コミュニティホスピタリスト@奈良 

市立奈良病院総合診療科の森川暢が管理しているブログです。GIMと家庭医療を融合させ、地域医療に貢献するコミュニティホスピタリストを目指しています!!!

脳梗塞の二次予防は、アスピリン? プラビックス?

A randomised, blinded, trial of clopidogrel versus aspirin in patients at risk of ischaemic events (CAPRIE). CAPRIE Steering Committee. - PubMed - NCBI

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Patient

→虚血性脳卒中、AMI,PADのいずれかの既往がある患者

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除外基準

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I クロピトグレル75㎎

Cアスピリン325㎎/日

 

O

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多国籍、多施設のRCT,double- blindで妥当性あり

 

ランダム化の手法は適切

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ベースラインも同等

平均年齢60歳前後

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ブラインドの方法も適切

 

 

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ITT解析が行われている。

フォローアップできない人は20人ほどのみ。

 

ベースラインは同等だが、具体的な治療内容も同じかは不明。

 

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→数は足りている

 

 

〇結果

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primary clusterはプラビックスで少し良い。 8.7%のリスク減少

→NNTは196。。

 

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→サブグループ解析ではPADではよさげだが、脳梗塞に絞ると0をまたいでいる。。

 

 

副作用

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皮疹などプラビックスで多いが、出血などの重大な副作用は変わりなし

 

 

実はUp to Dateの非心源性脳梗塞の二次予防に以下の記載あり。

For secondary prevention of stroke in patients with a history of noncardioembolic stroke or transient ischemic attack (TIA) of atherothrombotic, lacunar (small vessel occlusive type), or cryptogenic type, we recommend treatment with an antiplatelet agent (Grade 1A). We suggest antiplatelet therapy using either clopidogrel (75 mg daily) as monotherapy or the combination of aspirin-extended-release dipyridamole (25 mg/200 mg twice a day), rather than aspirin (Grade 2A)

 

脳梗塞の二次予防は初回のエピソードなら、まずアスピリンだけど?と思いその根拠となっているので読んでみたRCT

まずPICOのCが問題で我々が知りたいのはアスピリン100㎎とプラビックス75㎎の比較だが、今回の論文はアスピリンは325㎎と通常使う量ではない。。

またそもそもプラビックスが優れるとのことだが、あくまで複合エンドポイントでNNT200程度と、臨床的に感じられるほどの差ではなさそう。

サブグループ解析でもPADにはよさそうだが、脳梗塞の二次予防によいかも微妙。。

またアスピリンは大腸癌予防効果も期待され、さらに安価。

また出血は同等とのことだが、アスピリン325㎎とプラビックスで比較していることからもプラビックスのほうが出血リスクが高い可能性あり。

特に、日本人は脳出血が多いことを考えれば、初発の脳梗塞の二次予防はアスピリンがベターだと思われる。

とはいえ、アスピリンを内服しても再発した脳梗塞に関しては確かにプラビックスに変更するのはありかもしれない??

 

なおUp to Dateに記載されているジピリダモール除法製剤400mg/日+アスピリン50mg/日の併用(Aggrenox)に関しては、日本で行った試験でアスピリンに劣るとされて、2015年の脳梗塞ガイドラインでは推奨しないとなっている。。。

JASAP ジピリダモール+アスピリンのアスピリンへの非劣性示せず | Stroke2010 | 学会記事一覧 | ミクスOnline

 

 

 

 

 

2017/11/17 志水先生カンファ

 

 

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2017/11/17 志水先生カンファ 

★大動脈解離を考えるなら、どんな場合が考えられるか?

(鑑別だけではなくその状況を考えることが後期レジには重要)

→1. Acute on Chronic:突然発症の病気は慢性経過あり、でも慢性発症の病気は急性経過なし.

