコピロニウム)

C  LAMA+LABA(インダカテロール+グリコピロニウム)

O  52週の時点の中等度以上のCOPD急性増悪の割合

 

〇study design

多施設・多国籍のRCT、ダブルブラインド・ダブルダミー

 

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ITT,per- protocolの両方で解析

各郡767人必要⇒数はおおむね足りている

 

ランダムな割付

国と、airflow limitationによって層別化

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治療など両郡で大きな違いなし

 

〇結果

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有意ではないがトリプルセラピーで急性増悪は少ない傾向

 

サブグループ解析では、気道閉塞があるタイプでは、トリプルセラピーのほうが有意に急性増悪を減少する(0·752, 0·605–0·935,p=0·010),

気腫があるタイプ0·995、混合型0·939では有意では必ずしも減少しない

 

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FEV1とSGRQもトリプルセラピーで良い傾向

 

有害事象は両郡で大きな違いなし

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〇感想

重度の気流制限があり、急性増悪を認める場合はトリプルセラピーはありかもしれない。実臨床でも、重度の急性増悪をきたした場合はトリプルセラピーを行わざるおえないが、その根拠となるstudyと思われる。特に慢性気道閉塞が前面に出ている場合は、恩恵にあずかれる可能性は高そう。とはいえ、その差は微々たるものかもしれず、トリプルセラピー副作用もこのstudyだけでは安全とは言えない。