 2.動脈硬化、3.Collagen disease:E-D、Marfan、O-I

 

★多発性骨髄腫を考える場合、“ABC-FOBT rule”、詳細は「診断戦略」で

 

★安静時優位の腰痛は、関節リウマチの朝のこわばりと同じように考える

→つまり炎症:Auto-immune、Infection、Neoplastic

 

★便秘を見たときは、いつからなのかを必ず聞く!

→AcuteならColon cancer/Chronicなら自律神経×(DMなど)・Metabolic(Hypothyloidなど)考える

 

★結局はLBPのPhysicalが大事:脊椎の触診はAnterior・Middle・Posteriorを意識

 

スピリーバレスピマットは死亡率を上昇させない??

Tiotropium Respimat Inhaler and the Risk of Death in COPD

N Engl J Med 2013; 369:1491-1501

 

 

 

A この試験の結果は信頼できるか
①その試験は焦点が明確な課題設定がされているか


P  

Inclusion

COPDと診断されている40歳以上で10pack-yearの喫煙歴がある。気管支拡張剤使用後のFEV1が予測値の70%以下。

Exclusion

6か月以内のMI。12か月以内のNYHAⅢ、Ⅳの心不全で入院歴、治療が必要な安定しないor致死的不整脈。他の肺疾患。4週以内のCOPD急性増悪。中~高度の腎障害。5年以内の治療を要する悪性腫瘍。12か月以内の薬物/アルコール依存。チオトロピウムで治療できない病態。LAMA以外の治療薬の使用有無は問わない

 

I & C  

レスピマット2.5μg VS レスピマット5μg VS ハンディヘラー18μg

の3群比較。プラセボが入ったもう一方のデバイスも吸入するダブルダミー法を採用している。

(日本の採用はレスピマット5)レスピマット2.5を使用した合剤が開発中なので本研究でレスピマット2.5も組み入れたと記載されている。

 

O 

Safety outcome→全死亡

Efficacy outcome→初回のCOPD急性増悪のリスク

 

 

A②その試験は設定された課題に答えるための研究方法がとられているか? 

ランダム化比較試験、ダブルダミー法を用いている。多施設・多民族を対象としている。(日本人は入っていない)

ハンディヘラーに対して、レスピマット2.5、5それぞれが死亡率に関して非劣性を評価した。

また、ハンディヘラーに対して、レスピマット5のCOPD急性増悪の優越性を評価した。

 

 

A③ 患者はそれぞれの治療群にどのように割り付けられたか?

ブロック法を用いている

 

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→ベースラインは同等

A④研究対象者、現場担当者、研究解析者は目隠しされている? 

全て目隠しされている

 

A⑤研究にエントリーした研究者が適切に評価されたか? 

mITT解析と記載がある

 

 

A⑥研究対象となった介入以外は両方のグループで同じような治療がされていたか? 

Table1ベースラインの特性、LABA、ICSの使用率は同等である

 

A⑦その研究のための対象患者数は偶然の影響を小さくとどめるのに十分な数か?

・死亡率

HR1.25までをマージンとした非劣性の検出力90%とすると、3.5年間の追跡機関に1266名の死亡が観察されるとして16800名が必要である

・急性増悪

ハンディヘラー群の60%に急性増悪が起こると見積もり、脱落35%、急性増悪の減少8%と予測した。

1回以上吸入し、解析に入ったのは17135名。13199名が最後まで薬を続けた。研究は早期終了していない。薬使用のコンプライアンスは90%(80-120%)だった。

 

 

B結果は何か? 
B⑧a 結果はどのように示されたか? b 有意差はあるか? 

死亡率に差はなかった。As-treated解析でも差はなかった。

急性増悪に差はなかった。

 

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c 副作用は? 

その他、心血管イベントなども差はなかった。

 

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C臨床にこの結果はどのように応用できるか? 

・製薬会社主導である点は差し引いて考える必要はある

・心血管リスクが高い人が除外されているのは注意が必要

・MI発症のP値は0.06なのでギリギリ差が出ていない。追試があればレスピマットで有意差を持ってMIが増える可能性がある

・本当に安全性を見たいならプラセボと比較すべき

・実際にはデバイスが使用できるかで処方を決めることがある

救急外来の尿管結石の腎仙痛に対する鎮痛薬

Delivering safe and eff ective analgesia for management of renal colic in the emergency department: a double-blind, multigroup, randomised controlled trial
Lancet 2016; 387: 1999–2007
 
ERに受診した尿管結石に対しては有効な鎮痛が必要である。これまでNSAIDsオピオイドアセトアミノフェンの比較をした研究はいくつかあるがランダム化やサンプルサイズの問題があり、いずれも決定的なものではない。最も効果的で副作用の無い薬剤と投与経路はどれなのかを、きちんとしたデザインのRCTで検証した、カタールRCT
 
 
A この試験の結果は信頼できるか
その試験は焦点が明確な課題設定がされているか
Patient
Inclusion criteria
カタールMahad General Hospitalの救急外来に尿管結石で受診した、18歳から65歳までの、Numerical pain Rating Scale (NRS 0 to 10)4以上の患者
 
Exclusion criteria
いずれかの薬剤へのアレルギー、喘息の既往、腎・肝不全または機能障害(患者申告もしくは医療記録による)、これまでに本試験に登録されている、妊婦、外傷による側腹部痛、受診6時間以内の鎮痛剤の使用
 
 
Intervention
・ジクロフェナク75mg/3mLの筋注
オピオイドモルヒネ15mg/15mL0.1mg/kg)の静注
アセトアミノフェン1g/100mLの静注
の比較
 
 
Outcome
Primary outcome
疼痛の軽減度合い。投薬から30分以内に50%以上疼痛が軽減すれば有意とする。
Secondary outcome
30分時点でのNRSの平均値、NRS3以上下がった患者の割合、レスキューを必要とする患者割合、一般的なプロトコールに従ってレスキューを使用して60分後の時点でNRS>2の疼痛が持続している患者の割合、急性期のマネージメント中に起こった副作用の割合
 
A②その試験は設定された課題に答えるための研究方法がとられているか?
single centerではあるが、double-blindrandomized controlled trial
double-blindにするために、患者はひとつの筋注薬とふたつの静注薬を受けていて、そのなかのどれかひとつがactive drugで残りはプラセボ、という面白いデザイン
 
 
A③ 患者はそれぞれの治療群にどのように割り付けられたか?
置換ブロック法を用いて、ブロックサイズは6または9としている。
コンピューターでランダム化は行われているが、single centerなので多分同一センター内で行われている?
 
 
A④研究対象者、現場担当者、研究解析者は目隠しされている?
Methodsの最期に、統計解析者もマスクされている、と記載あり。解析はテキサスで行われたらしい。
 
 
A⑤研究にエントリーした研究者が適切に評価されたか?
ITT解析とper-protocol解析の両方が行われている。
 
 
A⑥研究対象となった介入以外は両方のグループで同じような治療がされていたか?
table 1を見ても特に記載なし。
鎮痛以外の治療って?志室のツボが効くかもっていう話しがあるが、カタール人は多分やらないだろう。
補液は、鎮痛薬を投与してから30分以内には行わず、その後は診た医者の独断で行っても良いと記載あり。
30分以上経っても痛みの改善が無い場合、レスキューとしてモルヒネ5分毎に静注している。このプロトコールは全ての群で同じ。
 
 
A⑦その研究のための対象患者数は偶然の影響を小さくとどめるのに十分な数か?
50%疼痛を軽減出来た割合の差を10%75% vs. 65%)、typeerror5%power90%とすると、1380人が必要と算出。(はじめは非劣勢試験で計算したが、試験を始める前に優越性試験に変更。その結果サンプルサイズが増えた)
実は尿管結石由来の痛みではなかった人が15%混じっていると仮定し、またloss to follow-up3%あるとして、最終的に1640人が必要と算出した。
ランダム化されたのは1645人で、サンプルサイズは足りている。
B結果は何か?
B⑧a 結果はどのように示されたか? b 有意差はあるか?

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201485日から2015315日までに、2806人がスクリーニングされ1645人がランダム化に組み込まれた。ジクロフェナク群548人、アセトアミノフェン548人、モルヒネ549人に割り付けられ、それぞれの群間の特徴に有意差はなかった(table 1)。年齢の中央値は34.7歳(IQR 28.9-41.9)で83%が男性、受診時のNRSスコアの中央値は8IQR 7-10)であった。1605人がCTまたはエコー検査を受け、1316人(82%)が尿管内に結石を確認された。
連続変数の差の検定にはStudentt検定かWilcoxon rank-sum検定が用いられた。カテゴリカルデータの有意差の検出にはカイ二乗検定が、ノンパラメトリックな結果の検定にはKruskal-Wallis検定が用いられた。群間比較にはカイ二乗検定Fisher’s Exact test(セルの期待値が5未満の場合)が用いられた。
 
Primary outcomeに関しては、ITT解析ではモルヒネと比較してジクロフェナクは優越性が確認された(OR 1·35, 95% CI 1·05–1·73; p=0·0187)が、アセトアミノフェンは明らかな差を見いだせなかった(OR 1·26, 95% CI 0·99–1·62, p=0·0629)。しかしper-protocol解析(CTで結石を確認された患者の中で、実際に受けた治療によって解析)では、ジクロフェナク(OR 1·49, 95% CI 1·12–1·97, p=0·0046)アセトアミノフェン(OR 1·40, 95% CI 1·06–1·85, p=0·0166)モルヒネに比べて有意に優越性が検出された。
Secondary outcomeに関しては、ITT解析におけるNRS3点以上の低下のみ有意差を認めなかったが、他の項目はITT解析でもper-protocol解析でもジクロフェナク群とアセトアミノフェン群がモルヒネ群よりも有意に成績が良かった(table 23および本文「Results」を参照)。
 
 
 
c 副作用は?
副作用はジクロフェナク群(OR 0·31, 95% CI 0·12–0·78, p=0·0088)アセトアミノフェン(OR 0·36, 95% CI 0·15–0·87, p=0·0175)で有意にモルヒネ群より低かった。
詳細はappendixの表の通り。
 
 
 
試験登録14日後に電話をかけて、1503人(91%)にコンタクトを取った。そのうち、703人(43%)が翌週の血清クレアチニンチェックを受けた。25人の患者で血清クレアチニン値の上昇を認め、そのうち11人がジクロフェナク群、8人がモルヒネ群、6人がアセトアミノフェン群だった。
筋肉内壊死、膿瘍、消化管出血、透析導入、死亡などの重篤な副作用はこの1644人の患者では認めなかった。(ジクロフェナク群1例はdata form missing
 
 
C臨床にこの結果はどのように応用できるか?
日本ではジクロフェナクは75mg筋注ではなく50mg座薬になるだろう。
メリットはルートを取らなくても良いこと、自宅で自分でも出来ること。デメリットはやはり腎機能障害と消化管出血。
 
鎮痛効果はジクロフェナクが一番よさそうというのは、さもありなんという感じであるが、初診であれば腎機能障害の有無は不明だし、かといって採血して腎機能待つのも不毛。
若い生来健康な人ならジクロフェナクで良いと思うが、微妙に合併症がある(高血圧や糖尿病など)中高年者には、やはり少しためらわれる場合も多い。
そういったときに、点滴ルートを取る手間はあるがアセトアミノフェン点滴でも同等の効果が得られる、というのはかなりありがたい情報。
もちろん前述したメリットやコストの問題もあるので、使えるのであればジクロフェナクがファーストチョイスで良いと思われるが、使いにくい場合にはモルヒネ(日本では実際にはペンタゾシンやブプレノルフィンになるか)よりはアセトアミノフェンを積極的に使う根拠になるだろう。